アイデアを発明にして事業化するには、資金を提供してくれる投資家の存在が欠かせません。発明が生まれた後、「発明提案書」そして最終的に「企画書」を仕上げていくことになりますが、「この発明に投資をしてくれるのか」「誰が投資してくれるのか」と、投資家の目線での企画書を書いていくことが重要です。
その投資家とは誰でしょう。個人投資家や投資ファンドはもちろんですね。また、企業に勤めている人にとって忘れてはいけないのが、自分の会社の経営者です。企業の中で、事業や技術にお金をつけるかどうかの決定権を持つのは経営者ですから、経営者=投資家です。
では、投資家の目線って何か。新規事業や起業に対して投資家が重視することは何か。僕がいつも挙げるのは5つです。
・誰が買うか(ファーストユーザー)
・なぜ買うか(顧客価値)
・なぜそれを(あなたから)買わなければならないのか(独占)
・どれくらい買うか(売上)
・どれくらい儲かるか(利益)
この中で特に重要なのは、最初の3つです。
多くの人は「どれくらい買うか(売上)」「どれくらい儲かるか(利益)」の2つにこだわりがちです。みなさんも、エクセルで右肩上がりのグラフを描いて「利益率何パーセントとすると、これくらい儲かります」などと説明していませんか?
実は、これって投資家からすると、「その利益率の根拠はなんや」と言われるのがオチなんです。かつて、僕もそう言われました。「どれくらい独占できるかで利益率は変わるよね、だって売り値って、価格交渉力で決まるんやから」という話です。つまり、売れるかより、どれくらい「独占」でき、その根拠は何か、の方がすごく大事なわけです。
マーケットの広がりは誰がどういう理由で買うかで、決まってくるもの。「なるほど、そういうことで買うならもっと大勢の人に売れそうだな」と期待を持たせるものがないのに「このぐらい売れます。これくらい儲かります」と言われても、投資家・経営者は、「売れる」という具体的イメージが持てません。逆に不信感を招く可能性があります。
逆に、最初の3つのロジックがしっかりしていれば、売上や利益は、そこからある程度計算できます。独占の手が打てると分かれば、利益率は高められるので、利益が出るまでのシナリオにも信憑性が出ます。だからまずは最初の3つなんです。「誰がどういう理由で買わないといけないのか」「なぜそれをあなたから買わないといけないのか」をまずしっかり考えましょう。
「企業内発明塾」では、一緒に企画を考える時、この3つを先に固めてしまいます。そこさえわかれば、実際にお客さんにヒアリングに行く段階です。どれくらい予算取ってくれそうか、どれくらいの価格帯なら買ってくれそうなど、ヒアリングしていけばよいのです。ヒアリングで確証が得られれば、投資家にも自信をもって話ができます。
発明を単なる発明で終わらず、投資家が求める「儲かる」事業の企画にまで育てる。投資家だってビジネスですから、未来が期待できない事業にリスクを取ってまで投資しませんよね。誰も考えたことのないことを考えて、かつ、投資家が投資したくなる新規事業の企画や発明にしないといけません。
もっと言うと、発明の初期段階からそれを考えていくことが重要です。特に技術者の方には、これを念頭においていただきたいと思います。
僕がこれまでの経験によって培ってきた情報分析法、発想法、アイデアの育て方、提案書や企画書の書き方など、すべて発明塾で教えています。ほかに、企画書の書き方については、弊社深掘りコラム「新規事業企画書の書き方と成功事例【見本あり】 ~3つの視点で事業の魅力を伝える」でも詳しく学べますのでそちらもご覧ください。
語り:楠浦崇央(弊社代表)
構成:鈴木素子
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