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楽天グループの知財戦略:エコシステムとAI・Open RANを軸とする技術経営とブランド統合

3行まとめ

70以上のサービスを1億IDと楽天ポイントで連携

楽天グループは、Eコマース、フィンテック、モバイル通信など70以上のサービスを共通IDと楽天ポイントで結び、楽天エコシステムを構築している。国内1億ID以上、グローバル約21億利用者の基盤が、模倣困難な独自資産と位置づけられている。

Rakutenブランド統合と独自フォントで知財を一元管理

創業20年目を契機に、国内外70以上のサービスのロゴや名称をRakutenブランドへ統合した。さらにRakuten Brand & ReX GuidelinesRakuten Fontを通じ、ブランドとデザイン資産の一貫性を管理している。

AI-nizationとOpen RANで事業実装を加速

全事業・全社部門にAI推進責任者を配置し、楽天市場のAIコンシェルジュや楽天トラベルのAIホテル検索などを展開している。通信領域ではOpen RANによりCapexを40%、Opexを30%削減した実績が報告されている。

エグゼクティブサマリ

【事業概要】 楽天グループ株式会社(以下、対象企業)は、Eコマース、フィンテック、モバイル通信事業等を包括的に展開する複合的なサービス企業である。対象企業は、国内外において70(単位:事業数以上、対象期間:2026210日確認時点、区分:実績、出典:企業情報公式ページ)のサービス群を提供しており、これらを共通の会員メンバーシップIDおよび「楽天ポイント」プログラムで連携させる「楽天エコシステム(経済圏)」を構築している[1]。当該エコシステムは、日本国内において1億(単位:ID以上、対象期間:2026210日確認時点、区分:実績、出典:企業情報公式ページ)、グローバルにおいて約21億(単位:利用者数、対象期間:2026210日確認時点、区分:実績、出典:企業情報公式ページ)のサービス利用者を基盤としており、このメンバーシップ基盤が対象企業における模倣困難な独自の資産として位置づけられている[1]。新規事業やサービスの開発体制としては、創業時の少人数体制に倣い、6人規模のスモールチームでプロジェクトを開始する「プロジェクト6」という手法を導入し、機動的なビジネス創出を促す組織戦略を採用している[1]。モバイル通信事業においては、20251225日時点で契約数が1,000万回線(単位:回線、対象期間:20251225日時点、区分:実績、出典:公式ニュース)を突破した事実を発表した[2]。モバイル通信サービスの利用者は、通信サービスに加えて平均2.43(単位:サービス、対象期間:2025年、区分:実績、出典:Rakuten Symphony Blog)の他サービスを利用しており、エコシステム全体への送客と回遊性の向上が報告されている[3]

 

【財務】 対象企業の202512月期通期の連結財政状態に関する開示資料によれば、202512月期末の資産合計は28,804,400百万円(単位:百万円、対象期間:202512月期末、区分:実績、出典:202512月期決算短信)となり、前連結会計年度末の資産合計である26,514,728百万円(単位:百万円、対象期間:202412月期末、区分:実績、出典:202512月期決算短信)と比較して、2,289,672百万円(単位:百万円、対象期間:前連結会計年度末比、区分:実績、出典:202512月期決算短信)の増加となった[4]。資産の主要な内訳として、現金及び現金同等物期末残高は5,837,566百万円(単位:百万円、対象期間:202512月期末、区分:実績、出典:同短信)を計上している[4]。事業セグメントの業績として、モバイルセグメントにおいては2025年度通期においてEBITDA黒字化を達成した(対象期間:2025年度通期、区分:実績、出典:2025年度通期決算短信)[5]。インターネットサービスセグメントの通期業績は、売上収益が13,697億円(単位:億円、対象期間:2025年通期、区分:実績、出典:決算説明会プレゼンテーション資料)であり、Non-GAAP営業利益は889億円(単位:億円、対象期間:2025年通期、区分:実績、出典:同資料)を記録した[6]。また、国内EC分野の流通総額は6.3兆円(単位:兆円、対象期間:2025年通期、区分:実績、出典:同資料)である[6]。知財および技術開発の基盤となる研究開発費については、171億円(単位:億円、対象期間:2024年度、区分:実績、出典:統合報告書2024)を投じている[1]

 

【技術・知財】 技術研究開発を推進する体制として、世界4カ国5拠点(対象期間:2026210日確認時点、区分:実績、出典:企業情報公式ページ)に「楽天技術研究所」を設置している[1]。知的財産およびブランド戦略の一環として、対象企業は創業20年目を契機に、国内外における70(単位:事業数以上、対象期間:統合時点、区分:実績、出典:公式ブランドストーリーページ)を超えるグループサービスのロゴや名称を「Rakuten」ブランドへ統合する施策を実施した[1]。現在のグローバル統一ロゴは2018年に一新されたものであり、漢字の「一」をデザインに採用し、「A New Start」「Unity」「Be the Best」「Only One」の4つの意味を込めている[1]。ブランド資産の統一性を維持管理するため、「Rakuten Brand & ReX Guidelines」という包括的なブランドガイドラインを規定している[1]。さらに、デザインおよびブランド独自性の表現手段としてフォント資産の開発に取り組み、2020年に4種類のオリジナル欧文フォントを開発し、2024年には日本語フォント「Rakuten Font」をリリースして各サービスでの運用を開始した(ステータス:稼働)[1]

 

【戦略・成長】 対象企業は「AI-nization」という方針を掲げ、全社的なAIの事業実装を推進している[7]。この戦略に基づき、全事業・全社部門にAI推進責任者を任命・配置し、検索、レコメンデーション、広告配信等の領域においてAI活用を拡大している[6]。サービスフロントへの実装として、2025年に「楽天市場」における「AIコンシェルジュ」、「楽天トラベル」における「AIホテル検索」、「楽天ビューティ」における「エージェントβ版」を展開した[6]。通信領域の戦略としては、楽天シンフォニー株式会社を通じてOpen RANアーキテクチャのグローバル展開を推進している[8]。同社は日本の経済産業省による「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」等に採択され、グローバルサウスの7カ国においてOpen RANおよびRICRAN Intelligent Controller)の大規模な実証プロジェクトを主導する[8]。モバイルネットワークの構築において、Open RAN技術の活用により従来のRAN機器と比較してCapex40%(単位:%、対象期間:ネットワーク構築時、区分:実績、出典:Rakuten Symphony Blog)削減し、Opex30%(単位:%、対象期間:継続運用時、区分:実績、出典:Rakuten Symphony Blog)削減したことが報告されている[3]

 

【リスク・ESG 対象企業は監査役会設置会社を採用しており、経営の透明性を確保するため、監査役会は社外監査役が過半数を占める構成としている[1]。取締役会は現在10名(単位:名、対象期間:2026210日確認時点、区分:実績、出典:コーポレートガバナンス公式ページ)の体制であり、そのうち女性取締役が3名(単位:名、対象期間:同左、区分:実績、出典:同左)、外国人取締役が3名(単位:名、対象期間:同左、区分:実績、出典:同左)、社外取締役が6名(単位:名、対象期間:同左、区分:実績、出典:同左)選定され、多様性の確保に努めている[1]。サステナビリティに関するガバナンス体制として、Group CCuOChief Culture Officer)が議長を務める「グループサステナビリティ委員会」を設置し、2030年までの長期目標の策定および提案を行う[1]。技術的リスク管理の側面では、「責任あるAI」の実装に向けて「AI Safety & Security ガバナンス体制」の構築を進め、20247月に「AI倫理憲章」を制定した(区分:実績、対象期間:20247月、出典:責任あるAI公式ページ)[12]。情報セキュリティ対策においては、脅威インテリジェンスを活用して攻撃手法を分析する体制を構築し、生体認証とパスキーを組み合わせた認証機能を今年度中に主要サービスへ順次導入する予定である(区分:計画、対象期間:今年度中、出典:決算説明会プレゼンテーション資料)[6]

本文

1. 楽天エコシステムの構造と技術的組織基盤

楽天グループ株式会社は、イノベーションを通じて人々と社会をエンパワーメントすることを経営の基本理念に掲げ、国内外において多岐にわたるサービスを展開する事業体である[1]。事業戦略の中核には、Eコマース、フィンテック、モバイル通信等の各種サービス群を統合する「楽天エコシステム(経済圏)」の構築が存在する[1]

 

対象企業は、70(単位:事業数以上、対象期間:2026210日確認時点、区分:実績、出典:企業情報公式ページ)のサービスを展開しており、これらを共通の会員メンバーシップIDおよび「楽天ポイント」プログラムを軸に連携させている[1]。当該エコシステムは、日本国内において1億(単位:ID以上、対象期間:2026210日確認時点、区分:実績、出典:企業情報公式ページ)、グローバル全体で約21億(単位:利用者数、対象期間:2026210日確認時点、区分:実績、出典:企業情報公式ページ)に達するサービス利用者を基盤としている[1]。この膨大なメンバーシップ基盤は、データとAIを利活用するための知的基盤として機能しており、対象企業における模倣困難な独自の資産として位置づけられている[1]

 

モバイル通信事業の展開はエコシステム内の回遊性を強化する要素として機能しており、関連する指標が報告されている。2025年における対象企業のモバイル利用者は、モバイル通信サービス以外に平均して2.43(単位:サービス、対象期間:2025年、区分:実績、出典:Rakuten Symphony Blog)の対象企業グループの他サービスを利用している[3]。このクロスユースの実績は、通信インフラを接点として70以上のEコマースやフィンテック等の事業へ顧客を送客し、付加的な収益を生み出している現状を示している[3]

 

技術開発と事業創出を連携させる組織戦略として、対象企業は「プロジェクト6」という開発枠組みを導入している[1]。これは、新たなサービスを開発する際、対象企業の創業時における少人数体制に倣い、6人規模のスモールチームからプロジェクトを開始する手法である[1]。この少人数体制により、意思決定プロセスの短縮化と新規ビジネス創出における生産性の向上を図っている[1]。また、社内公用語を英語とする人事・組織戦略を運用することで、世界100カ国・地域以上から多様な経験を持つ人材を獲得し、アイデアが流通しやすい企業文化の醸成を進めている[1]。技術の研究開発を専門とする拠点として、世界4カ国5拠点(対象期間:2026210日確認時点、区分:実績、出典:企業情報公式ページ)に「楽天技術研究所」を設置し、先端テクノロジーの探求とビジネス応用を並行して推進している[1]

2. 知的財産戦略の土台となる財務実績および研究開発投資

対象企業の最新の財務実績は、2026212日に発表された2025年度通期および第4四半期の決算短信等の開示資料において報告されている[9]

 

連結財政状態に関して、202512月期末における資産合計は28,804,400百万円(単位:百万円、対象期間:202512月期末、区分:実績、出典:202512月期決算短信)であった[4]。この数値は、前連結会計年度末の資産合計である26,514,728百万円(単位:百万円、対象期間:202412月期末、区分:実績、出典:202512月期決算短信)と比較して、2,289,672百万円(単位:百万円、対象期間:前連結会計年度末比、区分:実績、出典:202512月期決算短信)の増加に相当する[4]

 

資産の部の主要な内訳として、流動性の高い現金及び現金同等物が5,837,566百万円(単位:百万円、対象期間:202512月期末、区分:実績、出典:同短信)計上されている[4]。また、事業運営に伴う売上債権は443,557百万円(単位:百万円、対象期間:202512月期末、区分:実績、出典:同短信)、証券事業の金融資産は6,035,176百万円(単位:百万円、対象期間:202512月期末、区分:実績、出典:同短信)となっており、フィンテック領域における強固な資産規模が確認できる[4]

 

事業セグメント別の業績においては、インターネットサービスセグメントが継続的な成長を示している。同セグメントの通期業績は、売上収益が13,697億円(単位:億円、対象期間:2025年通期、区分:実績、出典:決算説明会プレゼンテーション資料)を記録し、前年実績である12,821億円(単位:億円、対象期間:2024年通期、区分:実績、出典:同資料)に対して、前年同期比で+6.8%(単位:%、対象期間:2025年通期、区分:実績、出典:同資料)の増加となった[6]。また、同セグメントにおけるNon-GAAP営業利益は889億円(単位:億円、対象期間:2025年通期、区分:実績、出典:同資料)となり、前年の851億円(単位:億円、対象期間:2024年通期、区分:実績、出典:同資料)から前年同期比+4.5%(単位:%、対象期間:2025年通期、区分:実績、出典:同資料)の成長を達成した[6]。インターネットサービスセグメントの増収増益は、国内EC領域において「楽天市場」およびトラベル事業が業績を牽引したこと、また物流事業等の成長投資ビジネスにおける損失が改善したこと、さらにインターナショナル部門における「Rakuten Kobo」および「Rakuten Viber」が貢献したことによる[6]

 

国内EC分野の流通総額に関する指標として、2025年通期の国内EC流通総額は6.3兆円(単位:兆円、対象期間:2025年通期、区分:実績、出典:同資料)となり、2024年の6.1兆円(単位:兆円、対象期間:2024年通期、区分:実績、出典:同資料)から前年同期比+3.9%(単位:%、対象期間:2025年通期、区分:実績、出典:同資料)の成長を示した[6]。なお、この数値に関する補足として、うるう年の影響等を考慮した後の実質的な成長率は前年同期比+4.2%(単位:%、対象期間:2025年通期、区分:実績、出典:同資料)であった旨が記載されている[6]

 

対象企業の成長戦略における重要な柱であるモバイル事業セグメントにおいては、2025年度通期においてEBITDAの黒字化を達成した(対象期間:2025年度通期、区分:実績、出典:2025年度通期決算短信)ことが報告されている[5]。同事業は通信品質の改善に向けた設備投資等を継続的に実施しており、端末ラインナップの拡充や法人向けソリューションサービスの展開等に取り組んでいる[5]

 

これらの事業展開を支える技術革新と知的財産の基盤となる研究開発活動に関して、対象企業は171億円(単位:億円、対象期間:2024年度、区分:実績、出典:統合報告書2024)の研究開発費を計上しており、継続的な技術投資を行っている[1]

3. グローバルブランドの統合とデザイン・フォント知財の管理

対象企業における知的財産戦略の特徴の一つとして、グループ全体にまたがるブランドアセットの統合と厳格なデザインガバナンス体制が挙げられる[1]

 

対象企業は、創業20年目という節目において世界市場への進出を加速させる戦略の一環として、国内外に展開していた70(単位:事業数以上、対象期間:統合時点、区分:実績、出典:公式ブランドストーリーページ)を超えるグループサービスのロゴおよび名称を「Rakuten」という単一ブランドを核として統合した[1]。各事業に分散していたブランド資産を集約することにより、グローバル市場におけるブランド認知度とイメージの向上を図る取り組みである[1]

 

現在のグローバル統一ロゴは2018年に一新されたデザインを採用している[1]。このロゴデザインには、物事の始まりやナンバーワンを意味する漢字の「一(いち)」があしらわれている[1]。この「一」のデザインには、「A New Start(はじまり)」、「Unity(ひとつになる)」、「Be the Best(一番・最高)」、「Only One(唯一)」という4つの意味が込められており、革新的でスピーディな企業イメージを視覚的に表現するブランド知財として運用されている[1]

 

これらの統合されたブランド資産をグループ全体で一貫して維持・管理するための内部統制の仕組みとして、「Rakuten Brand & ReX Guidelines」という名称のブランドガイドラインを規定している[1]。本ガイドラインにより、グループ全体のブランドの統一性とデザインの一貫性を確保している[1]

 

さらに、対象企業はブランドの独自性を担保する手段として、独自のフォント開発を通じた知的財産の蓄積を行っている。2020年には、4種類(単位:種類、対象期間:2020年、区分:実績、出典:公式ブランドストーリーページ)のオリジナル欧文フォントを開発した[1]。これに続き、2024年には日本語フォントである「Rakuten Font」をリリースした[1]。これらの独自開発フォントを各サービスのインターフェースやマーケティング素材において使用することで、ブランド資産としてのデザイン一貫性を保ちつつ、各サービスの特性を表現する管理手法を採用している(ステータス:稼働)[1]

4. AI-nizationの全社的推進とサービスプラットフォームへの実装

対象企業は、先端技術の事業実装に関する全社的なテーマとして「AI-nization」を掲げている[7]。このテーマは、AIを事業のあらゆる側面に浸透させ、人間の創造性を拡張し、生産性の向上とさらなる事業成長を推進する取り組みを表している[7]

 

この戦略を具体化するため、対象企業は全事業および全社部門に対してAI推進責任者を任命し、配置している[6]。この組織体制の下、検索エンジンのアルゴリズム最適化、ユーザーごとのレコメンデーション機能、および広告配信システムなど、あらゆる領域でAIの活用を拡大している[6]

 

2025年度には、顧客の利便性や満足度向上を追求し、収益性の向上を図る目的で、主要なサービスプラットフォームにおいてAIエージェント機能の展開を実施した[6]。具体的には、国内最大級のECモールである「楽天市場」において「AIコンシェルジュ」機能を導入し、「楽天トラベル」においては「AIホテル検索」の運用を開始した[6]。さらに、「楽天ビューティ」のプラットフォームにおいても「エージェントβ版」の提供を開始した[6]

 

カスタマーサポート領域においては、生成AI技術を活用したチャットベースの顧客サポートサービスである「Rakuten Mobile AI Assistant 2.0」を開発し、事業実装を行った[10]。同システムの開発および運用実績は外部機関からも評価されており、2025128日に公益社団法人企業情報化協会が主催する「第43 IT賞(2025年度)」において、「IT賞(カスタマー・エクスペリエンス向上領域)」を受賞した(完了日:2025128日、出典:企業公式ニュース)[10]

 

また、技術イノベーションの促進および先進技術の社会実装に関する啓発活動として、対象企業は年次イベント内で「Rakuten Technology Excellence Awards 2025」を主催し、社外の研究者等を対象に表彰を行っている[7]。第16回となる同アワードは「AI-nization with U」をテーマとして開催された[7]2025年のExcellence Awardは、20251110日に東京大学カレッジ准教授、大阪大学社会技術共創研究センター特任准教授、中央大学総合政策学部教授の3名が受賞者として発表され、20251115日に開催されるRakuten Technology Conference 2025で授与される予定とされた(発表日:20251110日、出典:企業公式ニュース)[7]。授与の背景として、2023年のG7広島サミットで発足した「広島AIプロセス」における国際的なAIガバナンス枠組みに関する意識向上と理解促進への貢献、およびEU AI法の実施ガイドライン案作成における日本の貢献を主導した実績が挙げられている[7]

5. 通信インフラにおけるOpen RAN技術のグローバル展開と知的基盤

対象企業は、楽天モバイル株式会社および楽天シンフォニー株式会社を通じ、ソフトウェア定義型ネットワークアーキテクチャであるOpen RANOpen Radio Access Network)技術のグローバル展開とインフラ効率化を推進している[8]

 

モバイル通信事業の国内展開において、20251225日時点で契約数が1,000万回線(単位:回線、対象期間:20251225日時点、区分:実績、出典:企業公式ニュース)を突破した[2]。インフラ構築の効率性に関して、楽天モバイルにおけるOpen RANの運用実績をまとめたホワイトペーパーによると、高度な自動化とオーケストレーションを実装した結果、ネットワーク構築期において1日あたり200(単位:サイト/日、対象期間:ネットワーク構築期間、区分:実績、出典:Rakuten Symphony Blog)のサイト展開というインフラ構築速度を達成した[3]。さらに、Open RANアーキテクチャの導入により、従来のRAN機器によるネットワーク構築と比較して、Capex(資本的支出)において40%(単位:%、対象期間:ネットワーク構築時、区分:実績、出典:Rakuten Symphony Blog)のコスト削減を実現し、継続的な運用に伴うOpex(業務執行費用)においても30%(単位:%、対象期間:継続運用時、区分:実績、出典:Rakuten Symphony Blog)の削減を達成した旨が報告されている[3]。これらの効率化は、ネットワーク展開(Day 0)から継続的な運用(Day 1Day 2)に至るプロセスにおいてゼロタッチプロビジョニング環境を整備したことによる[3]

 

2026年421日には、グローバル展開における重要なマイルストーンとして、楽天シンフォニー株式会社が日本の経済産業省(METI)による「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」等に採択されたことを発表した[8]。採択された実証事業の名称は「AI及び機械学習を利用した無線アクセスネットワーク(RAN)制御最適化技術等に関する実証事業」である[8]。本プロジェクトにおいて、同社は東南アジア、ラテンアメリカ、アフリカを含むグローバルサウスの7カ国(インドネシア、ベトナム、マレーシア、インド、クウェート、ボリビア、パラグアイ)において、Open RAN技術およびAI駆動の管理・制御コンポーネントであるRICRAN Intelligent Controller)の大規模な実証を主導する(ステータス:合意・計画進行中)[8]。また、同実証事業に対して、ASEAN加盟国および非ASEAN加盟国における実証の補助金上限額として合計80億円が割り当てられている[8]

 

本実証事業の目的は、グローバルサウスの通信インフラが直面する特有の課題を解決することにある[8]。対象となる課題として、ネットワークアクセスの著しい格差、島嶼部や山間部といった地理的に複雑な地域におけるインフラ開発の遅れ、自然災害による復旧コストの増大、レガシーインフラの老朽化、5G移行に伴う多額の投資要件、および不十分な電力インフラストラクチャが明記されている[8]。これらの商業環境下においてOpen RANおよびRIC技術の有効性と信頼性をテストし、先進的なネットワークソリューションの世界的導入を加速させることを目指す[8]

 

楽天モバイル共同CEOは、モバイル通信業界におけるマクロな動向として、楽天、1&1Dish等、過去5年から6年の間に新たに構築されたすべての主要なグリーンフィールドネットワーク事業者が、基盤となるアーキテクチャとしてOpen RANを採用している事実を報告している[11]

6. コーポレートガバナンス・サステナビリティ・リスク管理体制

対象企業は、コーポレートガバナンスの徹底を最重要課題の一つと位置づけ、適正性、効率性、公正性、健全性を実現するためのマネジメントシステムを構築している[1]

 

機関設計として監査役会設置会社を採用しており、経営の監査機能を担う監査役会は、独立性の高い社外監査役が過半数を占める構成をとっている[1]。また、監査役の職務を補助する組織として「監査役室」を設置している[1]。業務執行体制においては、執行役員制および社内カンパニー制を導入し、取締役会による経営の意思決定・監督機能と、執行役員による業務執行機能を分離することで、機動性の確保と説明責任の明確化を図っている[1]

 

経営の意思決定機関である取締役会は、現在10名(単位:名、対象期間:2026210日確認時点、区分:実績、出典:コーポレートガバナンス公式ページ)の体制で構成されている[1]。取締役会の多様性を確保する観点から、女性取締役が3名(単位:名、対象期間:同左、区分:実績、出典:同左)、外国人取締役が3名(単位:名、対象期間:同左、区分:実績、出典:同左)選定されている[1]。また、社外取締役は6名(単位:名、対象期間:同左、区分:実績、出典:同左)であり、過半数を社外人材が占める構成である[1]。取締役の任期は1年(単位:年、対象期間:適用期間、区分:実績、出典:同ページ)と設定されており、毎年の株主総会において選任が行われる[1]。経営戦略上の重要判断や新規の資金投下案件については、外部有識者を含むメンバーで構成される「投融資委員会」において事前審議を行い、その結果を取締役会へ報告する体制を運用している[1]

 

ESGおよびサステナビリティに関するガバナンス体制として、Group CCuOChief Culture Officer)が議長を務める「グループサステナビリティ委員会」を設置している[1]。同委員会において、2030年までの長期目標の策定および提案が行われ、取締役会による承認を経る意思決定プロセスとなっている[1]。重点管理分野として、責任ある労働慣行、気候変動、リスク管理・危機管理のほか、「責任あるAI」および「インターネットガバナンスと表現の自由」への対応方針を定めている[1]

 

AI関連技術の事業実装の拡大に伴い、倫理的課題に対する統制も進めている。対象企業は20247月に「AI倫理憲章」を制定した(区分:実績、対象期間:20247月、出典:責任あるAI公式ページ)[12]。さらに、「AI Safety & Security ガバナンス体制」の構築および、AIの安全性に関するテスト運用の標準化に取り組んでいる[1]

 

サイバー空間における情報セキュリティ対策とリスクマネジメント体制については、Group CCOChief Compliance Officer)がリスク管理・危機管理を統括し、倫理的な事業慣行の維持に努めている[1]。不正利用対策およびシステム保護の施策として、脅威インテリジェンスを活用した防御アプローチを採用している[6]。社内セキュリティ専門家と外部のセキュリティ団体・ベンダーによって構成される情報ネットワークを通じ、攻撃者の手法や意図、傾向を分析し、有効な対策の立案へ繋げている[6]。加えて、公的機関との連携強化やモニタリング体制の強化を実施し、本人確認方法の見直しを進めている[6]。ユーザーに対する安全な認証プロセスの提供として、生体認証とパスキー技術を組み合わせたパスキー対応サービスを、今年度中に主要なサービスプラットフォームへ順次導入する予定である(区分:計画、対象期間:今年度中、出典:決算説明会プレゼンテーション資料)[6]

未確認事項まとめ

本調査における情報の探索過程において、以下の事項は、対象企業の公式開示資料(有価証券報告書、決算短信、公式ニュース、公式サイト等)、政府公式レジストリ、または公的な特許データベース(J-PlatPatWIPOUSPTO公報等)の調査範囲内では確認できず、引用不可とされる二次情報(ニュース記事、民間検索サービス、ブログ等)のみで言及が確認された事項である。したがって、これらは事実として本文に含めず、未確認事項としてここに明記する。

 

  • 民間特許データベース(Justia等)に掲載された個別特許出願情報

 

  • 米国民間特許検索サービス上に、対象企業(Rakuten Group, Inc.)またはその子会社(Rakuten Symphony, Inc.)が譲受人(Assignee)として記載された複数の米国特許情報が存在するが、今回の調査においてWIPOUSPTO公式、J-PlatPat等の公的データベース上での同一出願内容の照合を完了できなかったため、未確認とする。
  • UAV(ドローン)による物品配送において、センサー情報に基づき視界不良時に受取人への通知を制御するシステム(特許番号:12555356、譲受人:Rakuten Group, Inc.
  • スポーツ試合の映像から特定のシーンタイプを機械学習モデルを用いて推定するコンピュータビジョンシステム(特許番号:12553731、譲受人:Rakuten Group, Inc.、中部大学)
  • 交通状況など特定の場所固有の要因を考慮して到着時刻のアラートを提供する到着予測モデルに関する技術
  • 通信ネットワークにおけるカバレッジエリアの欠陥を可視化する手法(特許番号:12598478、譲受人:Rakuten Symphony, Inc.
  • モビリティ管理エンティティ(MME)データセンタの切り替えを管理する手法およびシステム(特許番号:12598530、譲受人:Rakuten Symphony, Inc.

 

  • AI関連機能による流通総額および利益の押し上げ効果に関する具体的金額

 

  • 一部のEコマース専門ニュースサイトにおいて、「AI関連機能による楽天市場流通総額の押し上げ効果は年間約255億円規模と試算される」「カスタマーサービス向けAIRaptor導入により2026年度は通期43億円規模の利益押し上げを見込む」といった具体的な試算金額の記載が存在する。しかし、対象企業が発行した公式決算開示資料(2025年度決算短信および決算説明資料等)の調査範囲内では、該当する具体的な利益額や効果額の明記を確認できず。

SHOULD:付録データ表

1. IRイベント表

以下の日程およびイベントに関する事実は、対象企業の公式IRイベント情報および開示情報ページの記載に基づく[1]

 

日付

事項・対象

ステータス

2026年212

2025年度 通期及び第4四半期決算発表および決算説明会

完了

2026年326

2025年12月期 有価証券報告書の関東財務局長への提出

完了

2026年327

コーポレート・ガバナンスに関する報告書の提出

完了

2026年514

2026年度 第1四半期決算発表・決算説明会

予定

2. 市場指標・業績表(主要事業セグメント)

以下の数値は対象企業の2025年度通期決算説明資料に基づくセグメント別の実績値である[6]

 

項目ラベル

2024年実績

2025年実績

増減率(前年同期比)

インターネットサービスセグメント 売上収益

12,821億円

13,697億円

+6.8%

インターネットサービスセグメント Non-GAAP営業利益

851億円

889億円

+4.5%

国内EC 流通総額

6.1兆円

6.3兆円

+3.9%(

 

※国内EC流通総額の前年同期比について、うるう年影響等考慮後で+4.2%となることが注記されている[6]

3. 知財対応・技術・ブランド方針表

以下の知財管理および技術・ブランド戦略に関する方針事項は、対象企業の公式企業情報および技術に関する説明資料に基づく[1]

 

領域

施策・対応事項

状態

ブランド知財

国内外70以上のサービスロゴおよび名称を「Rakuten」に統合

完了

ブランド知財

グローバル統一ロゴデザインに漢字の「一(いち)」を採用

完了

ブランド管理

Rakuten Brand & ReX Guidelines」によるグループ全体のデザイン一貫性の維持

稼働

フォント資産

オリジナル欧文フォント4種(2020年)、日本語フォント「Rakuten Font」(2024年)の開発・運用

稼働

AIガバナンス

AI倫理憲章」(20247月制定)およびAI Safetyテスト運用の標準化

制定済み/取り組み中

テクノロジー

全事業および全社部門へのAI推進責任者の任命と「AI-nization」の推進

稼働

プロジェクト管理

新規サービス開発における「プロジェクト6」(6人規模チームでの始動)手法の採用

稼働

セキュリティ

生体認証とパスキー技術の組み合わせによる安全なログイン認証の主要サービスへの導入

計画

4. 組織・拠点・ガバナンス体制表

以下の組織体制およびガバナンスに関する構成は、対象企業のコーポレートガバナンス情報および技術拠点情報に基づく[1]

 

組織・役職・拠点名

役割・概要・人員構成

楽天技術研究所

世界4カ国5拠点に設置された、対象企業の最先端テクノロジーの研究開発拠点。

取締役会

10名(女性取締役3名、外国人取締役3名、社外取締役6名を含む)で構成され、経営の意思決定および監督機能を担う。

監査役会

経営の透明性を高める目的で設置され、独立性の高い社外監査役が過半数を占める構成である。

監査役室

監査役の職務遂行を補助し、情報収集を支援するために設置された補助組織。

投融資委員会

新規の資金投下案件において、外部有識者を含むメンバーにより案件の可否を事前審議し取締役会へ報告する。

グループサステナビリティ委員会

Group CCuOが議長を務め、2030年までの長期ESG目標の策定・提案を行い、取締役会へ上申する。

引用文献

  1. 統合報告書|楽天グループ株式会社、202658日にアクセス、https://corp.rakuten.co.jp/investors/documents/annual.html
  2. 楽天モバイル、契約数が1,000万回線を突破|楽天グループ株式会社、202658日にアクセス、https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2025/1225_01.html
  3. Analyst white paper tackles truth behind Open RAN success - Rakuten Symphony、202658日にアクセス、https://symphony.rakuten.com/blog/analyst-white-paper-tackles-truth-behind-open-ran-success
  4. 2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)|楽天グループ株式会社、202658日にアクセス、https://corp.rakuten.co.jp/investors/assets/doc/documents/25Q4tanshin_J.pdf
  5. 楽天グループ株式会社2025年度通期および第4四半期決算ハイライトに関するお知らせ|楽天グループ株式会社、202658日にアクセス、https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2026/0212_01.html
  6. 2025年度の振り返り並びに2026年度事業戦略について|楽天グループ株式会社、202658日にアクセス、https://corp.rakuten.co.jp/investors/assets/doc/stock/agm_PPT_20260327.pdf
  7. Rakuten Announces Winners of Rakuten Technology Excellence Awards 2025、202658日にアクセス、https://global.rakuten.com/corp/news/update/2025/1110_01.html
  8. Rakuten Symphony Selected for METI Grant to Accelerate Open RAN and RIC Deployment in the Global South|Newsroom202658日にアクセス、https://symphony.rakuten.com/newsroom/rakuten-symphony-selected-for-meti-grant-to-accelerate-open-ran-and-ric-deployment-in-the-global-south
  9. 2025年度決算短信・説明会資料|楽天グループ株式会社、202658日にアクセス、https://corp.rakuten.co.jp/investors/documents/results/
  10. Rakuten Receives Customer Experience Innovation IT Award from Japan Institute of Information Technology's 43rd IT Awards、202658日にアクセス、https://global.rakuten.com/corp/news/update/2025/1208_01.html
  11. Open RAN in 2026: The Quiet Revolution Delivers on Strategic Imperatives、202658日にアクセス、https://symphony.rakuten.com/blog/open-ran-in-2026
  12. 責任あるAI|楽天グループ株式会社、202658日にアクセス、https://corp.rakuten.co.jp/sustainability/ResponsibleAI/
  13. 投資家情報|楽天グループ株式会社、202658日にアクセス、https://corp.rakuten.co.jp/investors/

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【本レポートについて】

本レポートは、公開情報をAI技術を活用して体系的に分析したものです。

情報の性質

  • 公開特許情報、企業発表等の公開データに基づく分析です
  • 2025年12月時点の情報に基づきます
  • 企業の非公開戦略や内部情報は含まれません
  • 分析の正確性を期していますが、完全性は保証いたしかねます

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