【要約】
「発明塾」塾長の楠浦です。
前回のコラム「知財戦略「七位一体」で儲かる仕組みとは?成功企業が実践する経営と知財の融合(1)」では、2024年9月に出版した拙著「Patent Information For Victory ~『知財』から、企業の“未来”を手に入れる!~」へのお声をもとに、「知財戦略」について、書籍の内容や過去セミナーでの僕の発言を紹介しました。
今回はその続きです。
Patent Information For Victory ~「知財」から、企業の“未来”を手に入れる!~(特設ページ)
https://www.techno-producer.com/patent-information-for-victory/
今回から読み始めた方のために、改めてお声をご紹介しておきます。
==お声、ここより
弊社でも知財戦略というワードは耳タコぐらいに一日に何度も飛び交っていますが、戦略って一体なんだろと思っていました。
p567に記載されている「アイデア」「発明」「知財」「技術」「人材」「組織」が七位一体となって中長期的に儲かる仕組みを考えることだと、理解しました。
それでもまだふわっとした理解ですが。==お声、ここまで
前回コラムの要約も、転記しておきますね。
【前回コラムの要約】
前回の続きですから、「4.」から始めます。
今思い出したのですが、企業内発明塾を開催した後に、「あんまり知財、知財、特許、特許、言わないでくれ」と、その企業のベテラン技術者の方に言われたことがあります。理由は「知財や特許だけで事業は語れないから」とのことでした。まぁ要するに、「お前、黙っとけ」ってことですね(笑)。
まだ45歳ぐらいの時だったかと思いますので、「若造」扱いだったのでしょうか。こういう「本音」が聞けるのが「若造」の良いところだと、僕はいつも思ってます。本音がわからないと、対処できないですからね(笑)。
そういう「本音」を、「外部の若造」としていやというほど聞かされた上での、僕の結論が以下なんですよね。それでは、本題へ。
「発明塾」では、情報分析、発明から事業仮説創出、新規事業の企画提案、特許出願、知財ポートフォリオの設計、資金獲得までを、必要に応じて一気通貫で支援しています。
これは、「企業内発明塾」でも「起業家向け発明塾」でも、基本的に同じです。
様々な企業様や起業家の要望で臨機応変にやっていきますので、参加していない人には共通性がないようにも見えるかもしれませんが、そうではない。やっていると毎回感じることがある。
その一つが「知財戦略は現場で育つ」ということ。最初に理屈ありきではなく、「どうやったら、このアイデアで本当に稼げるのか?」という、現場の「本音の」「生々しい」問いが起点なんですよね。具体的には「独占的普及」のデザインの話です。
僕はもともと、前職のナノテクスタートアップでの経験から、「技術とお金の交差点」でイノベーションが起き、事業が興ると言い続けてきました。知財戦略も、結局はこの話なんですよね。
上で挙げた、現場の「生々しい」「本音」の問いに答え続けた結果、「七位一体の知財戦略」に行きついたわけです。
発明塾での取り組みは、すべてが、「アイデア・発明・知財・技術・人材・組織・投資」をつなぐものだったんです。最初からそのつもりでやってたわけじゃない。でも、結果的にそうなっていた。
「技術とお金の交差点」に立つ。どんなに素晴らしい技術があっても、お金がなければ動かない。でも、それだけでは足りない。仲間がいなければ前に進まない。そうやって、「結果を出す」ために足りないものを貪欲に取り込んでいった結果、「七位一体」になったんですよね。
実践の集大成に、名前を付けたらたまたま、今は「7」だったというだけの話かもしれません。
知財戦略の「七位一体」が、実践の集大成であり最終形だとすると、その途中の状態もあるわけです。
つまり、企業というか、事業や研究・開発のステージによって、「7つ」のどれが重要か、どこから始めるか、は変わる。7つもあって大変だなぁと思うかもしれませんが、重心をどこに置くかは、だいたいの「型」があるわけです。
この考え方を、僕が事業立ち上げ、あるいはその支援を経験した、スタートアップや企業の新規事業に当てはめて、少し整理してみました。
僕はこれまで常に、「技術とお金の交差点にイノベーションは生まれる」と言い続けてきました。どれほど優れた技術でも、お金がなければ社会実装できない。そして、お金を動かす上で、知財戦略が重要になる。アイデアや発明、ビジネスモデルを知財権にして可視化することで、資金や仲間を募ることもできる。あるいはそもそも、「先行者の死角」を特許分析やIPランドスケープで見つけることも重要です。
ポイントはいずれも「まだ見えないものを、可視化する」「見落とされているものを可視化する」こと。知財戦略の肝は、ここではないかと僕は最近強く感じます。アイデアや発明という目に見えないもので、人や組織やお金を動かし、未来を実現する。そのレールを引くのが知財戦略だ、という感じですね。
僕が発明ファンド(Intellectual Ventures)やVCとやり取りをする中で、やっぱここが一番大事だなと感じたのは「この知財からどういう未来が見えるか」なんですよね。
皆さん「この技術はすごい」とか言うのですが、「すごい」って何か。それをどう見せるのか。
例えば、うまく書かれた特許には、実は「未来」が書かれていて、わかっている人は「あーそこか、ヤラレた」「それ使いたい」「実現したい」「一緒にやりましょう」「お金出します」になるんですよね。見えないものが見えるようになると、人は変わります。何も言わなくても、勝手に変わるんですよね。
知財は、技術や事業の未来価値を“見える化”し、価値を知らせ、人と組織とお金を動かすレバレッジツールなんです。未来へのレールを引くのが知財戦略、とは、そういうことです。僕はこれを今後、声を大にして言っていきたいですね。
知財戦略は、知財部が考えるもの。そう思っている方は多いと思います。
でも、実際には「知財戦略はみんなのもの」なんですよね。だから「誰が何のために考える/実践するのか」が重要だと、僕は考えています。「主語」「目的」がない戦略は、ありえない。そして、主語と目的は、皆さんが決めるものです。
例えば僕は、以下のように考えています。
これらは、ほんの一例です。「技術者にとって」だけでも、他にいくつもの定義というか、意味づけがあり得るでしょう。企業にとって知財戦略は、知をベースにした「儲かる仕組み」の設計であり、持続的な価値を生み出す仕組みづくりそのもの。詳細は、前著「新規事業を量産する知財戦略」に書いています。
具体的には、IPランドスケープなどの情報分析と先読み知財の創出について、書いています。
ただ、これらも一部でしかありません。人や組織にどう働きかけていくか、などは、企業内発明塾や月額顧問サービスでしかお話ししていません。
僕はこれまで、技術者として、新規事業担当者として、経営者として、支援者として、数多くの発明や技術・新規事業開発にかかわってきました。アイデアや発明の具現化に向けて、技術、仲間、お金を動かすのが仕事だったわけです。そして、それらが動き出す瞬間には、必ず「語れる知財」「酔える知財戦略」(笑)があった。「これならいける!」「これで行こうぜ!」というやつです。「確信犯」の話ですね。
これからの時代、知財戦略は誰にとっても「避けては通れない思考の武器」「未来を指し示す航海図」になると確信しています。ここまで紹介した「七位一体」の視点が、皆さんの発明・技術開発・新規事業・経営の次のアクションに役立てば、これほどうれしいことはありません。
語りたいことはまだまだありますが、今回はいったんこれで筆をおきます。
今回もご一読いただき、ありがとうございました!
ぜひ前回のコラム(1)も読み直してください。
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楠浦 拝
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