本記事は、当社が開催したクアルコムに学ぶ「知財戦略」の基礎セミナーのエッセンスをお届けするものです。
セミナーの重要な知見を、どなたでも気軽に学べる形でまとめています。
特許って取れば安心だと思っていませんか?
実は多くの企業が、せっかく取得した特許を活かしきれずにいるんです。
時間をかけて特許を取得したのに、競合他社がすぐに回避策を見つけてしまう。結局ライセンス料を払うより、調査費用の方が高くついてしまう。本当に意味のある特許戦略って、一体何なのでしょうか?
実は、1件の特許だけでは十分な効果を得るのが難しいケースが多いんです。
では、どうすれば特許を効果的な武器にできるのでしょうか?
日立化成の戦略とGEが実践した事例が、その答えを教えてくれます。
1件の特許が5件のセット特許に変わるだけで、競合他社との力関係が劇的に変わる。そんな戦略的な特許ポートフォリオの組み立て方を、具体的な事例とともにお伝えします。
5件セットの戦略的特許ポートフォリオにより、競合他社の回避を困難にし、市場での圧倒的優位を築く方法を解説します。
本記事では以下の内容を解説します。
日立化成とGEの成功事例から学ぶ、効果的な特許戦略の実践手法を詳しく見ていきましょう。
「1件じゃなかなか勝負ができない」
これは多くの知財関係者から聞かれる声です。でも、なぜ1件では限界があるのでしょうか?
楠浦のもとには「特許は何件ぐらい取れば効果的なのか?」という質問がよく寄せられるそうです。「なかなか何件だったら足りますとは僕も責任もって言えない」と答えているそうですが、参考事例として日立化成の考え方があります。
楠浦が実際に関係者から聞いた話では、「特許の無効資料調査(特許が無効になる可能性がある資料を見つける調査)には平気で数100万円もかかります。世界中の特許文献を調べる必要があるためです。それなら最初からライセンス料を払った方がマシという話になりがち」とのこと。
つまり、1件だけなら相手企業は「この1件を無効化すれば済む」と考えがちですが、5件のセットになった特許があると、無効化調査のコストが膨大になるため諦める可能性が高くなる。これがセット特許の威力なんです。
ここで驚くべき実例をご紹介しましょう!
風力発電業界で起きた事例です。GEが三菱重工に対して5件ほどの特許で特許侵害訴訟を起こしました。
楠浦の分析によるとその中には「結構えげつない特許で、もう絶対回避できないだろう」という強力な特許も含まれていました。
結果はどうなったか?楠浦は「和解って書いてあるんですけど、事実上撤退というふうになっています」と説明しています。アメリカ市場に対して「日本の企業が風力発電業界に参入できる余地はもうない」という状況をGEが作り出したのです。
楠浦はこの事例について「5件ぐらいの、これは使えるという特許を持っていると、かなり勝率が上がるということが示されて、僕はびっくりしました」と語っています。
では、実際にどうやって5件のセット特許を組み立てるのでしょうか?
この戦略、日本企業でも日立化成が巧みに実践しています。その手法を見てみましょう。
日立化成は2006年のテクニカルレポートで「守りから攻めへ」という方針を明確にしました。当時の材料メーカーとしては珍しい取り組みでした。
日立化成の5FP活動(※Fighting Patents:戦える特許を5件程度確保する活動)のポイントは、幅広いカバレッジです。楠浦の分析では「フィルムという製品だけでなく、その製造工程、さらにはお客さんがそのフィルムを使って電子部品を作る応用技術まで。この3つの段階すべてを研究開発し、特許になる発明を抽出して権利化します」
つまり、材料そのものから顧客の実装工程まで、川上から川下まで一気通貫でカバーしているんです!
しかし「なんとなく5件持っているというのは、多分意味がない」と楠浦が指摘するように、ただ数を集めればいいわけではありません。
重要なのは「訴訟になりそうだってなったときに、5件の特許を武器として提示できれば強い」状態を作ること。日立化成はダイボンディングフィルム(半導体チップを基板に接着するフィルム)分野で約500件の特許を取得。この特許ポートフォリオにより競合他社の参入を阻み、世界シェア70%という圧倒的なポジションを築きました。楠浦は「技術力もさることながら、知財戦略も貢献している」と分析しています。
さらに楠浦が注目したのは、日立化成がダイボンディング装置という装置の特許まで取得していた点。「これはなかなかのものという気がします」と評価するほど、徹底した取り組みでした。
セット特許戦略を成功させるには、単なる数の確保以上の戦略的思考が必要です。
まず重要なのは段階的なアプローチ。いきなり訴訟に持ち込むのではなく、特許ポートフォリオを背景にした交渉から始めることが効果的です。日立化成のように材料から実装まで幅広くカバーすることで、相手に回避の余地を与えない環境を作ることができます。
次に継続的な権利強化。技術の進歩とともに特許ポートフォリオも進化させる必要があります。楠浦が分析した日立化成の事例では、単なる材料特許ではなく「お客さんが社内でやるプロセスに関しても、自分で特許を持っていますよ」という状態を作っていました。
最後に明確な目標設定。市場シェア拡大なのか、競合排除なのか、ライセンス収入なのか。目的によってポートフォリオの組み立て方も変わってきます。
1件の特許では相手に突破の余地が大きくなりますが、5件のセット特許があれば状況は一変します!
日立化成の川上から川下までのカバー戦略と、GEの回避不可能な特許を含む組み立て方。この2つの事例が示すように、戦略的な特許ポートフォリオの威力は絶大です。「なんとなく5件」ではなく「訴訟になったときに5件きちっと提示できる」状態を目指すこと。これがセット特許戦略の本質なのです。
あなたの会社でも、単発の特許出願から戦略的なポートフォリオ構築への転換を検討してみませんか?競合他社との力関係を根本から変える、そんな知財戦略の第一歩になるはずです。
※本記事はAI技術を活用して作成しています。内容の正確性に努めておりますが、表現や解釈に独自性がある場合がございます。
本記事で紹介した知財戦略論は、クアルコムやマイクロソフトの成功事例を分析した動画セミナー「優れた知財戦略で世界を変えたクアルコムに学ぶ『知財戦略』の基礎」で詳しく解説されています。セット特許の威力だけでなく、オープンクローズ戦略や「ビジネスエコシステム」構築の具体的手法まで学べる内容です。
受講者からは「直近で新規テーマを提案する機会があるので、参考にしたい」といった声が寄せられています。
知財戦略の理論的背景を体系的に学びたい方、自社での戦略的知財活動を本格化させたい方におすすめです。
▼詳細・お申込みはこちら
優れた知財戦略で世界を変えたクアルコムに学ぶ「知財戦略」の基礎
2025.07.11 パラメーター特許の謎を解け!複雑な数式に隠された戦略の解読実例
2025.07.02 競合企業の狙いを見抜く!特許戦略を分割出願から読む技術
2025.06.18 部品メーカーが業界の中心になる:リファレンスデザイン戦略
2025.06.13 特許ポートフォリオ戦略で市場を制する!5件セットで圧倒的優位を築く方法
2025.06.11 10年後を見据えた先読み発明戦略をマイクロソフトに学ぶ
2025.06.02 材料メーカー日立化成が世界シェア70%を獲得した「川下特許戦略」
2025.05.22 イネーブラー戦略とは?クアルコムに学ぶ知財を活用した市場創造法
2025.05.02 情報過多時代の思考法「極端思考」:楠浦流・効率的な情報探索テクニック
2025.04.23 情報収集の罠から脱出する「15分ルール」―楠浦式仮説検索法
2025.04.11 全固体電池が変える2030年の自動車産業地図 - トヨタと出光の戦略から読み解く業界再編
2025.04.03 技術経営の核心―特許情報から見る「筋の良い」研究開発テーマの発掘法
2025.03.27 研究開発のテーマが見つからない?ロジックツリーで効率的に新テーマを創出する方法
2025.03.26 花王のREBORN戦略に見る未来―"大量生産・大量消費"からの脱却とデータ活用の新時代
2025.03.21 花王に学ぶ「パラメーター特許×分割出願」戦略 - 競合他社を圧倒する知財網の構築法
2025.03.18 自動車産業の覇権争いが始まった - ソフトウェア定義型モビリティ時代の事業戦略
2025.03.14 特許情報から読み解く自動車部品大手の生存戦略〜デンソー・ボッシュに学ぶ事業転換の実例
2025.03.11 トヨタと出光の全固体電池戦略から学ぶ技術革新と事業転換の成功モデル
2025.03.10 富士フイルムと出光興産に学ぶ、技術転用による新規事業成功の秘訣
2025.03.06 技術マーケティングの真髄―特許情報を活用した新規事業開発の実践手法
ここでしか読めない発明塾のノウハウの一部や最新情報を、無料で週2〜3回配信しております。
・あの会社はどうして不況にも強いのか?
・今、注目すべき狙い目の技術情報
・アイデア・発明を、「スジの良い」企画に仕上げる方法
・急成長企業のビジネスモデルと知財戦略