本記事は、当社が開催した電動化・自動運転普及に向けてデンソー・ボッシュはどう事業を変革するか?セミナーのエッセンスをお届けするものです。セミナーの重要な知見を、どなたでも気軽に学べる形でまとめています。
みなさん、こんな経験はありませんか?
「自社の将来の事業戦略、本当にこれで良いのだろうか」と不安になる。
「競合他社は一体どんな戦略を描いているのか」と気になる。
「電動化や自動運転の波に乗り遅れないか」とヒヤヒヤする。
そんな悩みを持つビジネスパーソンに朗報です!実は、特許情報という"宝の山"を分析することで、大手企業の真の戦略が見えてくるんです。弊社代表取締役の楠浦が、デンソーとボッシュという自動車部品業界の巨人たちの事業転換戦略を特許情報から読み解いた最新分析をご紹介します。
あなたの会社は利益を出していますか?でも、それだけでは不十分なんです!
楠浦は「デンソーさんはROIC(投下資本利益率)が資本コストを上回るところまで来た」と指摘しています。これは何を意味するのでしょう? ROICとは、企業が投資した資本からどれだけ効率よく利益を生み出せているかを示す指標です。この数値が資本コストを下回っていると、「経済的価値を破壊している」と投資家から見なされてしまうのです。
「デンソーさんが越えられたということで、今回取り上げられるのは非常に嬉しい」と楠浦。デンソーは今、大きな転換点を迎えているのです!
現状、デンソーの売上の95%は自動車関連で、そのうち半分がトヨタ向け。内燃機関(ガソリンエンジンなど)への依存度も高いままです。しかし「内燃機関はすぐにはなくならないけど、先手先手でやっていく」という社長のインタビューを引用しながら、楠浦は今後の動きを解説します。
「事業売却を進めていって、2030年以降は新価値創造でさらなる飛躍へ」というデンソーの計画。実際、内燃機関関連の事業は次々と売却され、「最大で1兆円程度の成長投資枠がある」と楠浦はみています。この大胆な事業転換が、ROICの改善につながっているのですね!
「レガシーな事業をどうしていくか」という課題に対し、楠浦は興味深い洞察を示します。「自分達として儲からないけど、どこかに集約すれば儲かるってのはよくある話」と。つまり、各社がバラバラに行うと収益性の低い内燃機関関連事業も、業界内で一社に集約すれば規模の経済が働いて利益が出る可能性があるのです。
デンソーはこの考え方に基づき、自社にとって将来性の低い事業を思い切って売却。そして「自分達は違うとこで儲ける」という明確な方針を打ち出していると考えられます。最近は「ベストオーナー」という考え方のもとに、事業売却を進める企業が増えており、レゾナックやJSRなどが成功事例としてあげられますね。
「デンソーといえば、エアコンを作ってたよね」というイメージをお持ちではありませんか?
それは古い認識かもしれません!楠浦が分析した特許データによると、デンソーが本気で注力しているのは「安全安心・自動運転技術」なんです。米国特許の分類を見ると、運転支援や衝突防止の技術に関する特許が目立ちます。
「安全安心、自動車の安全安心といえばデンソー」—これが彼らの目指すポジションなのでしょう。楠浦は「かなり勝ち目がある」と評価しています。なぜでしょうか?
それは「安全安心は、それなりの企業に任せたいと誰もが思うから」です。「ぽっと出の企業に任せられない」という現実。自動車は命を預ける乗り物ですから、安全技術を提供する企業の信頼性は何よりも重要です。
特に注目すべきは、車載ソフトウェアに関する取り組み。従来の自動車は「ハードウェア」として設計されてきましたが、今後は「ソフトウェア・ディファインド・ビークル」(SDV:ソフトウェアで定義される車)へと進化します。
「ソフトウェアの比重が上がれば上がるほど、認証認定をどう確保していくのかが難しくなる」と楠浦は指摘します。例えば、OTA(Over The Air:無線通信でソフトウェアを更新する技術)でソフトウェアが更新されたら、それは「前と同じ車なのか?」という問題が生じるのです。
「ソフトウェア入れ替えたらガラッと違う車になる可能性があって、それって前と同じ車として認定された状態を誰がどう保証するの?」という疑問。「そこまで責任持てる企業どこにあるの?」という視点で考えると、デンソーの戦略的優位性が見えてきます。
実は、デンソーは2003年頃から衝突防止・運転支援技術を開発してきた実績があるのです!「衝突時の被害を低減するとか、衝突した後の対応」などの技術を20年以上蓄積してきた企業だからこそ、自動運転時代の安全を担保できるのです。
さらに、センサー技術にも積極投資。特にLIDAR(レーザー光を使って物体までの距離を測定する技術)開発にも力を入れ、「EVA」というアメリカのスタートアップと組んで次世代LIDARを開発中です。
「コストダウン」も視野に入れ、チップをワンチップ化する取り組みも進行中。特許データから読み取れるデンソーの方向性は、「安全安心はデンソーに任せてください」という明確なポジショニングなのです。
デンソーとは対照的に、ボッシュはどんな戦略を描いているのでしょうか?
まず規模感が違います。楠浦によると「ボッシュは約14兆円(約83億ユーロ)、デンソーは6.4兆円」と、ボッシュの方が2倍以上の規模なのです。しかも、ボッシュの自動車関連事業は全体の約6割。残りの4割は自動車以外の事業なのです!
「ビル管理とかスマートホームとか。工具は有名ですよね」と楠浦が解説するように、ボッシュは多角化が進んでいます。そしてその多角化戦略の中心にあるのが「AI」と「IoT」なのです。
なんと特許データを分析すると、ボッシュのAI関連特許は2019年から2020年にかけて「突然50件から200件に」急増しています!「何かやらないとできない」と楠浦は指摘します。つまり、こんなに急激に特許出願が増えるのは、会社として本気でAIに取り組む決断をしたからこそだというわけです。
さらに興味深いのは、ボッシュのLIDAR関連の特許出願が減少傾向にあること。「LIDARからは撤退したい」という戦略的判断が見て取れます。代わりに注力しているのが「カメラを使った画像認識」と「AI技術」の組み合わせなのです。
「NVIDIA」「マイクロソフト」との提携や、シリコンバレーへの拠点開設など、AI技術獲得に向けた動きも活発です。特に生成AIの活用に関しては、「道路の真ん中にボールが転がっていたら、子供が飛び出すかもしれない」といったシナリオを生成させ、それに対応するための技術開発に取り組んでいるようです。
楠浦は「生成AIブーム、バブルという声もあるが、車で使われるとなると話は別」と指摘。「人間とやり取りするインターフェースとしては、生成AI・大規模言語モデルは非常に優れている」と評価しています。
「空間認識技術にかなり力を入れている」とのこと。2022年には高解像度のマップ技術を持つドイツ企業を買収するなど、3次元マッピング技術の獲得にも動いているのです。
ボッシュはどうやって収益を上げていくのでしょうか?その戦略も特許情報から垣間見えます。
楠浦によると、ボッシュは「IoT機器を管理するクラウドプラットフォームを作っている」ところに特徴があります。そしてコネクテッドカー(インターネットに常時接続する車)は、そのIoTプラットフォームの「一部」として位置づけられているのです。
「自動車は、IoT機器の中でもヘビーなものになってくる」と楠浦は指摘します。単に数が多いだけでなく、「安全と命を預かる」という意味で、事業機会としては「比重としては大きい」のです。
2024年にはモビリティ関連の組織再編も行い、電動モビリティや自動運転関連を「完全に切り分け」て強化する動きも見られます。
半導体戦略も興味深いですね。パワー半導体(電力制御用の半導体)については、デンソーが特許出願で上回っている一方、ボッシュはインフィニオンという半導体メーカーと提携するという違いがあります。
「ボッシュは半導体の特許はあまり出していない」ため、「インフィニオンと組む」という戦略的判断をしているのです。楠浦は、これを「ハードウェアに関しては他社に頼る...他社と組んでとにかく安定調達を目指す」「ソフトウェア側で勝負するオープンクローズ戦略」だと分析しています。
さらに、バッテリー関連でも独自の動きが。「バッテリーのマネジメント、要するに今バッテリーがどれぐらいどういうふうに使われていて、どれぐらい劣化しているか」をクラウド上で管理するシステムの開発に力を入れています。
「バッテリーのライフサイクルに沿ったAIとかソフトウェアのビジネス」を展開する方針だという楠浦の分析は、まさにボッシュの未来戦略を示唆しています。
デンソーとボッシュ、二社の戦略を比較すると、対照的な特徴が浮かび上がります。
デンソーは「安全安心・自動運転技術」に特化し、その領域でのNo.1ポジションを目指しています。「衝突防止関連でデンソーは世界トップレベル」であり、「安全安心はデンソーに任せてください」という差別化戦略が明確です。
一方、ボッシュは「AI・IoT技術」を軸に、自動車だけでなく多様な領域へと事業を拡大。「画像センサーを前提にした他分野への事業展開も含めて」戦略を構築しているのです。
楠浦は最後に、将来のモビリティ社会への期待を熱く語ります。「自動車事故が0になってないですよね。でも0にしたいでしょう」「自動車事故を僕も0にしたいなと思う」という言葉には、安全技術の進化への強い期待が込められています。
「ハードウェアにこだわって、ソフトウェアの互換性がなくて、ソフトウェアも開発遅れるみたいなことはやめて欲しい」—この言葉には、自動車業界の未来への提言が込められています。
特許情報を分析することで見えてきた両社の戦略。あなたの会社でも、競合の特許情報を分析することで、業界の未来や自社の進むべき道が見えてくるかもしれません。明日からのビジネス戦略に、ぜひ今回の分析視点を活かしてみてくださいね!
※本記事はAI技術を活用して作成しています。内容の正確性に努めておりますが、表現や解釈に独自性がある場合がございます。
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