本記事は、当社が開催した花王のヘルスケア食品知財&新事業戦略セミナーのエッセンスをお届けするものです。セミナーの重要な知見を、どなたでも気軽に学べる形でまとめています。
みなさん、こんな状況に陥っていませんか?
自社製品の価格競争が厳しくなり、オンラインプラットフォームでは値引き圧力が高まる。毎年のように新製品を出しても、利益率が下がる一方。そして何より、「このままでは未来がない」という漠然とした不安が頭から離れない…。
こんな悩みを抱える製造業に、一筋の光明を示す事例があります。それが花王の新たな経営戦略です!花王は「REBORN(生まれ変わる)」というキーワードを掲げて、大きな変革に挑んでいます。
弊社代表取締役の楠浦がセミナー「花王のヘルスケア」で解説した内容をもとに、製造業が生き残るための新たな道筋をご紹介します。
かつて特許戦略で業界を震撼させた花王が、今また大胆な変革を進めています。
「大量消費、大量生産から決別します」
これは花王が目指す方向性を示す言葉です。楠浦はこの転換について次のように解説しています。
「花王は『REBORN』と『ANOTHER』という言葉を使っていて、これは『生まれ変わって、別の会社を作る』という意味ですね。これまでの花王とは全然違う会社になるということですね。社員の人もどこまで分かってるか知らないですけどね」
つまり、花王は従来の製造業の枠組みを超えて、全く新しいビジネスモデルに変革しようとしているのです。
「アマゾンに安く買い叩かれる、そういうのではもうなかなか生き残れないぞ、みたいなことも書かれていますね」
これは楠浦が花王の資料や記事から読み取った内容です。花王の危機感が伝わってきますね。これは花王に限らず、多くの製造業が直面している現実ではないでしょうか?
従来の製造業モデルは「安く、早く、大量に」という原則に基づいていました。しかし、このモデルではプラットフォーマーの下請け化は避けられません。花王はこの現実から脱却するために、大胆な方向転換を決断したのです。
楠浦は「もっと付加価値をきちんと取れるところがどこかっていうのを常に探している」という花王の姿勢に注目します。これこそが、多くの製造業が目指すべき方向性ではないでしょうか。
花王が新たに注力しているのが「仮想人体」構想です。これは人間の体のデジタルツイン(現実をデジタル空間に再現したもの)を作り、そのデータを活用したヘルスケアサービスを展開するという壮大な計画です。
「個人情報が特定されないように匿名化されたデータを使って、パーソナライズドヘルスケアやメディカル領域に進出していく」
と楠浦は花王の戦略を解説しています。
花王がなぜこのような方向に進むのか?その答えは、実は花王が長年培ってきた「見えない強み」にありました。楠浦はこう指摘します。
「花王のような化学・日用品メーカーは、実は計測技術や分析技術に非常に強みを持っているんです。これまではその技術が表に出ていませんでしたが、今後はこれが事業の中核になっていくでしょう」
花王は医療機器開発支援までできる高度な計測技術を持っていたのです。これまでは注目されていなかったこの技術が、今やビジネスの主役に躍り出ようとしています!
「今まで裏方だったんですよ。モニタリング測定技術って。でも、見えないものが見えるっていうことが強みになるってことがわかり、そこを前面に押し出してきた」
つまり花王は「モノを売る会社」から「価値を提供する会社」へと大きく舵を切っているのです!
花王の大胆な戦略転換から、製造業企業は何を学べるのでしょうか?楠浦は花王の事例から、これからの製造業が進むべき方向性を示しています。
「単に材料を販売するだけでなく、その材料を製品に応用する際の課題も自分たちで解決して、技術やノウハウとして提供しています」
これは花王がヘルスケア食品事業で取っている戦略です。楠浦はこれを「イネーブラー」と呼んでいます。イネーブラーとは「可能にする人・もの」という意味で、顧客が成功するために必要な技術やノウハウをまとめて提供する存在です。
具体的には、花王は自社のポリフェノール素材を食品素材として他社に販売するだけでなく、その素材を使った商品開発のアドバイスまで行っているのです。これにより、単なる「素材販売」から「顧客の価値創造を支援するサービス」へと事業の性格が変わります。
楠浦は他業界の例としてクアルコム社を挙げ、「クアルコムはチップを売るだけでなく、そのチップを使った製品の設計図や部品リストまで提供しています。これによって顧客はすぐに製品開発を始められる」と説明しています。
つまり、単に製品を売るだけでなく、その製品を活用するための包括的なソリューションを提供する企業こそが、これからの時代に求められているのです。
花王の長谷部社長は、従来の事業戦略についてこう述べています。
「今までは優等生、なんとなく80点だった。(これからは)20点でも尖ったところ見つけて伸ばしていく」
これまでの多くの日本企業は、全般的に均等に良い成績を上げる「80点経営」を目指してきました。しかし花王の新しい考え方は違います。
「100万点取らないと意味ないですよ」
つまり、一つの分野で圧倒的な強みを持つことが重要だというのです。楠浦はこの考え方を「尖った部分を伸ばす」戦略と表現しています。
楠浦は「皆さんの会社の中にも、花王とは違う尖った強みがあるはずです。それを見つけて100万点レベルまで育てることが大切です」と説明しています。
この言葉には深い意味があります。自社の「当たり前」と思っている技術や知識の中に、実は競争優位性の源泉が隠れているかもしれないのです。花王の場合、これまで「裏方」だった測定・分析技術が、新たなビジネスモデルの中核になろうとしています。
楠浦は花王の新しい方向性について、「これからは単に大量生産・大量販売するモデルから脱却し、個々の顧客に合わせた精密な(プレシジョン)サービスや製品を提供していくことが重要になる」と指摘しています。
これは大量生産による規模の経済を追求するのではなく、顧客一人ひとりの状況に合わせたパーソナライズされたソリューションを提供するビジネスモデルへの転換を意味しています。これこそが、多くの製造業が目指すべき未来の姿ではないでしょうか?
花王の事例から私たちが学べることは明確です。「モノを売る」から「価値を提供する」へ。「大量生産・大量消費」から「プレシジョンヘルスケア」のようなパーソナライズされた価値提供へ。そして何より、自社の「当たり前」の中に眠る価値を再発見し、それを「100万点」の強みに育てること。
楠浦は「これからは日本企業同士の小さな競争ではなく、もっと大きな視点で価値創造を考えていくべきです」と語っています。
今こそ製造業は大きな視点で自社の価値を再定義する時です!
※本記事はAI技術を活用して作成しています。内容の正確性に努めておりますが、表現や解釈に独自性がある場合がございます。
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