「発明塾」塾長の楠浦です。
今回はnote記事の紹介、および、補足です。
知財部が「知財を”設計”する部署」になるために(1)~知財戦略体系化 第6回 BCGダイヤモンド と 知財部門のジレンマ より
https://note.com/kusuura/n/n744d279fd783
それなりに「いいね!」を押していただいているので、良いかどうかは別にして、論点としてありえるのだと判断し、コラムでも紹介することにしました。
ただ、変に抜粋すると、偏った理解をされる可能性があるため、内容の詳細はお読みいただくとして、経緯や背景などを、少し補足しておきます。
この記事の内容
noteは、YouTube配信の内容の一部を抜粋し、AIにまとめさせたものです。
そもそも、このYouTube配信「知財戦略体系化」は、e-Patent 代表の野崎さんと僕、および、知財戦略実戦家の羽矢崎さんの3名で、最終的に書籍化することを目的に、始めています。
特に3名の役割分担を決めているわけではないですが、過去配信を振り返ると、野崎さんは書籍化を意識してまとめ役を適宜担当いただいており、羽矢崎さんは日々の知財活動での苦悩をベースに「理想的には現場はこうありたい」という話をしておられます。
僕は...適当に好きなこと言ってるだけですね(笑)。
それを皆さんは、「楠浦節」と呼んでおられます(笑)。
すでに6回が過ぎておりますが(笑)、これから面白くなるのだろうと思っています(笑)。
今までも十分面白かったのですが、第4回で「知財のジレンマ」というキーワードが出ました。
「これが何か」は今後の配信を聞いていただくとして、その前段階で僕が出したキーワードが「越境」です。
noteの前書きに書いているのですが、仕事というのは「何に責任を持つか」で定義されると、僕は考えています。
これは、僕の書籍にたびたび出てくる後輩が、経緯は忘れましたが、こう教えてくれたことがきっかけです。
「楠浦さんは、給料は労働(時間)の対価だと思っているようですが、それは根本的に間違っています、経営者という生き物を全く理解していません」
「経営者はすべての責任を負っています、だから、”責任を分担してくれた人に、その分だけお金を払う”という考え方です、だから、”私はこれに責任を持ちます”と言わないと、お金はもらえません」
まぁ、そうですね(笑)。
ホントそうです(笑)。
グウの音も出ないですね(笑)。
僕は、何の反論もなく、この意見を受け入れ、「あぁ、今まで、ホント何も考えてこなかったな」と、己の不勉強を深く反省しました(笑)。
でも、多くの方は、これでは納得しないかもしれませんね...
多くの方は、僕がなぜすんなりと後輩の意見を受け入れたのか、不思議に思われるかもしれません。
これには、僕のカワサキ時代の、設計としての仕事の進め方が、大きく影響していると思っています。
ちょうど僕が入社した1997年は、3次元CAD(3次元で図面を書いて設計するツール)の導入が製造業で進められているタイミングでした。
3次元CADは、単なるツールではなく、「設計という仕事のやり方」を根本的に変えるものだ、とされていました。
その一つが、「コンカレントエンジニアリング」だったんですよね。
コンカレントエンジニアリングとは、製品開発において設計、製造、調達などの各部門が連携し、複数の工程を同時並行で進めることで、開発期間の短縮、コスト削減、品質向上を目指す手法です。(Gemini による)
3次元化された情報が設計の初期段階からあれば、例えば製造部門から「これでは組み立てづらいからなんとかしてくれ」みたいな改善要求が、前倒しでもらえる。
だいたいこんなイメージです。
今でいう、「デジタルツイン」の話でしょうか。
ただ、実際には、設計初期には仕様が頻繁に変わるのと、そもそも設計データは部外秘の秘密情報(笑)なので、3次元CADを入れたから、「はい、明日からコンカレントです」とは行きません。
結局、設計者が現場に行って「こういう設計にしようと思うけど、どうなんやろ」と現場を観察したり、場合によっては、非公式に生産技術やサプライヤーの人に図面の一部を渡してコメントをもらう、みたいな作業になります。
これを、「一人(ひとり)コンカレントエンジニアリング」と呼びます(笑)。
僕が入社して間もなく、設計部の隣にある総務部の大先輩(Kさん)から、「楠浦くん、これからはコンカレントの時代だから、これまでのやり方にとらわれず、遠慮なく思い切りやってな」と言われました。
それをいいことに(笑)、たぶん従来はダメだっただろう情報交換を積極的にやりまくって、タイトな開発納期と少ない人数で、開発機種の設計をなんとかやり切りました。
上司と先輩の健康上の理由により、入社2年目で、エンジン全体のとりまとめを任されたので、結構大変でしたが、「設計者の仕事はここまで」みたいな変な枠を設けず、どんどん(製造)現場に出て意見を出して、また、意見をもらって、図面に前倒しで反映したので、何とかやり切れたと思っています。
「越境」とはそういうことです。
僕は、製造現場でウロウロしているところを現場の課長につかまって(笑)、「お前、ここで勝手に何してんねん」「上司を呼べ」と詰められたことは数知れず、、、(笑)。
ある時は、その場で上司に電話で連絡して、製造現場と交渉してもらったこともあります。
設計者は「製品のコスト、品質、スペック(仕様)に責任を持つ」のが仕事なので、こうならざるを得ないんですよね。
品質の8割は設計で決まる、とか言われてしまうと、「じゃあ、全部こっちでやるから、その分の予算と権限(と給与)をよこせ!」(笑)になりますね。
これです。
給与は、責任の対価なんですよね...
例えば、製造不具合が出た場合、製造現場の工程能力を上げるのは容易ではないので、ほぼ100%設計変更をして対応することになります。
どのみち設計が責任を取らされるので、早めに現場に行って(製造不具合の)芽を摘んでおくほうが、後々楽なのです。
コンカレントエンジニアリングについての、僕の理解はこれです。
後々、全員が楽になるために、どうするか。
品質とコストの話ですね(笑)。
この発想を、「知財」(必ずしも、イコール”知財部”ではない点に、ご注意ください)に当てはめるとどうなるか、が、第4回と第6回の配信で、僕がお伝えしたことです。
noteに、おおよそまとまっています。
例えば、特許出願や権利化の手続きは、職人的要素が多いながらも、特許というビジネスツールの「製造」工程だと僕は捉えています。
正確には、「現場で修正(リペア)しながら、製造している」状態です。
これは、仕事の性格上やむを得ないでしょうね。
ただ、生成AIが(ある程度)明細書を書いてくれる時代に、どうなるか。
中間処理の案を、AIが出してくれる時代にどうなるか。
未来永劫、同じようにやっていくのだろうか。
そういう話を、野崎さん・羽矢崎さんと、しています。
僕の疑問は、「知財の仕事で”設計”って、どうなっていて、だれが責任持ってるの?」です。
これだけです。
僕が、企業知財の現場に明るくないので、わかっていないだけかもしれません。
だれが責任を持つべきだ、みたいな議論はいったん置いておいて、今どうなってるのか、今後どうなっていくのか、それはなぜか、を知りたいということです。
誰か教えてくださると助かります(笑)。
羽矢崎さんが(たぶん)配信中に「耳が痛いですね...」とおっしゃっていますが、僕は「誰かを責めよう」とか「誰かのせいだ」みたいな議論をしたいわけではなく、「設計者」そして「経営者」から見たら、どう見えているかをお伝えしているだけです。
ずーっと疑問に思っていたとして、では、なぜ今問うのか。
これについては、やはり「生成AIのインパクトが今後出てきそうだから」ということになります。
1997年の川崎重工におけるオートバイのエンジン設計と、2025年の知財。
僕が感じる共通点は、「製造で何とかする」「後から何とかする」という世界から、「設計段階で品質を担保する」世界への移行が「可能に」なるのでは?という点です。
「やるべき」とか「しなければならない」とかではないんですよね。
別にコンカレントエンジニアリングも、やらないといけないからやってたわけではなく、「少ない人数で、高品質で高性能なバイクを、短納期で出荷する」ために、それがベストだと考えたからです。
製造が始まってから、製造現場から改善要望が山のように上がってきて、それに対応しながら「次の新機種の開発をする」なんて、悪夢ですよ(笑)。
最悪の場合、神戸港でコンテナを開けて、設計者が部品を交換する、ということもあり得るわけです。
実際、僕の周りでは当時、そういう状況が普通に起きていて「自分はやりたくないな、これ...」と思ったので、「越境してコンカレント」をやっていただけなんですよね。
越境して怒られても、僕は気にしませんでした。
後で製造不具合が出ても、製造部門は責任を取ってくれません(笑)。
設計が悪いから作りにくい/作れないのだ!だから、設計図を変えろ!と言ってくるのが目に見えているからです(笑)。
だれも責任を取ってくれませんので、自分で考えて、自己責任で、自分が正しいと思うことをやるだけです。
それで怒られたら、本望ですね(笑)。
生成AIが、明細書案をさっと書いてくれたら、何ができるか。
生成AIが、出願候補のアイデアを多数、瞬時に出してくれたら、何ができるか。
生成AIが、競合の特許ポートフォリオの未来を予想してくれたら、何ができるか。
3次元CADで製品の完成図が(関係者全員に)見せられたら、何ができるか。
(実際には、秘密情報管理の壁が厚すぎて、公式には見せられなかったけど(笑))
2次元の図面から3次元の物体を想像できるのは、ある種、特殊能力です。
特に、オートバイのエンジンのような複雑な形状と機構のシステムになると、設計した当事者(設計者)ですら、間違えます。
僕も過去、2回だけですが、最終設計図でミスをしています。
設計ミスではなく、明らかに意図していない図面(設計通りではない図面)になっていたのを、見逃したということです。
当時の部長も課長もそのミスをスルーしていますが、当然です。
設計者本人が気付かない図面のミスに、本人以外が数分で気づけるほど、エンジン設計の仕事は甘くありません(笑)。
ほぼ本人しか理解できないような複雑な構想用の図面(検討図)と照合して検証しないとわからないのですが、そんな時間は彼らにはありません。
3次元CADで提出していれば、いずれも避けられた、誰でも気づいたミスです。
そういうことなんですよね。
皆さんの想像力で、ぜひ議論を盛り上げていただければ。
Youtube配信へのご意見も、お待ちしております。
楠浦 拝
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