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AIが個人を成長させる時代 ~ 高速道路が引き出す個人の本質的価値、発明・知財・リーダーシップ

AIが個人を成長させる時代 ~ 高速道路が引き出す個人の本質的価値、発明・知財・リーダーシップ

TechnoProducer株式会社CEO/発明塾塾長 の 楠浦(くすうら) です。
今回は、弊社Youtubeの対談企画「塾長の部屋」から、一部を紹介します。

発明塾「塾長の部屋」【対談編】
https://www.youtube.com/playlist?list=PLj6Oy30BM9wFVG5lqZp_UO58LeYHBSjQS

こちらでは、知財や発明の業界に限らず、弊社あるいは僕個人としてご縁がある方をお呼びして、お話を伺っています。
近況報告を兼ねているので、僕と対談相手の方のざっくばらんな話も多分に含まれています。
その辺も楽しんでいただければと、毎月1名程度のペースで進めている企画です。
(ここ半年は、書籍を9月末に必ず出す、と決めてお休みにしていました)

その中から、Smart-IP株式会社 代表取締役兼CEO 湯浅竜 さんとの対談を取り上げます。

DXで「プロがプロの仕事に集中」できる時間を増やす(ゲスト:Smart-IP株式会社 代表取締役社長兼CEO(弁理士) 湯浅 竜 様)ー発明塾「塾長の部屋」【対談編】第13回
https://www.youtube.com/watch?v=RYYVdGOXpeQ

湯浅さんは、弊社の元メンバーでもあり、今回、近況交換も兼ねて、Smart-IP社の新製品とその開発状況などをお話しいただきました。

Smart-IP株式会社 代表取締役兼CEO 湯浅竜 さん
https://smart-ip.jp/about

その内容の一部をご紹介します。

「あらゆる知財業務をDXによりアップデート」する

これは、Smart-IP社のHPにある言葉です。
現在、「appia-engine」という特許明細書作成システムを開発、販売されています。
当日、詳細に説明いただいたのですが、「すべての業務をクラウドで完結させ、記録を残し、ナレッジを共有する」という思想で、作られています。

弊社では17年前からそうしているので、逆に、それ以外の環境で仕事をすることは想像がつかないのですが(笑)、明細書作成もいよいよそういう時代に入ってきた、ということです。
ワードで作ってメールで送って、コメント残してもらって、という時代ではないわけですね。
ローカル環境で仕事をしていると、工夫や改善が担当者間で共有されず、組織に蓄積されません

僕に言わせると、それは「会社で給料もらってやる”仕事”ではない」ということになります。
(厳しい言い方をすると、それは個人で趣味の範囲でやっておいて、ということです)
組織への「中長期」的な貢献度が、限定的ですからね。
時空を超えて、企業価値が向上するための活動を、組織のメンバー全員が行う
これが、企業組織のあるべき姿だ、と僕は考えています。

appia-engine は、まずは特許明細書の作成に特化して、「組織」を強くすることに貢献するものだ、というのが僕の理解です。

「AI」時代に、差はなくなるのか、広がるのか、あるいは、仕事がなくなるのか?

対談で湯浅さんは、「AIに仕事を奪われる、みたいなことを言う人がいるが、そういうディストピア的な世界は想像できない」と仰っています。
僕も同感です。
ちなみに、appia-engine には「生成AIによる明細書の作成」補助機能があり、請求項など比較的短い文章については、湯浅さんが普段の業務で使っていて、「全然使える」のだそうです。
今の生成AIの実力から考えると、そうだろうなと思います。

で、仕事がなくなるのかというと、ミクロには「減少するタスク」はあるでしょうが、「仕事がなくなる」という表現は適切ではないでしょうね。
僕はむしろ、その「減少するタスク」によって、仕事が進めやすくなって、「仕事のアウトプットに、これまで以上に個人差がつく」のだろうというイメージを持っています。

対談ではここで、「appia-engine」の名前の由来に少し触れて、論を進めています。
歴史好きの方はお察しの通り、ローマ帝国の「アッピア街道」から来ているんですね。
湯浅さんはローマ時代やギリシャ時代の歴史がお好きだということで、このネーミングになったそうです。

ちなみに僕は、ローマ史に関しては、ギボンの「ローマ帝国衰亡史」をお勧めしています。
本当に名著です。
ローマ帝国繁栄までの歴史が好きな方には向いていないかもしれませんが、「なぜ国や組織がダメになるのか」をじっくり学べるという点で、読破に値する本です。

脱線しました。

アッピア街道は、ローマ繁栄の肝になったとされ、広大なローマ帝国を支える「情報」「物流」のインフラだったんですね。
長い国境線や広大な国土で戦争が起きても、すぐに対処し統治できたのは、アッピア街道のおかげだ、ということです。
要するに、高速道路ですね。
木でできた車輪を持つ馬車を高速で走らせるのに適した、石畳の街道です。

「AI」は高速道路、KKDを含め、個人の「本当の価値」を引き出すインフラ

僕は対談で、「AIはインフラであり、高速道路だ」と思いますよ、とお話しています。
では、高速道路があれば、誰でも早く走れるのか
答えはNOです。
自信をもって断言できます。

僕は、大学時代から社会人5年目ぐらいにかけて、日本中をバイクツーリングで旅をして回りました。
当時の愛車は、カワサキ(川崎重工業)のZZR-1100という、カワサキのフラッグシップ(旗艦)モデルです。
時速300km/hが出るとされ、スピードメーターは320km/hまであります。
もちろん、当時世界最速のバイクです。

高速道路を活かすには、「早く安全に走れる車(バイク)」が、まずは必要です。
しかし、早く安全に走れる車があれば、誰でも乗れるのか、300km/h出せるか(※)、というと、これもNOですね。
まず、それなりの身体能力が必要でしょう。
そして、KKD(勘と経験と度胸)の世界になるでしょうね。
※ 日本では法規制の問題で300km/hは出せませんので、これ以降の議論は、速度規制のないドイツの「アウトバーン」を想定して進めます

仕事の話に置き換えると、例えば「AI」の普及によって、必ずしも顧客価値に直結しない業務や、会議という名の単なる情報共有、そのための書類作成などに追われていた部分がなくなり、本当に価値が出せる部分で差がつく、と僕は考えています。
対談中、僕はこれを高速道路と車、ドライバーのアナロジーを用いて「渋滞がなくなって、本来の性能、個々人の能力を100%出せる環境が整う」と、表現しています。
発明や知財、技術、新規事業の領域は、「最後は人」ですので、個々人が能力を100%出せる環境は、極めて重要ですよね。
そしておそらく、高度な身体能力やKKDを含む「暗黙知」の領域の話が、議論の中心になります。

弊社が、すべてをクラウド化しているのも、同じ考え方です。
AIもクラウドも、結局は情報やノウハウ、ナレッジ(知識)の共有・活用ツールなんですよね。
仕事ができる人ほど、結果として情報も持ってますし、ノウハウもどんどん蓄積される。
それを共有するのに「必要以上の」時間を使うのは、もったいない
(でも、そういう人に情報とノウハウを共有してもらわないと、組織は強くならないような気がする、では、どうするの?という問いですね、弊社は17年前から明確にそこに答えを持って、始めています)

要するに、300km/h(日本の状況に合わせると100km/h)を出せる実力があっても、渋滞してたら意味がないわけです。
意味がないだけではなくて、顕著な「害」があります
そのうち、スピードを出す気も無くなり、スピードを出すノウハウや身体能力が失われます。
アウトバーンで車が鍛えられ、ドライバーも鍛えられる。
だから、車メーカー、バイクメーカーは、こぞってドイツでテストをする。
そういうことです。

あくまでもこれは、たとえ話であって、アナロジーです。
このアナロジーが正しいかどうか、皆さんのご意見をお待ちしております。

「発明塾」での、情報分析、発明、知財開発、新規事業企画の指導も、基本的にこの「高速道路」の使いこなし方を身につけてもらう、ことが根底にあります。
これができるかできないかで、その後のスキルアップ、キャリアアップ、リーダーとしての成長度合いが、劇的に変わってくる
これが、湯浅さんを含む弊社OBOGと、発明塾OBOGを見ていて、わかっているんですよね。
高速道路をフル活用して、持てる能力を100%出せるか、出した経験があるか、が大事なんです。
「雑務」やら「会議」やらに追われて、四六時中「渋滞」につかまっていては、個人のポテンシャルは活かせないし、むしろそのまま錆びついて、能力が下がってしまう。
組織としても、個人としても、非常に不幸な状態になりますね。

ちなみに余談ですが、「雑務」「渋滞」「不純物」を「極限まで」取り除くことで、予想以上の性能(結果)が出ることを、僕は度々経験しています。

例えば、前職のナノテクスタートアップでは、「分子量分布」をきわめてシャープにすることで、「これまでにない、ナノレベルの成形性能を持つ樹脂」の開発に成功しています。
分子量分布をシャープにする、というのは、含まれるポリマー(高分子)の分子量のばらつきをなくす、分布を狭くする、ということです。
正確には、分子量分布をシャープにしたものを2つ混ぜるのですが、専門的すぎるので割愛します。
(僕が発明者になって特許が出ていますので、知りたい方は、特許をご覧ください)

ここでは、精密重合法という「インフラ」技術が、ナノインプリントの常識を変えたんですよね。
分子量分布をシャープにする、というのは、要するに、「(欲しくない)邪魔な分子量を持つポリマーを排除する」のと同じです。

理想は、すべてのポリマーが全く同じ分子量を持つ樹脂を作りたい。
だから、特定の分子量を持つ以外のポリマーは排除したい。
でも実際には、分けるのが煩雑すぎて現実的ではない。
だから、重合段階でやってしまうんですよね。
化学の面白さ、すごさを実感した瞬間でした。

何の話でしたっけ?(笑)

 

楠浦 拝

 

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