「発明塾」塾長の楠浦です。
さて、今回は「動機づけ面接(1)」という動画を紹介するシリーズの最終回です。
ここまでのまとめと、参考文献の紹介になります。
少し時間が空いてしまいましたが、動機づけ面接は、個人としても仕事でも有効な手法であり考え方なので、ぜひ活用くださるとうれしいです。
「個」と「組織」を変える動機づけ面接(1)~強み(動機)を育て、行動変容へ~
https://www.youtube.com/watch?v=Qcake2grulU
動機づけ面接について情報発信するようになってから、「動機づけ面接」って、要するに何なの?と、よく聞かれます。
コラムでは「変わりたい」を導くための動機づけ面接(MI)としていますが、ちょっと回りくどいので、お話しする時は端的に「変わりたい気持ちを育てる方法」ですよ、としています。
「やる気のスイッチ」みたいな表現がありますが、動機づけ面接の理論によると、「スイッチ」があるわけではなく「育てていくもの」なんですよね。
動機づけ面接(MI:Motivational Interview)は、人が自らの力で変わろうとする気持ち、ある種の「内発的な動機」を引き出し、変化への意欲を育む方法です。
もともと依存症治療の現場で効果が実証された手法なので、非常にタフな現場でも通用する、実践的な手法だ、ということが特徴です。
変わる、とか、行動を変える、というと「考え方を変える」という手法があります。
その一つに、医療の世界では、「認知行動療法」と呼ばれるものがあります。
例えば、「学校で先生に怒られた」という事実を「嫌われてる」と捉えると落ち込むけれど、「気にかけてくれてるんだ」と思えば励まされる、みたいな感じで、「考え方を変えましょう」とするものは、よくありますね。
動機づけ面接では、考え方を変えるのではなく、個人の内発的な力、内発的な動機を引き出すことに焦点を当てます。
「内発的な動機」と言うと、これまでも内発的動機づけに関する取り組みはあるよね、と思う方もいるでしょう。
従来の内発的動機付けに関する取り組みは、個人の想いや経験などの内面に焦点を当てたものが多いのですが、それらは「自分探しの旅」に陥いりがちであったりして発散しやすく、現場のスピード感に合わないんですよね。
一方、動機づけ面接は医療現場で実績のある効率的な行動変容ツールとして確立されています。
また、特にグループ動機づけ面接のような、グループダイナミクスを用いる発展的な手法では、面接を提供する側の精神的な負担を減らし、限られた医療リソースの範囲で短時間で効果を上げられることが実証されています。
ちなみに僕(楠浦)は、グループ動機づけ面接シニアリーダーに認定されていますが、本当に非常に強力な手法だと感じています。
ここでは、動機づけ面接(MI)の具体的な手法と特徴について、重要なキーワードを紹介し解説しておきます。
① 両価性
一番重要なのが、この「両価性」という考え方です。
動機づけ面接では、人が「変わりたい」という気持ちと「今のままでいたい」という相反する気持ちに注目し、そこにある強みや資源、ちょっとした努力を活用することで、自発的な変化を促します。
この相反する気持ち、つまり、「変わりたいけど変わりたくない」が「両価性」ですね。
② 正したい反射
「正したい反射」という言葉は、ちょっと聞きなれない方が多いでしょうね。
動機づけ面接に限らず、相手に変化(行動変容)を求める場面では、相手の言葉に対して反射的に「それは違う」「こうすべきだ」と指摘したくなることが、よくありますね。
この「それは違う」と反射的に言ってしまうのが、「正したい反射」です。
これをいかに抑えるか、が重要なんですね。
③ チェンジトーク
「チェンジトーク」も、あまりなじみのない言葉でしょう。
チェンジトークとは、クライアント自身が「変わりたい」という気持ちを言葉にしたものです。
実はちょっとした発言の中に、そういう言葉が潜んでいるんですね。
この「変化を促す言葉(チェンジトーク)」を、うまく引き出し、拾い上げて育てていくことが動機づけ面接の鍵となります。
なんか「アイデアの育成」みたいですね(笑)。
④ 是認
「是認」とは、相手の考えや行動をまるごと認めることです。
僕は口癖が「えんちゃう」(まぁそれでいいのではないでしょうか、の関西弁)なのですが、一旦、すべて認め、受け入れるという姿勢が、動機づけ面接では重視されています。
やってみて日々実感するのですが、この姿勢が、いろんな点で「チェンジトークの発生、発見と育成」につながっていくんですよね。
相手も変わるし、自分の観察眼も変わります。
人は、自分自身が使う言葉で変わりますからね。
動機づけ面接は、通常はカウンセラーや医療従事者などが1対1、または1対複数(6-10名程度)で行いますが、手法をある程度マスターすれば、個人で自分自身に対して行うことが可能だと僕は感じています。
自問自答形式で行うもので、僕は「セルフMI」と呼んでいます。
また、発明塾の手法との共通点が非常に多いため、「新規事業」「発明」「知財」「マーケティング」においても、高い効果を持つと僕は考えています。
特に、「強みを活かす」「育てる」という考え方は、「発明塾」の考え方そのもので、親和性が高いと日々の実践から感じています。
また、外部から正解を押し付けるのではなく、その人なりの考え方で結果的に変われば良い、結果が出ればよい、というアプローチも、共通点がありますね。
最後に、参考文献を紹介しておきます。発展的な内容を要望される方のために、僕が認定シニアリーダーになっている「グループ動機づけ面接」に関するものも入れておきます。
従来の動機づけ面接と、手法や考え方において相反する部分があり、使い分けにはかなりの慣れが必要な点に、ご注意ください。
① 「動機づけ面接〈第3版〉」ウイリアム・R・ミラー (著), ステファン・ロルニック (著)
動機づけ面接の開発者の著書です。上下巻あるため、最初に読むことはお勧めしませんが、大元はここだ、ということで最初にあげておきます。しっかり学びたい方は、必ずお読みください。
②「医療スタッフのための 動機づけ面接2 糖尿病などの生活習慣病におけるMI実践」北田 雅子 (著), 村田 千里 (著)
医療スタッフのための、とありますが、非常に平易で分かりやすく、生活習慣病のケースがありますので、多くの方にとって日常生活での利用まで含め、イメージしやすくなっています。最初の一冊におすすめです。
③「回復への意欲を引き出す! 高める! グループ動機づけ面接」磯村 毅 (著), 関口慎治 (著)
グループ動機づけ面接の第一人者である磯村先生の著書です。グループ動機づけ面接は、その場で一瞬で起きるグループの動き、力学を利用する方法なので、書籍などで学ぶのは非常に難しいのですが、本書はその概要をよくまとめてくださっています。
楠浦 拝
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