本記事は、当社が開催したクアルコムに学ぶ「知財戦略」の基礎セミナーのエッセンスをお届けするものです。
セミナーの重要な知見を、どなたでも気軽に学べる形でまとめています。
あなたは特許というと「競合他社を排除するためのもの」だと思っていませんか?
自社の技術を守るための盾として使うもの?
それとも他社との交渉カードとして使うもの?
実は特許には、もっと積極的な使い方があるんです。適切にライセンスすることで市場全体を拡大し、自社の収益を最大化する戦略があります。その名も「イネーブラー戦略」。
今回はこの戦略について、クアルコムの事例をもとに解説します!
本記事では、クアルコムの事例を通じて「イネーブラー戦略」という特許活用法をご紹介します。この戦略は、特許を市場創造の積極的なツールとして活用する革新的なアプローチです。
本記事では以下の内容を解説します。
クアルコムはこの戦略により携帯電話市場を急速に拡大させ、自社の収益基盤も強化しました。それでは詳しく見ていきましょう。
イネーブラー(Enabler)とは「可能にする者」という意味です。クアルコムはこの言葉を使って自社のビジネスモデルを表現しています。どういうことでしょうか?
クアルコムは通信技術の分野で13万件以上の特許を持つ企業です。彼らはこの特許を独占するのではなく、広くライセンスすることで携帯電話市場全体の成長を加速させました。
「クアルコムと契約してくれたら、携帯電話事業はすぐ始められますよ。逆にクアルコムと契約しなければ始められないですよ」
これが彼らのメッセージです。つまり、特許を「参入障壁」から「エントリーチケット」に変えたのです!
クアルコムのビジネスモデルは、研究開発で生み出したイノベーションをチップとして実装し、同時に知的財産(IP)としてライセンスすることです。さらに興味深いのは、知財部門がマーケティング担当役員の下に置かれていること。
「クアルコムの知財戦略はマーケティングのためにある」
つまり、顧客との関係構築と価値提供のツールとして知財を活用しているということですね。
これは他の企業にはあまり見られない特徴です。組織体制そのものがそうなっているのです。彼らにとって、特許戦略はマーケティング戦略の一環なのです。
イネーブラー戦略には、どんなメリットがあるのでしょうか?クアルコムの例から3つのポイントを見てみましょう。
クアルコムは「各企業が自分たちで技術開発すると、まずコストが高い」「各企業が参入障壁を作ってしまうので、業界が広がらなくなる」という2つの課題を解決したことで、参入コストが下がり、市場が拡大させました。
彼らの技術を使えば、誰でも簡単に携帯電話事業を始められます。実際、第3世代携帯電話の端末価格は4年で半分になり、市場規模は6年で3倍になりました!売上は30億ドルから90億ドルに拡大したのです。
「リファレンスデザイン」という戦略では部品リストも提供するので、中国のような新興企業でも1週間程度で融資が下り、1〜2ヶ月以内に工場が立つこともありました。これが中国製スマホが爆発的に増えた背景です。
一方で、この戦略は既存企業にも影響を与えました。「日本のメーカーも振り落とされ、韓国のメーカーが携帯電話のメインプレーヤーになった」という現実もあります。産業の発展という意味では、「もっと安く良いものが作れるところにどんどん主戦場を移していく」というのが彼らの考え方なのです。
「独占的なコア部分を自分たちで握ったままで、世界中に素早く使ってもらうにはどうするか」
これがイネーブラー戦略の核心です。知財戦略の本質は「ビジネスエコシステム創造」にあります。通常、独占と普及は相反します。独占すれば市場は小さくなり、開放すれば利益が減ります。
でもクアルコムは、特許をライセンスすることで両立させました。彼らはチップ販売で収益を上げつつ、ライセンス料でさらに利益を確保。実は現在(2022年度時点)、全体利益の30~50%がライセンス料から生まれています!
特に通信業界は「ネットワーク外部性」(利用者が増えれば増えるほど、サービスの価値が高まる特性)が非常に高い領域です。
例えば、電話は相手も持っていなければ意味がないですよね。このように使う人が増えれば増えるほど価値が高まるので、早く市場を拡大させることが極めて重要なのです。
クアルコムのライセンス契約にはユニークな特徴があります。クアルコムの特許だけでなく、「第三者の特許も使えます」という条件が含まれているのです。
彼らは「非係争条項」も設けています。これはライセンスを受けた企業同士が特許で争わないようにする仕組みです。クアルコムがハブとなって、従来なら企業間で個別に結ぶ必要があった複雑なクロスライセンス網を一気に簡素化したのです。
これにより「特許の藪」を避け、参入企業は製品開発に集中できます。クアルコムは自社を中心としたエコシステムを作り上げ、市場全体を活性化させています。
あなたの会社でもイネーブラー戦略を導入したいと思ったら、どうすればいいでしょうか?
この考え方は、阪急電車の創業者・小林一三の戦略にも通じるものがあります。彼は「乗客は電車が創造する」と言い、誰も住んでいない土地に鉄道を引き、そこに人が住むようにしました。特許は現代の「鉄道」として、新しい市場を切り開く役割を果たすのです。
イネーブラー戦略は、知財を活用して市場全体を拡大する革新的なアプローチです。「知財戦略の本質の1つはビジネスエコシステム創造」と言っても過言ではありません。クアルコムが実践したように、独占と普及のバランスを取りながら、エコシステムを作り上げることで、持続的な成長が可能になります。
特許は単なる防衛手段ではなく、市場を創造し、自社の事業を拡大するための積極的なツールとして活用することができるのです!
※本記事はAI技術を活用して作成しています。内容の正確性に努めておりますが、表現や解釈に独自性がある場合がございます。
今回の記事は、弊社の「優れた知財戦略で世界を変えたクアルコムに学ぶ「知財戦略」の基礎|発明塾®動画セミナー」の内容をもとに作成しました。セミナーでは、イネーブラー戦略についてより詳しい解説や具体的な事例、質疑応答なども含まれています。
受講者からは「クアルコム理解の入門セミナーとしてお薦めします」「特許をうまく活用する戦略的な企業探しに活かします」といったお声をいただいています。
知財戦略についてさらに深く学びたい方は、ぜひご検討ください。
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