3行まとめ
知財活動を「守り」と「攻め」の二軸で推進し、ソリューションプロバイダーへの変革を牽引
ジェイテクトは、既存製品の高付加価値化を担う「ビジネスを守る知財活動」(第Ⅰ軸)と、IPランドスケープやオープン戦略を含む「ソリューションIPプラス」(第Ⅱ軸)の二軸体制で知財戦略を展開。単なる権利保全を超え、2030 Visionの実現を直接牽引する戦略的ツールとして位置づけている。
累計特許出願約4万件、成長領域の出願比率が約45%に拡大し、ポートフォリオの構造転換が進行
合併前の約25,000件から累計約40,000件へと特許出願を拡大。主力事業関連の出願比率は約75%から約55%に低下する一方、成長領域が約45%に拡大し、ステアリング分野では特許出願数世界No.1、工作機械分野でも国内最多を維持している。
2030年度にPBR 1.5倍・ROE 10%・事業利益率8%を目指し、投資ポートフォリオを再編
財務KPI達成に向け、独自指標「J-BEP」「J-ROIC」を導入し投資効率を厳格に管理。2025年3月期の連結資本的支出は約1,002億円に達し、研究開発ポートフォリオの見直しにより成長事業への効率的なリソース配分を推進している。
この記事の内容
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発行体(会社名) |
許可ドメイン |
根拠URL |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
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株式会社ジェイテクトマシンシステム |
machine.jtekt.co.jp |
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株式会社ジェイテクトプレシジョンベアリング |
precision.jtekt.co.jp |
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規制当局(金融庁) |
edinet-fsa.go.jp |
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100W1CD.pdf |
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公的特許DB(INPIT) |
j-platpat.inpit.go.jp |
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発行体(会社名) |
ドメイン |
文書名 |
発行日/公表日 |
種別 |
URL |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
会社概要 |
日付明示なし |
公式企業情報 |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
国内拠点 |
日付明示なし |
公式企業情報 |
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株式会社ジェイテクト |
edinet-fsa.go.jp |
有価証券報告書 (S100VXN8) |
2025年6月27日 |
法定開示 |
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100VXN8.pdf |
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株式会社ジェイテクト |
edinet-fsa.go.jp |
確認書 (S100W1CD) |
2025年6月23日 |
法定開示 |
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100W1CD.pdf |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
決算短信(2025年3月期) |
2025年4月25日 |
決算短信 |
https://www.jtekt.co.jp/assets/uploads/2025/04/files/A_20240425_4Q_tansin_JPN.pdf |
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株式会社ジェイテクト |
edinet-fsa.go.jp |
有価証券報告書 (S100VWD2) |
2025年6月9日 |
法定開示 |
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100VWD2.pdf |
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株式会社ジェイテクト |
edinet-fsa.go.jp |
有価証券報告書 (S100W3QK) |
2025年6月25日 |
法定開示 |
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100W3QK.pdf |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
JTEKT Report 2025 (PDF) |
日付明示なし |
統合報告書 |
https://www.jtekt.co.jp/assets/uploads/2025/10/files/Report2025_03-3.pdf |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
決算短信(2026年3月期 第3四半期) |
2026年2月3日 |
決算短信 |
https://www.jtekt.co.jp/assets/uploads/2026/02/files/financial_results_202602_jp.pdf |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
知的財産活動 |
日付明示なし |
公式ポリシー |
https://www.jtekt.co.jp/sustainability/governance/intellectualpropertyactivities/ |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
模倣品対策活動 |
日付明示なし |
公式プロジェクト |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
製品情報 |
日付明示なし |
公式製品情報 |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
お問い合わせ |
日付明示なし |
公式サポート |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
JTEKT TOP |
日付明示なし |
公式IRニュース |
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株式会社ジェイテクト |
jtekt.co.jp |
ニュースリリース |
日付明示なし |
公式ニュース |
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トヨタ自動車株式会社 |
edinet-fsa.go.jp |
トヨタ自動車 有価証券報告書 |
2025年3月期対象 |
法定開示 |
https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/library/securities-report/archives/archives_2025_03.pdf |
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資料種別 |
公表日/提出日 |
対象期間 |
FY |
根拠URL |
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有価証券報告書(第125期確認書) |
2025年6月23日 |
2024年4月1日~2025年3月31日 |
2025年3月期 |
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100W1CD.pdf |
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決算短信(本決算) |
2025年4月25日 |
2024年4月1日~2025年3月31日 |
2025年3月期 |
https://www.jtekt.co.jp/assets/uploads/2025/04/files/A_20240425_4Q_tansin_JPN.pdf |
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決算短信(第3四半期) |
2026年2月3日 |
2025年4月1日~2025年12月31日 |
2026年3月期 |
https://www.jtekt.co.jp/assets/uploads/2026/02/files/financial_results_202602_jp.pdf |
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決算説明会資料(第3四半期) |
2026年2月10日 |
2025年4月1日~2025年12月31日 |
2026年3月期 |
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対象期間 |
金額 |
単位 |
出典資料名 |
掲載場所(項目名) |
根拠URL |
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2025年3月期 |
調査範囲内では確認できず |
- |
有価証券報告書 |
調査範囲内では確認できず |
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100VXN8.pdf |
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2025年3月期 |
調査範囲内では確認できず |
- |
決算短信 |
調査範囲内では確認できず |
https://www.jtekt.co.jp/assets/uploads/2025/04/files/A_20240425_4Q_tansin_JPN.pdf |
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2026年3月期 第3四半期 |
調査範囲内では確認できず |
- |
決算短信 |
調査範囲内では確認できず |
https://www.jtekt.co.jp/assets/uploads/2026/02/files/financial_results_202602_jp.pdf |
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特許番号 |
発明名称 |
出願人・権利者 |
根拠(公的DB URL) |
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特許-7119603 |
加工システム及び加工方法 |
今回の調査では未確認 |
株式会社ジェイテクト(英訳名:JTEKT CORPORATION、中国語表記:株式会社捷太格特)は、愛知県刈谷市朝日町一丁目1番地に本店および本社を構えるグローバルな製造業企業である。同社は、2006年に光洋精工株式会社(軸受事業に強みを持つ)と豊田工機株式会社(工作機械事業に強みを持つ)の合併によって誕生した歴史的背景を持ち、両社の技術的蓄積を統合することで事業を拡大してきた。企業の事業内容として、ステアリングシステム、軸受、駆動部品、工作機械、電子制御機器などの広範な産業用部品および設備の製造・販売を手掛けている。直近の財務実績として、同社の資本金は「45,591」「百万円」「2025年3月期」「実績/結果」「会社概要 資本金」として報告されている。また、売上規模を示す売上収益については、連結ベースにおいて「1,884,397」「百万円」「2025年3月期」「実績/結果」「会社概要 連結 売上収益」を計上しており、単独ベースの売上収益は「808,034」「百万円」「2025年3月期」「実績/結果」「会社概要 単独 売上収益」であったことが開示されている。企業活動を支える従業員規模に関して、連結での従業員数は「45,018」「人」「2025年3月現在」「実績/結果」「会社概要 連結 従業員数」、単独での従業員数は「11,153」「人」「2025年3月現在」「実績/結果」「会社概要 単独 従業員数」と記録されている。また、同社は愛知県公安委員会より第543811600900号として古物営業法に基づく事業の表示を行っている。人事体制に関して、2025年6月提出の法定開示等の一次情報において、代表取締役社長として近藤禎人氏を記載する資料と、大倉慎氏を記載する資料が並存しており、一次情報間で不一致となっている。1
同社の事業ポートフォリオは、多岐にわたるセグメントと製品カテゴリによって構成され、それぞれが独立した市場に対するソリューションを提供している。自動車関連製品分野においては、単なる部品供給にとどまらないシステムサプライヤーとしての地位を確立しており、安心・安全・快適な走行を支える機能群をラインナップしている。具体的には、電動パワーステアリング(EPS)や油圧パワーステアリング(HPS)を含むステアリングシステムを中核とし、ディファレンシャルユニット、ドライブシャフト、ハブユニット、プロペラシャフト、オイルポンプ、シフター、バルブ等のドライブラインおよびトランスミッション部品から、エンジン関連のユニットやコンポーネントといったエンジン構成部品に至るまでを製造している。ベアリング(軸受)分野においては、旧来から培われた高度な摩擦制御技術を活かし、一般的な産業機械用途から、風力発電、鉄道車両、航空機産業、鉄鋼プラント、半導体製造設備といった特殊環境や高度な信頼性が要求される最先端分野にまで対応した製品群を展開している。特殊な環境や用途に特化した特定用途軸受の開発にも注力しており、幅広い産業インフラを根本から支える役割を担っている。1
工作機械および加工技術分野においては、製造業全体の高品質化と生産効率化を支えるためのマザーマシンを各種提供している。研削盤のラインナップは極めて多岐にわたり、円筒研削盤、センタレス研削盤、平面研削盤、ねじ研削盤、ジグ研削盤、歯車研削盤、およびカムシャフト/クランクシャフト研削盤などを取り揃えている。また、マシニングセンタ分野では、横形・立形の4軸および5軸マシニングセンタ、大型部品加工に対応する門形マシニングセンタを展開している。さらに、ギヤ関連設備として、ギヤスカイビングセンタ、ハイポイドギヤ創成歯切盤、歯車転造仕上盤などを製造し、金属表面改質、熱処理、表面処理など顧客の高度なニーズに合わせた最適な加工工法の提案を行っている。PLC(プログラマブルコントローラ)およびIoE(Internet of Everything)ソリューション分野では、自らが工作機械メーカーとして有する生産現場の知見を活かし、信頼性の高い制御システムを提供している。安全PLCやモーションコントローラに加え、設備、人、情報をシームレスに接続し生産現場に新たな価値を創造するIoEソリューション、設備の安全性と可動率の向上に寄与するHMI用ソフトウェア、パネルコンピュータ、プログラマブル表示器などを展開している。1
産業用装置および周辺機器の領域においても、工業用加熱装置(半導体、電子部品、実験開発用途など)、コンプレッサ、搬送装置、検査機、レーザー式ねじリード測定機といった計測機器を製造している。油圧機器に関しては、インテリジェントフルードパワーシステムとして、油圧ポンプ、モーター、各種制御弁(圧力、方向、流量)、油圧シリンダ、油圧装置パッケージを提供し、高度な流体制御ソリューションを展開する。センサー技術においては、小型かつ高精度なロータリエンコーダ(アブソリュート/インクリメンタル形)、近接センサ(静電容量形/誘導形)、水位計などを市場に投入している。さらに、新規事業およびその他の製品群として、高耐熱リチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスの開発、人と機械が調和する技術としてのパワーアシストスーツなどのアクティブ・ライフ商品の提供、設計から生産までを一貫して対応するギヤ事業(小型・軽量化技術、NV低減、高効率化を実現した高強度・高精度な歯車ユニット)、モノづくりのレベルアップに貢献する工具(砥石成形機、ビトリファイドCBN/ダイヤモンドホイール、メタルホイール、レジンホイール等)、オイルシール、Oリング、シャフト、スピンドル、チャック、ボールねじ、直動ユニットといった構成部品にまで事業領域を広げている。また、メーカーとしての強みを活かしたリース・ファイナンス事業も展開し、ファイナンスリース、オペレーティングリース、購入選択権付リース、割賦販売、メンテナンスパック付リース、格安再リースなど、顧客の資金需要とライフサイクルに合わせたトータルサポートを提供している。1
これらの広範な事業活動を国内において支えるため、同社は複数の専門的なグループ会社を配置している。大阪府八尾市に拠点を置く「株式会社ジェイテクトマシンシステム」は、工作機械、機械部品、自動車部品の製造・販売を担い、工作機械分野における生産能力の一翼を担っている。また、大阪府和泉市に拠点を置く「株式会社ジェイテクトプレシジョンベアリング」は、ベアリングの製造・販売に特化し、精密加工技術を基盤とした軸受事業の供給体制を強化している。企業基盤を支えるダイバーシティ推進の取り組みも強化されており、有価証券報告書において女性活躍に関する具体的な目標を掲げている。「目標2」として、管理職以上の女性を2022年3月比で5倍以上(2025年3月比で約1.7倍以上)にする計画を示しており、この計画期間は2025年4月1日から開始される。目標達成のための具体的な施策として、2025年4月以降に女性優先の会社説明会もしくはインターンシップを年2回以上実施し、さらに2026年4月以降には求職者に対して女性が活躍できる職場であることについての積極的広報活動を実施する方針を定めている。5
ジェイテクトは、多様な製品群と技術的基盤を統合し、全社共通の理念として「技術をつなぎ、地球と働くすべての人を笑顔にする」というMissionを掲げている。このMissionに基づく中期経営計画の中で、「JTEKT Group 2030 Vision」を策定しており、そこにおいて「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」となることを中長期の目指す姿として定めている。このソリューションプロバイダーへの構造的な変革を実現するため、同社は現状の延長線上にある「既存事業のフォアキャスティング」によるアプローチと、2040年の「ありたい姿」から逆算する「バックキャスティング」によるアプローチの双方を繋ぎ合わせる独自の戦略的アプローチを採用している。将来の成長軌道を描く上で、現状の事業ドメインと将来のありたい姿との間に存在するギャップを明確に認識し、そのギャップを埋めるための手段として、グループ企業間の連携強化、他社との戦略的協業、およびM&A等のあらゆる手段を排除せずに検討し実行する方針が示されている。この戦略は、過去のモノづくり企業としての枠を超え、顧客や社会に対する包括的な価値提供へと事業モデルを転換する意図を含んでいる。1
経営戦略の実行状況を測定し、企業価値の持続的な向上を図るため、財務戦略の観点から効率性と収益性を重視した3つの主要なKPIターゲットが設定されている。中長期的な目標として、PBR(株価純資産倍率)については「1.5」「倍」「2030年度」「計画/目標」「JTEKT Report 2025 財務戦略」を掲げ、資本市場からの高い評価を獲得することを目指している。また、資本の効率的な運用を示すROE(自己資本利益率)については「10」「%」「2030年度」「計画/目標」「JTEKT Report 2025 財務戦略」を目標値として設定している。さらに、本業からの着実な収益創出力の指標となる事業利益率については「8」「%」「2030年度」「計画/目標」「JTEKT Report 2025 財務戦略」を掲げている。これらの2030年度目標に向けたマイルストーンとして、第二期中期経営計画が終了する2026年度においては、PBR 1倍、ROE 7-8%、事業利益率 5-6%という中間目標が設定されており、段階的な収益構造の改善プロセスが敷かれている。2
これらの意欲的な財務目標の達成に向け、2025年度の経営方針として「経営の体質強化」、「ソリューションを実現する仕組みづくり」、および「MVVを実践できる人や風土づくり」という3つの柱が定められた。特に、戦略の実行基盤となる「ソリューションを実現する仕組みづくり」の中核として、「人財・設備投資・研究開発ポートフォリオ見直し」が重点施策として位置づけられている。これは、限られた経営資源を全方位に分散させるのではなく、将来において成長させるべき領域を厳密に見極め、各プロジェクトに対するリソースの必要投入量を定量的に「見える化」することを意図している。その上で、成長事業および新たな成長領域へのリソース配分を効率的かつ的確に実行する計画である。さらに、投資効果を厳格に測定しモニタリングするための新たな投資効率評価指標が導入されている。一つは、固定費と限界利益の増減を比較し、コスト(インプット)に対する効果(アウトプット)のバランスを査定する体質評価の軸としての「J-BEP」である。もう一つは、税引き後事業利益を在庫および固定資産残高で除して算出する「J-ROIC」であり、これにアセットマネジメントの観点を加えることで、全社的な資産効率の向上に取り組む姿勢を明確にしている。これらの指標に基づく管理を通じて、「小さく構えて、大きく・賢く稼ぐ」という投資方針の下、事業資源の最適配分と財務モニタリングのレベルアップが図られ、持続的なキャッシュ創出能力の強化が進められている。2
ジェイテクトにおける知的財産活動は、単なる法務部門による権利保全機能を超え、同社のMissionと2030 Visionの実現に向けた中核的な推進力として位置づけられている。その基本方針は、これまでに培ってきたモノづくりの技術やノウハウを相互に融合させ、社会や顧客に対するソリューションの提供と「JTEKT」ブランドの強化を牽引することにある。この戦略的意図を具現化するため、知的財産活動は「既存製品の高付加価値化」と「新領域へのチャレンジ」という明確な2つの軸(第Ⅰ軸および第Ⅱ軸)によって推進されている。1
第Ⅰの軸である「既存製品の高付加価値化」は、社内において「ビジネスを守る知財活動」と定義づけられている。この軸の主な目的は、現在の主力事業における市場優位性を確固たるものにし、収益基盤を外部の脅威から保護することである。具体的には、日々の研究開発活動によって生み出される成果を漏れなく特許として出願し、競合他社の参入を阻む強固で網羅的なパテントポートフォリオを構築する方針が採られている。これと並行して、自社の製品開発や事業展開が他社の保有する特許権によって差し止められたり損害賠償請求を受けたりするリスクを排除するため、開発プロセスのあらゆる段階において他社特許の侵害防止(特許保証)を徹底する活動が義務付けられている。これにより、既存事業の安定的な成長と利益確保が知財の側面から裏付けられている。1
第Ⅱの軸である「新領域へのチャレンジ」は、「ソリューションIPプラス」という名称の下で展開される、より前向きで拡張性の高い活動である。この軸の目的は、従来の製品単体の販売から、モビリティ社会の課題を解決するソリューションプロバイダーへの変革を促すことである。この活動には、膨大な特許情報をはじめとする各種データを分析し、市場の空白地帯や競合の動向を可視化して経営層の意思決定を支援するIPランドスケープの手法の活用が含まれる。さらに、自前主義にこだわらず外部の知見や技術を有効に取り入れるオープン戦略、後述する全社的なブランド戦略、そして異業種やスタートアップを含む外部パートナーとの戦略的協働関係を構築するパートナーシップ契約の推進が、一体的な知財活動として組み込まれている。これらの二軸の活動は、個別の事業部門ごとに閉じることなく、事業の垣根を越えた技術の掛け合わせを可能にするテクノロジープラットフォームを基盤として実行されており、既存事業の深耕と新規領域の開拓を両立させる仕組みとなっている。1
これらの戦略方針を確実に実行し、経営層の意図と現場の活動の整合性を担保するため、ジェイテクトは高度に組織化された複数の専門会議体を通じて知的財産・ブランドガバナンスを運用している。全社的な意思決定機関として、年1回開催される「知財委員会」および「グループ知財マネジメント会議」が存在する。これらのトップレベルの会議体においては、企業の経営方針と、国内外のグループ会社を含む全社の知財方針との間の整合性について、厳密な審議と最終的な決定が行われる。これにより、知財投資が経営目標から乖離することを防いでいる。事業の実態に即した戦術的な運用機関としては、年2回開催される「特許戦略検討会」が機能している。この検討会では、自動車、産機・軸受、工作機械といった各事業セグメントの市場環境や技術動向に応じた詳細な知財戦略が策定され、戦略的に重点を置くべきパテントポートフォリオ構築のターゲット領域の設定、および事業部門ごとの具体的な出願目標件数の管理が徹底して行われる。さらに、開発現場に密着した運用として、各部門で随時開催される「開発会議」がある。この開発会議のプロセスにおいて、全ての新規開発案件に対する他社特許の侵害防止(特許保証)の確認状況と、自社の新たな開発成果に対する特許出願の漏れがないかのチェック機能が組み込まれており、知財リスクの未然防止と権利化の徹底が日常業務レベルで担保されている。1
ジェイテクトは、自社の技術的蓄積と知財戦略の成果をステークホルダーに対して透明性をもって示すため、知的財産データを用いた定量的な実績指標を公開している。同社の特許出願の歴史的変遷を概観すると、企業合併という一大転機がポートフォリオの形成に大きな影響を与えている。2006年の光洋精工と豊田工機の合併前においては、両社がそれぞれ独自に蓄積してきた特許出願数が合わせて約25,000件であった。その後、合併から約20年の期間を経た段階において、日本国内での特許および実用新案の出願、ならびにグローバルに展開するグループ会社による出願分を総計し、累積特許出願数は累計約40,000件に到達した実績が報告されている。この数値は、同社が合併以降も持続的に研究開発活動へ投資を行い、その技術的成果を法的な知的財産権として着実に保全してきた結果を示すものである。1
知的財産ポートフォリオの全体規模の拡大に加え、その内部構造の変遷も事業戦略の変化を鮮明に反映している。技術分野別の出願構成比率に関するデータによれば、合併当初の段階においては、特許出願の約75%が既存の主力事業に関連する技術分野で占められていた。しかし、その後の事業環境の急速な変化に対応し、将来の成長を見据えた新領域および基盤技術への投資拡大の方針を採り続けた結果、ポートフォリオの構成は大きく変化した。データの対象期間や詳細な転換時期についての明示はないものの、直近の構成比率においては、主力事業に関連する特許出願の比率が約55%にまで低下する一方で、将来の収益源泉となる成長領域に関連する特許出願の比率が約45%にまで拡大している。この構成比率の大幅な移行は、同社が既存事業の深耕に依存することなく、モビリティ社会の変革や新たな産業ニーズに応えるための新領域へと、知的財産を生み出すリソースの配分を戦略的にシフトしてきたことを客観的に証明している。1
個別の事業分野における相対的な競争力についても、特許データの観点から具体的な優位性が示されている。自動車関連製品の中核を担い、同社の収益の大きな柱である「ステアリングシステム」の分野においては、同社の特許出願数が世界No.1である旨が公式資料において記載されている。この圧倒的な出願規模は、高度な電動化や自動運転技術の進展に伴って複雑化するステアリング技術において、他社を凌駕する技術的ブレークスルーを継続的に生み出し、それを権利化することでグローバル市場における高い製品シェアと参入障壁を構築していることを裏付けている。また、製造業の基盤を支えマザーマシンと呼ばれる「工作機械(切削・研削)」分野においても、日本の主要な工作機械メーカーと比較して最多の特許出願件数を有していることが明記されている。これらの実績は、ジェイテクトが自動車部品という単一のドメインにとどまらず、精密加工技術を要する生産財の分野においても、業界をリードする強固な技術基盤と知的財産網を築き上げていることを示している。1
ジェイテクトは、世界中の顧客に対して自社の提供価値を明確に訴求し、企業の信頼性と認知度を高めるための包括的なグローバルブランド戦略を展開している。ブランド戦略の根底には、社名であるJTEKTが意味する「Joint Technology(技術の融合)」への強い想いが込められている。この理念を具体的な施策に落とし込むため、経営層や各部門の代表者が参加する「ブランディング会議」が年2回開催されている。この会議では、技術、営業、広報、および事業のそれぞれの専門的観点から、自社が提供するソリューションの価値や競争力を市場にいかに伝えるかについて、全社レベルのブランド戦略と個別製品群のブランディング計画が議論され推進されている。ブランド戦略の大きな転換点として、2022年4月1日に、それまで事業や製品ごとに複数存在していたブランドを、企業を代表する「JTEKT」ブランドへと全面的に統一する施策が実行された。このブランド統一の実行に伴い、社内外におけるブランドの取り扱いの一貫性を担保するため、「ロゴマークマニュアル」が複数言語で作成された。これにより、ロゴの正しい使用ルールの順守が、日本国内の部門のみならず海外に点在するグループ会社に対してまで周知徹底されている。1
さらに、JTEKTブランドの市場への浸透と、企業に対する長期的なファンを創造するための独自の施策として、キャラクター・ブランディングが導入されている。企業のMission・Vision・Valueに基づく目指す姿に対するステークホルダーの認知、理解、そして共感の機会を創出することを目的として、公式マスコットキャラクターである"ジェイにゃん"および"テクニャン"が積極的に活用されている。このキャラクター戦略においても知的財産権の保護機能が利用されており、第三者との間で発生しうる商標トラブルを未然に防止するため、自社の主要な事業範囲に関連する区分での商標登録にとどまらず、展示会などでノベルティとして使用するグッズの範囲にまで及ぶ広範な商標登録が実行されている。このように、親しみやすいマスコットキャラクターを通じたコミュニケーション活動を、知財権によって法的に支える体制が構築されている。1
ブランド価値の向上と並行して、ブランドの毀損を防ぎ、顧客の安全と自社のビジネス上の利益を保護するための「模倣品対策活動」が、知的財産活動の最重要課題の一つとして強力に推進されている。市場に流通する模倣品は、品質や安全性が全く担保されておらず、最悪の場合、重大な人身事故や設備事故を引き起こすリスクを孕んでいる。そのため、ジェイテクトは「お客様の安全とビジネスを守る」という基本方針の下、模倣品に対して断固たる姿勢で臨んでいる。2022年のブランド統一により主力ブランドはJTEKTとなったが、歴史的経緯から長年市場で流通し知名度の高い旧ブランド「Koyo」の商標権も引き続き法的に維持する方針を採っている。これにより、新旧両方のブランド名を騙る模倣品(特に流通量の多い軸受や自動車部品など)を世界市場で厳格に取り締まっている。1
模倣品対策の実行体制としては、グループ横断的な組織である「模倣品対策WG(ワーキンググループ)」が立ち上げられており、年2回の定例会議を通じて対策の方向性が定められている。このWGの決定に基づき、本社の知的財産部が中心的な役割を担い、世界各地に展開する現地法人と強力な連携・協力体制を敷くことで、効率的かつ機動的な対策を実施している。市場の監視活動を通じて模倣品を製造・販売する業者を発見した際には、証拠の収集を経て、現地の法執行機関と連携した製品の押収、業者の摘発、および模倣品を販売する悪質なウェブサイトの削除要請などの法的対応を徹底して行っている。具体的な活動実績として、2025年6月にはタイにおいて模倣品ベアリングの大型摘発作戦を成功させたことが報告されている。過去にも、2022年5月にはフィリピンにおいて、また2020年12月には中国において同様の摘発活動が実施されており、グローバルな規模での継続的な監視と執行が機能している。水際対策(税関対応)に関しても積極的なアプローチを採っており、模倣品が国境を越えて流入・流出することを物理的に防ぐため、各国の税関において自社の商標や知財権の税関登録を進めている。これに加え、タイ、ベトナム、中国(上海・北京など)の主要な税関を直接訪問し、担当職員との関係構築に努めている。さらに、タイ、ドバイ、ケニア、中国などの戦略的に重要な地域において、税関職員を対象とした真贋判定(本物と偽物の見分け方)に関する専門的なセミナーや情報交換のための交流会を定期的に開催し、現地の法執行能力の向上を支援する啓蒙活動を行っている。技術的な真贋判定のサポート手段として、世界ベアリング協会(WBA)と協力体制を築き、同協会が提供する真贋判定アプリ「WBA Bearing Authenticator」を導入することで、販売店やエンドユーザーが手軽に製品の真正性を確認できる環境を提供している。また、製品パッケージ自体にも偽造が困難なジェイテクト独自のホログラムを採用するなど、物理的・デジタル双方のアプローチから模倣品の流通を防ぐ仕組みが構築されている。対外的な連携活動としても、World Bearing Association (WBA)、日本ベアリング工業会、日本自動車部品工業会 (JAPIA) などの業界団体に加盟し、一企業単独では対処が難しい課題に対して他社とも連携しながら対策を進めている。特にインド、タイ、ベトナムなどの新興国市場においては、政府当局に対する法制度整備や取締り強化を求めるロビー活動を精力的に展開している。1
ジェイテクトの事業の持続的な成長と競争力の源泉は、各事業セグメントにおいて展開される活発な研究開発活動と、それを支える計画的な資本的支出(設備投資等)にある。2025年3月期(当連結会計年度)におけるセグメント別の資本的支出の実績は、経営資源の配分状況を明確に示している。同社最大の収益源である自動車事業における資本的支出は「68,774」「百万円」「2025年3月期」「実績/結果」「決算短信 自動車事業 資本的支出」と計上され、次いで産機・軸受事業においては「18,403」「百万円」「2025年3月期」「実績/結果」「決算短信 産機・軸受事業 資本的支出」であった。また、工作機械・システム事業に対する資本的支出は「13,056」「百万円」「2025年3月期」「実績/結果」「決算短信 工作機械・システム事業 資本的支出」と記録されており、全社セグメントを合算した連結合計の資本的支出は「100,234」「百万円」「2025年3月期」「実績/結果」「決算短信 連結合計 資本的支出」に達した。この大規模な投資は、同社が掲げる2030 Visionの実現に向けた基盤強化を裏付けるものである。3
同期間に行われた研究開発活動の具体的内容は多岐にわたり、各セグメントが直面する市場課題に対する技術的ソリューションの創出を目指している。自動車事業においては、環境対応と車両パッケージングの制約を解決するため「軽量・コンパクト」をコンセプトに掲げたコラムアシスト式電動パワーステアリング(C-EPS)の開発が進められた。さらに、新興国市場を含めた広範なニーズに応えるべく「良質廉価」なモノづくりをコンセプトとした第2世代のラックパラレル式電動パワーステアリング(RP-EPS)の開発が完了した。将来のモビリティ社会を見据えた次世代技術として、物理的なステアリングシャフトを排除し電気信号で操舵を制御するステアバイワイヤシステムの高度化や、自動運転システムとの協調制御に向けた独自の運転支援技術「Pairdriver®」の進化と高付加価値化が重点的に実施された。産機・軸受事業においては、製品開発プロセスの抜本的な効率化を目的としてデジタル技術の活用が図られた。設計データの管理一元化システムや、複雑な反復計算を自動化するシステムの導入により、設計検討にかかる時間を従来の1/4にまで短縮するという劇的なプロセス革新の成果を得た。工作機械・システム事業では、多様化する加工ニーズに対応するための研削盤の大型モデルの開発が進められたほか、急速に拡大する電気自動車(BEV)市場を生産面から支えるため、BEV用電池の製造プロセスの進化を支える専用設備の開発が実施された。また、アフターマーケット事業領域では、海水域や寒冷地などの極めて過酷な悪環境下においても長寿命と高精度な計測を実現した新型水位計「STD series」の開発・発表が行われた。全社的な生産基盤の強化に向けた取り組みとして、生産現場における熟練技能への依存からの脱却と効率化を目指し、AI導入や自動化技術の適用による「デジタルモノづくり改革」が推進され、現場担当者がプログラミング言語の知識を必要とせずにAIを構築・運用できる独自のAI活用プラットフォームの内製化が達成された。加えて、グループ会社の技術動向として、株式会社ジェイテクトサーモシステムが2025年12月11日に、先端半導体の製造プロセスに寄与する新型熱処理装置の市場投入を発表し、同年12月18日には、電池サプライチェーン協議会(BASC)と連携して蓄電池製造装置産業の国内基盤強化を目的とした共同事業「Swiftfab」の開始を告知するなど、新たな成長領域における開発成果が相次いで具現化している。3
直近の財務・業績動向に関しては、2026年3月期 第3四半期(自 2025年4月1日 至 2025年12月31日)の連結経営成績が報告されている。同期間を通じて生み出された売上収益は「1,403,324」「百万円」「2026年3月期 第3四半期」「実績/結果」「決算短信 売上収益」であった。売上収益から売上原価および販売費・一般管理費を控除した本業の収益力を示す事業利益は「46,848」「百万円」「2026年3月期 第3四半期」「実績/結果」「決算短信 事業利益」となり、これにその他の収益や費用を加味した営業利益は「37,802」「百万円」「2026年3月期 第3四半期」「実績/結果」「決算短信 営業利益」を計上した。最終的な親会社の所有者に帰属する四半期利益は「21,349」「百万円」「2026年3月期 第3四半期」「実績/結果」「決算短信 親会社の所有者に帰属する四半期利益」であった。セグメント別の事業利益の内訳を見ると、自動車事業は円高の進行や欧州・中国市場における販売減少というマイナス影響を受けたものの、日本や北米市場での販売増加および全社的な原価改善活動の効果が寄与し、「24,664」「百万円」「2026年3月期 第3四半期」「実績/結果」「決算短信 自動車事業 事業利益」を確保した。産機・軸受事業は欧州ニードルローラーベアリング事業の譲渡等に伴う減収要因があったものの、原価改善が奏功し「9,648」「百万円」「2026年3月期 第3四半期」「実績/結果」「決算短信 産機・軸受事業 事業利益」となった。工作機械事業は日本や北米市場を中心とする堅調な販売需要を取り込み、「12,356」「百万円」「2026年3月期 第3四半期」「実績/結果」「決算短信 工作機械事業 事業利益」を記録した。また、事業活動全体のオペレーションに関わる費用である販売費及び一般管理費(当第3四半期連結累計期間)の合計額は「163,393」「百万円」「2026年3月期 第3四半期」「実績/結果」「決算短信 販売費及び一般管理費」と記載されている。一方、これらの開発活動にかかる直接的な費用負担を示す研究開発費について、有報(直近FY)・半期/四半期報告書(直近)・決算短信(直近)・統合報告書(直近版)・公式IR/公式ニュース(直近24ヶ月)を確認した範囲では、当該情報を一次情報として特定できない(調査範囲内では確認できず)。4
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