3行まとめ
「量から質へ」転換する特許ポートフォリオ――特許総資産価値はCAGR2%成長
三井金属は保有特許ファミリー件数を削減しつつも、KPI「特許総資産価値」を2,851(2024年度)まで引き上げ、2020年度比で年平均成長率2%の向上を達成。低価値特許の整理と中核技術への集中により、バリューベースの知財マネジメントへの移行を進めている。
事業創造本部の知財価値がCAGR15%で急伸――全固体電池・次世代半導体が牽引
新規事業を担う事業創造本部は、全固体電池向け固体電解質(A-SOLiD®)、パワー半導体向け焼結型銅ペースト、次世代半導体パッケージ向け特殊キャリア(HRDP®)の3領域で積極的な権利化を推進。同本部の特許総資産価値は2020年度比CAGR15%と全社を大きく上回る伸びを示している。
2025年4月の組織再編で「現場密着型」知財体制を構築――研究開発費は5年連続増の約149億円
技術本部直下への「知的財産部」集約と事業創造本部直下への「知的財産室」新設により、全社ガバナンスと現場機動力を両立する体制へ移行。研究開発費は2024年度に14,919百万円と5年連続で増加しており、技術革新への持続的な投資姿勢が知財創出の源泉となっている。
この記事の内容
三井金属株式会社(2025年10月1日付で三井金属鉱業株式会社より社名変更)が発行した「統合報告書2025」および公式ウェブサイトの「サステナビリティ・知的財産」ページにおいて、知的財産を重要な経営資源と位置づける6項目の「知的財産基本方針」が掲げられている。具体的には、事業戦略および研究開発戦略と連携した製品・技術の保護による既存事業の優位性確保と新規事業の創出、知的財産権に関する法令の遵守、第三者の知的財産権を尊重する姿勢、係争の未然防止と侵害行為に対して確固たる態度で臨むリスク管理、知的財産に係る人材の育成と確保を目指す体制構築、そして知的財産を尊重する意識を全社に普及させる企業風土の醸成が示されている。コーポレートガバナンス体制としては、知的財産部を所管する技術本部長が取締役会を通じて社長等の業務執行役員に対して知的財産活動の方針および状況を定期的に報告する枠組みが構築されている。さらに、知的財産部長等が各事業本部長や開発部長に対して個別の活動状況を報告し、権利化や価値向上に向けた議論を行うことで、経営層と事業現場が一体となった知的財産マネジメントを推進している。自社および他社の知的財産状況とマーケット情報を組み合わせた「IPランドスケープ」手法も導入されており、これらを経営戦略の策定プロセスに直接役立てる体制が敷かれている。事業の方向性と知財投資を合致させることで、技術革新を確実に無形資産へと転換する強固な基盤が形成されていることが一次情報に明示されている。1
同社の知的財産活動における定量的な成果とポートフォリオの状況は、「統合報告書2025」の「知的財産マネジメント」セクションにおいて具体的な指標をもって開示されている。2024年度の実績として、三井金属グループ全体の特許ファミリー出願件数は148件であり、保有特許ファミリー件数は1,843件であることが示されている。同社は「特許総資産価値」を重要なKPIとして設定しており、LexisNexis PatentSight®による評価データに基づく2024年度の特許総資産価値の実績は2,851であることが報告されている。この特許総資産価値の数値は、2020年度の実績と比較してCAGR(年平均成長率)2%の上昇を示している。また、全体の平均特許価値は1.5と評価されている。全体の保有特許ファミリー件数自体は減少傾向にあるものの、平均特許価値が向上していることから、保有特許の棚卸し等を通じた事業ポートフォリオの効率化が進展し、「量から質への転換」が具現化していることが実績として示されている。さらに、2025年3月末時点における登録特許件数は合計で3,561件に達しており、国別の内訳としては日本が全体の40.2%にあたる1,430件を占め、次いで中国が13.1%(465件)、米国が12.1%(430件)、欧州が11.0%(390件)、台湾が8.6%(308件)、韓国が8.1%(287件)、その他の地域が7.0%(251件)となっている。グローバルな事業展開を支えるため、主要な生産拠点および市場において戦略的に特許網が構築されていることが確認できる。1
「統合報告書2025」において、各事業本部が担う役割に応じた個別の知的財産戦略が明示されている。事業創造本部は「戦略的な知的財産確保とリスクマネジメントにより、新規事業の将来価値最大化を目指す」という方針を掲げている。重点領域として、全固体電池向け固体電解質(A-SOLiDⓇ)、パワー半導体向け焼結型銅ペースト、次世代半導体パッケージ向け特殊キャリア(HRDPⓇ)に関する事業化準備および拡大に向けた権利化活動を推進している。さらに、総合研究所におけるCO2回収・変換等の研究開発と連動した出願を強化しており、その結果として同本部の特許総資産価値は2020年度比でCAGR15%の大幅な増加傾向を示している。一方、機能材料事業本部は「事業戦略に沿った知的財産活動を通じて事業利益の最大化とリスクの最小化を図る」ことを方針として示している。機能性液体事業推進部の「iconosTM」やレアマテリアル事業部の「NANOBIXTM」などの2030年に向けた新商品群、および銅箔事業部における高速通信向け技術について積極的な権利化を進めると同時に、市場環境を踏まえた保有特許の棚卸しと売却による知財投資の効率化を実施している。これらの施策により、機能材料事業本部の特許総資産価値は2020年度比でCAGR3%増加し、知財価値の拡大を実現している。新規事業の創出と既存事業の収益性向上が、それぞれに最適化された知財マネジメントによって支えられている。1
三井金属グループにおける知的財産創出の源泉となる研究開発活動への投資実績は、継続的な増加傾向を示している。「統合報告書2025」の「ESGデータ 知的財産」セクションに記載された財務指標によると、連結研究開発費の実績は、2020年度が10,571百万円、2021年度が10,939百万円、2022年度が12,365百万円、2023年度が13,354百万円、そして2024年度は14,919百万円となっている。5年間にわたり継続して研究開発費が増加している実績は、新規事業の創出および既存事業の技術深化に対する同社の持続的な資金投下を裏付けている。研究開発の拠点としては、全社的な研究開発を担う「総合研究所」、新規事業や共同研究を推進する「M Lab.」、および基礎的な評価と研究を行う「基礎評価研究所」が配置されている。これらの機関が連携し、先進材料の開発を進めている。また、2025年11月13日に提出された「半期報告書-第101期」(2025年4月1日から2025年9月30日対象)においては、経営ビジョンとして「素材の知恵で『未来』に貢献する事業創発カンパニー」を目指す3カ年の中期経営計画「25中計」が開始されたことが報告されている。なお、有報(直近FY)・半期/四半期報告書(直近)・決算短信(直近)・統合報告書(直近版)・公式IR/公式ニュース(直近24ヶ月)を確認した範囲では、第101期半期報告書内における中間期の具体的な研究開発費の金額については一次情報として特定できない(調査範囲内では確認できず)。1
「人が知的財産を生み出し、人が使う」という基本理念のもと、同社は知的財産活動を支える人的資本の強化と組織体制の継続的な見直しを実施している。「統合報告書2025」によると、技術者を中心とした初級から上級までの知財研修が人事部の能力開発プログラムに組み込まれており、毎年複数回実施されている。加えて、各事業部門の特性に応じた個別研修が開催され、知財部員に対しては社外研修や研究会への参加推奨、外部有識者による社内講演会が適宜提供されている。また、発明取扱規則に基づく職務発明制度が運用されており、特許出願時の「申請報奨」や登録後の「実施報奨」を通じて発明者へ利益を還元する仕組みが整備されている。組織体制に関しては、2025年2月12日付で公表された組織改編資料において、2025年4月1日を効力発生日とする大規模な変更が予定されていることが示されている。従来、機能材料事業本部内に配置されていた「知的財産室」が廃止され、その機能が本社部門の技術本部の直下に配置される「知的財産部」へと移管・集約される。同時に、事業創造本部の直下には新たに「知的財産室」が設置される。この再編により、事業創造本部以外の知財担当者の兼務を解消しつつ、現場に近い位置に担当者を配置する「現場密着型」の活動を展開し、経営戦略に応じた柔軟な知財管理体制を確立する方針が示されている。1
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発行体(会社名) |
許可ドメイン |
根拠URL |
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三井金属株式会社 |
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独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT) |
plidb.inpit.go.jp |
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資料種別 |
公表日 |
対象期間 |
FY |
根拠URL |
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決算短信 |
2025年5月13日 |
通期 |
2025年3月期(第100期) |
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半期報告書 |
2025年11月13日 |
第2四半期累計 |
2026年3月期(第101期) |
https://www.mitsui-kinzoku.com/LinkClick.aspx?fileticket=%2FXxE1dB6Qu0%3D&tabid=143&mid=1060 |
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決算短信 説明資料 |
2026年2月12日 |
第3四半期 |
2026年3月期(第101期) |
https://www.mitsui-kinzoku.com/LinkClick.aspx?fileticket=80wwv8DTtSY%3D&tabid=100&mid=1060 |
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対象期間 |
金額 |
単位 |
出典資料名 |
掲載場所(項目名) |
根拠URL |
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2020年度 |
10,571 |
百万円 |
統合報告書2025 |
ESGデータ 知的財産(連結研究開発費) |
https://www.mitsui-kinzoku.com/Portals/0/CSR/integrated_report/2025/JP/06_integrated_report2025.pdf |
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2021年度 |
10,939 |
百万円 |
統合報告書2025 |
ESGデータ 知的財産(連結研究開発費) |
https://www.mitsui-kinzoku.com/Portals/0/CSR/integrated_report/2025/JP/06_integrated_report2025.pdf |
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2022年度 |
12,365 |
百万円 |
統合報告書2025 |
ESGデータ 知的財産(連結研究開発費) |
https://www.mitsui-kinzoku.com/Portals/0/CSR/integrated_report/2025/JP/06_integrated_report2025.pdf |
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2023年度 |
13,354 |
百万円 |
統合報告書2025 |
ESGデータ 知的財産(連結研究開発費) |
https://www.mitsui-kinzoku.com/Portals/0/CSR/integrated_report/2025/JP/06_integrated_report2025.pdf |
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2024年度 |
14,919 |
百万円 |
統合報告書2025 |
ESGデータ 知的財産(連結研究開発費) |
https://www.mitsui-kinzoku.com/Portals/0/CSR/integrated_report/2025/JP/06_integrated_report2025.pdf |
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特許番号 |
発明名称 |
出願人・権利者 |
根拠 |
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特許第5588607号 |
電解銅箔及びその電解銅箔の製造方法 |
当社(三井金属鉱業株式会社) |
https://plidb.inpit.go.jp/pldb/html/HTML.L/2024/002/L2024002250.html |
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特許第5301886号 |
電解銅箔及びその電解銅箔の製造方法 |
当社(三井金属鉱業株式会社) |
https://plidb.inpit.go.jp/pldb/html/HTML.L/2024/002/L2024002249.html |
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特許第5373970号 |
電解銅箔及びその製造方法 |
当社(三井金属鉱業株式会社) |
https://plidb.inpit.go.jp/html/HTML.L/2024/002/L2024002257.html |
三井金属株式会社(2025年10月1日付で三井金属鉱業株式会社より社名変更)は、自社の有する知的財産を事業の持続的成長を支える極めて重要な経営資源として位置づけている。同社が発行した「統合報告書2025」の「知的財産マネジメント」セクション、および公式ウェブサイトの「サステナビリティ・知的財産」ページには、2022年4月に改定された6項目からなる「知的財産基本方針」が掲げられている。この方針は、同社の技術経営の根幹を成すものであり、事業戦略および研究開発戦略と緊密に連携させることで、製品や技術を知的財産として適切に保護し、既存事業における競争上の優位性を確保するとともに、新規事業の創出に活用することを目指す内容となっている。製造業において技術力は製品の差別化要因となるが、それを特許権等の無形資産として体系的に保護しなければ、競合他社に対する持続的な競争優位性を維持することは困難である。このため、同社は知的財産基本方針の策定を通じて、全社的な技術保護の基準を明確化している。1
知的財産基本方針においては、単なる技術の権利化にとどまらず、コンプライアンスおよびリスクマネジメントの観点も強く打ち出されている。具体的には、知的財産権に関する法令を厳格に遵守すること、第三者が保有する知的財産権を尊重し適切に対応すること、さらには係争の未然防止に努め、自社の権利に対する侵害行為に対しては確固たる態度で臨むというリスク管理の側面が強調されている。これにより、事業活動において予期せぬ特許係争に巻き込まれるリスクを低減し、安定的な事業展開を支援する構造となっている。人的資本の観点からは、管理体制を構築し知的財産に係る人材の育成と確保を図ること、そして知的財産を尊重する意識を全社に普及させ定着させる企業風土の醸成が明記されている。これらの要素を組み合わせることで、三井金属グループは技術開発から権利化、そして事業貢献に至る一連のプロセスを総合的に管理する基盤を確立している。1
同社における知的財産のガバナンスは、経営層から各事業の現場に至るまでの一貫した指揮命令系統と情報共有の枠組みによって構築されている。「統合報告書2025」に示された体制によれば、全社の知的財産部を所管する技術本部長が、取締役会を通じて社長等の業務執行役員に対して知的財産活動の基本方針および進捗状況を定期的に報告する仕組みが整備されている。この報告体制により、経営トップが自社の無形資産に関するリスクと事業機会を的確に把握し、全社的な資源配分の決定に反映させることが可能となっている。経営層へのエスカレーション機能が確立されていることは、知的財産戦略が独立した専門業務としてではなく、コーポレート戦略の中核的な構成要素として機能していることを示している。1
さらに、実務レベルにおいては、知的財産部長等が各事業本部長や開発部長に対して、個別プロジェクトの活動状況に関する直接的な報告を実施している。この場において、具体的な技術の権利化方針や、保有特許の事業価値向上に向けた多角的な議論が行われている。特筆すべきは、自社および競合他社の知的財産状況にマーケット情報を組み合わせた「IPランドスケープ」と呼ばれる分析手法が導入されていることである。このIPランドスケープを活用することで、技術動向や競合の出願傾向を可視化し、事業の優位性を確保するためのホワイトスペース(技術的空白領域)の特定や、将来の市場ニーズを見据えた研究開発テーマの設定が行われている。これらの分析結果が経営戦略の策定プロセスに直接的に役立てられていることが報告されており、データ主導による客観的な知財マネジメントが実践されている。1
同社は経営環境の変化に迅速に対応し、事業ポートフォリオの組換えを支援するため、大規模な組織体制の変更を計画している。2025年2月12日付で公表された「組織改編」に関する公式ニュース資料によると、2025年4月1日を効力発生日として、知的財産に関連する組織の配置が大幅に見直される予定であることが示されている。この改編において、従来「機能材料事業本部」内に存在していた「知的財産室」は廃止され、その機能は本社部門の「技術本部」の直下に新たに配置される「知的財産部」へと移管され、集約される方針である。これにより、技術本部内に位置する「設備技術部」や「基盤技術部」、「基礎評価研究所」などの技術開発セクションと知的財産部との物理的および組織的な連携が一段と強化され、全社的な技術情報の保護が一元的に管理される体制へと移行する。1
一方で、新規事業の創出を担う「事業創造本部」の直下には、新たに「知的財産室」が設置される。これは従来、総合研究所の傘下にあった知的財産室を廃止し、本部の直下へと格上げおよび移管する措置である。事業創造本部における知的財産室の配置は、新規事業の開発や総合研究所の成果を迅速に事業化するプロセスにおいて、知財戦略をより密接に連携させる役割を強化するものである。この一連の組織再編により、事業創造本部以外の知財担当者の兼務を解消しつつ、各事業現場に近い位置に知財担当者を配置する「現場密着型」の活動を展開し、経営戦略に応じた柔軟な体制変更を可能にする方針が示されている。本社部門による一元的なガバナンスと、事業現場に即した機動的な権利化活動の双方を両立させる組織デザインが意図されている。1
同社は知的財産活動の成果を客観的に評価し、ステークホルダーに対して透明性を持って開示するため、定量的なKPIを設定して実績を報告している。「統合報告書2025」の「知的財産マネジメント」セクションにおいて、2024年度を対象期間とする三井金属グループ全体の特許ファミリー出願件数の実績は148件であり、保有特許ファミリー件数の実績は1,843件であることが示されている。保有特許ファミリー件数の推移を見ると、全体としては減少傾向にあることが報告されている。しかし、同社が最も重視する指標の一つである「特許総資産価値」については、LexisNexis PatentSight®による評価データが採用されており、2024年度の実績値は2,851であることが報告されている。1
この特許総資産価値の数値は、2020年度の実績と比較してCAGR(年平均成長率)2%の上昇を示している。また、特許ファミリーの競争力や質を数値化した平均特許価値は1.5と評価されている。「統合報告書2025」における分析では、保有特許ファミリー件数自体は減少傾向にあるものの、平均特許価値が向上していることから、特許ポートフォリオの効率化と質の向上が進んでいることが示されている。事業戦略に合致しない低価値な特許を整理・放棄し、中核技術や成長領域に関する強力な特許を厳選して維持するポートフォリオの最適化が進展しており、知財戦略が「量から質への転換」を果たしていることが実績として報告されている。これは、単なる出願件数の追求から、経営貢献度を重視するバリューベースのマネジメントへの移行を明確に示すものである。1
三井金属グループは、グローバルに展開する事業領域を保護し、海外市場における製品競争力を担保するため、世界各地域において戦略的な特許権の取得を進めている。「統合報告書2025」の「ESGデータ 知的財産」という項目において、2025年3月末時点における登録特許件数の実績は合計で3,561件であることが報告されている。この登録特許件数は前年度の3,370件から増加している。取得した特許の国別の内訳としては、日本国内が全体の40.2%にあたる1,430件を占めており、最大の権利保有地域となっている。次いで、生産拠点や主要な顧客市場が存在するアジア圏および北米での権利化が顕著である。1
具体的な内訳として、中国が13.1%(465件)、米国が12.1%(430件)、欧州が11.0%(390件)、台湾が8.6%(308件)、韓国が8.1%(287件)、その他の地域が7.0%(251件)という実績が示されている。台湾や韓国における高い保有比率は、同社の主力製品である半導体パッケージ材料や電子部品向け銅箔などの供給先として、これらの地域の企業が重要な位置を占めている事業構造を反映している。また、同項目において示された年度別の特許ファミリー出願件数の推移は、2020年度が54件、2021年度が56件、2022年度が54件、2023年度が57件、2024年度が55件となっている。2024年度の出願件数については、事業譲渡の影響により対象となる拠点数が減少したことが一定の影響を及ぼしている要因として報告されている。1
「統合報告書2025」において、各事業本部がそれぞれのミッションに応じた知的財産戦略を展開している実績が示されている。次世代の収益柱を構築する役割を担う「事業創造本部」においては、「戦略的な知的財産確保とリスクマネジメントにより、新規事業の将来価値最大化を目指す」という明確な方針が掲げられている。新しい事業領域においては、競合他社に先んじて基本特許や周辺特許の網を構築することが、将来の市場シェアと利益率を決定づける極めて重要な要素となるためである。1
具体的な重点領域として、全固体電池向け固体電解質(A-SOLiDR™)、パワー半導体向け焼結型銅ペースト、および次世代半導体パッケージ向け特殊キャリア(HRDP®)という3つの主要技術が挙げられており、これらの事業化準備および事業拡大に向けた積極的な知財活動が推進されている。また、全社的な基礎研究を担う総合研究所との連携も強化されており、CO2回収・変換等の先進的な新規技術創出に向けた研究開発と連動した特許出願および権利化が行われている。「統合報告書2025」の「知的財産マネジメント」というセクションにおいて、2024年度を対象期間とする事業創造本部の特許総資産価値の実績は、2020年度の実績と比較してCAGR(年平均成長率)15%の大幅な増加傾向にあることが示されている。この数値は、同本部において新規事業を保護するための知財価値の育成が着実に進展しており、将来の事業収益を裏付ける無形資産基盤が形成されている成果として報告されている。1
既存の主力製品を扱う「機能材料事業本部」においては、「事業戦略に沿った知的財産活動を通じて事業利益の最大化とリスクの最小化を図る」という方針が示されている。機能材料分野は既に市場が形成されており、多数のプレイヤーが競争を繰り広げている環境下にある。そのため、同本部では市場環境の変化を精緻に分析し、知的財産を通じた強化を図るべき事業と、効率化を進めるべき事業の厳選が行われている。1
積極的な権利化を推進する重点領域として、2030年に向けた新商品群である機能性液体事業推進部の「iconos™」やレアマテリアル事業部の「NANOBIX™」、さらには銅箔事業部における高速通信向け技術が設定されており、これらの成長領域に関する特許の出願、権利化、および維持が継続されている。一方で、保有する膨大な特許ポートフォリオの棚卸しや売却を実施することで、維持年金等の知財投資にかかるコストの適正化と効率化も同時に図られている。「統合報告書2025」の「知的財産マネジメント」というセクションにおいて、2024年度を対象期間とする機能材料事業本部の特許総資産価値の実績は、2020年度の実績と比較してCAGR(年平均成長率)3%増加していることが示されている。保有特許ファミリー件数自体は特許棚卸し等により減少傾向にあるものの、平均特許価値が向上した結果として、知財価値全体の拡大が進んでいることが実績として報告されている。1
三井金属グループが強力な知的財産ポートフォリオを構築するための基盤となっているのが、積極的な研究開発活動に対する継続的な資金投下である。「統合報告書2025」の「ESGデータ 知的財産」という項目において、対象期間の連結研究開発費の実績が継続して増加傾向にあることが示されている。具体的には、2020年度の実績が10,571百万円、2021年度が10,939百万円、2022年度が12,365百万円、2023年度が13,354百万円、そして2024年度には14,919百万円に達したことが報告されている。5年連続での研究開発費の増加は、同社が技術革新を成長の源泉と位置づけ、積極的な投資姿勢を堅持していることを示している。1
これらの研究開発活動を推進する体制として、公式ウェブサイトの事業創造関連ページには、全社規模の研究開発を担う「総合研究所」、新規事業や外部との共同研究に特化した「M Lab.」、および基礎的な評価と研究に注力する「基礎評価研究所」の存在が示されている。これらの専門機関がそれぞれの領域で高度な技術開発を行うことで、特許化に値する革新的な発明が継続的に生み出されている。2025年11月13日に提出された「半期報告書-第101期」においては、経営ビジョンとして「素材の知恵で『未来』に貢献する事業創発カンパニー」を目指す3カ年の中期経営計画「25中計」を開始したことが報告されている。有報(直近FY)・半期/四半期報告書(直近)・決算短信(直近)・統合報告書(直近版)・公式IR/公式ニュース(直近24ヶ月)を確認した範囲では、第101期半期報告書(対象期間:2025年4月1日から2025年9月30日)の中間連結損益計算書等における研究開発費の具体的な金額に関する当該情報を一次情報として特定できない(調査範囲内では確認できず)。2
「人が最も重要な経営資本である」という認識のもと、三井金属グループは「人が知的財産を生み出し、人が使う」という基本理念を掲げている。「統合報告書2025」の「知的財産マネジメント」セクションにおいて、優れた知的財産を創出し、それを事業活動に活用できる優秀な人材の育成と活躍を支援するための多様な施策が報告されている。教育制度の面では、技術者を中心とした初級から上級までの多層的な知財研修プログラムが人事部の能力開発プログラムに組み込まれており、毎年複数回実施されている。これにより、研究開発部門に所属するエンジニア自身が、特許出願の重要性や権利侵害リスクに関する基礎的な知識を習得し、日々の業務に反映させることが可能となっている。1
さらに、各事業部門が抱える技術特性や事業環境に合わせた個別の研修が、各本部の知財室によって企画・開催されている。専門性の高い知財部員に対しては、最新の判例動向や権利化実務に関する社外研修や研究会への参加が推奨されており、外部の有識者を招いた社内講演会も適宜開催されている。また、発明者に対するインセンティブとして、社内の発明取扱規則に基づく「職務発明制度」が運用されている。この制度では、特許を出願した段階で付与される「申請報奨」や、特許が登録され事業実施に貢献した際に事業収益に応じて付与される「実施報奨」という形で、発明者へ利益を適切に還元する仕組みが整備されている。同社はジョブ型実力主義の人事制度の導入や、スペシャリストを含めたキャリアの複線化を推進しており、これらが無形資産を持続的に生み出す組織基盤を支えている。1
同社が保有する特許の具体例として、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が提供する開放特許情報データベースにおいて、三井金属鉱業株式会社を出願人および特許権者とする複数の電解銅箔関連特許が公開されている。これらの公開情報は、同社の主要事業の一つである銅箔事業における技術的優位性の源泉を明らかにするものである。 特許第5588607号(発明の名称:電解銅箔及びその電解銅箔の製造方法)は、2008年9月16日に出願され、2009年10月1日に公開された特許である。この特許の目的は、ファインピッチ回路を備えるプリント配線板材料としての電解銅箔であり、かつコルソン合金箔の使用が検討されているリチウム二次電池用負極集電体の構成材料としても使用可能な、高強度かつ低電気抵抗の電解銅箔を提供することである。技術概要として、硫黄を110ppm~400ppm、塩素を280ppm~650ppm含有し、導電率が49.3%IACS以上、かつ常態における引張り強さの値が70kgf/mm2以上である電解銅箔が示されている。効果として、180℃で60分加熱した後でも常態の機械的強度とほぼ変わらない極めて大きな機械的強度を備え、結晶の粒子径が微細であるため従来の低プロファイル電解銅箔を超えるレベルの析出面を備えることが記載されている。この技術は、微細化が進む電子回路基板において高い信頼性を提供する基盤技術である。6
特許第5301886号(発明の名称:電解銅箔及びその電解銅箔の製造方法)は、2008年6月10日に出願され、2009年12月24日に公開された特許である。フレキシブルプリント配線板の製造材料として、高価な圧延銅箔と同等の屈曲性能を備え、かつ安価に製造可能な電解銅箔を供給することを目的としている。技術概要として、活性硫黄有機化合物等を含み塩素濃度が30ppm~70ppmの硫酸系銅電解液を電解することにより得られ、結晶組織中に硫黄を25ppm~110ppm、塩素を50ppm~200ppm、炭素を70ppm~150ppm含有する電解銅箔が示されている。効果として、従来は屈曲性が得られないと言われていたチオ尿素化合物を含んだ銅電解液を用いながらも良好な屈曲性能を備え、溶液安定性に優れ長期間の連続使用に耐えるため経済的にも優れていることが記載されている。製造コストの削減と製品寿命の延長を両立させる技術として重要な位置を占める。7
特許第5373970号(発明の名称:電解銅箔及びその製造方法)は、2011年7月1日に出願され、2012年1月5日に公開された特許である。製造プロセスにおいて塩素含有量が変動しても安定した諸特性を示す電解銅箔の提供を目的としており、技術概要としてヨウ素含有量が0.003質量%以上である電解銅箔が示されている。この電解銅箔をリチウムイオン二次電池の負極に用いることで、充放電に伴う膨張収縮挙動に対する抵抗力に優れ、長寿命のリチウムイオン二次電池を安価に市場に提供できる効果が記載されている。これらの特許群は、同社が材料設計から製造プロセスに至る広範な領域において、緻密な特許網を構築していることを示している。8
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