本記事は、当社が開催した障害特許網の突破事例紹介
~突破方程式®による突破発明®の創出(米国3M社の特許網を突破した事例)~セミナーのエッセンスをお届けするものです。
セミナーの重要な知見を、どなたでも気軽に学べる形でまとめています。
競合企業の特許を一生懸命読んでいるのに、本当の狙いがさっぱり分からない。大量の特許があると、どれが重要なのか判断できない。気がつくと競合に先回りされて、自社の開発が後手に回ってしまう。
そんな悩みを抱えているなら、ちょっと視点を変えてみませんか?
実は「分割出願」を調べるだけで、競合企業の特許戦略が手に取るように読み解けることがあるんです。
実際に3M(スリーエム)の400件もの特許を突破した、驚きの分析手法をご紹介します!
なお、今回取り上げる3Mの製品は、携帯電話の保護フィルムや車体の保護など、貼り付け時に空気の泡が入らないよう工夫されたフィルムです。普通にフィルムを貼ると空気が残って泡ができますが、3Mのフィルムには細い溝があらかじめ掘ってあり、そこから空気が抜けるようになっているんです。
このおかげで、誰でもキレイにフィルムが貼れます。市場シェアは90%以上という圧倒的な強さでした。
分割出願分析により競合企業の特許戦略を読み解く手法を解説します。3Mの400件特許網突破事例を通じて、その具体的な分析手法と成果を紹介します。
本記事では以下の内容を解説します。
地味な分析が競合特許網突破の最強武器となることを実例で示します。
「分割出願について注目してみることにしました」
こう語るのは、実際に3Mの特許網突破を指揮した弊社代表の楠浦です。
そもそも分割出願って何でしょうか?
簡単に言うと、一つの特許申請から新しい特許を「分けて」出すことです。例えば、最初に「スマホの充電器」で特許を出したけど、後から「ワイヤレス充電機能」だけを別の特許として出し直す、みたいなイメージです。
なぜここに注目したのか?実はここに競合の本音が隠れているからなんです!
分割出願を調べると、特許庁とのやりとりの記録が見えてきます。具体的には、以下のような情報です。
これらの情報から、競合企業が「この技術だけは絶対に押さえたい!」と思っている核心部分が見えてくるんです。
3Mの分析をしていて、本当に驚いたのがその執念深さでした。
特許には「請求項」という、「私はこの技術について権利を主張します」という範囲を書いた重要な部分があります。3Mは、この権利の範囲を何度も書き直して特許を取ろうと挑戦していたんです。
「権利化に際して分割して請求項を補正してというのを繰り返し繰り返し行って、何とか権利が取れる確度がないかというのを繰り返しトライする」という状況が見えてきました。
しかも、特許が取れなくても諦めない!「権利化できなかったとしても、分割して出願し直して、審査中の状態を継続することによって他社に脅威を与え続ける」ような姿勢も感じられました(これは推測の部分もありますが)。
まるでボクシングで、パンチが当たらなくても相手にプレッシャーを与え続けるような戦術ですね。
こんな執念深い3Mの戦略を、どのように読み解いていったのでしょうか?実際の分析手順をご紹介します。
分析の最初にやったのは、「元の特許から、どの特許がいつ分かれて出てきたか」を整理するチャート作りでした。
具体的には、いつ分割出願が行われたか、特許庁への審査依頼(審査請求)のタイミング、特許庁から拒絶理由通知が来たタイミングなど、時系列を整理したチャートです。
具体的には、「どのタイミングで、どの特許からどの特許に分割されたのか、審査請求のタイミングは拒絶理由が来た後なのか前なのか、具体的にどれがどういうふうに分割されていたかというのをまとめたチャート」を作成しました。
※審査請求とは、特許庁に「この特許を審査してください」とお願いする手続きのこと。
これ、本当に地道な作業なんですが、パズルのピースがはまっていく感覚で面白いんです!
次にやったのが、特許庁とのやりとりの詳細な読み込みです。
「拒絶理由通知もかなり読みましたし、意見書もかなり読み込んでいます」と楠浦は語っています。
ちょっと説明すると、拒絶理由通知は特許庁が「この発明はダメです」と出願者に送る「不合格通知」みたいなもので、意見書は出願者が「いえいえ、こうだから特許になるはずです!」と反論する「抗議文」です。
この文書を読むと、競合がどこで困って、どう作戦を変更したかが丸見えになるんです。
3Mのような海外企業には面白い特徴がありました。
楠浦の分析によると、3Mのような海外企業は、まず本国(アメリカ)で特許を出願してから、それを日本に持ち込んで分割戦略を練る傾向があるとのことです。
つまり、本国で特許を出してから、日本に持ってきて「さあ、どう分けて出そうか」と戦略を練るパターンが多いんです。この特徴を知っていると、分析がぐっと楽になります。
ここからが本当に面白いんです!3Mの戦術変更を追ってみましょう。
平成10年に出した特許が、元の1つから4回に分けて分割され、合計5つの特許になっていました。最初は「表面形態を制御する方法」という「かなりわかりづらい」内容だったんです。
でも、分割するたびに言葉をガラッと変えてきました。
ここで出てくる剥離ライナーとは、両面テープなどに貼ってある、つるつるした保護紙のことです。
特に巧妙だったのは、特許庁に「隆起と出っ張りを持つ剥離ライナーというのは既に存在しています」と言われた時の対応です。
普通なら諦めるところを、3Mは発想を転換しました。「山(出っ張り)が取れないなら、谷(へこんだ部分)の面積で特許を取ろう」という考え方に変更したんです。
つまり、同じデコボコした表面でも、「山の部分」ではなく「谷の部分の面積」で権利範囲を決めるという、まさに逆転の発想です。
分析を進めると、3Mが「最も取りたいところ」がはっきり見えてきました。
一連の分割経緯から「何とかして溝がついているような粘着剤テープの特許は全部取ってやろう」という強い意志が感じられたんです。
弊社代表の感想は「単に『うまく特許を取っている』というレベルを超えて、計算し尽くされた戦略と、とにかく諦めない執念を感じる」というものでした。
つまり、3Mにとって「溝」こそが死守したい技術だったということを見つけたわけです。
この発見が、突破のカギとなりました。
相手が「溝」に全力で取り組んでいるなら、「溝じゃない方法」で攻めればいいじゃないか!という発想に至ったんです。
つまり、3Mが得意としている「保護紙(剥離ライナー)に細かい凹凸をつけて溝を作る」技術とは全く違う方法で、同じように「フィルムを貼った時に空気の泡が入らないようにする」ことはできないか?
例えば、保護紙を使わない方法や、保護紙を使う場合でも溝を転写する以外の方法など、3Mが「まさかそんな方法は考えてないだろう」という技術領域に活路を見出すことができました。
分割出願の分析は、最初は地味で面倒な作業に見えます。
でも、やってみると競合企業の真の狙いと戦略が手に取るように分かってくるんです。
重要なのは:
これらの地道な分析こそが、400件もの特許網を突破する糸口となります。
競合が必死に守ろうとしている技術が分かれば、その盲点を突く戦略も立てられる。まさに「敵を知り己を知れば百戦危うからず」ですね!
※本記事はAI技術を活用して作成しています。内容の正確性に努めておりますが、表現や解釈に独自性がある場合がございます。
本記事で紹介した3Mの400件特許網突破事例は、実際に楠浦が指揮した分析プロジェクトの成果です。この実例を詳細に解説する以下の動画セミナーでは、分割出願チャートの作成方法や審査経緯の読み解き方など、より実践的な分析手法を学べます。
受講者からは「他社特許の回避案出しの事前準備として役に立つ」「特許網に苦しんでいる技術者にぜひ確認してほしい」との声をいただいています。
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障害特許網の突破事例紹介 ~突破方程式®による突破発明®の創出(米国3M社の特許網を破した事例)~
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