【要約】
AIが企画や情報整理を高いレベルで担う時代、新規事業人材により重要になるのは、すべてを知ることではなく、「何が分かっていて、何が分かっていないか」を整理し、不確実性が残る中でも自分で判断し、実行を引き受ける力です。
発明塾では、これを「確信犯」と「覚悟」と捉え、次に何を証明すべきかを明確にしながら企画を前に進めます。
本コラムでは、AI時代に求められる人材育成の考え方と、決裁者の視点を体験的に学ぶ「決めさせる企画書」ワークショップについて紹介します。
TechnoProducer株式会社/「発明塾」塾長の楠浦です。
最近、発明塾でもAIを使って新規事業の企画を考える機会が、急速に増えてきました。
市場を調べる。競合を整理する。顧客課題を仮説化する。ビジネスモデルを考える。企画書を書く。
こういう仕事は、すでにAIがかなり高いレベルで手伝ってくれます。場合によっては、自分が考えるよりもAIの方が、もっともらしい企画や情報を出してくることすらあります。
では、AI時代に、新規事業人材は何を学ぶべきなのでしょうか。
僕は、これからますます重要になるのは、AI以上の知識や情報量を持つことではなく、「何が分かっていて、何が分かっていないか」を整理し、不確実性が残る中でも自分で判断し、実行する力だと考えています。
発明塾では、これを「確信犯」と「覚悟」という言葉で捉えています。
結局、企業内発明塾で教えていることですね(笑)。
ただ最近は、AI時代に合わせて、発明塾の指導内容も大幅にアップデートしています。
たとえば、「エッジ情報」探索についての、AI時代対応の大幅なアップデートは、8月28日に開催したセミナーで、皆さまにお知らせいたしましたね。ご感想でも、「大幅にアップデートされていた」とコメントいただいており、伝わったな、と安心しました(笑)。
発明塾セミナー「顧客仮説を生み出す『エッジ情報探索』実践講座」を開催します(8月28日/オンライン+会場開催)
https://www.techno-producer.com/news/seminar-edge-information-260828/
今回は、AI時代の新規事業人材に求められる「確信犯」と「覚悟」とは何か、そして、決裁者の視点を体験的に学ぶ「決めさせる企画書」ワークショップについてお話しします。
では、本題へ。
ここでいう「確信犯」とは、「自分の考えは絶対に正しい」と思い込む人ではありません。
むしろ逆です。
「ここまでは分かっている」
「ここから先は、まだ分かっていない」
「ただし、今の情報から考えると、自分はこう判断する」
と、自分の中で整理できている人です。
新規事業では、すべてが分かってから意思決定できることなど、ほとんどありません。
市場が本当に立ち上がるのか。
顧客が本当にお金を払うのか。
競合がどう動くのか。
技術が予定通り完成するのか。
最後まで分からないことは残ります。
だから発明塾でも、「分からないことを全部調べる」ことは重視していません。
むしろ、
何が分かっていて、何が分かっていないのか
そして、次に何を証明すればよいのか
を明確にすることを重視しています。
たとえば、
「この課題を持つ顧客がいることは分かった。しかし、この課題に500万円払うほど困っているかは分からない」のであれば、
次にやるべきは、市場規模をもっと詳しく調べることではなく、「本当にお金を払うのか」を確かめることかもしれません。
新規事業では、全部分かってから進むのではなく、次に何を証明すれば進めるのかを決めながら進むことが大事です。
AIに企画を考えてもらうことはできます。
AIに反論してもらうこともできます。
AIに役員役をやってもらって、
「なぜこの市場なのですか?」
「競合に勝てるのですか?」
「なぜ今なのですか?」
「失敗したらどうするのですか?」
と、何十回でも仮想問答することもできます。
これは非常に有効です。
僕自身、事業を考えるときは、手元にある情報で未来の解像度を上げ続けることをかなり重視しています。
企画も、一度書いて終わりではありません。
実行する。
情報が増える。
未来の見え方が変わる。
企画を書き直す。
これを繰り返します。
AIは、この作業を猛烈に速くしてくれるでしょう。
しかし、最後に残る仕事があります。
「では、あなたは本当にこれをやるんですか?」
という問いです。
AIは責任を取ってくれません。
社長に予算を取りに行くのも自分です。
顧客に話を聞きに行くのも自分です。
試作品を作るのも、売ってみるのも、結果を受け止めるのも自分です。
だから僕は、AI時代の新規事業人材に必要なのは、AI以上の情報量を持つことではないと思っています。
AIも使いながら考え抜き、
「分からないことは残っている。でも、ここまでは調べた。ここまでは考えた。だから、自分はここに賭ける」
と言える状態まで企画を磨くこと。
そして、その判断を自分で引き受けて実行すること。
これが、「確信犯」と「覚悟」です。
今後は、上司や経営者も
「企画が甘いのか」
あるいは
「あなたが甘いのか」
を、明確に線引きして、指導する必要がありますね。
「企画のコンセプトはとても良い。でも、あなたこれ最後までやり切れるの?どこまで確信を持てているの?」
という感じですね(笑)。
これまで、この2つが混然一体となって、新規事業の企画が議論されることが多かったように思いますが、AI時代には、そこそこの企画はAIがたたき台を作ってくれますので、「人」がもっと問われるようになります。
これまで以上に、「人間が律速になる」わけです。
企画書を作るスピードではなく、「自分で決めて動けるか」がボトルネックになる、ということです。
発明塾で新規事業の企画を見ていると、ここでつまずく方が少なくありません。
企画そのものは、かなり良くなっている。
調査もできている。
資料もきれいにまとまっている。
ところが、いざ上司や役員から、
「で、あなたは何がしたいの?」
「なぜ会社がお金を出す必要があるの?」
「それ、本当にあなたがやるの?」
と聞かれると、急に答えられなくなる。
これは本人の能力が低いという話ではありません。
そもそも、若手や中堅社員が、社長や役員が何を見て意思決定しているのかを学ぶ機会が、ほとんどないからです。
提案する側は、「この企画にはこんな良いところがあります」と説明します。
しかし決裁する側(決める側)は、少し違うものを見ています。
「何が分かっているのか」
「何がまだ分かっていないのか」
「今ここで、どこまでお金を出すべきなのか」
「何が分かれば次の投資判断ができるのか」
「この人に任せても大丈夫なのか」
そういうことを考えています。
つまり、新規事業の企画書は、「未来を完璧に証明する資料」ではありません。
未来なんて、誰にも分かりません。
重要なのは、
「不確実な状況の中で、次の意思決定ができるところまで整理されているか」
です。
「不確実性を引き受けてもらう段取り」
が求められているわけですね。
決裁者に求めるのは、「未来を信じてください」ということではありません。
「ここまでは僕が責任を持って確かめます。これ以上のリスクは取らせません。だから、まずここまで進めさせてください」
というところまで、「お膳立て」する必要があります。
言い換えると、新規事業担当者には、
「不確実性を、上司や役員の代わりにできるだけ自分で引き受ける覚悟」
が求められている、ということですね。
「私がしっかりやりますので、これでいかがですか」
が、新規事業「提案」なんですよね。
だから発明塾でも、単に企画の完成度を上げることだけを目的にはしていません。
何が分かっているのか。
何が分かっていないのか。
次に何を証明すべきなのか。
それを、調査で確かめるのか、顧客に聞くのか、実際に売ってみるのか。
ここまで切り分けます。
そして、手元の情報で一度決めて、実行して、結果を見て、また考え直す。
新規事業は、その繰り返しです。
「もっと情報が集まったら決めよう」
とすると、いつまでも決まりません。
情報は無限に集められるからです。
大事なのは、今の時点で何を決めるべきかを決めることです。
まさに「段取り」であり、「お膳立て」ですね(笑)。
今後は、AIを使った壁打ちと、人間との対話を組み合わせる形がかなり有効になると思っています。
AIで仮想問答を何度もやる。
「この根拠は?」
「なぜ今?」
「競合は?」
「失敗したらどうする?」
何十回でも聞いてもらう。
そこで一度、自分なりに考え抜く。
その上で、人間の上司や決裁者と話す。
すると、借り物の言葉と、自分の言葉の差がはっきり出ます。
AIとの対話だけでは、本当に自分が腹落ちしているかは意外と分かりません。
だから、
AIで壁打ちする
→ 人間との対話で試す
→ 足りないところをまたAIで詰める
→ 実際の上司や役員に持っていく
というスパイラルが、今後の人材育成ではかなり重要になると思います。
AIによって人間の指導が不要になるのではなく、AIが下ごしらえをしてくれるからこそ、人間同士の対話を「意思決定」と「覚悟」のところまで深くできる。
僕はそう考えています。
AIを使って、ただ情報をどんどん細かく調べればよい、という話ではないんですよね。
AIを使って深めるべきなのは、自分なりの「確信」と、それを実行に移す「覚悟」なんです。
そこで現在、発明塾では、新規事業担当者に「決裁者の頭の中」を体験してもらうためのワークショップも行っています。
それが、
「決めさせる企画書」ワークショップ(※)
です。
※ 弊社サービスメニューのM91です(M90として、ワークを簡素化したセミナーもあります)
https://www.techno-producer.com/wp-content/themes/TechnoproducerTheme/pdf/tp-service-menu.pdf
このワークショップでは、まず参加者自身が「決裁者」になります。
あえて問題のある企画書を読み、
「自分なら、この企画にお金を出すか?」
を判断してもらいます。
そうすると、
「この数字がないと怖い」
「ここは分からなくても、まず試してみてもいいのでは」
「そもそも、この人は何を実現したいんだろう」
など、それまで提案者の立場では気づかなかったことが見えてきます。
その後、自分自身が提案者側に戻り、質問を受け、企画を書き直し、再度プレゼンします。
僕がこのワークショップで教えたいのは、企画書をきれいに書くテクニックではありません。
「お金を出す側は、何を見ているのか」を知ること。
そして最終的には、自分自身が
「この企画ならGoを出せる」と判断でき、その理由を決裁者にも説明できる人
になってもらうことです。
AIが企画書を作れる時代だからこそ、
何が分かっていて、何が分かっていないのかを見極める。
それでも、自分で決める。
そして、自分で実行する。
そんな人材を育てることが、これまで以上に重要になるのではないでしょうか。
「上司に企画を出しても通らない」
「役員から『で、何がしたいの?』と言われてしまう」
「良い企画だと思うが、どう説明すれば意思決定してもらえるか分からない」
という方には、ぜひ一度、
「決めさせる企画書」ワークショップ
をご検討いただければと思います。
▼お申し込み・お問い合わせは、こちら▼
https://forms.gle/QDqjqkyWBm7Pgc8j9
※上記のフォームにアクセスできない方は、お手数ですが以下のお問合せよりご連絡ください。担当者より返答させていただきます。
▼お問合せ
https://www.techno-producer.com/contact-us/
楠浦 拝
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