3行まとめ
「デジタル」を新成長領域に指定し、MaaS基盤と複数プラットフォームで事業変革を推進
小田急電鉄は中期経営計画(2024-2026)で「デジタル」領域を成長エンジンに位置づけ、データ基盤「MaaS Japan」やアプリ「EMot」、コミュニティプラットフォーム「小田急ONE」(会員数目標:2026年度末60万人)などを展開している。
知財・研究開発の具体的な開示が確認できず、戦略の「見えにくさ」が浮き彫りに
MaaS Japan・EMot・WOOMS等に関する特許権・商標権の登録番号や保有件数は、J-PlatPatや統合報告書等の調査範囲内で特定できず、「研究開発費」の独立した計上額も確認されなかった。技術関連支出は設備投資額(2025年3月期:653億円)等に内包されている。
2030年度デジタル領域営業利益30億円・EVバス約500台導入など長期目標を明示
デジタル成長領域単体で2030年度に営業利益30億円を目指すほか、グループ全体でEVバス約500台の導入、CO2排出量の2030年度50%削減(2013年度比)・2050年度ネットゼロ達成という環境目標を掲げ、交通インフラのDXと脱炭素を同時に推進する方針を示している。
この記事の内容
小田急電鉄株式会社は、東京都および神奈川県を中心とする沿線地域において、交通業、不動産業、および生活サービス業を中核とする事業を展開する企業である1。同社が公表した中期経営計画(2024-2026)の資料によると、事業活動の基盤となる沿線人口は約520万人に達しており、今後の開発によるさらなる沿線まちづくりを通じた発展を事業の機会として位置づけている2。交通インフラストラクチャーの要所として、1日平均乗降者数において世界一となるターミナル駅である新宿駅を運営していることに加え、沿線ネットワーク内には10万人規模の乗降客数を有する駅が11駅存在している2。これらの鉄道業およびバス業を含めた交通ネットワークを通じた年間輸送人員は、約10億人規模にのぼる2。また、沿線地域には約50校の大学が立地し、工場群の集積が見られることから、行政機関、企業、および大学との間で合計31件の協定を締結しており、地域社会との連携を推進している2。さらに、グループ通算制度の適用に伴う事業体制の再編を実施しており、百貨店業およびストア・小売業における決算期の変更を行っている1。企業情報の開示姿勢に関して、同社の公式ウェブサイトでは統合報告書を複数年度にわたって提供しており、2025年度版の統合報告書は、見開き版が48ページ(ファイルサイズ17,550KB)、単ページ版が96ページ(同17,681KB)で公開されている4。過去の開示状況として、2024年度版は見開き版38ページおよび単ページ版76ページ、2023年度版は33ページ(同5,794KB)、2022年度版は28ページ(同5,807KB)、2021年度版は30ページで構成されており、英語による開示情報やAdobe Readerのダウンロードリンク等の提供も行っている4。2026年4月時点における事業の動向として、2026年3月14日に小田急線のダイヤ改正を実施しているほか、2026年4月13日には鉄道業界で初となる手話サポートサービス「手話リンク」を16駅に導入し、2026年4月17日には訪日外国人向けのICカード乗車券「TOURIST PASMO」の導入を発表している5。
小田急電鉄株式会社が公表した決算説明資料に基づく2025年3月期の通期連結業績実績において、営業収益は4,227億円(増減額128億円、前年比3.1パーセント増)を計上し、営業利益は514億円(増減額6億円、前年比1.3パーセント増)を確保している1。経常利益は504億円(増減額1億円減、前年比0.4パーセント減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年度における新宿小田急センチュリービル売却等の特別利益計上の反動により、519億円(増減額295億円減、前年比36.3パーセント減)となっている1。セグメント別の実績において、交通業の営業利益は264億円(前年比5億円増)、不動産業の営業利益は158億円(前年度の高利益物件売却の反動により前年比19億円減)、生活サービス業の営業利益は90億円(前年比20億円増)である1。また、2025年3月期第3四半期の決算短信によれば、2024年4月1日から2024年12月31日までの第3四半期連結累計期間において、営業収益は312,470百万円(対前年同期増減率6.4パーセント増)、営業利益は44,675百万円(同10.5パーセント増)、経常利益は45,032百万円(同11.0パーセント増)を計上している3。このうち、生活サービス業における第3四半期連結累計期間の営業収益は129,137百万円(対前年同期増減率8.0パーセント増)、営業利益は7,639百万円(同46.2パーセント増)となっている3。2026年3月期の通期連結業績の会社予想に関しては、営業収益425,000百万円(対前期実績比較での増減額22億円増)、営業利益53,000百万円(同15億円増)、親会社株主に帰属する最終利益は350億円(前年度のUDS外部譲渡および相鉄ホールディングス株式売却等の特別利益の反動により同169億円減)と設定している1。配当予想について、2025年3月期の実績である年間合計40円から増配し、2026年3月期の配当予想は1株当たり年間50円としている1。資本的支出の状況として、2025年3月期実績における設備投資額は653億円、減価償却費は439億円となっており、再開発関連費用として21億円を特別損失に計上している1。
小田急電鉄株式会社は、中期経営計画(2024-2026)の中でデジタル領域を新たな成長分野に指定し、実物の資産やサービスとデジタル技術を融合させるデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略を推進している2。このDX戦略において、同社は3つの主要な提供価値を定めている。第一に「スマート(Operational Excellence)」として、業務プロセスの効率化を目指している2。第二に「アップデート(Customer Experience)」として、デジタル接点を通じた顧客体験の向上を図っている2。第三に「クリエイト(Future Creation)」として、豊かな未来を見据えた新しい価値の創造を掲げている2。これらの提供価値を実現するための具体的な技術手法として、ローコードツールを活用したアプリケーションの開発および運用を推進し、業務プロセスの合理化に取り組んでいる2。社内における技術教育および人的資本の育成方針としては、小田急電鉄株式会社の全従業員がデジタル関連の基礎知識を習得するという包括的な目標を示している2。一方で、同社が推進する「MaaS Japan」「EMot」「WOOMS」等のデジタルプラットフォームやシステムに関連する特許権および商標権の具体的な登録番号や保有件数については、J-PlatPat等の公的データベース、統合報告書、決算開示資料、および公式ニュースリリースを調査した範囲では特定できない(調査範囲内では確認できず)6。また、「研究開発活動」や「知的財産」に関する独立した項目の詳細、および特定の「研究開発費」として計上された具体的な金額実績についても、2025年3月期の決算短信や有価証券報告書等の開示資料を確認した範囲では特定できない(調査範囲内では確認できず)1。技術革新やシステム開発に関わる支出は、設備投資額や再開発関連費用等の項目に内包されて処理されている公表内容となっている1。
同社は事業ポートフォリオの再構築において、「デジタル」分野を新しい成長領域として位置づけており、2030年度におけるデジタル成長領域単体での営業利益目標を30億円に設定している2。モビリティ分野における成長戦略の中核として、MaaS(Mobility as a Service)プラットフォームの拡大を推進している2。具体的には、「MaaS Japan」および「EMot」をプラットフォームとして提供し、顧客との接点機会およびプラットフォーム上での取引量の増加を目指している2。また、デジタル接点の中核となるコミュニティプラットフォームとして「小田急ONE(オーネ)」を位置づけ、鉄道事業や駅施設のサービスと地域密着型のサブスクリプション商品を組み合わせたコンテンツの拡充を図っている2。この「小田急ONE」については、2023年度末時点での会員数実績である32万人から、中期経営計画の最終年度である2026年度末までに会員数を60万人へ拡大する目標を掲げている2。さらに、MaaS分野以外の新規デジタル事業の創出にも着手しており、資源や廃棄物の収集および運搬作業の最適化を支援するコンサルティング事業である「WOOMS(ウームス)」や、地方自治体および町内会を対象として電子回覧板サービスや災害情報共有機能を提供するコミュニティSNS「いちのいち」を展開している2。全社的な財務戦略の目標として、中期経営計画(2024-2026)の最終年度である2026年度における全体財務目標を公表しており、営業利益を500億円、自己資本利益率(ROE)を6.2パーセント、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を986億円とする計画を示している2。不動産開発分野においては、新宿駅西口エリアの開発事業を進捗させており、このプロジェクトが建設仮勘定の主要な変動要因となっている1。2026年4月の事業展開としては、新宿駅から徒歩10分の位置にある賃貸レジデンス「RESiA Yoyogi Binario」の募集を2026年5月15日から開始する予定を公表し、また「ロマンスカーミュージアム5周年ウィーク」を2026年4月18日から開始している5。
社会構造の変化に伴う労働力不足の深刻化や、交通インフラストラクチャーの安全確保といった社会課題に対する解決策として、積極的な技術革新とインフラ設備の更新を進めている。鉄道事業の持続可能性を維持するための取り組みとして、「少人数の鉄道運営体制」の構築を掲げている2。この方針に基づき、列車のワンマン運転に関する技術仕様の決定および具体的な運用計画の深化を進めている2。安全性向上および防災対策の強化としては、鉄道駅バリアフリー料金制度の仕組みを活用して各駅へのホームドアの設置工事を推進しているほか、大野総合車両所の移転を含む大規模な施設更新および耐震補強工事を計画的に実行している2。環境戦略(環境革新)に関する長期的な取り組みとして、交通ネットワークにおける車両の電動化を推進している2。この環境戦略の指標として、小田急電鉄株式会社およびグループ会社である神奈川中央交通株式会社を含めたグループ全体において、2030年度までに約500台のEV(電気)バスを導入する計画を公表している2。さらに、温室効果ガス削減に関する中長期的な数値目標として、2030年度において企業活動に伴うCO2排出量を2013年度実績と比較して50パーセント削減し、2050年度にはCO2排出量のネットゼロを達成するという目標を掲げている2。コーポレートガバナンスおよびステークホルダー・エンゲージメントの方針に関して、同社は統合報告書2025において、ステークホルダーとの価値共創に向けた姿勢を明示している6。金融機関に対しては、資金担当部門を通じて誠実な対話と情報共有を行い信頼関係を築くことで、安定した事業運営と持続可能な成長を支えるとしている6。従業員とその家族に対しては、コミュニケーションを重視して信頼に基づく強固な関係の構築に努め、従業員から得た意見を事業活動や経営に反映させるとしている6。株主に対しては、文書・株式担当部門を通じて株主優待や株主向け限定イベント等を提供し、企業に対する理解と愛着を深めるよう努めている6。取引先に対しては、互いに対等な立場で商品取引を行うことを明記している6。
小田急電鉄株式会社は、事業の中核を交通業、不動産業、および生活サービス業の3つのセグメントで構成している1。同社の公式開示資料である中期経営計画(2024-2026)関連のプレゼンテーション等によれば、これらの事業を展開する基盤となる沿線地域の人口は約520万人の規模に達している2。交通インフラのネットワークにおける最大の中核施設として、1日平均乗降者数において世界一となる新宿駅をターミナル駅として配置している2。さらに、沿線には10万人規模の乗降客数を持つ主要駅が11駅点在しており、強力な集客力と交通流動を生み出している2。鉄道事業およびバス事業の双方を合算した同社グループの年間輸送人員は、約10億人にのぼる規模となっている2。
沿線地域における社会資本の集積状況として、約50校の大学が立地しているほか、多様な産業の工場群が集積している2。小田急電鉄株式会社は、これらの沿線に存在する行政機関、一般企業、および大学等の教育・研究機関との間で、合計31件の連携協定を締結しており、地域社会との密接な協業関係を事業活動の基盤としている2。事業機会の創出要因として、近年の高速道路網の持続的な整備状況や、各地域における鉄道の延伸計画の進展を挙げている2。これらの交通インフラの拡充と、今後の開発による継続的な沿線まちづくりを通じた地域の発展を、同社の将来の事業拡大に向けた重要な機会として認識している2。
同社はステークホルダーに向けた包括的な情報開示の手段として、公式ウェブサイト上の「株主・投資家情報」ページにおいて各年度の統合報告書を継続的に提供している4。2025年度版の統合報告書については、見開きで閲覧する形式の「見開き版」が全48ページ(ファイルサイズ17,550KB)で作成されており、単一ページで構成される「単ページ版」が全96ページ(ファイルサイズ17,681KB)で公開されている4。
過年度の開示実績を遡ると、2024年度版の統合報告書は見開き版が38ページ、単ページ版が76ページで構成されている4。2023年度版である「統合報告書2023」は全33ページ(ファイルサイズ5,794KB)で提供されている4。2022年度版の「統合報告書2022」は全28ページ(ファイルサイズ5,807KB)、2021年度版の統合報告書は全30ページで構成されている4。これらの資料群は日本語版のみならず、海外投資家向けに英語版(English)のページへの導線も設けられている4。同ウェブサイト上には、報告書を閲覧するためのAdobe Readerをダウンロードする機能も配置されている4。
同社は統合報告書2025において、ステークホルダーとの価値共創に関する基本方針を記述している6。金融機関との関係においては、資金担当部門が主体となり、誠実な対話と情報共有を通じた信頼関係の構築を図り、安定した事業運営と持続可能な成長基盤の維持を支えている6。株主との関係構築については、文書・株式担当部門が中心となり、株主優待制度の運用や株主向け限定イベント等の実施を通じて、同社に対する理解の促進および愛着の深化を図っている6。従業員およびその家族に対しては、日々のコミュニケーションを重視し、信頼を基盤とした強固な関係性の構築に努めるとともに、ステークホルダーや従業員から寄せられる声を事業活動および経営意思決定に反映させることで、企業価値の向上に取り組んでいる6。取引先に対しては、相互に対等な立場を確保した上で商品取引を遂行する方針を提示している6。
小田急電鉄株式会社の公式IRページに掲載された2025年3月期の決算説明資料によれば、当該期間の通期連結業績における営業収益の実績値は4,227億円となっている1。この実績は、同社が2月時点で公表していた営業収益予想である4,240億円と比較して1,299百万円(0.3パーセント)下回る水準での着地となったが、前年度実績と比較すると128億円の増加(前年比3.1パーセント増)となっている1。営業収益の増加をもたらした主要な要因として、交通業セグメントにおける輸送人員の増加や、グループ通算制度の適用開始に伴う影響が挙げられる1。具体的には、同制度の適用により百貨店業およびストア・小売業において決算期の変更が実施され、これらの事業が10ヵ月間あるいは13ヵ月間にわたり連結対象となったことが増収に寄与している1。
セグメント別の営業収益実績を概観すると、交通業の営業収益実績は174,927百万円であり、2月時点予想の175,000百万円に対して72百万円の下振れとなった1。不動産業の営業収益実績は95,897百万円であり、2月時点予想の97,400百万円に対して1,502百万円の下振れとなっている1。生活サービス業の営業収益実績は168,695百万円であり、2月時点予想の167,600百万円に対して1,095百万円上回る結果となった1。その他の営業収益等における調整額の実績はマイナス16,821百万円であり、2月時点予想のマイナス16,000百万円に対して821百万円減少している1。
通期連結の営業利益実績は51,431百万円(資料上の丸め表記では514億円)となり、2月時点予想の51,000百万円を431百万円(0.8パーセント)上回る着地となった1。前年度実績との比較においては、6億円の増加(前年比1.3パーセント増)を達成している1。セグメント別の営業利益実績について、交通業の営業利益は26,495百万円(丸め表記264億円)となり、2月時点予想の26,300百万円を195百万円上回り、前年比でも5億円の増加となっている1。不動産業の営業利益実績は15,852百万円(丸め表記158億円)であり、2月時点予想を52百万円上回ったものの、前年度に発生した高利益物件の売却に伴う反動影響により、前年比では19億円の減少となっている1。生活サービス業の営業利益実績は9,062百万円(丸め表記90億円)であり、2月時点予想の8,900百万円を162百万円上回り、前年比でも20億円の増加を記録している1。営業利益率の状況に関して、交通業の営業利益率は15.1パーセント(2月時点予想の15.0パーセントに対してプラス0.1ポイント)、不動産業の営業利益率は16.2パーセント(同プラス0.3ポイント)、生活サービス業の営業利益率は5.4パーセント(同プラス0.1ポイント)となっている1。交通業セグメントの資産は667,710百万円(前年実績660,921百万円から6,788百万円の増加)であり、同セグメントにおける営業利益ROA(総資産利益率)は4.0パーセント(前年実績の3.8パーセントからプラス0.2ポイントの向上)となっている1。
通期連結の経常利益実績は504億円となり、前年比で1億円の減少(前年比0.4パーセント減)となった1。親会社株主に帰属する当期純利益の実績は519億円となり、前年比で295億円の大幅な減少(前年比36.3パーセント減)となっている1。この純利益の減少要因は、前年度の決算において計上されていた新宿小田急センチュリービルの売却等に伴う特別利益の剥落による反動影響である1。
2024年4月1日から2024年12月31日までの期間を対象とする2025年3月期第3四半期決算短信によれば、当第3四半期連結累計期間における経営成績は、生活サービス業を中心とする増収が牽引し、全社的に増収増益の基調となっている3。営業収益は312,470百万円(前年同期比6.4パーセント増)、営業利益は44,675百万円(同10.5パーセント増)、経常利益は45,032百万円(同11.0パーセント増)を計上している3。
生活サービス業セグメントの動向について、当該第1四半期連結会計期間末において株式会社UDSおよび沖縄UDS株式会社を連結範囲から除外する措置を実施した一方で、グループ通算制度の適用に伴って百貨店業およびストア・小売業の決算期を変更し、当該期間において10ヵ月間の業績を連結したことなどが寄与し、増収の結果をもたらしている3。その結果、生活サービス業単体の第3四半期連結累計期間における営業収益は129,137百万円(前年同期比8.0パーセント増)、営業利益は7,639百万円(同46.2パーセント増)を記録している3。
同決算短信に記載された四半期連結財務諸表の負債および純資産の部の状況は以下の通りである3。なお、括弧内の数値は前年度における実績値を示す。 負債の部における流動負債のうち、商品券等引換引当金は1,876百万円(1,889百万円)、その他の引当金は139百万円(19百万円)、資産除去債務は「-」(62百万円)、その他流動負債は126,486百万円(89,165百万円)であり、これらを含む流動負債合計は396,422百万円(349,577百万円)となっている3。 固定負債の構成項目としては、社債が157,000百万円(157,000百万円)、長期借入金が200,362百万円(235,050百万円)、鉄道・運輸機構長期未払金が43,537百万円(40,607百万円)、資産除去債務が1,499百万円(1,483百万円)、その他固定負債が42,580百万円(51,310百万円)であり、固定負債合計は444,979百万円(485,453百万円)となっている3。 これらの流動負債合計と固定負債合計を合算した負債合計は、841,402百万円(835,030百万円)として計上されている3。 純資産の部における株主資本の構成項目としては、資本金が60,359百万円(60,359百万円)、資本剰余金が58,113百万円(58,113百万円)となっている3。利益剰余金については321,506百万円が計上されている3。四半期連結財務諸表の作成に特有の会計処理の適用については「無」と報告されている3。
表1: 小田急電鉄株式会社 2025年3月期 連結業績実績およびセグメント別状況(単位:百万円)
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項目名 |
2025年3月期 通期実績 |
前年比増減額 |
セグメント別(交通業) |
セグメント別(不動産業) |
セグメント別(生活サービス業) |
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営業収益 |
422,700 |
12,800 |
174,927 |
95,897 |
168,695 |
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営業利益 |
51,431 |
600 |
26,495 |
15,852 |
9,062 |
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経常利益 |
50,400 (概算*) |
△100 |
- |
- |
- |
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当期純利益 |
51,900 (概算*) |
△29,500 |
- |
- |
- |
*注:2025年3月期の経常利益および当期純利益の実績値ならびに前年比増減額は、決算説明資料1に記載の億円単位の数値を百万円単位に換算した概算値として表記している。
2025年3月期実績の決算説明資料に基づく、連結キャッシュ・フローの状況は以下の通りである1。 営業活動によるキャッシュ・フローは55,877百万円となり、前年実績の71,626百万円と比較して15,748百万円の減少となった1。この減少の主な要因は、法人税等の支払が22,114百万円増加したことによるものである1。 投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス74,495百万円(資金支出)となり、前年実績のプラス23,435百万円(資金収入)から大幅に変動し、前年比で97,931百万円の資金支出増加となっている1。この支出増加を構成する主な要因として、設備投資支出の増加によるマイナス47,797百万円の影響、および固定資産売却収入の減少によるマイナス74,312百万円の影響が含まれている1。 上記の結果、フリーキャッシュ・フローはマイナス18,618百万円となり、前年実績の95,062百万円から113,680百万円の減少となっている1。 財務活動によるキャッシュ・フローはマイナス7,040百万円(資金支出)となり、前年実績のマイナス102,079百万円と比較して95,038百万円の資金支出減少となっている1。この資金支出の減少(資金流入側の増加)は、借入れおよび社債の発行による収入が80,400百万円増加したことが主な要因となっている1。 これらの活動の結果、現金及び現金同等物の増減額はマイナス25,658百万円となり、前年実績のマイナス7,017百万円から減少幅が18,641百万円拡大している1。最終的な現金及び現金同等物の期末残高は34,952百万円となり、前年実績の60,532百万円から25,580百万円の減少を記録している1。
設備投資等に関する全社的な状況として、2025年3月期の連結全体の設備投資額実績は653億円であり、減価償却費は439億円であった1。セグメント別の詳細を見ると、交通業における設備投資額は41,922百万円となっており、前年実績の26,946百万円から14,976百万円の大幅な増加となっている1。一方で、交通業における減価償却費は29,996百万円であり、前年実績の30,507百万円から511百万円減少している1。また、不動産開発に関連する支出として、新宿駅西口エリアの開発進捗が建設仮勘定の主要な変動要因となっていることが公表されており、この再開発に関連する費用として2025年3月期において21億円を特別損失として計上している1。
小田急電鉄株式会社が公表した2026年3月期(対象期間:2025年4月1日〜2026年3月31日)の通期連結業績予想において、営業収益は425,000百万円(対前期増減率0.5パーセント増)を計画している1。この増収予想の背景として、交通業における輸送人員の継続的な増加が見込まれる一方で、前年度に発生した生活サービス業(小売部門等)における13ヵ月間の決算期変更連結の反動影響を相殺するシナリオを描いている1。営業利益の通期予想は53,000百万円(同3.0パーセント増)と設定しており、増収効果による利益の押し上げを見込んでいる1。親会社株主に帰属する当期純利益(最終利益)の通期予想については35,000百万円(同32.6パーセント減)を公表している1。この最終利益の減益見込みは、前年度に発生した株式会社UDSの外部譲渡や相鉄ホールディングス株式会社の株式売却に伴う特別利益がなくなることによる反動を要因としたものである1。配当方針(株主還元)について、2025年3月期の年間配当実績である40円(第2四半期末15円、期末25円)から増配を実施し、2026年3月期は1株当たり年間50円の配当を予想値として設定している1。
中期経営計画(2024-2026)において、小田急電鉄株式会社は「デジタル」領域を事業ポートフォリオにおける新たな成長エンジンと位置づけ、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を本格的に推進している2。このDX戦略の核となるのは、同社が有するリアルな資産やサービスと、高度なデジタル技術との融合である2。同社はDX戦略を通じて実現する提供価値を3つの次元で定義している。第一の価値である「スマート(Operational Excellence)」においては、社内の業務プロセスの効率化および合理化を追求している2。第二の価値である「アップデート(Customer Experience)」においては、顧客と接する多様なデジタルタッチポイントを通じて、新たな顧客体験(エキサイティングな体験)の創出と向上を図っている2。第三の価値である「クリエイト(Future Creation)」においては、未来の豊かな社会の実現に向けた全く新しい価値の創造を目標として掲げている2。
これらの価値をシステム上で具現化するための技術的なアプローチとして、同社はローコードツールを積極的に活用したアプリケーションの開発体制および運用体制の構築を推進している2。これにより、専門的なプログラミング知識を持たない従業員であっても業務アプリケーションの開発に参画できる環境を整備し、業務プロセスの効率化を組織全体で加速させる仕組みを取り入れている2。
人的資本に関する技術教育およびITリテラシーの向上策として、同社は明確な内部目標を設定している。具体的には、小田急電鉄株式会社に所属する「すべての従業員」が、デジタル関連に関する基礎的な知識を習得することを目指す方針を公表している2。
デジタル成長戦略の中枢を担う具体的なプロジェクトが、MaaS(Mobility as a Service)事業の展開である2。同社はMaaS事業を通じて、自社のみならず多様な交通事業者のサービスを統合し、プラットフォームの機能拡張とそれに伴う社会的課題の解決を志向している2。プラットフォーム戦略の基盤として、「MaaS Japan」という名称のデータ基盤システムの構築および展開を進めている2。このシステムは、各種の交通機関の運行データや、フリーパス、割引優待等の電子チケット機能を提供する役割を担い、顧客接点の多様化とプラットフォーム上での取引量の増大に寄与している2。同時に、エンドユーザー向けのサービスアプリケーションとして「EMot」を提供し、MaaSの実装を進めている2。
デジタル接点の確立に向けた中核的な施策として、コミュニティプラットフォーム「小田急ONE(オーネ)」の運用に注力している2。小田急ONEは、顧客に対する主要なデジタルタッチポイントとして機能しており、鉄道の運行情報や駅施設でのサービス利用に関するコンテンツの拡充に加えて、地域に密着した多様なサブスクリプション商品を提供する基盤となっている2。同社は小田急ONEの普及拡大に関して明確なKPI(重要業績評価指標)を設定しており、2023年度末時点における実績である会員数32万人を基準として、中期経営計画の最終年度に当たる2026年度末までに、会員数を60万人規模へと拡大する定量的な目標を掲げている2。
交通モビリティの枠組みを超えた新規のデジタルビジネス領域においても、同社は独自のプラットフォーム事業を展開している2。その代表例の一つが「WOOMS(ウームス)」である2。WOOMSは、資源の回収や廃棄物の収集および運搬作業をデジタル技術によって最適化することを目的としたコンサルティングサービス事業であり、環境課題の解決に向けたBtoB(あるいはBtoG)領域でのビジネスモデルとして位置づけられている2。
もう一つの展開事例として、地域コミュニティに向けたSNSサービス「いちのいち」が挙げられる2。このサービスは、地方自治体や町内会といった地域組織を対象として設計されており、従来は紙媒体で行われていた回覧板の機能を電子化して提供している2。さらに、地域住民間での迅速な災害情報共有機能等の付加価値を備えることで、地域の防災力向上とコミュニケーションの活性化に寄与するプラットフォームとして展開されている2。
これらのデジタル領域全般における事業展開を通じて、同社は2030年度における「デジタル成長領域」単体での営業利益目標として30億円を達成するという長期的な収益目標を設定している2。
表2: 小田急電鉄株式会社 中期経営計画における主要な目標値
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指標・項目 |
対象年度/期間 |
目標値・計画値 |
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全社 営業利益 |
2026年度 |
500億円 |
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全社 ROE |
2026年度 |
6.2パーセント |
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全社 EBITDA |
2026年度 |
986億円 |
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デジタル成長領域 営業利益 |
2030年度 |
30億円 |
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小田急ONE 会員数 |
2026年度末 |
60万人 |
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EVバス導入台数 |
2030年度 |
約500台(小田急グループ全体) |
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CO2排出量削減率 |
2030年度 |
50パーセント削減(2013年度実績比) |
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CO2排出量 |
2050年度 |
ネットゼロ |
小田急電鉄株式会社の技術経営を支える特許権、商標権等の知的財産権に関する状況、および技術開発を裏付ける研究開発費の実績について、一次情報に基づく事実関係の確認を行った。
特許権および商標権の保有状況に関して、同社が推進する「MaaS Japan」「EMot」「小田急ONE」「WOOMS」「いちのいち」等のデジタルプラットフォームや新規事業名称に関する商標の登録番号、ならびにこれらのシステム基盤や鉄道運行システム等を構成する技術に関する特許権の具体的な登録番号および保有件数について、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が提供する公的データベースであるJ-PlatPatを用いた照会、および同社の統合報告書、決算開示資料、公式ニュースリリース等の開示情報を確認した範囲では、具体的な登録番号や詳細なポートフォリオの全容を特定できない(調査範囲内では確認できず)6。
研究開発活動に関する費用等の状況に関して、2025年3月期の決算短信や有価証券報告書等の財務開示資料を確認した範囲では、「研究開発活動」や「知的財産(知的資本)」に関する独立した章節の記載内容、および損益計算書等において「研究開発費」という独立した勘定科目で計上された具体的な金額実績に関する記述は特定できない(調査範囲内では確認できず)1。同社の技術革新、システム開発、および新たなプラットフォーム構築に関わる資金支出は、財務諸表上において交通業セグメントの設備投資額(2025年3月期実績:41,922百万円)や全社的な設備投資支出、あるいは新宿駅西口エリアの開発進捗に関連する建設仮勘定等の項目に内包される形で処理され、公表されている1。
表3: 知財・研究開発に関する情報開示状況(知財対応表)
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調査項目 |
情報ソース |
確認結果 |
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MaaS関連商標(MaaS Japan, EMot等) |
J-PlatPat等 |
具体的な登録番号は特定できない(調査範囲内では確認できず) |
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新規事業商標(WOOMS等) |
J-PlatPat等 |
具体的な登録番号は特定できない(調査範囲内では確認できず) |
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保有特許権の登録番号・件数 |
統合報告書, J-PlatPat等 |
具体的な登録番号や件数は特定できない(調査範囲内では確認できず) |
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研究開発費用の実績金額 |
決算短信, 有価証券報告書等 |
明確な費目としての計上額は特定できない(調査範囲内では確認できず) |
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知的財産部門の組織図 |
公式サイト |
参照リンクにアクセスできず確認不可 |
小田急電鉄株式会社は、鉄道事業における慢性的な労働力不足という社会課題に対応しつつ、事業の持続可能性を確保するための技術革新を推進している2。その中心的な取り組みとして、「少人数の鉄道運営体制」の構築を目指す方針を掲げている2。この方針を実現するための具体的な施策として、列車運行システムにおけるワンマン運転の導入に向けた仕様の策定および運用計画の深化作業を進めている2。
乗客の安全性向上および防災対策の強化に向けたインフラ投資も継続して実施している。具体的な安全対策として、鉄道駅バリアフリー料金制度の仕組みを資金調達の一助として活用し、各駅のプラットフォームに対するホームドアの設置工事を計画的に進めている2。また、鉄道車両のメンテナンス拠点である大野総合車両所の移転プロジェクトを含む、大規模な鉄道関連施設の更新工事や施設の耐震補強工事を推進し、自然災害に対する交通インフラのレジリエンス向上を図っている2。
環境対応(E:Environment)の側面において、同社はモビリティシステムの環境負荷低減に向けた明確な目標を設定し、「環境革新」と位置づけて施策を実行している2。公共交通機関の電動化に関する計画として、小田急電鉄株式会社およびそのグループ会社である神奈川中央交通株式会社を含めた小田急グループ全体で、2030年度までに約500台のEV(電気)バスを導入する計画を公表している2。
地球温暖化対策の指標となるCO2排出量の削減目標について、同社は中長期的な二段階のターゲットを設定している。2030年度においては、企業活動に伴うCO2排出量を2013年度の実績水準と比較して50パーセント削減するというマイルストーンを掲げている2。さらに、2050年度においては、CO2排出量のネットゼロ(実質ゼロ)を達成するという最終目標を示し、環境保全と持続可能な社会の実現に向けたコミットメントを公表している2。
2026年4月時点における同社の事業活動およびコーポレートアクションとして、公式ニュース等を通じて複数の取り組みが公表されている5。交通サービスの利便性向上施策として、2026年3月14日に小田急線のダイヤ改正を実施した5。また、2026年4月13日には、多様な利用客へのアクセシビリティ向上を目的として、鉄道業界で初となる手話サポートサービス「手話リンク(手話リンク)」を16の駅に導入したことを発表している5。インバウンド需要に対する施策として、2026年4月17日に訪日外国人旅行者を対象とした専用のICカード乗車券「TOURIST PASMO」の導入に関する情報を公開している5。
沿線施設におけるプロモーション活動として、2026年4月14日に「ロマンスカーミュージアム5周年ウィーク」の開催を発表し、当該イベントを4月18日から開始している5。また、2026年4月21日には、テレビアニメ「氷の城壁」とのコラボレーションによるスタンプラリー企画を4月27日から開始する予定を公表している5。
不動産事業の動向として、2026年4月23日に新規の賃貸レジデンス物件である「RESiA Yoyogi Binario」に関する募集情報を公開した5。同物件は新宿駅から徒歩10分の圏内に位置しており、2026年5月15日から入居者の募集を開始する計画を示している5。
本レポートの作成にあたり、提供された一次情報および公的データベース等の検索結果を調査したものの、以下の事項については引用可能な一次情報による裏付けが取れなかった、または該当する情報が存在しなかったため、記述要件として特定に至らなかった。
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本レポートは、公開情報をAI技術を活用して体系的に分析したものです。
情報の性質
ご利用にあたって
本レポートは知財動向把握の参考資料としてご活用ください。 重要なビジネス判断の際は、最新の一次情報の確認および専門家へのご相談を推奨します。
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