3行まとめ
中期経営計画「HIRAKU2030」で営業利益620億円・ROE9.0%以上を目標設定
2025〜2030年度の6年間を対象とする計画で、営業収益5,810億円、営業利益620億円、連結ROE9.0%以上を掲げ、事業セグメントを5つに再編して資本効率の向上を推進する。
生成AI「KEIO AI-HUB」やAIアバターなど、鉄道DXを多層的に現場実装
独自の生成AIツール「KEIO AI-HUB」と音声プラットフォーム「Buddycom」の連携による異常時対応の迅速化、日立製作所とのAIアバター実証実験、踏切AIカメラの導入など、安全性向上と業務効率化の両面でAI技術の現場実装が進む。
80億円規模のCVCファンド設立とオープンイノベーション3プログラムで共創を加速
2026年2月に総額80億円のCVCファンド「京王れーるファンド」を設立し、スタートアップとの資本連携を本格化。社員起点の「My turn」、事業部起点の「JISOU」、エリア起点の「ROOOT」の3つのオープンイノベーションプログラムを並行運用し、循環型農業支援や温浴施設支援など具体的な事業化案件を創出している。
この記事の内容
事業概要 京王電鉄株式会社およびその連結子会社は、東京都および神奈川県を地盤として、運輸業、不動産賃貸業、不動産販売業、ホテル業、生活サービス業などの事業を展開している 1。2025年5月12日に公表された京王グループ中期経営計画「HIRAKU2030」において、事業ポートフォリオの明確化を目的とした事業セグメントの再編が実施された 2。具体的には、従来の不動産業のサブセグメントが不動産賃貸業と不動産販売業に分割されたほか、レジャー・サービス業からホテル業が独立する形となった 2。さらに、不動産業に含まれていた株式会社リビタのホテル業がホテル業セグメントへ移管され、これら4セグメント以外の事業は生活サービス業として集約された 2。鉄道事業においては、「日本一安全でサービスの良い持続可能な鉄道の実現」を掲げ、2025年度の設備投資計画において、鉄道事業設備投資に総額434億円(単位:億円、対象期間:2025年度、区分:計画、出典:2025年度の鉄道事業設備投資に総額434億円)を充当することが公表されている 3。この投資計画に基づき、京王線の笹塚駅から仙川駅間に至る約7.2kmの区間における連続立体交差事業や、各駅におけるホームドアの整備、さらには新宿駅の改良工事や渋谷駅のバリアフリー化推進といった大規模なインフラ整備が進行中である 3。また、2026年1月には株式会社総合車両製作所が製造を担った新型通勤車両2000系が営業運転を開始し、車両の更新による安全性および快適性の向上が図られている 4。
財務 2025年度から2030年度までの6年間を対象とする京王グループ中期経営計画「HIRAKU2030」において、持続的な成長と資本効率の向上を目指す各種の財務目標が設定されている 2。2030年度を対象期間とした連結ベースの計画値として、営業収益は5,810億円(単位:億円、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:京王グループ中期経営計画「HIRAKU2030」)、営業利益は620億円(単位:億円、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、EBITDAは1,061億円(単位:億円、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)を掲げている 2。資本コストを意識した経営指標として、連結経常利益ROAを4.5%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、連結ROEを9.0%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)とする水準を設定し、株主資本コストを継続的に上回るROEの達成を目標としている 2。株主還元の方針については、資産の入替え等により創出されたキャッシュを積極的に充当し、中期経営計画の6カ年累計で総還元性向50%(単位:%、対象期間:2025年度〜2030年度、区分:計画、出典:同左)を目安とする指標が示されている 2。また、事業セグメント別の2030年度の営業利益ベースROA計画値として、運輸業が2.5%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、不動産賃貸業が7.5%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、不動産販売業が9.0%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、ホテル業が8.0%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、生活サービス業が14.0%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)と設定されている 2。なお、不動産販売業のROAは営業利益を棚卸資産残高で除して算出される形式が採用されている 2。財務の健全性に関する指標においては、D/Eレシオを1.1倍(単位:倍、対象期間:計画期間中、区分:計画、出典:同左)、ネット有利子負債/EBITDA倍率を4倍台(単位:倍、対象期間:計画期間中、区分:計画、出典:同左)に維持する方針である 2。
技術・知財 デジタルトランスフォーメーション(DX)とAI技術の活用を通じた安全性向上および業務改革、ならびにこれらを支える知財基盤の構築が推進されている 2。鉄道現場における業務支援と情報伝達の正確性向上を目指し、音声情報共有プラットフォーム「Buddycom」と、独自の生成AIツール「KEIO AI-HUB」を連携させた機能が導入された 8。これにより、膨大なマニュアルや規程類、過去の点検事例を音声で即時に検索・要約できる環境が構築され、異常時の初動対応スピードと判断の正確性向上が図られている 8。また、駅における旅客案内サービスの領域では、株式会社日立製作所との連携により、相模原線の橋本駅および京王多摩センター駅において、AIアバターを搭載したタッチパネルディスプレイによる実証実験が実施された 10。車両技術においては、新型通勤車両2000系の設計段階でグループの感性AI株式会社が提供するサービスを活用し、幅広い世代のニーズを分析した上でデザインが決定された 4。さらに、環境性能向上と保守業務の効率化を目的として、フルSiC素子を用いたVVVFインバータ制御装置や次世代型の車両情報管理装置が導入されている 3。顧客向けサービスとしては、株式会社findが提供するAIを活用したお忘れ物検索サービス「落とし物クラウドfind」が導入されており、この取り組みは「デジデン甲子園」において内閣総理大臣賞を受賞するなど、技術活用の成果として報告されている 1。
戦略・成長 2025年度から2030年度までの期間を対象とする中期経営計画「HIRAKU2030」は、2030年代に本格化する新宿や橋本エリアでの大規模まちづくりプロジェクトを万全な体制で迎えるための基盤構築期間として位置づけられており、これと連動した成長戦略が展開されている 5。新たな移動需要の創出目標として、約350万人(単位:万人、対象期間:2030年度まで、区分:計画、出典:京王グループ中期経営計画「HIRAKU2030」)を新たに創出することを掲げ、顧客とのデジタル接点を約100万人(単位:万人、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)に拡大する計画である 2。社外連携による無形資産や新規事業の創出に向けては、複数のオープンイノベーションプログラムが運用されている 7。社員起点のオープンイノベーションプログラム「My turn」からは、循環型農業支援プロジェクトや温浴施設向け支援サービスなどの事業化案件が決定し、外部パートナー企業との実証実験やサービス展開が進められている 7。これに加えて、事業部起点のプログラム「JISOU」やエリア起点の「ROOOT」も並行して進行中である 7。さらに、スタートアップ企業等との共創を資金面から加速させるため、2026年2月には総額80億円(単位:億円、対象期間:設定時、区分:実績、出典:出資による共創の加速化を目指し、80億円規模のCVCファンド『京王れーるファンド』を設立)規模のコーポレート・ベンチャー・キャピタルファンド「京王れーるファンド」が設立された 14。
リスク・ESG 鉄道事業における安全性向上を最重要課題と位置づけ、重大運転事故発生件数0件(単位:件、対象期間:中長期、区分:計画、出典:京王グループ中期経営計画「HIRAKU2030」)を目標として掲げている 2。この目標達成に向け、ホームドアの整備を推進しており、井の頭線においては2020年代中頃、京王線においては2030年代前半までに全駅への整備を完了する計画である 3。また、踏切における安全対策として、エリア検知式障害物検知装置や踏切AIカメラの導入を通じた監視体制の強化が図られている 3。環境課題への対応においては、脱炭素社会の実現を目指し、連結でのScope1およびScope2のCO2排出量を2019年度比で30%削減(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)する目標、ならびに鉄道事業において2013年度比で46%削減(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)する目標が設定されている 2。人的資本の多様性確保とガバナンス体制の強化に向けた取り組みも進められており、連結ベースでの女性管理職比率を15%(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)および30%(単位:%、対象期間:2050年度、区分:計画、出典:同左)とする目標が公表されている 2。加えて、取締役会の多様性と独立性を高めるため、独立社外取締役比率を50%(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、女性取締役比率を30%(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)とする指標を掲げている 2。平時のリスク管理体制としては、コンプライアンス担当役員を委員長とするリスクマネジメント委員会が設置されており、優先リスクの対策状況をモニタリングする仕組みが構築されている 1。
京王電鉄株式会社は、2025年5月12日に京王グループの新たな指針となる中期経営計画「HIRAKU2030」を公表した 2。本計画は、2025年度から2030年度までの6年間を対象期間として設定しており、2030年代に本格化する新宿や橋本エリアにおける大規模なまちづくりプロジェクトを万全の体制で迎えるための基盤構築期間として位置づけられている 5。事業の推進方針として、資産および資本効率性の向上を目的とした取り組みが強調されており、生産性の向上、不動産販売業の強化、ならびに保有資産の売却を通じたキャッシュの創出を実施し、長期的な視点に立った成長投資や安全性向上に必要な投資資金を確保する計画である 5。
財務上の数値目標に関して、2030年度を対象期間とした連結ベースの計画指標が公表されている 2。具体的には、営業収益5,810億円(単位:億円、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:京王グループ中期経営計画「HIRAKU2030」)、営業利益620億円(単位:億円、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、EBITDA1,061億円(単位:億円、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)を掲げている 2。資本コストを意識した経営を実践し、株主資本コストを継続的に上回るROE水準の達成を目指すための指標として、連結経常利益ROAを4.5%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、連結ROEを9.0%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)とする目標を設定している 2。また、創出されたキャッシュアロケーションに基づく株主還元方針として、計画対象である6カ年の累計において総還元性向50%(単位:%、対象期間:2025年度〜2030年度、区分:計画、出典:同左)を目安とすることが示されている 2。財務の健全性維持に関する指標では、D/Eレシオを1.1倍(単位:倍、対象期間:計画期間中、区分:計画、出典:同左)、ネット有利子負債/EBITDA倍率を4倍台(単位:倍、対象期間:計画期間中、区分:計画、出典:同左)とする方針である 2。
本中期経営計画の策定に伴い、事業ポートフォリオの役割とビジョンをより明確にするため、事業セグメントの再編が実施された 1。再編前の不動産業セグメントに含まれていたサブセグメントは、不動産賃貸業と不動産販売業の2つに分割された 2。また、従来のレジャー・サービス業からホテル業が独立したセグメントとして切り出されるとともに、不動産業セグメントに含まれていた株式会社リビタのホテル事業がこの新たなホテル業セグメントに移管された 2。これら運輸業、不動産賃貸業、不動産販売業、ホテル業の4セグメントに含まれないその他の事業領域は、生活サービス業という一つのセグメントに集約された 2。この再編後の各セグメントに対して、2030年度を対象期間とする営業利益ベースのROA計画値が個別に設定されている 2。運輸業は2.5%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、不動産賃貸業は7.5%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、不動産販売業は9.0%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、ホテル業は8.0%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、生活サービス業は14.0%以上(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)である 2。なお、不動産販売業のROAについては、計算上の特性から営業利益を棚卸資産残高で除して算出する方針が記載されている 2。
非財務情報に基づくマテリアリティKPIについても新たな設定が行われた 1。安全と安心に関する最重要指標として、重大運転事故発生件数0件(単位:件、対象期間:中長期、区分:計画、出典:同左)を掲げている 2。生産性に関する指標では、デジタル技術の活用等を通じた業務改革により、鉄道事業の生産性を2024年度比で1.09倍(単位:倍、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)に向上させるとしている 2。顧客基盤の強化に向けては、デジタル接点を約100万人(単位:万人、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)に拡大し、新しい移動需要を約350万人(単位:万人、対象期間:2030年度まで、区分:計画、出典:同左)創出する目標が設定された 2。ガバナンスとダイバーシティの領域においては、連結ベースでの女性管理職比率を2030年度に15%(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、2050年度に30%(単位:%、対象期間:2050年度、区分:計画、出典:同左)とする目標、および取締役会における独立社外取締役比率を50%(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)、女性取締役比率を30%(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)とする目標が公表されている 2。環境分野においては、脱炭素社会の実現に向けて、連結でのScope1およびScope2のCO2排出量を2019年度比で30%削減(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)し、鉄道事業単体においては2013年度比で46%削減(単位:%、対象期間:2030年度、区分:計画、出典:同左)する計画である 2。
鉄道事業においては、京王グループ理念である「信頼のトップブランド」の確立を目指し、「日本一安全でサービスの良い持続可能な鉄道の実現」を掲げた設備投資が継続的に実施されている 3。2025年5月に発表された2025年度の設備投資計画における鉄道事業設備投資額は、総額434億円(単位:億円、対象期間:2025年度、区分:計画、出典:2025年度の鉄道事業設備投資に総額434億円)である 3。この投資資金は、連続立体交差事業をはじめ、ホーム安全対策、大規模災害への備え、自動運転(ワンマン)化に向けた設備の導入および改修、バリアフリー設備の整備、ならびにデジタル技術を活用した安全性向上策に割り当てられている 3。
ホームにおける転落や列車との接触事故を未然に防止するためのホーム安全対策として、ホームドアの整備が事業の中核として進行している 3。導入計画のスケジュールとして、井の頭線においては2020年代中頃(2027年度まで)に、京王線においては2030年代前半までに全駅への整備を完了する予定とされている 3。2025年度の整備対象駅として、井の頭線の永福町駅(1番線および3番線)ならびに高井戸駅における整備が進められている 3。ホームドアの整備に並行して、車両とホームの段差および隙間を縮小するための転落防止ゴムの整備といった対策も実施されており、バリアフリー対応の強化が図られている 3。
将来的な労働力不足を見据えた持続可能な事業運営体制の構築として、自動運転設備を活用したワンマン運転の導入に向けた整備が推進されている 3。導入スケジュールとして、井の頭線での導入を2020年代後半に、京王線での導入を2030年代中頃に予定している 3。井の頭線においては2025年3月から自動運転に向けた実証試験が開始されており、この結果を踏まえて車両設備および地上設備の導入と改修が順次行われている 3。
大規模事業として、京王線の笹塚駅から仙川駅間に至る約7.2kmの区間において連続立体交差事業が実施されている 3。この事業は、対象区間内の25カ所の踏切を廃止することを目的としており、2025年度は継続して用地取得および高架橋の構築工事が行われている 3。また、駅の改良および開発プロジェクトとして、京王線新宿駅のホーム延伸および改札口の新設工事が行われており、これにより東京メトロ丸ノ内線との乗り換え時間の短縮が図られる計画である 3。2025年度の工事内容として、既設躯体の解体作業等が実施されている 3。バリアフリー化のさらなる推進においては、渋谷駅におけるエレベーターピットの新設工事などが2026年度の完了を目標として実施されている 3。
環境負荷低減と脱炭素循環社会への貢献に向けた取り組みとして、鉄道設備における消費電力削減策が実施されている 3。駅施設におけるLED化が推進されており、新宿駅や府中駅を含む6駅のホーム照明、および西調布駅や京王永山駅のコンコース照明の更新が対象となっている 3。電力供給設備においては、植物由来の油を使用した環境配慮型変圧器が代田変電所に導入された。この設備の導入により、対象設備からのCO2排出量が約65%削減(単位:%、対象期間:導入後、区分:計画、出典:2025年度の鉄道事業設備投資に総額434億円)されると記載されている 3。
鉄道事業におけるサービスの高度化と環境性能の向上を目的として、株式会社総合車両製作所により製造された新型通勤車両「2000系」が導入された 4。全体の導入計画として、2027年3月までに10両固定編成を4編成、合計40両(単位:両、対象期間:2027年3月まで、区分:計画、出典:新型通勤車両2000系の営業運転予定について)を導入することが定められている 4。このうち最初の1編成(10両)に関する営業運転開始予定日が2026年1月31日に設定され、順次運行が開始された 4。運行開始に先立つ2026年1月24日には、府中競馬正門前駅にてお客さま向けお披露目会が開催されたほか、若葉台車両基地での撮影会および府中競馬正門前駅までの試乗会が実施された 4。
2000系の開発コンセプトは「もっと、安全に、そして安心して、これからもずっと、のっていただける車両を。全ての世代に、やさしく、そして、ワクワクしてもらえる車両を」と規定されている 4。このコンセプトに基づくデザインの策定プロセスにおいて、京王グループに属する感性AI株式会社が提供する「人の感性を分析できるAIサービス」が利用された 4。幅広い世代の顧客や多様な社員から得られたニーズを当該AIサービスを用いて分析し、最もコンセプトに合致するデザインが採用された 4。車両の前面および側面の外観は「円」をモチーフとしたラウンド形が採用されており、多くの利用者が優しさと安心感を感じられる表現となっている 4。内装に関しても同様にラウンド形を基調とした設計が施され、心を落ち着かせるナチュラルな空間が演出されている 4。
車内設備における最大の特徴として、5号車に京王電鉄として初となる大型フリースペースが設置された 4。このスペースは、子育て世代やシニア世代をはじめとするあらゆる年齢や性別、目的を持つ利用客が安全かつ快適に鉄道を利用できるよう設計されたエリアである 4。座席を配置しないことでベビーカーや車いすでの利用エリアを拡大した構造となっており、さらに子供が夢中になれるような大型窓が設けられている 4。車両の乗降利便性を考慮し、駅のエレベーター設置率が高い5号車が設置場所として選定された 4。当該スペースの愛称については、2025年5月7日から6月10日にかけて一般投票が実施され、候補であった「ぬくもりライド」(388票)や「ひまわりライド」(227票)を上回る1,196票を獲得した「ひだまりスペース」が採用された 4。この名称には、大型窓から光が集まる「ひだまり」となることや、利用客が心休まる場所となることへのイメージが込められている 4。
安全対策とバリアフリー機能の拡充として、全車両に車椅子スペースが各1箇所設置されている 4。ドア付近には従来型車両と比較して吊り手が5個増設されており、開口中のドアをチャイム音で知らせる装置も導入された 4。セキュリティと非常時の対応機能として、各車両にリアルタイム伝送機能を有する車内防犯カメラが4台設置され、非常通話装置には乗務員と速やかに連絡が取れる双方向対話式が採用されている 4。また、車両代替新造に伴い、全車両の通路が貫通した仕様が導入され、車両併結による非貫通部分が解消された 4。車内環境の向上を意図して、パナソニック株式会社の商標である「nanoe X(ナノイーX)」方式の空気清浄機が各車両に2台搭載されている 4。
環境性能と保守業務の効率化に向けて、車両の制御装置に低損失のパワーデバイスであるフルSiC(炭化ケイ素)素子を用いた新型のVVVFインバータ制御装置が導入された 3。これにより、既存の7000系車両と比較して約20%の省エネ性能向上(単位:%、対象期間:導入後、区分:計画、出典:新型通勤車両2000系の営業運転予定について)が図られ、消費電力のさらなる削減と車両の軽量化が実現されている 4。加えて、次世代型の車両情報管理装置が採用されており、車両機器の状態を常時監視することによる不具合時の早期対応や、蓄積されたデータの予防保全への活用が意図されている 4。
運行開始に伴う利便性向上施策として、2026年1月31日より京王アプリ内の「列車走行位置お知らせサービス」に新機能「車種表示モード」が追加された 4。本機能により、列車のアイコンを操作することで、2000系および既存の5000系車両の走行位置がイラストアイコンで表示される仕様となっている 4。
京王グループでは、業務改革と顧客サービスの向上を目的に、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進およびAI技術の実社会への実装が多角的に行われている 1。鉄道現場における業務支援と情報伝達の正確性向上を目指し、音声情報共有プラットフォーム「Buddycom」と、京王独自の生成AIツール「KEIO AI-HUB」をAPI連携させた機能が2026年3月より順次導入された 8。Buddycomは、場所を選ばない即時通話、映像ライブ配信による遠隔状況把握、音声の自動テキスト化機能を備えており、駅係員や乗務員等の連携強化および緊急時の安全確保を目的に2022年より導入されている 8。これに生成AIを連携させることで、膨大なマニュアルや規程類、過去の点検事例を「音声」によって即時に検索し、要約された回答を得られる環境が構築された 8。このシステムの導入は、異常時における初動対応の迅速化、判断の正確性向上、心理的負担の軽減、および対話形式による乗務員・指令員の自己学習促進を通じた人財育成を目的としている 8。連携基盤となるKEIO AI-HUBは、個人情報やプライバシー保護に配慮した社内固有のセキュリティ環境下で運用されており、鉄道、バス、不動産、ホテル、生活サービス等を含む京王グループの34社において活用されている(2026年3月時点) 9。
駅における旅客案内サービスの領域では、インバウンド対応やタイムリーな情報共有を通じた案内サービスの質向上、および駅係員の案内業務サポートを目的として、AIアバターを搭載したタッチパネルディスプレイによる実証実験が行われた 10。株式会社日立製作所との連携により実施されたこの実験は、2024年11月27日から2025年3月2日の期間において、相模原線の橋本駅(2階改札付近)および京王多摩センター駅(2階精算機付近)の2駅で実施された 10。ディスプレイを通じて、電車の時刻表、乗り換え案内、駅周辺の施設案内、目的地までの移動経路等の情報が提供され、顧客の知りたい情報を収集・分析するとともに、AIアバターの利用率に関する検証が行われた 10。
遺失物管理の効率化と顧客の利便性向上に向けては、スタートアップ企業である株式会社findとの事業共創の一環として、AIを活用したお忘れ物検索サービス「落とし物クラウドfind」が導入されている 1。同サービスは2023年5月に京王電鉄において導入され、LINEを通じた24時間の問い合わせ対応が可能となった 10。この仕組みは、デジタル田園都市国家構想の実現に向けた取り組みを表彰する「デジデン甲子園」において内閣総理大臣賞(優勝)を受賞しており、グループのデジタル技術活用を象徴する事例として統合報告書等で紹介されている 1。2024年8月13日には、グループ会社である西東京バス株式会社の運行する路線バスおよび高速バスでの遺失物対応にも同サービスが展開された 11。西東京バスへの導入にあたり、京王電鉄はLINEを通じた問い合わせ対応のサポートを実施しており、事業間の垣根を超えたグループ内連携の取り組みとなっている 11。
鉄道のインフラ維持管理と安全性確保におけるデジタル・AI活用として、踏切や保守業務への画像解析技術の導入が進められている 3。2025年度の計画において、井の頭線の踏切5カ所に高精度なエリア検知式障害物検知装置が新設されるとともに、踏切AIカメラを導入し、記録映像のAI解析による不審者の侵入監視システムが整備されている 3。また、状態監視保全(CBM)の一環として、車両の屋根上や床下に設置したカメラの映像からAIが異常の有無を自動判定するシステムの構築が進められており、精度の検証およびデータ収集が行われている 1。インフラのデータ管理においては、従来から運用されている鉄道構造物のGISプラットフォーム「K-PaS」に加え、2024年3月より鉄道沿線設備の維持管理向けデジタル・ソリューション「てつてん」が採用されており、技術系部署間での現場施設状況の共有化と運営の効率化が図られている 10。
「HIRAKU2030」の中期経営計画において、共創やオープンイノベーションを活用したにぎわいづくりが重点施策の一つとして掲げられている 2。この方針に基づき、京王電鉄は自社のリソースをオープンプラットフォームとして機能させ、スタートアップ企業をはじめとする多様な外部パートナーとの事業創出を推進している 1。この共創プロジェクトの創出数は、グループの経営管理における新たなKPIとして設定されている 1。
スタートアップ企業との共創に向けた資金拠出と推進体制の強化を目的として、2026年2月1日にコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)ファンドである「京王れーるファンド」が設立された(ニュースリリース公表は2026年2月2日付) 14。このファンドは総額80億円(単位:億円、対象期間:設定時、区分:実績、出典:出資による共創の加速化を目指し、80億円規模のCVCファンド『京王れーるファンド』を設立)の規模で組成されている 15。出資を通じた支援体制を構築することで、コンテンツおよび観光、ライフスタイル、DXおよびAI、環境などの領域におけるスタートアップ企業との協業を加速させる方針が示されている。
社内リソースと外部企業の技術・アイデアを掛け合わせる仕組みとして、複数のオープンイノベーションプログラムが並行して運用されている 7。その中核となる社員起点のオープンイノベーションプログラム「My turn」は、2024年7月に開始され、社内から提案されたアイデアに基づき外部企業との共創実証が行われた 7。同プログラムは株式会社ユニッジの支援のもと運営され、255件の書類審査対象から11件が一次審査を通過した 7。その後、2025年6月18日に実施された二次審査会を経て、実証実験に進む6件のアイデアと共創パートナーが選定された 7。選定された案件は、レストラン京王の所属社員起案による「飲食店の困りごと解決 店舗レスキュー」(共創パートナー:株式会社オプティマインド)、経営企画部社員起案による「高付加価値な食材の安定供給で飲食店の課題を解決」(株式会社アクポニ)および「2倍の幸せな暮らしを実現!恋人が欲しくてもできない人を救う」(株式会社コイサポ)、車両電気部社員起案による「温浴施設向け支援サービス『CLEAN ゆ LAND』 〜地域の文化とコミュニティを守るために〜」(株式会社ONEBLOW)、デジタル戦略推進部社員起案による「インディーズアーティスト支援」(株式会社any style)、鉄道営業部社員起案による「京王でしか撮れない!コスプレ撮影イベントの提供」(株式会社WCS)の6件である 7。これらの実証実験を経た後、2026年1月15日に実施された最終審査会において、2件の案件が事業化に向けて決定された 7。
事業化が決定した案件の一つは、「飲食店が『選ばれ続ける存在』に変わる京王発の循環サイクル」と題された循環型農業支援プロジェクトである 7。この事業では、株式会社アクポニを共創パートナーとし、水耕栽培と養殖を組み合わせた次世代の循環型農業であるアクアポニックス技術が活用されている 7。異常気象や生産者の後継者不足による食材の不安定な供給という課題に対し、環境配慮や地産地消といった付加価値を持つ食材を飲食店へ安定的に提供することを目指している 7。実証実験として、2025年8月4日から2026年1月31日の期間、「高尾の森わくわくビレッジ」の敷地内に施設が設置され、東京都水産試験場が開発したブランド魚「奥多摩やまめ」と、わさびやクレソンなどの野菜が生産された 7。同年11月には、生産された食材の輸送と店舗販売の実証実験が実施された 7。輸送にあたっては、「わくわくビレッジ」から西東京バスの営業路線を利用して高尾駅まで運び、そこから京王線を利用して笹塚駅まで活魚の状態で輸送するという、公共交通機関を活用した物流ルートが検証された 7。笹塚駅直結の「フレンテ笹塚」内にある鮮魚専門店「さかなや旬 京王笹塚店」にて活締めと加工が行われた後、沿線の飲食店へ納品された 7。販売店舗として、「たまの里 京王高幡SC店」にて奥多摩やまめ刺身、「トラットリア・フィーロ」にて奥多摩やまめの瞬間スモークとルッコラのクリームパスタ、「すし酒場くらや 調布本店」にて奥多摩やまめの握り、「京王プラザホテル八王子 日本料理みやま」にて奥多摩やまめ焼霜造り、「Bistro D'」にて奥多摩やまめのカルパッチョ、「港町のイタリアン モンテロッソ」にて奥多摩やまめのフリットといったメニューが提供された 7。この取り組みは、環境負荷の少ない食材の供給と、鉄道・バスを活用することによる物流課題への対応やストーリー性の創出を目的としている 7。
もう一つの事業化案件は、「温浴施設向け支援サービス『CLEAN ゆ LAND』〜地域の文化とコミュニティを守るために〜」である 7。温浴施設のプロデュースや清掃事業を手掛ける株式会社ワンブロウをパートナーとして選定し、経営者の高齢化や清掃などの運営負担により廃業危機にある公衆浴場(銭湯)の存続を支援するサービスである 7。2025年10月2日より調布市の公衆浴場「神代湯」において実証実験が行われ、蓄積された汚れが目立つ洗い場のタイルや浴槽などをプロの技術で清掃することで、利用者が求める「清潔」という付加価値が創出された 7。また、清掃のプロセスやビフォーアフターの比較画像をSNSで発信するとともに、特設WEBページを通じて施設の歴史や利用客のインタビューを公開するPR戦略が展開され、地域外からの新規顧客獲得に向けた検証が行われた 7。
「My turn」の他にも、事業部門が主体となって外部企業と課題解決に向けた仮説検証を行う事業部起点のオープンイノベーションプログラム「JISOU」が展開されている 7。さらに、特定の地域エリアを起点とするプログラム「ROOOT」も実施されており、下北沢や橋本などのエリアにおいて地域特性に応じた実証実験が行われている 7。これらのプログラムや個別の共創を通じて、多様なサービス開発の実証が行われている 7。主な取り組みとして、株式会社休日ハックとの共創による沿線を舞台にした完全オリジナルストーリーの「小説×街歩き」体験型コンテンツ「いつも駅からだった」の実証実験、株式会社FASHION Xとの共創による駅や施設での古着回収を通じた衣類循環型社会のインフラ構築の実証実験、株式会社はこぶんが提供するデジタルレターVOCコミュニケーションツール「ホンネPOST」を用いた下北沢での声収集の実証実験などが実施された 7。2025年から2026年にかけては、Sally株式会社との共創による下北沢を舞台にしたマーダーミステリーブックの実験販売(2026年3月)、株式会社ワイヤレスブレインとの共創による移動販売会場での「AI健康チェック」の実施(2026年3月)、バリューコマース株式会社との共創による宿泊業界向け「予約管理DX」機能の共同開発(2026年2月)、STOCK POINT株式会社との共創による京王ポイントを用いた「株体験」の実証実験(2026年1月)、株式会社NOTO Naoraiとの共創による第三の和酒「能登浄酎」を使った新メニュー開発の実証実験(2026年3月)など、エンターテインメントからDX、飲食に至るまで幅広い領域での外部連携が進められている 7。
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セグメント名 |
ROA計画値(営業利益ベース) |
対象事業および再編内容 |
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運輸業 |
2.5%以上 |
鉄道、バス、タクシー事業等 |
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不動産賃貸業 |
7.5%以上 |
従来の不動産業のサブセグメントより再編 |
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不動産販売業 |
9.0%以上 |
「営業利益/棚卸資産残高」の計算式により算出 |
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ホテル業 |
8.0%以上 |
レジャー・サービス業から独立。株式会社リビタのホテル事業を移管・統合 |
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生活サービス業 |
14.0%以上 |
上記4セグメント以外の事業領域を集約 |
(出典:京王グループ中期経営計画「HIRAKU2030」)
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プログラム/システム名 |
連携先/パートナー企業 |
プロジェクトの概要・目的 |
実施ステータス |
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「My turn」採択案件 |
株式会社アクポニ |
アクアポニックスを利用した循環型農業と鉄道・バス輸送を連携させた食材供給網の構築。 |
事業化決定 |
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「My turn」採択案件 |
株式会社ワンブロウ |
公衆浴場のプロ清掃およびSNS・WEB発信支援による温浴施設の新規顧客獲得プログラム(CLEAN ゆ LAND)。 |
事業化決定 |
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共創推進支援 |
株式会社ユニッジ |
協業の伴走支援、社員起点オープンイノベーションプログラム「My turn」の運営支援。 |
稼働 |
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鉄道現場DX |
株式会社サイエンスアーツ等(※製品:Buddycom) |
音声共有プラットフォームと社内生成AI「KEIO AI-HUB」を連携し、マニュアル等の音声検索・要約機能を現場に実装。 |
稼働 |
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駅案内サービス |
株式会社日立製作所 |
駅係員の案内業務サポートおよび旅客向けサービス向上のためのAIアバター搭載ディスプレイ実証実験(橋本駅等)。 |
終了(実証完了) |
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遺失物管理DX |
株式会社find |
AIを活用した遺失物検索クラウド「落とし物クラウドfind」の導入。西東京バスにも展開しグループ連携を強化。 |
稼働 |
(出典:各ニュースリリースおよび公式サイト情報に基づく)
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