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知識はAIと協働して深めていくもの 〜AI時代の新しい「書く力」〜

AIと共に文章を書くとき、私たちはそれをどのように活用しているのか

みなさんはAIをどのような場面で活用されていますか? 多くの人が活用している一つは、文章の作成ではないでしょうか。

今やAIは、使い方次第で人間が書いたような文章を生成し、アイデアの創出や構成の提案、文章の推敲までサポートする能力を持っていますよね。

 使いこなす技術があってAIに頼れるほどの人、あまり活用せず基本は自分で執筆する人など、使い方は人それぞれだと思います。あまり活用しないという人の中には、慣れていない人や、AIを信用していない人、なども含まれるでしょう。

ここで一つの興味深い論文があります。

生成 AIを用いた協働執筆プロセスにおいて、人間がどのようにAIの生成内容を取り込み、知識を構築しているかを分析したドイツの研究です。

この分析から、人はAIをどのように捉え、どのように知識を使っているのかが見えてきます。そしてAIは単なる執筆の補助ツールなのか、それとも一緒に知識を作り上げる「強力なパートナー」になれるのかという問いを解き明かしています。

今回はその論文「Collaborative knowledge construction with generative AI: Exploring argumentative co‑writing processes through n‑gram and cluster analysis」(生成AIを用いた協働的な知識構築:n-gramとクラスター分析による議論的共同執筆プロセスの探求)をご紹介します。

 

AIテキストの「足跡」を辿る研究方法

図)共同執筆の設定と分析の概略図

出典: Luther, T., Belcher, K., Kimmerle, J., et al. (2026).「Collaborative knowledge construction with generative AI: Exploring argumentative co-writing processes through n-gram and cluster analysis」 International Journal of Computer-Supported Collaborative Learning. https://doi.org/10.1007/s11412-026-09470-1 (CC BY 4.0 ライセンスに基づき利用)

 

研究方法は

・参加者:18歳〜71歳の135名(※分析対象として有効だった131名を分類)

・実験:ChatGPTを自由に使って「公共の場でのアルコール禁止」というテーマで600〜1000語程度の意見文を書くよう依頼。制限時間は40分。

分析方法:参加者の執筆の際のAIとのやり取りの記録や最終的な文章を分析する。(実験はChatGPTを使用)

 というものです。

 

少し説明すると、研究で特に注目したのは、AIが作った文章と、参加者が提出した最終的な文章の「重なり具合」。これを、n-gram手法隣接する単語の連なり)を用いて一語ずつすべてを分析するものです。
例えば、長い文章がそのまま一致していれば「そのままコピー」とし、短いフレーズだけが共通していれば「言葉の取捨選択と融合」つまり自分の言葉にうまく取り込んでいると考えられます。

さらに、n-gramの取り込みパターン(取り込んだ単語数、最大の連続長、取り込みの割合など)に基づき、参加者を特徴の似たグループに分けるクラスター分析を行いました。

 

分析結果:技術への信頼が高い人ほど“丸写し”になる?

分析から、以下のことがわかりました。

1. AIの使い方は大きく3つのタイプに分かれる。

 ① テキスト再現型

  • 特徴:文章の99%以上がAIの言葉で、非常に長い一節をそのまま使っていた(8名)。
  • 自己評価:自分の貢献度は3タイプの中一番低いと感じていた。
  • 意外な点:AIに前向きな人や技術への信頼が高いグループだった。

② テキスト統合型

  • 特徴:最も人数の多いグループ(72名)。AIから長い文章をコピーすることはなく、単語や短いフレーズ単位で断片的に取り込み、自分の文章の中に織り交ぜていた(取り込み割合は約55%)。
  • 心理: 自分の貢献度が最も高いと感じており、AIを「アイデアの源」や「ヒント」として活用し、主体的に執筆を行っていた。
  • 個人特性: 日頃からAIを頻繁に使っている人は少なく、技術に対しては慎重かつ対話的な姿勢を持っていた。

③ テキスト再構成型

  • 特徴:中程度の長さの文章をAIから取り込むが、それらを組み替えたり、自分の言葉で拡張したりする(51名、取り込み割合は約90%)。
  • 心理:自分の貢献度は、テキスト再現型よりは高いがテキスト統合型よりは低い、中程度の貢献度を感じていた。
  • 個人特性:ChatGPTの日常的な利用者が多く、AIの特性を理解した上で、効率と独自の編集を両立させていた。

 

2. どのグループもAIへの質問の回数はほとんど変わらなかった

 

AI文章の取り込み割合がテキスト再現型で99%以上、再構成型で約90%と想像以上に高かったのが印象的です。でも、どのグループも、自分自身で書いたと思うかの自覚(著者意識)は正しく持っているということですね。
また、質問回数が3タイプとも変わらないことも意外でした。同じ回数でもプロンプトの精度に差があるのかもしれませんね。気になるところですが、どんな内容の質問かといった分析は今回の論文にはありませんでした。

 

思考を深めるAI活用とは何か

著者はこの研究から、考察と結論を以下のように述べています。

「テキスト再現型」は、AIを自分の記憶の代わりに使い、そのまま書き出す極端な形だと言える。興味深いのは、技術への信頼が高い人ほど、批判的な検討をせずにAIの出力を丸呑みし、結果として自分自身の思考や執筆のプロセスを放棄してしまうリスクがある点だ。

一方で、「テキスト統合型」や「再構成型」は、AIの出力を一つのリソースとして扱い、それを自分の文脈に合わせて変換していた。これはAIとの対話を通じて自分の考えを整理し、より深い議論を構築する「パートナーシップ」が成立している状態と言える。

結論として、AIとの共同執筆は一様ではない。 それは書き手の技術への態度や、AIの言葉をどの程度の粒度で取り込むかという戦略によって、深い学びの機会にもなれば、単なる作業の代行にもなる。

AIは執筆のスピードを上げ、流暢な文章作成を助けてくれる。しかし、それに頼りすぎると「自分で考えて学ぶ機会」を奪ってしまうかもしれない。大切なのは、AIの出力を「完成品」として受け取るのではなく、自分の思考を深めるための「素材」や「対話のヒント」として扱うことである。AIの言葉を自分の文章にどう統合し、再構築するかというスキルこそが、AI時代の新しい「書く力」になる。

今後、AIを使って文章を書くときは、自分が「丸写しの複製者」になっていないか、「自分の言葉に編み込む統合者」になれているかを意識してみると、より良い学習ができるようになるだろう。

 

つまり、「AIをどれだけ使ったか」ではなく「どう使ったか」。AIの文章をどう扱ったかが重要ということですね。

 

AI時代、「書く力」はこう変わる 〜AIとの協働が「学び」になる瞬間〜

以上が論文の概要です。

私は、このAIを活用して文章を書く実験論文から、個人的には2つの大事なことを確認できたと思っています。

一つは、AI時代、知識はAIと対話しながら、選び、疑い、組み替える“プロセス”になったと改めてわかったことです。つまり、知識の使い方が変わってくるということです。しかも、少し時間を置きながら何度もAIと対話ができるので、新たに思考を掘り下げていくことができるようにもなります。
しかもそれが誰もが容易にできるようになったということですよね。

そして、書くという行為そのものの未来についてです。 
文章の目的によっては、単なる知識の伝達で十分な場合もあるため、AIにすべてアウトプットしてもらってもそれはOKだと思います。

でも、少しでも創造的なことに使うのであれば、やはり自分の考えを整理し、再構築して、新しいアイデアが生まれるようにしたいですよね。そのときAIは、知識を変容させるための強力なパートナーになるということです。
このメリットを活かさない手はありませんよね。
書くことを通じて、思考を深め、新しい意味を創造する。そんな風に使っていきたいです。

 

◾️タイトル:Collaborative knowledge construction with generativeAI: Exploring argumentative co‑writing processes through n‑gram and cluster analysis ◾️著者:Teresa Luther、Kate Belcherほか ◾️掲載誌:International Journal of Computer-Supported Collaborative Learning ◾️発行年:2026年2月19日 ◾️DOI:10.1007/s11412-026-09470-1 

 

このコラムのまとめ

1.  AIとの文章作成は「代行」ではなく「協働」として捉えることが重要である。
2.  人のAI活用は「丸写し・統合・再構成」の3タイプに分かれる。
3.  AIを使いこなすほど、必ずしも主体的な思考が深まるとは限らない。
4.  知識は「持つもの」から「対話しながら作るプロセス」へと変化している。
5.  AIは完成品ではなく、思考を深めるための「素材」として活用すべきである。
6.  AIとの関係性次第で、「書く力」と「学びの質」は大きく変わる。

文:鈴木素子

 

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