3行まとめ
都市ガス国内首位の事業基盤を軸に、3つの基本方針で知財活動を推進
東京ガスは都市ガス小売課金口座数882.6万件(国内第1位)、電気小売415.2万件(新電力第1位)の事業基盤を持ち、「権利取得と戦略的活用」「知的財産リスク管理」「IPランドスケープの推進」の3方針で知財活動を展開。2022年度の特許登録件数は217件(単独172件、共同45件)を記録した。
水素・e-メタン・洋上風力など脱炭素技術に特許出願を集中投下
特許出願は4ドメインに分類され、「次世代の社会に向けた挑戦」領域は2020年度の20件から2022年度の38件へ約1.9倍に増加。SCREENホールディングスとの水電解セルスタック共同開発や、浮体式洋上風力「WindFloat」技術を持つ米Principle Power社への投資など、グリーンエネルギー分野の技術獲得を加速している。
オープンイノベーションとデジタル融合で「第三の創業」を推進
米国拠点のAcario Innovation LLCを通じた海外ベンチャー投資や、米Global Thermostat社(DAC技術)・米H2U Technologies社(水電解触媒)等との協業により外部技術を取り込む。デジタル技術とLNGバリューチェーンの最適運用(AOT)を融合させ、2026年度にセグメント利益1,950億円、当期純利益1,340億円の達成を目指す。
この記事の内容
事業概要
東京ガス株式会社は、都市ガスおよび電気の小売供給事業を中心に、エネルギートレーディング、グリーントランスフォーメーション、地域共創、カスタマー&ビジネスソリューション、海外事業の各カンパニーを展開する。「はやわかり東京ガス」の開示によると、2025年3月末実績における都市ガス小売課金口座数は882.6万件であり、都市ガス需要量において国内第1位(出典:2024年版ガス事業便覧実績に基づく順位)の事業基盤を有する。電気事業においては、2025年3月末実績の小売課金口座数が415.2万件であり、新電力事業における国内第1位(出典:資源エネルギー庁電力需要実績に基づく順位)の規模を占める。海外展開に関しては、米国においてTokyo Gas America Ltd.を通じた再生可能エネルギー事業(テキサス州における設備容量500MWacのAktina Solar Project稼働実績等)を展開するとともに、TGオクトパスエナジー株式会社を通じて全世界で770万人(2025年9月実績)の顧客に向けた電力小売事業を展開する。
財務
「2026年度 東京ガスグループ経営計画について」の開示資料において、東京ガス株式会社は2026年度の会社予想としてセグメント利益(営業利益と持分法損益の合算)1,950億円、当期純利益1,340億円、ROE8.0%、ROIC4.8%を計画する。同計画における2026年度の外部環境前提条件として、原油価格68ドル/bbl、為替レート155円/ドル、海外・シェールガス事業に係るヘンリーハブ価格3.8ドル/MMBtuを設定している。販売事業計画として、同2026年度の会社予想における連結ガス販売量10,790百万m3、連結電力販売量28,490百万kWhを計画する。直近の有価証券報告書等における研究開発費(R&D Expenses)や設備投資額に関する最新実績数値については、システムアクセスの制限により今回の調査では未確認である。
技術・知財
東京ガスグループの知的財産活動は、「権利取得と戦略的活用」「知的財産リスク管理」「IPランドスケープの推進」の3つの基本方針によって運営される。「知的財産活動と外部表彰」の開示によると、特許登録件数は2022年度実績で合計217件(内訳として単独権利172件、共同権利45件)である。特許出願の対象領域は、「次世代の社会に向けた挑戦」「街や社会を支える(業務用・産業用)」「快適な暮らしと生活(家庭用)」「都市ガスの安定製造・エネルギー供給の安全」の4ドメインに分類され、2022年度実績の出願件数はそれぞれ38件、24件、30件、29件である。グリーン水素製造に係る水電解セルスタックの低コスト製造に関して株式会社SCREENホールディングスとの共同開発を実施し、洋上風力発電技術に関して「WindFloat」技術を保有する米Principle Power社へ2020年5月に投資を実行している。
戦略・成長
経営ビジョン「Compass 2030」において、同社は「次世代のエネルギーシステムをリードしながら、お客さま・社会・ビジネスパートナーとともに価値を創出し続ける企業グループ」を目指す姿として掲げる。同ビジョンを達成するためのアクションとして、「脱炭素技術のイノベーション」「価値共創のエコシステム構築」、およびデジタル技術を用いたLNGトレーディング・船・受け入れ基地の最適運用(AOT)を含む「LNGバリューチェーンのトランスフォーメーション」を推進する。技術開発戦略におけるオープンイノベーションの取り組みとして、米国拠点のAcario Innovation LLCを通じた海外ベンチャー投資や、スタートアップ共創ポータルを通じたデジタル技術・脱炭素技術領域での協業を展開し、米H2U Technologies社や米Global Thermostat社等の外部パートナーとの連携を実施する。
リスク・ESG
知的財産活動の基本方針の一つとして「知的財産リスク管理」を明記しており、他者権利の侵害防止と訴訟リスクの回避を目的とした管理体制を構築する。同時に、特許法で要求される合理性と透明性を担保した「職務発明」に対する社内報奨制度を運用している。ESGおよびサステナビリティに関する実証的取り組みとして、事業活動によるCO2ネット・ゼロへの挑戦を掲げており、東京都との協定締結を通じたグリーン水素および下水汚泥由来CO2を活用するe-メタン製造の事業実証を進める。インフラの保安および防災レジリエンス強化として、高耐震性のLNG基地設計に加え、約4,000基のSIセンサー(地震計)を活用した地震防災システム「SUPREME」や、ガス管の災害復旧支援システム「TG-DRESS」の運用を通じて、首都圏における供給網の安全維持および災害リスクの低減を図る。
東京ガス株式会社は、日本国内および海外において、都市ガスと電気を中心とするエネルギー供給および関連ソリューション事業を展開する企業グループである。「はやわかり東京ガス」の開示情報によると、同社は日本国内の都市ガス需要量において国内第1位(出典:2024年版ガス事業便覧実績)の事業基盤を持つ 1。都市ガスの小売事業において、2025年3月末実績の小売課金口座数は882.6万件(出典:はやわかり東京ガス)を記録した 1。同事業における主要展開エリアは日本のGDPの40%を占める関東地域であり、約1,200万件の対象需要家が存在する東京ガス供給エリア内において、東京ガスの都市ガスシェアは約60%(対象期間は調査範囲内では確認できず、実績区分、出典:はやわかり東京ガス)を占有し、その他のガス事業者が約15%を占める構成である 1。日本全国の都市ガス市場全体は、旧一般ガス事業者203事業者による約2,600万口座、市場規模約2.4兆円によって構成されている 1。
電気事業分野においては、同社は資源エネルギー庁の電力需要実績に基づく新電力事業者区分において国内第1位(出典:資源エネルギー庁実績)のポジションにある 1。2025年3月末実績の電気小売課金口座数として415.2万件(出典:はやわかり東京ガス)を記録している 1。約2,900万件の需要家が存在し市場規模が約2.8兆円に達する東京電力管内エリアにおいて、東京ガスの電気事業シェアは約15%(対象期間は調査範囲内では確認できず、実績区分、出典:はやわかり東京ガス)を構成し、旧一般電気事業者が約60%、他の新電力事業者が約25%を占める市場環境下において事業を展開する 1。国内の電力市場全体は、旧一般電気事業者10事業者による約8,500万口座、市場規模約8.0兆円の規模を持つ 1。
|
品目ラベル |
数値 |
単位 |
対象期間 |
区分 |
出典表記名 |
|
都市ガス(小売課金口座数) |
882.6 |
万件 |
2025年3月末 |
実績 |
はやわかり東京ガス |
|
電気(小売課金口座数) |
415.2 |
万件 |
2025年3月末 |
実績 |
はやわかり東京ガス |
|
東京ガス供給エリア内都市ガスシェア |
約60 |
% |
調査範囲内では確認できず |
実績 |
はやわかり東京ガス |
|
東京電力管内エリア内電気シェア |
約15 |
% |
調査範囲内では確認できず |
実績 |
はやわかり東京ガス |
東京ガス株式会社は、「2026年度 東京ガスグループ経営計画について」の発表資料において、2026年度の収支計画および各種販売量計画を公表している 2。収支計画に関する2026年度の会社予想として、セグメント利益(営業利益と持分法損益の合算値)1,950億円、当期純利益1,340億円、ROE8.0%、ROIC4.8%を計画する 2。
同計画における2026年度の外部環境および資源価格の前提条件として、原油価格68ドル/bbl、為替レート155円/ドル、ならびに海外・シェールガス事業の収益に影響するヘンリーハブ価格3.8ドル/MMBtuを設定している 2。事業基盤の拡大を示す販売量に関する2026年度の会社予想として、連結のガス販売量10,790百万m3、連結の電力販売量28,490百万kWhを計画する 2。
|
財務・経営指標項目 |
数値 |
単位 |
対象期間 |
区分 |
出典表記名 |
|
セグメント利益(営業利益+持分法損益) |
1,950 |
億円 |
2026年度 |
会社予想 |
2026年度 東京ガスグループ経営計画 |
|
当期純利益 |
1,340 |
億円 |
2026年度 |
会社予想 |
2026年度 東京ガスグループ経営計画 |
|
ROE |
8.0 |
% |
2026年度 |
会社予想 |
2026年度 東京ガスグループ経営計画 |
|
ROIC |
4.8 |
% |
2026年度 |
会社予想 |
2026年度 東京ガスグループ経営計画 |
|
連結ガス販売量 |
10,790 |
百万m3 |
2026年度 |
会社予想 |
2026年度 東京ガスグループ経営計画 |
|
連結電力販売量 |
28,490 |
百万kWh |
2026年度 |
会社予想 |
2026年度 東京ガスグループ経営計画 |
|
前提条件:原油価格 |
68 |
ドル/bbl |
2026年度 |
会社予想 |
2026年度 東京ガスグループ経営計画 |
|
前提条件:為替レート |
155 |
円/ドル |
2026年度 |
会社予想 |
2026年度 東京ガスグループ経営計画 |
|
前提条件:ヘンリーハブ価格 |
3.8 |
ドル/MMBtu |
2026年度 |
会社予想 |
2026年度 東京ガスグループ経営計画 |
「会社案内」の歴史に関する開示資料によると、東京ガスにおける技術革新と研究開発(R&D)の歴史は、社会のエネルギー需要の変化に対応して展開された3つの「創業(Foundations)」フェーズに分類して記述されている 3。
第一の創業期(1885年〜1900年代初頭)は、ガス灯の導入を中心とする照明用途からの展開である。1872年に横浜で日本初のガス灯が点灯され、1874年には東京において85基のガス灯が導入された。その後、1877年には東京におけるガス灯の設置数は356基へと拡大した 3。電気照明の普及に伴い、東京ガスは熱エネルギーの応用へと技術開発の焦点を移行し、学校での化学実験用設備や医療機器、印刷所の鉛溶融用途等への技術適用を進めた 3。家庭用の熱エネルギー需要を開拓するため、1902年にガス炊飯器(ガスかまど)を開発・商品化し、この製品は日本におけるガス機器として初めて特許を取得した実績を持つ 3。
第二の創業期(1969年〜1980年代)は、日本の高度経済成長期における大気汚染(SOx、NOx)といった社会課題を背景とした、クリーンエネルギーである液化天然ガス(LNG)の導入と技術的障壁の克服によって特徴づけられる 3。LNGの輸送および液化・冷却技術が未確立であった時代において、同社は輸入プロジェクトを立ち上げ、1969年に根岸LNG基地における4基のLNGタンクの建設を完了させた 3。同年11月には、米国アラスカから世界初となる大型LNGタンカーの受け入れを実施した 3。続いて1972年から1988年にかけては、提供するガスの熱量を5,000kcalから11,000kcalへと転換する熱量変更プロジェクトを実施し、17年間の期間を通じて対象需要家750万件のガス機器調整作業を完了させた 3。また、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)は、1969年のLNG導入以来半世紀にわたり蓄積した「ユーザーとしてのノウハウ(User's Know-how)」を活用し、日本国内における20以上のLNG基地の設計・建設・コンサルティングを実施するとともに、1970年代後半以降は海外展開を推進し、20カ国・地域において100以上のプロジェクトを完了させた実績を持つ 3。
第三の創業期(現在)は、「Beyond」コンセプトに基づくデジタル化と脱炭素化の融合フェーズである 3。140年にわたり構築された有形・無形の資産とデジタル技術を融合させ、地域密着型の営業体制にAIやデジタルマーケティング技術を組み込むことで、電力事業とソリューションサービスの加速を図る 3。この方針を具現化するため、脱炭素、最適化、レジリエンスに向けたソリューションを提供する新たな事業ブランド「IGNITURE(イグニチャー)」を立ち上げた 3。
「知的財産活動と外部表彰」の技術開示によると、東京ガスグループは円滑な事業遂行と将来の事業価値の最大化を目的に、以下の3つの基本方針に基づき知的財産活動を推進している 4。
第一の方針は「権利取得と戦略的活用」である。将来の事業展開を見据えた研究開発成果の特許等の権利化を推進するとともに、自社が保有する知的財産を第三者とのアライアンス等を通じて最大限に活用し、最適なサービスや製品の提供を行う事業主導型の活動を行う 5。 第二の方針は「知的財産リスク管理」である。他者が保有する権利の侵害を防止し、訴訟リスクを回避するための管理体制を敷く。また、特許法により要求される合理性と透明性を確保した「職務発明」に対する報奨制度を社内で運用している 5。 第三の方針は「IPランドスケープの推進」である。特許出願件数や特許の価値評価といった知的財産データを分析・可視化し、これらの情報を事業戦略、研究開発戦略、および目標設定の策定プロセスに組み込む活動を推進する 5。
特許出願および登録の実績に関し、東京ガスグループの特許出願活動は4つの技術ドメインに分類されている。「知的財産活動と外部表彰」において公表された、2020年度から2022年度にかけての各技術ドメインにおける特許出願件数の実績推移は以下の通りである 5。
上記の出願活動の結果として、グループ全体における特許登録件数の実績は、2020年度191件、2021年度166件、2022年度217件(2022年度の内訳は単独権利172件、共同権利45件)を記録している 4。これらの特許に紐づく個別の英数字の特許出願番号および登録番号(特許公報番号等)、ならびに2023年度以降の特許出願・登録に関する最新の実績数値については、今回の調査範囲内では確認できず未確認である 5。
|
特許関連指標 |
数値 |
単位 |
対象期間 |
区分 |
出典表記名 |
|
特許登録件数(全体) |
191 |
件 |
2020年度 |
実績 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
特許登録件数(全体) |
166 |
件 |
2021年度 |
実績 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
特許登録件数(全体) |
217 |
件 |
2022年度 |
実績 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
うち単独権利(2022年度) |
172 |
件 |
2022年度 |
実績 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
うち共同権利(2022年度) |
45 |
件 |
2022年度 |
実績 |
知的財産活動と外部表彰 |
知的財産活動の成果として、「知的財産活動と外部表彰」のページに記載された主要な商標、および外部機関から評価を受けた技術表彰の実績を以下の表に示す 5。
|
技術・商標・表彰案件名 |
区分 |
取得時期・対象期間 |
内容・表彰名 |
出典表記名 |
|
Ignition(イグニチャー) |
商標 |
今回の調査では未確認 |
脱炭素・最適化・レジリエンスに向けたソリューション事業ブランド |
知的財産活動と外部表彰 |
|
PEXEM |
商標 |
今回の調査では未確認 |
グリーン水素製造用の水電解用触媒層付き電解質膜 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
パッチョ(Paccho) / 電パッチョ |
商標 |
今回の調査では未確認 |
東京ガスグループのキャラクター |
知的財産活動と外部表彰 |
|
接触燃焼式を用いたガスの熱量計測技術 |
表彰 |
2022年実績 |
世界ガス会議(WGC2022)Innovation Award受賞 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
みいみ(Miimi) |
表彰 |
2021年実績 |
親子向け絵本読み聞かせアプリ(BabyTech Award 2021、日本子育て支援大賞受賞) |
知的財産活動と外部表彰 |
|
GHP XAIR III |
表彰 |
2020/2021年実績 |
高効率ガスエンジンヒートポンプの開発に関する表彰 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
レーザーを用いた遠隔ガス漏えい検査技術 |
表彰 |
2020年実績 |
第4回インフラメンテナンス大賞受賞 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
省エネ型燃料転換ボイラ「GC-2000AS」 |
表彰 |
2020年実績 |
高効率ボイラの開発に関する表彰 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
TG-DRESS |
表彰 |
2019年実績 |
ガス導管災害復旧支援システムの開発 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
Helionet Advance |
表彰 |
2019年実績 |
エネルギーマネジメント用高効率自動運転システムの開発 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
トリセツ+HOME |
表彰 |
2019年実績 |
グッドデザイン賞受賞 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
セーバープロ(Saver Pro) |
表彰 |
2018年実績 |
温度補正機能付自記圧力計(気密試験装置)の開発 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
3kW級SOFCコージェネレーションシステム |
表彰 |
2018年実績 |
業界最高水準の発電効率52%達成による表彰 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
LNG混合貯蔵の高精度シミュレーション |
表彰 |
2018年実績 |
数値流体力学(CFD)を用いたシミュレーション技術 |
知的財産活動と外部表彰 |
|
低圧ガス対応1200kg/hボイラ |
表彰 |
2018年実績 |
産業用ボイラの開発に関する表彰 |
知的財産活動と外部表彰 |
東京ガスグループの研究開発部門は、「社会と顧客に対する安定的なエネルギー供給」と「カーボンニュートラルの達成」の両立を目的とし、脱炭素、最適化、レジリエンスに貢献するソリューションの提供に向けた技術開発を行う 3。具体的な技術開発活動は、「エネルギーをつくる技術」「エネルギーを上手につかう技術」「エネルギーのインフラを支える技術」「その他の技術(デジタル・防災・環境等)」の4領域に大別される 4。
e-メタン分野において、東京ガスは革新的メタネーション技術および国内メタネーション実証を推進する 4。2022年3月のニュース発表において、2050年カーボンニュートラルおよび脱炭素社会の実現に向け、東京都産グリーン水素と下水処理工程で発生するバイオガス(CH4とCO2の混合ガス)から分離した下水汚泥由来CO2を活用するe-メタン製造実証について、東京都と協定を締結し、小型メタネーション装置を用いた実証試験の開始を公表した 6。メタネーションの基盤技術開発においては、設備のコスト、エネルギー変換効率、スケールアップの容易さ、および熱管理の観点から複数のアプローチの比較検証を進める 3。サバティエ反応は基本技術が確立しているものの大型化における熱管理の課題が存在し、ハイブリッドサバティエは高効率である反面スケールアップと耐久性・信頼性の確立が必要とされる 3。PEMCO2還元は低コスト化の利点を持つが信頼性の確立が課題であり、バイオリアクターは低コストかつスケールアップが容易である一方で、反応速度の遅さや微生物の培養・安定性に関する課題を持つことが開示されている 3。2022年4月には、NEDOの「グリーンイノベーション基金事業」に採択され、JAXAおよびIHIとの協働による革新的合成メタン製造に関する技術開発に着手している 3。海外プロジェクトとしては、カナダ・マニトバ州におけるTerralta社とのe-メタン共同事業開発を進めている 4。
水素製造領域においては、水電解によるグリーン水素の製造コスト削減を目的とし、政府の水素供給コスト目標である2030年時点の30円/Nm3-H2の達成に向け、システムレベルでの技術開発と安価な再生可能エネルギー電力調達の組み合わせに関する研究を行う 3。この一環として、水電解セルスタックの低コスト製造技術に関する株式会社SCREENホールディングスとの共同開発を実施する 3。この共同開発では、家庭用燃料電池「エネファーム」の開発を通じて東京ガスが蓄積した材料選定や性能・耐久性評価技術と、SCREENホールディングスが有する連続塗工技術(ロール状のフィルム基材に連続して塗工を行うロール・トゥ・ロール方式)を統合し、生産速度の向上と材料・製造コストの大幅な削減を図る 3。同時に、米国拠点を活用したオープンイノベーションを通じ、米H2U Technologies社と高効率かつ低コストな水電解用触媒の開発で協業し、グリーン水素製造用触媒層付き電解質膜「PEXEM」の量産体制構築を推進している 4。加えて、オンサイトでの水電解水素供給やメタン熱分解技術の開発、水素ステーション設備の開発等にも注力する 4。
再生可能エネルギー発電および蓄電領域では、太陽光発電において軽量かつ薄型の独自のパネル設置工法である「Hinatao Solar」の開発やパネル劣化診断技術の研究を進めるほか、オンサイトおよびバーチャルPPA(電力購入契約)の展開を行う 4。洋上風力発電技術に関しては、深海域での安定性が高い浮体式洋上風力発電プラットフォーム「WindFloat」技術(欧州ポルトガル沖において8.5MW機3基を用いたプロジェクトでの商業運転実績を持つ)を保有する米国Principle Power社に対する投資を2020年5月に実行し、浮体動揺解析やO&M(運用保守)の効率化に関する研究を進める 3。2022年1月にはNEDO事業に採択され、浮体基礎の低コスト製造・設置に関する研究を開始した 3。さらに、再生可能エネルギーの導入拡大を支えるため、系統連系型および再エネ併設型の大型蓄電池の最適運用技術の研究を行い、北海道苫小牧市における系統用蓄電池施設の建設等を進める 4。
高効率設備の開発において、ガスコージェネレーションシステム、ガス・電気ハイブリッド空調(Smart Multi、Smart Mix Chiller)、工業用炉・バーナーの開発を行う 4。燃料電池システム分野では、業務用3kW級SOFC(固体酸化物形燃料電池)コージェネレーションシステムにおいて業界最高水準である発電効率52%を達成した技術表彰実績(2018年)を持つほか、燃料再生機を用いた技術により5kW級SOFCの発電効率を65%に引き上げる革新技術の実証を行った実績を持つ 5。エネルギーマネジメント技術としては、スマートエネルギーネットワーク、地域熱供給、需要予測、エネルギーマネジメント用高効率自動運転システム「Helionet Advance」の開発や、AIを活用したエネルギー最適化、蓄電池の状態推定・劣化抑制技術の開発を実施する 4。ソリューション事業においては、バイオマスの利用、CCU(CO2分離・回収・利用)、業務・産業用蓄電池の活用、および都市生活研究のプロジェクトを進める 4。
都市ガス供給ネットワークに関するエンジニアリング技術として、LNGおよび都市ガス設備、さらには再エネ・脱炭素設備向けの設計・構築技術を開発する 4。構造健全性評価、供給・施工技術、メンテナンス手法の開発を通じ、東京ガスネットワークの基盤技術を維持する 4。機器開発の分野では、スマートメーター、業務用・大型メーターの開発に加え、温度補正機能付自記圧力計である気密試験装置「Saver Pro」シリーズや、レーザーを用いた遠隔ガス漏えい検査技術(2020年インフラメンテナンス大賞受賞)、液状物質検査装置等の保安・検査用機器の開発を行う 4。
防災対策の分野では、LNG基地や導管網に対する高耐震構造設計に基づく地震防災ノウハウを活用する 3。首都圏における供給網の安全性とレジリエンスを確保するため、約4,000基のSIセンサー(地震計)を配置した地震防災システム「SUPREME」、地区ガバナの遠隔再稼働システムを運用する 3。また、ガス管の災害復旧支援システムである「TG-DRESS」(2019年表彰実績)や「HURRY」、水抜き技術、および耐震性の高いガス設備技術の開発を推進する 3。
デジタル技術の開発において、東京ガスグループはプロセスの監視システム開発ツール「Joy Watcher Suite」や、インフラ情報管理のためのマッピングシステム「TUMSY」を開発している 4。社内業務の生産性向上として、オフィス改革やWeb会議等を推進する「Wai-Wai Work」戦略に加え、デジタルイノベーション本部を中心としたRPAや音声AIを用いた業務の自動化およびデータ活用の高度化を推進する 3。
オープンイノベーション戦略において、東京ガスは米国に拠点を置くAcario Innovation LLCを海外のイノベーション拠点として機能させ、Acario Investment One LLCを通じたベンチャー企業への投資を実行する 4。スタートアップ企業、大学、行政との連携を通じ、脱炭素技術およびデジタル技術の社会実装を加速させるため、以下の具体的な外部連携・協業プロジェクトを展開する 4。
カスタマー&ビジネスソリューションカンパニー内のリビング戦略部に属する「デジタルプロダクト推進グループ」は、中途採用者が組織の約6割を占める人材構成であり、AIを活用したシステム開発やWebサービス「myTOKYOGAS」を通じたガス・電気の契約顧客向けサービスの機能開発および運用を担う 3。「ビジネス変革推進グループ」は、太陽光発電と蓄電池を組み合わせたソリューションのWebマーケティングやマンション買取サービスの立ち上げ等のマーケティングを通じた新規ソリューション事業の拡大を推進する 3。
「2026年4月1日 東京ガスグループ機構図」の開示に基づき、東京ガス株式会社の経営および事業推進の組織体制を概観する 8。取締役会の下に指名委員会、報酬委員会、監査委員会が設置され、執行役社長の直下に総合企画部が配置されている 8。事業の執行体制として、以下の5つのカンパニーが組織されている 8。
技術戦略および脱炭素ビジネスに関連する特化した部門として、組織内に「基盤技術部」「エネルギー生産部」「洋上風力開発部」「再生可能エネルギー事業部」「水素・カーボンマネジメント技術戦略部」「カーボンニュートラルシティ推進部」「カーボンニュートラルガス事業部」「DX推進部」「エネルギー事業革新部」が配置されている 8。また、研究開発を推進する主要な実拠点として、「千住テクノステーション」および「横浜テクノステーション」が機能している 4。
同機構図および会社情報開示において特定された、東京ガスグループの基幹事業会社および主要な連結対象子会社の名称、所在地、および事業内容を以下の表および記述にて整理する 7。
|
会社名 |
所在地 |
主要事業内容 |
出典表記名 |
|
東京ガスネットワーク(株) |
調査範囲内では確認できず |
ガス導管事業(基幹事業会社) |
機構図 / グループ会社一覧 |
|
東京ガスエンジニアリングソリューションズ(株) |
調査範囲内では確認できず |
エンジニアリング事業(基幹事業会社) |
機構図 / グループ会社一覧 |
|
東京ガス不動産(株) |
調査範囲内では確認できず |
不動産事業(基幹事業会社) |
機構図 / グループ会社一覧 |
|
東京ガスiネット(株) |
東京都港区 |
東京ガス向けITシステム運用・開発 |
グループ会社一覧 |
|
(株)キャプティソリューションズ |
神奈川県川崎市 / 東京都港区 |
業務用・産業用設備(空調・給湯等)の設計施工 |
グループ会社一覧 |
|
松栄ガス(株) |
埼玉県東松山市 |
埼玉県東松山市等への都市ガス供給・電力小売 |
グループ会社一覧 |
|
TGオクトパスエナジー(株) |
東京都港区 |
一般消費者向け電力小売事業 |
グループ会社一覧 |
|
(株)扇島パワー |
神奈川県横浜市鶴見区 |
発電・電力供給事業 |
グループ会社一覧 |
|
東京エルエヌジータンカー(株) |
東京都港区 |
LNGの海上輸送・船舶貸渡事業 |
グループ会社一覧 |
|
(株)千葉袖ケ浦パワー |
東京都墨田区 |
LNG火力発電所の建設 |
グループ会社一覧 |
|
Tokyo Gas America Ltd. |
米国テキサス州ヒューストン |
米州におけるエネルギー事業の開発・推進拠点 |
グループ会社一覧 |
|
Tokyo Gas Asia Pte. Ltd. |
シンガポール |
東南アジア地域の事業・投資活動の統括拠点 |
グループ会社一覧 |
|
Acario Innovation LLC |
米国カリフォルニア州メンローパーク |
海外ベンチャー企業の情報収集・協業拠点 |
グループ会社一覧 |
国内の主要事業会社の活動状況 東京ガスiネット株式会社(TG i-Net)は、東京都港区の東京ガスビルディング内に本社を置き、東京ガスグループにおけるITエンジニアリング機能を担う 7。同社は2022年7月に創立35周年を迎え、2024年12月に東京ガスが保有するITおよび通信インフラ(ソフトウェアを含む)の管理業務を自社に集約した 7。技術表彰として、アジャイル開発部門がマンション向けEV充電サービス「EVrest」の開発に関して情報科学協会の「IT奨励賞」を受賞した実績(2023年)を持つ 7。また、人事・労務面での評価として、経済産業省の「健康経営優良法人」に2021年から2023年まで連続で認定され、2024年11月には厚生労働省(東京労働局)より子育てサポート企業としての「くるみん認定」を取得した実績を開示している 7。
株式会社キャプティソリューションズは、神奈川県川崎市に本社機能、東京都港区に本店を置く設備工事会社であり、2023年10月1日付で「株式会社キャプティ」から現在の商号への変更を完了している 7。松栄ガス株式会社は、埼玉県東松山市に本社を構え、東松山市および滑川町の一部に対する都市ガスの供給と、「松栄でんき」「さすてな電気」等の電力小売事業を提供する 7。同社は2023年11月に経済産業省よりガス保安功労者経済産業大臣表彰を受賞し、2024年7月には東松山市と災害時におけるガス復旧に関する協定の締結を完了している 7。その他の国内発電・再生可能エネルギー関連の事業会社として、神奈川県横浜市において発電事業を行う株式会社扇島パワー、東京都墨田区に本社を置きLNG火力発電所の建設を担う株式会社千葉袖ケ浦パワー、および石川羽咋太陽光発電合同会社、市川クリーンエナジー合同会社、市原八幡埠頭バイオマス発電合同会社、株式会社WESOL(大阪府)、S&Cソリューションズ株式会社等の事業会社がグループ内に存在する 7。
海外の主要事業会社の活動状況 海外事業においては、シンガポールに拠点を置くTokyo Gas Asia Pte. Ltd.が東南アジア地域(タイ、ベトナム、インドネシア等に関する言及を含む)における事業および投資活動の統括機能を担い、クリーンエネルギーソリューションの展開に向けた技術開発を推進する 7。米国事業を展開するTokyo Gas America Ltd.は、テキサス州ヒューストンに拠点を構え、「Compass 2030」ビジョンに基づく脱炭素化の推進とLNGバリューチェーンの構築を目的とした投資および事業開発を行う 7。同社が展開する主要プロジェクトとして、テキサス州ウォートン郡における約4,000エーカーの農地に140万枚のソーラーモジュールを設置した「Aktina Solar Project」があり、設備容量500MWac(直流ベース631MWdc)の規模で最大10万世帯への再生可能エネルギー供給を行う稼働実績を持つ 7。また、東テキサスおよび北ルイジアナにおいてガス開発を行う「TG Natural Resources LLC (TGNR)」を通じた事業基盤の強化を実施している 7。
グローバルな電力小売事業を展開するTGオクトパスエナジー株式会社は、東京都港区に拠点を置き、英国、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、ニュージーランド、および米国で展開するグローバルグループの一員として活動する 7。2025年9月時点の実績において、グループ全体で全世界770万人の顧客規模を有する 7。「ソーラーオクトパス」「オール電化オクトパス」「EVオクトパス」等のグリーン電力プランを提供し、2024年12月に他社からの乗り換え顧客4,143名を対象に実施した自社調査において、86%の顧客が電気代の削減を実感したとする調査結果の注記を公表している 7。
東京ガス株式会社の公式開示(IRカレンダー等)に基づく、2025年度から2026年度にかけて実施・発行が予定されている主な決算発表、法定開示、および株主・投資家向けイベントのスケジュールを以下の表に示す 9。
|
イベント名 |
実施予定日・発行日 |
ステータス |
出典表記名 |
|
第225期有価証券報告書発行 |
2025年6月24日、27日、30日のいずれか |
予定 |
IRカレンダー |
|
第225回株主総会 |
2025年6月24日、27日、30日のいずれか |
予定 |
IRカレンダー |
|
インベスターズガイド2025発行 |
2025年6月24日、27日、30日のいずれか |
予定 |
IRカレンダー |
|
2026年3月期第1四半期決算発表 |
2025年7月30日 |
予定 |
IRカレンダー |
|
統合報告書2025(日本語版)発行 |
2025年9月1日 |
予定 |
IRカレンダー |
|
2026年3月期第2四半期決算発表 |
2025年10月29日 |
予定 |
IRカレンダー |
|
第226期半期報告書発行 |
2025年11月14日 |
予定 |
東京ガス IRカレンダー |
|
東京ガス通信2025発行 |
2025年11月26日 |
予定 |
東京ガス IRカレンダー |
|
2026年3月期第3四半期決算発表 |
2026年1月30日 |
予定 |
東京ガス IRカレンダー |
|
2026年3月期(通期)決算発表 |
2026年4月28日 |
予定 |
Yahoo!ファイナンス 決算発表予定日 |
以下の事項については、今回の調査範囲において指定された一次情報源(有価証券報告書、決算短信等の法定開示書類、統合報告書、公式技術開示ページ等)を確認した範囲では特定できない、あるいは指定されたURLへのシステムアクセスの制限等により情報を照合できなかったため、未確認事項として分類する。
本レポートのPDF版をご用意しています。印刷や保存にご活用ください。
本レポートは、公開情報をAI技術を活用して体系的に分析したものです。
情報の性質
ご利用にあたって
本レポートは知財動向把握の参考資料としてご活用ください。 重要なビジネス判断の際は、最新の一次情報の確認および専門家へのご相談を推奨します。
TechnoProducerは、貴社の「発明力と知財力」を最大化します
→ 月額顧問サービス
特許活用から経営戦略まで、事業成功のプロがあらゆる課題に対応
→ 発明塾®動画セミナー
個人での学習や、オンラインでの社内教育はこちら
→ まず相談したい・お問い合わせ
サービス選択に迷う場合や、個別のご相談はこちら
ここでしか読めない発明塾のノウハウの一部や最新情報を、無料で週2〜3回配信しております。
・あの会社はどうして不況にも強いのか?
・今、注目すべき狙い目の技術情報
・アイデア・発明を、「スジの良い」企画に仕上げる方法
・急成長企業のビジネスモデルと知財戦略