3行まとめ
「ライトアセット戦略」でBEV開発投資40%削減・混流生産で設備投資85%削減を計画
マツダはスモールプレイヤーとしての立場から、既存資産の最大活用とパートナー協業により電動化投資を約1.5兆円に抑制する方針を掲げる。2027年導入予定の自社開発BEVではモデルベース開発(MBD)を活用し開発投資40%削減・開発工数50%削減を目指すほか、BEVと内燃機関車の混流生産により専用工場比で初期設備投資85%削減・量産準備期間80%削減を計画している。
知的財産部を中心に、知財の攻守両面の体制とブランドプロテクションを推進
同社は知的財産部を設置し、自社の新技術・車種ネーム・車両デザイン等の知的財産権をグローバルに取得・保護するとともに、他者の特許権・商標権・意匠権・著作権の侵害リスクを網羅的に調査・予防する体制を構築している。さらに、模造品対策として安全部品を最優先に官民連携の摘発活動を展開し、社内では職位・職種に応じたe-ラーニング等の知財啓発教育を実施している。
次世代エンジン「SKYACTIV-Z」と車両全体のモデル化で電動化時代の競争力を確保
Euro 7や米国LEV4/Tier4規制に対応する次世代コアエンジン「SKYACTIV-Z」(2.5L直4)を開発中で、2027年に次期CX-5から導入予定。MBDを車両全体に拡張した「Whole Car Model」へ進化させ、AIを活用してエンジン・電動化・先進安全技術を統合シミュレーションすることで、エンジンユニット総数の半減と制御ソフトウェアの3分の2への集約を目指している。
この記事の内容
事業概要
マツダ株式会社は、「ブランド価値経営」を経営哲学の軸に据え、内燃機関車、バッテリー電気自動車(BEV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)等を提供するマルチソリューション戦略を展開する企業である。「マツダ統合報告書 2025」に記載の2025年3月期のグローバル販売台数(実績)は1,302,544台である。主要地域別の販売台数構成比(実績)は、北米が47%、欧州が13%、日本が12%、中国が6%、その他の地域が22%を占める。日本市場の販売台数(実績)は約152,000台(2025年3月期)であり、米国に次ぐ規模の市場として位置づけられている。同市場において、J.D. Powerの調査に基づくマスマーケット国産ブランドにおける販売満足度で2年連続の1位(実績)を獲得し、2025年日本カスタマーサービスインデックス調査において3位(実績)の評価を得た事実を公表している。また、大型商品群である「MAZDA CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」を中心に、グローバルな商品展開を推進する方針を掲げている。
財務
「2026年3月期 第3四半期決算短信」に記載の2026年3月期第3四半期の連結経営成績(累計・実績)によれば、売上高は3,501,499百万円(対前年同四半期増減率マイナス5.1%)、営業利益はマイナス23,120百万円、経常利益は37,419百万円(対前年同四半期増減率マイナス76.1%)、親会社株主に帰属する四半期純利益はマイナス14,710百万円である。2026年3月期第3四半期末時点の総資産(実績)は4,212,231百万円、純資産(実績)は1,831,024百万円、自己資本比率(実績)は43.0%を示す。2026年3月期通期の連結業績予想(会社予想)については、売上高4,820,000百万円(対前期増減率マイナス4.0%)、営業利益50,000百万円(同マイナス73.1%)、経常利益78,000百万円(同マイナス58.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益20,000百万円(同マイナス82.5%)を公表している。
技術・知財
「マツダ サステナビリティレポート 2025」によれば、同社は知的財産部を設置し、企業活動により創造した新技術、マーク、車種ネーム、車両デザインなどに関する知的財産権をグローバルに取得し保護する取り組みを実施している。他者の知的財産権(特許権、商標権、意匠権、著作権)の侵害や不正競争防止法上の紛争を予防・解決するための網羅的な調査を行う。開発領域においては、実物の試作部品に代わりコンピュータ上の「モデル」を使用する「モデルベース開発(MBD)」を導入し、開発効率の向上を図る。内燃機関技術では、Euro 7や米国のLEV4/Tier4等の環境規制に対応する次世代コアエンジン「SKYACTIV-Z」の開発を進行中である。SKYACTIV-Zは2.5L直列4気筒ガソリンエンジンであり、2027年に次期「MAZDA CX-5」からの導入を計画している。
戦略・成長
2025年3月18日公表の「ライトアセット戦略」において、同社は既存資産の活用とパートナーとの協業による投資の抑制を掲げる。自社単独の調達で7,500億円と想定されたバッテリー投資額を、協業を通じて半減させる計画を示す。2027年導入予定のBEV開発において、モデルベース開発やパートナーとの協業を活用し、従来型の開発と比較して開発投資を40%削減(計画)、開発工数を50%削減(計画)する。「マツダ ものづくり革新 2.0」のもと、BEVと内燃機関車を同一ラインで製造する「混流生産」を導入し、専用のBEV工場を建設する場合と比較して初期の設備投資を85%削減(計画)、量産準備期間を80%削減(計画)する。これらを通じ、既存のリソースレベルを維持しながら生産性を3倍(計画)に高める目標を公表している。
リスク・ESG
「マツダ企業倫理行動規範」において、従業員に対し「機密を守る。当社または他者の知的財産を侵さない」とする知的財産に関するガイドラインを規定している。職位や職種に応じたe-ラーニング等の啓発教育を実施し、インターネット環境での知財リスク等の未然防止に努める。環境面においては、2050年までに車両のライフサイクル全体およびサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目標とし、2035年までに世界の自社工場でのカーボンニュートラル達成を目標とする。米国法人のMazda Motor of America, Inc.(MMA)が発行する「MAZDA 2023 ESG REPORT」によれば、米国のカリフォルニア州の店舗(Capistrano Mazda)に導入した太陽光発電システムにより、設置初年度に自店舗向けに23.5 MWh、テナント向けに41 MWhの再生可能エネルギーを生成(実績)した。
マツダ株式会社は、経営哲学である「ブランド価値経営」の実践を通じて企業価値の向上と企業理念の実現を目指す方針を、「マツダ統合報告書 2025」において公表している 1。同社は2030年を見据えた経営方針として、クルマを運転する楽しさや移動による感動を提供し、顧客の日常を豊かにすることを使命に掲げている 3。
ステークホルダーとのエンゲージメントに貢献するコミュニケーションツールとして発行される「マツダ統合報告書 2025」は、IIRC(国際統合報告評議会、現在はIFRS財団の一部)が発行する国際統合報告フレームワークや、経済産業省が策定した「価値協創のためのガイダンス」等のガイドラインを参照して作成されている 1。同報告書の主な対象期間は2024年4月から2025年3月まで(一部2025年4月以降の活動を含む)であり、マツダ株式会社およびグループ会社を含むマツダグループ全体を対象組織とする 1。日本語版は2025年10月に、英語版は2025年12月に発行されている 1。
同報告書の構成は以下の5つのセクションに分かれている 1。
「2025年3月期 有価証券報告書」および「マツダ統合報告書 2025」に基づく、同社のグローバル市場における事業展開および販売実績は以下の通りである 1。
「マツダ統合報告書 2025」に記載の2025年3月期のグローバル販売台数(実績)は1,302,544台である 1。各地域の販売台数構成比(実績)は、北米が47%、欧州が13%、日本が12%、中国が6%、その他の地域が22%である 1。
「2025年3月期 有価証券報告書」に記載の2025年3月期の地域別販売動向(実績)は以下の内容を示す 4。 北米市場においては、新規に導入した「MAZDA CX-90」や「CX-70」等のラージ商品群、ならびに「CX-50」等の販売が増加したことにより、販売台数は前期比25.8%増の514千台となった。 欧州市場においては、ドイツや英国等における販売の減少により、販売台数は前期比3.4%減の174千台である。 日本市場においては、新車効果の剥落等により、販売台数は前期比14.5%減の141千台を記録した。 中国市場においては、内燃機関車需要の縮小や価格競争激化の影響等を受け、販売台数は前期比23.1%減の74千台である。なお、同市場においては2024年10月より電動専用モデル「EZ-6」の販売を開始している。 その他の市場においては、主要市場のオーストラリアにおいて新規導入のラージ商品群や「MAZDA CX-3」「CX-5」等の販売が増加したものの、「MAZDA CX-9」および「CX-8」の販売終了の影響等により前期比1.1%減の97千台となり、その他の市場全体(タイやマレーシアなどのASEAN市場の販売減少を含む)では、前期比1.4%減の285千台を示す。
「2025年3月期 第3四半期決算説明会資料」に記載の2025年3月期第3四半期累計(実績)の販売および生産データは以下の通りである 5。 グローバル生産台数(OEMを除く生産/月次開示ベース・実績)は909千台であり、前年比2%(18千台)の減少を示す。 グローバル販売台数(実績)は966千台であり、前年比4%(37千台)の増加である。 連結出荷台数(財務指標・実績)は902千台であり、前年比2%(14千台)の増加を示す。
同期間における地域別のグローバル販売台数(実績)の内訳は以下の通りである 5。 北米市場の販売台数は464千台(前年比22%増、84千台増)である。その内、米国の販売台数は324千台(前年比18%増)で第3四半期として過去最高を記録し、メキシコの販売台数は80千台(前年比40%増)で過去最高を記録した。 欧州市場の販売台数は130千台(前年比4%減、5千台減)である。 日本市場の販売台数は102千台(前年比15%減、18千台減)であり、「CX-8」の生産終了が影響したと記載されている。 中国市場の販売台数は58千台(前年比20%減、15千台減)であり、内燃機関車需要の縮小が影響した。 その他の市場の販売台数は213千台(前年比4%減、9千台減)である。内訳としてオーストラリアが72千台(前年比3%減)、ASEAN市場が51千台(前年比13%減)を示す。
「マツダ統合報告書 2025」において、日本市場は米国に次ぐ2番目に大きな市場であると記載されている 1。日本国内の販売台数は2020年3月期以降減少トレンドにあると指摘しており、このトレンドを反転させるために200,000台の販売台数を達成する目標(計画)を掲げている 1。外部機関による評価として、J.D. Powerの調査に基づくマスマーケット国産ブランドにおける販売満足度で2年連続の1位(実績)を獲得し、2025年日本カスタマーサービスインデックス調査において3位(実績)の評価を得た事実を公表している 1。
マツダ株式会社の財務状況について、「2026年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」、「2025年3月期 有価証券報告書」、および「2025年3月期 第3四半期決算説明会資料」に記載の一次情報に基づき整理する 4。
「2026年3月期 第3四半期決算短信」に記載の2026年3月期第3四半期の連結経営成績(累計・実績)は以下の通りである 6。 売上高は3,501,499百万円(対前年同四半期増減率マイナス5.1%)である。営業利益はマイナス23,120百万円、経常利益は37,419百万円(対前年同四半期増減率マイナス76.1%)、親会社株主に帰属する四半期純利益はマイナス14,710百万円を示す。包括利益は55,656百万円(対前年同四半期増減率マイナス41.8%)であり、1株当たり四半期純利益はマイナス23.33円である。
同資料において公表された2026年3月期の通期連結業績予想(会社予想)は以下の数値を示す 7。 売上高は4,820,000百万円(対前期増減率マイナス4.0%)、営業利益は50,000百万円(同マイナス73.1%)、経常利益は78,000百万円(同マイナス58.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益は20,000百万円(同マイナス82.5%)、1株当たり当期純利益は31.71円である。直近に公表されている業績予想からの修正の有無は「有」である。
配当の状況について、2025年3月期の年間配当金(実績)は第2四半期末25.00円、期末30.00円の合計55.00円であった 7。2026年3月期の配当予想(会社予想)は、第2四半期末25.00円(実績として記載)、期末30.00円の合計55.00円である 7。
「2025年3月期 有価証券報告書」に記載の2025年3月期通期のセグメント別業績(実績)は以下の通りである 4。
連結の営業利益増減要因に関する記載(前期比増減額マイナス64,400百万円)として、台数・構成の悪化等によりマイナス44,300百万円、為替の好転によりプラス43,900百万円、原材料・物流費等の悪化によりマイナス46,200百万円、コスト改善によりプラス25,000百万円、固定費他の増加によりマイナス25,000百万円の変動があったことを報告している 4。
「2026年3月期 第3四半期決算短信」に記載の2026年3月期第3四半期末(2025年12月31日)時点の財政状態(実績)は以下の数値を示す 6。 資産合計は4,212,231百万円であり、前連結会計年度末(2025年3月31日)の4,090,081百万円から122,150百万円増加した。負債合計は2,381,207百万円となり、前連結会計年度末から101,200百万円増加した。流動負債の主な内訳として、支払手形及び買掛金は456,340百万円、短期借入金は32,985百万円、1年内償還予定の社債は20,000百万円、1年内返済予定の長期借入金は55,100百万円、未払費用は417,712百万円を示す。純資産合計は1,831,024百万円であり、自己資本比率は43.0%である(前連結会計年度末は43.8%)。
同期間のキャッシュ・フローの状況(実績)について、投資活動によるキャッシュ・フローは定期預金の純増減等により25,900百万円の増加(前年同期は70,400百万円の減少)となった 6。営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計である連結フリー・キャッシュ・フローは145,800百万円の減少(前年同期は73,100百万円の増加)である 6。財務活動によるキャッシュ・フローは長期借入金による資金調達に対し、配当金の支払いや長期借入金の返済等により108,900百万円の増加(前年同期は65,200百万円の増加)を示す 6。
「2025年3月期 第3四半期決算説明会資料」に記載の2025年3月期第3四半期末時点の純現金勘定(Net Cash・実績)は385.5億円である 5。
マツダ株式会社の知的財産に関する保護方針、リスク管理体制、および従業員向けの行動規範は、「マツダ サステナビリティレポート 2025」および企業公式ポリシーにおいて明文化されている 8。
同社は「知的財産部」を設置し、知的財産管理機能の強化を推進している 10。知的財産部の方針として、以下の2点を掲げている 8。
知的財産部が主導し、他者の知的財産権を侵害しないように社内の活動をリードするとともに、社内活動の成果を自社の知的財産権として強固に保護・蓄積し、最大限に活用するための戦略的な取り組みを実施する 10。知財創出のインセンティブとして、年に一回受賞者を選定し、1月の創立記念式日にあわせて所属長を通じて表彰状、記念章、補償金などを贈る制度を運用している 10。
(なお、同社の具体的な保有特許件数、出願件数、および個別特許の公報番号等の詳細リストに関する一次情報については、公的特許DB上で出願人・権利者が同社であることを照合・確認する作業が完了しなかったため、調査範囲内では確認できずとする。)
従業員の行動指針である「マツダ企業倫理行動規範(Mazda Corporate Ethics Code of Conduct)」は、1998年に取締役会の承認を得て制定され、以後必要に応じて改定されている 9。同規範において、知的財産に関する具体的な指針を「機密を守る。当社または他者の知的財産を侵さない(Keep confidential information. Never infringe on any intellectual property rights, whether it belongs to Mazda or another party.)」と規定している 9。
同規範を支える「誠実な行動のための5つの原則(Five principles of faithful behavior)」は以下の通りである 9。
これに基づく行動ガイドラインとして、法令および社内規則を遵守し、明確に定義されていない状況ではその精神を考慮して判断を下すこと、従業員・顧客・取引先を公正かつ正当に扱うこと、業務上の地位を利用して不当な利益や恩恵を受け取ったり与えたりしないこと、公私を区別し会社の資産を横領・乱用しないこと、人間の安全と環境を考慮した製品の開発・製造・販売に努めること、健全な利益を追求する視点を持って行動すること、人権と人間の尊厳を尊重すること、社内または公に向けて真実を正直かつ適時に報告すること、反社会的勢力との関係を持たないポリシーを実践することを定めている 9。
知財リスクの啓発活動として、外部環境の変化を踏まえ定期的にリスクの見直しを行い、国内外のグループ会社を含め、職位や職種、扱う知的財産の種類に応じた啓発教育を実施している 10。特に、社外との新技術・サービスの共同開発が増加する中での知的財産リスクや、SNSなどのインターネット環境での知的財産リスクについて重点的に教育を行い、情報提供・意識改革を図ることで問題の未然防止に努める 10。啓発活動の具体的な事例として、「セミナーやe-ラーニングの実施」「社外向けの発行物制作マニュアルの展開」「著作権侵害のリスク無く使用できる『マツダ共有画像集』の制作」を公表している 10。また、従業員のコンプライアンスの理解度を確認するため、グローバル従業員エンゲージメント調査を定期的に実施する 9。
同社は、模造品購入により生じる顧客のリスクを排除することを目的としたブランドプロテクション活動を展開している 10。安全に関わる部品に関して最優先で対策を講じ、顧客の安全を守るとともに、ブランド力と信頼性の維持・向上を図る方針である 10。 具体的な活動内容として以下の3点を示す 10。
2025年3月18日に公表された「マツダ、電動化のマルチソリューションを具現化する『ライトアセット戦略』を公表」および「マルチソリューション説明会 2025」資料に基づき、同社の技術基盤と電動化に向けたロードマップを整理する 3。
「ライトアセット戦略」は、マツダ株式会社がスモールプレイヤーとして企業価値を向上させるための実行戦略である 11。既存資産の活用を最大化し、新製品や新技術を導入する際の投資を抑制しつつ、2030年までの多様化する顧客ニーズや環境規制に柔軟に対応することを目指す 11。
同戦略に基づく具体的な数値目標として、以下の投資抑制および効率化の指標(計画)を公表している 11。
協業の領域について、トヨタ自動車株式会社、株式会社デンソー、株式会社BluE Nexus等の企業と、電子プラットフォーム(Electric Electronic Architecture)、先進運転支援システム(ADAS)、電動パワートレインの領域でパートナーシップを結んでいる旨を説明会資料で言及している 11。また、広島において地場企業との協業により電動化ユニットの生産ハブを育成する取り組みを示す 11。
マツダ株式会社独自の開発基盤として「モデルベース開発(MBD)」を推進している 3。MBDとは、設計開発活動において実物の試作部品ではなくコンピュータ上で再現した「モデル」に軸足を置いて活動を進めることで、性能構想、設計、部品試作やテストにかかる時間と手間を短縮し、効率的に開発を行うスタイルである 11。
初期のMBDではエンジンなどユニット単位でのモデル化を行っていたが、マルチソリューションを実現するためにはエンジン、電動化技術、先進安全技術といった様々な技術ユニットの連結が必要となる 3。このため、同社はAIを活用して車両全体をコンピュータ上のシミュレーションでつなぎ、機能や制御の要件を明確化する「Whole Car Model」への進化を図っている 3。
また、このMBDの技術を自社内に留めず、MBD技術の普及促進および企業間・産学間でのモデル流通の仕組み構築を図る組織である「MBD推進センター(JAMBE:Japan Automotive Model-Based Engineering center)」等との協業を通じ、サプライチェーン全体へと拡大する取り組みを進めている 11。
製品開発のプロセスにおいては、5年から10年先の将来に必要となる製品や技術をまとめて企画する「一括企画(Bundled Planning)」を採用している 11。複数の車種間で共通化する「固定要素」と個性を出すための「変動要素」を特定し、「コモンアーキテクチャ(Common Architecture)」を構築することで、柔軟な生産と投資効率の向上を実現する方針である 11。
電動化時代においても内燃機関のフロントランナーであり続けるため、次世代のコアエンジンとして「SKYACTIV-Z」の開発を進めている 11。SKYACTIV-Zは2.5L直列4気筒ガソリンエンジンであり、Euro 7や米国のLEV4/Tier4等の厳しい排出ガス規制に対応する設計である 11。「SKYACTIV-X」で使用された火花点火制御圧縮着火(SPCCI)技術を拡張し、環境負荷の低減と「走る歓び」の両立を図る 11。
SKYACTIV-Zは2027年に次期「MAZDA CX-5」から導入され、マツダ株式会社独自のハイブリッドシステムと組み合わせて展開される予定である 11。同エンジンで培われた燃焼技術は、直列6気筒エンジンやロータリーエンジンの排出ガス開発にも適用される 11。資産集約の取り組みとして、SKYACTIV-Zを含むエンジンユニットの総数を半分以下に削減(計画)し、制御ソフトウェアの種類を現在の3分の2に集約(計画)する目標を示す 11。
ロータリーエンジンについては、「マツダ統合報告書 2025」において、同社の「チャレンジャースピリット」の象徴であり、逆境を乗り越えてきた歴史であると記載されている 1。同社はロータリーエンジンの量産化を達成し、日本の自動車メーカーとして初めてル・マン24時間耐久レースでの優勝を飾った事実を公表している 1。
同社は、2030年を見据えた経営方針において、3つのフェーズによる電動化時代向けた戦略のアップデートを公表している 1。
BEVロードマップに基づく具体的な製品展開として、長安マツダで製造される「MAZDA EZ-6」に続き、クロスオーバーSUVとなる第2のモデルを現在開発中であり、第3、第4のモデルについても検討を行っている 11。自社開発のEV専用プラットフォームは、バッテリー技術の進化に合わせて多様なバッテリータイプや車体形状に対応できる柔軟性を持ち、「人馬一体」の走行性能を維持するよう設計されている 11。このプラットフォームを使用した最初のBEVを2027年に導入する計画である 11。
開発戦略と並行し、生産・サプライチェーンの領域において「マツダ ものづくり革新 2.0(Mazda Monozukuri Innovation 2.0)」を推進する 1。これは2006年に開始された「ものづくり革新 1.0」を進化させたものであり、CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)技術や知能化を生産システムに統合し、複雑化する開発環境下においても既存のリソースレベルを維持したまま生産性を3倍に向上させる目標(計画)を掲げる 11。
「ものづくり革新 2.0」の中核となる生産方式が「混流生産(Mixed-flow Production)」の最適化である 11。同一の生産ライン上でBEV、内燃機関車(ICE)、ハイブリッド車を同時に製造する仕組みを構築する 11。複数の異なる車種を単一のモデルとして企画・設計段階から調整することで、生産ラインの稼働率を100%に保ち、既存資産の活用を最大化する 11。
このアプローチにより、BEV専用の工場を新規に建設する場合と比較して、初期の設備投資を85%削減(計画)し、量産準備期間を80%削減(計画)できるとの試算を公表している 1。
生産エリアの設備構成においては、床に固定されない「根無し(Non-rooted)」の生産設備や無人搬送車(AGV)を導入する 11。これにより、需要変動に対する柔軟性を確保し、資産効率を向上させる 11。
サプライチェーン領域においては、多様性を生み出すコンポーネントの生産を組み立てポイントに近づける構造改革を推進する 11。車両制御デバイスのハードウェアを1種類に標準化し、ソフトウェアについてはサプライヤー側での書き込み、あるいは自社工場における無線通信(Factory OTA)による書き込み方式を採用する 11。これらの最適化により、サプライチェーン全体の在庫を75%削減する目標(計画)を示す 11。
生産プロセスと製品設計の統合(Human-Centricなエンジニアリング)を推進するため、部門間の壁を取り払う連携体制を構築している 1。生産部門のメンバーを開発部門に3年間ローテーションさせて製造の源流を学習させる仕組みや、デザイナーが開発の初期段階で機密のクレイモデルを生産チームと共有し、デザインの意図を生産側が理解した上で最適な製造設備を構築するプロセスを導入している 11。また、生産現場で働く人々の潜在能力を引き出す「人づくり(Hitodzukuri)」の重要性を強調している 11。
財務面の効率化指標として、「2025年3月期 第3四半期決算説明会資料」および「マツダ統合報告書 2025」において戦略的なコスト削減目標を公表している 2。2030年に向けた経営方針の一環として、2027年3月期までに1,000億円(または3%)規模のコスト低減を達成する目標(計画)を掲げる 2。これを実現するための施策として、固定費および変動費のゼロベースでの見直しを行うとともに、次期「CX-5」において部品点数を60%削減(計画)する方針を示す 2。
マツダ株式会社は、持続可能な社会の実現に向けた取り組みとして、気候変動への対応、資源循環、従業員のウェルビーイング向上に関するESGデータと施策を公表している 2。
同社は、2050年までに車両のライフサイクル全体およびサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成をコミットメントとして掲げている 13。また、生産拠点における目標として、2035年までに世界の自社工場でのカーボンニュートラル達成を目指す 13。
再生可能エネルギーの活用事例として、米国のグループ会社であるMazda Motor of America, Inc.(MMA)が発行した「MAZDA 2023 ESG REPORT」において、ディーラーへの太陽光発電システムの導入実績が記載されている 12。米国カリフォルニア州の店舗(Capistrano Mazda)において、2022年10月にディーラーの屋根への太陽光パネル設置システムが完了した 12。設置から1年間で、同システムはマツダディーラー向けに23.5 MWhの再生可能エネルギーを生成し、ディーラー内の共有テナント向けに41 MWhの再生可能エネルギーを追加で生成(実績)した 12。同レポートの試算によれば、このシステムによる環境への影響は642,000 lbsのCO2排出量削減に相当し、これは722,421マイルの走行による排出量の相殺、3,500万台の携帯電話の充電、または4,810本の植樹に相当する(単位および換算は一次情報の記載に基づく) 12。
「MAZDA 2023 ESG REPORT」において、米国内の事業所における廃棄物および水資源の管理状況を開示している 12。MMAは米国内で製造工場を直接運営しておらず、生化学的廃棄物は発生しないと記載している 12。商業廃棄物は部品流通やオフィスごみから発生する箱、パレット、プラスチック、金属等であり、専門の廃棄物管理パートナーを通じて有害廃棄物、廃棄物転用、リサイクルを含む処理を行っている 12。スクラップ部品については、各ディーラーに責任を持った処分を求めている 12。2023年において、12の施設で28%の廃棄物転用率(Diversion rate)を達成(実績)した 12。
また、従業員グループの主導により、自動車のフロントガラスおよびバックガラスのリサイクルを推進するパートナーシップを構築した 12。廃棄予定のガラスが埋め立て地へ送られるのを防ぐため、ガラスリサイクル組織と協力し、同パートナーシップの開始以来、MMAは11.41トンのガラスを埋め立て地から転用(実績)した 12。
水資源の保護について、干ばつの発生しやすいカリフォルニア州の環境を考慮し、複数のMMA施設において敷地内の造園に再生水(Reclaimed water)を使用している 12。MMAの米国本社ビルにおいても、水洗トイレの設備に再生水を使用する取り組みを実施している 13。
従業員の健康と福利厚生に関して、MMAは包括的な「Employee Benefits Program(従業員福利厚生プログラム)」を提供している 13。同プログラムには、医療・歯科・眼科プラン、生命保険、短期および長期の障害保険、フレキシブル支出口座(Flexible Spending Accounts)および健康貯蓄口座(Health Savings Accounts)が含まれる 13。これらを通じて、職場および家庭における従業員の身体的および感情的なフィットネスをサポートする体制を構築している 13。
|
予定日/実施日 |
イベント名称 |
出典表記名 |
|
2026年2月10日 |
第3四半期決算発表 |
マツダ IRカレンダー |
|
2026年5月12日 |
2025年3月期通期決算発表 |
マツダ IRカレンダー |
|
地域区分 |
販売台数構成比(2025年3月期 実績) |
|
北米 |
47% |
|
欧州 |
13% |
|
日本 |
12% |
|
中国 |
6% |
|
その他の地域 |
22% |
(※出典:「マツダ統合報告書 2025」。2025年3月期グローバル販売台数1,302,544台に対する各地域の比率)
本項目における具体的な特許取得件数、特許出願件数、および個別の特許番号・発明の名称に関するリスト等の詳細データについては、後述の通り公的特許DB上での出願人・権利者確認が取れなかったため、調査範囲内では確認できずとする。そのため本報告書における表の作成は見送る。
今回収集した一次情報の調査範囲内では、国内外の全製造拠点、R&Dセンター、および販売統括会社の網羅的なリストや人員数等の詳細な拠点データは確認できずとする。
本調査プロセスにおいて、以下の事項は「一次情報の定義」および「引用の3原則(公的DBでの照合等)」を満たさなかったため、本文での引用対象から除外し、未確認事項として扱う。
本レポートのPDF版をご用意しています。印刷や保存にご活用ください。
本レポートは、公開情報をAI技術を活用して体系的に分析したものです。
情報の性質
ご利用にあたって
本レポートは知財動向把握の参考資料としてご活用ください。 重要なビジネス判断の際は、最新の一次情報の確認および専門家へのご相談を推奨します。
TechnoProducerは、貴社の「発明力と知財力」を最大化します
→ 月額顧問サービス
特許活用から経営戦略まで、事業成功のプロがあらゆる課題に対応
→ 発明塾®動画セミナー
個人での学習や、オンラインでの社内教育はこちら
→ まず相談したい・お問い合わせ
サービス選択に迷う場合や、個別のご相談はこちら
ここでしか読めない発明塾のノウハウの一部や最新情報を、無料で週2〜3回配信しております。
・あの会社はどうして不況にも強いのか?
・今、注目すべき狙い目の技術情報
・アイデア・発明を、「スジの良い」企画に仕上げる方法
・急成長企業のビジネスモデルと知財戦略