テーマ別 深掘りコラム 1分で読める!発明塾 塾長の部屋
会社概要 発明塾とは? メンバー
実績 お客様の声
​​マッキンゼーの採用試験にAI登場 〜仕事に必要なスキルはどう変わるのか〜

​​マッキンゼーの採用試験にAI登場 〜仕事に必要なスキルはどう変わるのか〜

マッキンゼーが採用試験にAIを導入した理由

最近、マッキンゼーが一部の入社採用試験にAIを導入しているというニュースがありました。

これは選考する側の仕組みの話ではなく、試験内容が「AIを使って答えてください」という受験者側の話です。

マッキンゼーが公式に発表したものではありませんが、記事によると、社内AIツールの「Lilli」を使用して、データ分析などの実践的な課題形式の問題に使われているとのこと。AIで情報の探索をし、思考を体系化し、洞察をどのように深めたのかを答えるのだそうです。

AIに関する技術的な知識ではなく、候補者がAIツールを使ってAIが出した答えをどのように考え、判断し、協働するかをマッキンゼーは評価するようです。

 

試験問題にAIを使って答える時代になるとは、近年の変化のスピードに驚きますね。子どもが就職する少し先の未来はいったいどうなるのか…なんてことも考えてしまいます。

しかし現時点ですでに、AI活用前提の企業では、AIと協働することが当たり前になりつつあり、その関わり方そのものが問われるようになっています。ですので、マッキンゼーのような試験方法は、今後日本企業にも導入されるかもしれません。

 

AIと協働する時代、人間に求められるスキルは変わるのか

このように、AIと協働していくことが必須になってくると、私たち人間に求められる能力は何か変わってくるのでしょうか。

そこで、こうした変化のヒントを探るために、関連する論文を調べてみました。
ヒントになりそうなものの一つが
Generative AI Adoption and Higher Order Skills(生成AIの導入と高次スキル)」です。

この論文は、生成AIの導入が、仕事で求められる「スキル」の需要をどのように変化させているかを大規模なデータから分析した研究です。


 
例えば、以前は「対面でのコミュニケーション」が重要だった業務が、メールやチャット中心に変化したことで「テキストでの正確な伝達」を重視するスキルへと変わった、というように、業務内容は同じでも、求められるスキルだけが変わる場合があります。

 この論文は、これまでの生成AI研究の多くにあった、どの仕事がAIに置き換わるかや、どの業務がAIによって効率化されるかではなく、労働者が持つスキルそのものの変化に焦点を当てています。

生成AIの導入で、仕事の「スキル構造」はどう変わったのか 〜大規模データ分析の結果〜

では、さっそく調査方法と分析結果をみてみましょう。
生成AIを導入する職場では、求められるスキルの優先順位が以下のように変化しています。

〈調査方法〉

  • 対象:米国の公開企業596社が出した約840万件の求人情報を分析。
  • 期間:2022年から2024年にかけてのデータをChatGPTの登場前後を含めて調査。
  • 比較:「ChatGPTやCopilotなどの生成AIスキル」を明示的に求める求人と、そうでない求人を比較。

〈主な研究結果〉
分析結果1:生成AIを活用する職種に求められるスキルの特徴

 ChatGPTの登場以降のデータを分析した結果、生成AIを活用する職種は活用しない職種と比較してどう違うか。

  • 認知スキル (+43.7%):
    問題解決、分析力、批判的思考などの需要が大幅に高い。
  • コンピュータ・ITスキル (+78.8%):
    プログラミングやデータ管理、ソフトウェア利用能力を非常に重視。
  • 需要が低いスキル
    一方で、自己管理(-44.0%)財務(-30.8%)、カスタマーサービス(-17.1%)といったスキルは、生成AIロールでは相対的に重視されていなかった。

 

つまり、生成AIを活用する職種は基礎的な事務作業や定型的な顧客対応、データ入力などの業務を代替し「考えて、判断して、使いこなす仕事」に寄っている構造になってきているということですね。

 

分析結果2:ChatGPT登場後の時系列的な変化

ChatGPTのリリース(2022年11月)を境に、同じ職種の中でも求められるスキルがどう変化したか。

  • 社会的スキルの低下(-4.5%):
    生成AIを活用する職種では、協力、交渉、プレゼンテーションといった対人スキルの強調が減少。
  • プロジェクト管理スキルの上昇(+4.1%):
    逆に、プロジェクト全体を管理し、動かすスキルの需要は高まっている。
  • ITスキルの相対的低下 (-8.8%):
    初期には高かったITスキルの強調も、時間が経つにつれてやや落ち着く傾向が見られた。

 

つまり、プログラミングなどの技術スキルをAIで代替され、人間は「実務」から「全体を設計・管理する役割」へシフトしている可能性が示されているんですね。

 

論文が示す2つのメタスキル 〜認知スキルと社会的スキルの行方〜

著者は、分析結果をふまえ、考察を以下のように述べています

 重要な考察:2つの「メタスキル」
この研究では、他のスキルを習得するための基盤となるメタスキル(高次スキル)である「認知スキル」と「社会的スキル」の2つを重視している。

  1. 認知スキルの重要化:
    AIを使いこなして業務を実行するには、個人の高い分析力や思考力がより必要になっている。

  2. 社会的スキルの低下:
    生成AIの導入が進むほど、対人協力や人間関係を重視するスキルの強調が減っている。これは、仕事がより細分化(モジュール化)され、個々人がAIを使って完結させる傾向が強まっている可能性を示唆している。

 

そして、結論と将来への影響については
「生成AIは、単に特定の仕事を奪うのではなく、「人間に求められるスキルのバランス」を根本から作り替えている。特に、高い思考力(認知スキル)の需要が高まる一方で、これまでは重要視されていた対人能力(社会的スキル)の優先度が下がっているという変化は、今後のキャリア形成や教育に大きな影響を与える可能性がある」
と示唆しています。

 

AI時代だからこそ問われる「人間らしさ」

以上が論文の主な内容です。
分析力やプロジェクトを管理する能力など、求められる能力のバランスが変わってきていますね。それでも認知スキルの需要はより高まっている、ということも興味深い結果です。

AIがあるからこそ、
人間には「より高度に考える力」が重要だということなのでしょう。状況をみて臨機応変に判断するということは人間が得意とすることだと思います。

 

ただ一つ、著者の考察で、人間ならではの強みとされてきた社会的スキルの優先順位が下がってきている事実を懸念している点が、実は重要ポイントなのではないかと感じます。

実際に論文の中で、著者は「社会的スキルは、他者との協力や集団的なやり取りを通じて新しい知識を学ぶプロセスを支えるスキルであり、将来のキャリアにおいて、社会的スキルの低下は他者との関わりの中で成長するチャンスを減らすリスクを秘めている」と述べています。

 

認知スキルとともに社会的基盤や他のスキルを身につける土台となる社会的スキル。ヒューマンスキルとも言われるこのスキルは一朝一夕には身につかないものですよね。特に子どものうちから意識的に育てていくべきスキルだと感じました。

 

参考資料 ◾️論文タイトル:Generative AI Adoption and Higher Order Skills ◾️著者:Piyush Gulati, Arianna Marchetti, Phanish Puranam, Victoria Sevcenko  ◾️発行日:2025.3.12 ◾️DOI: 10.48550/arXiv.2503.09212

 このコラムのまとめ

  1. マッキンゼーでは、採用試験で「AIを使って答える」こと自体が評価対象になり始めている。
  2. 生成AIの普及により、仕事は「作業」から「考え、判断し、管理する役割」へと変化している。
  3. 最新研究では、AIを活用する職種ほど分析力や思考力といった認知スキルの重要性が高まっていることが示された。
  4. 一方で、対人コミュニケーションなどの社会的スキルは、相対的に重視されにくくなっている。
  5. 著者は、認知スキルと社会的スキルという2つのメタスキルのバランス変化が、教育やキャリアに大きな影響を与えると指摘している。
  6. AI時代だからこそ、子どもには高度に考える力と、人と関わりながら学ぶ力の土台を育てることが重要になる。

文:鈴木素子



【その7】「子育てと教育」〜これからの時代に生き抜く力を〜 記事一覧

2026.03.02 AIで読解力は鍛えられるのか? 〜高校国語授業での新しい挑戦〜

2026.02.24 図工の授業にAIを導入したら、子どもはどう変わる?

2026.02.17 AIで音楽の才能はここまで伸びる 〜音楽教育の最前線〜

5秒で登録完了!無料メール講座

ここでしか読めない発明塾のノウハウの一部や最新情報を、無料で週2〜3回配信しております。

・あの会社はどうして不況にも強いのか?
・今、注目すべき狙い目の技術情報
・アイデア・発明を、「スジの良い」企画に仕上げる方法
・急成長企業のビジネスモデルと知財戦略

無料購読へ
© TechnoProducer Corporation All right reserved