3行まとめ
2030年に向け社会課題解決と企業成長を両立
東京建物は長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」のもと、事業を通じた「社会課題の解決」と「企業としての成長」の両立を掲げている。2025年度から2027年度の新中期経営計画を、長期ビジョン実現に向けた「成長の礎」を構築する3年間と位置付けている。
大手町の森と木庭で都市の環境再生を推進
2025年8月27日に森林総研との共同研究を「大手町の森」で開始し、都市緑地がウェルビーイング向上に与える影響とヒートアイランド現象の緩和効果を検証している。さらに2025年10月20日には、倒木更新を再現する「木庭 MOKUTEI」プロジェクトを東京建物八重洲ビルで開始した。
DXと調達基準で知財・情報管理を強化
オフィスDXでは、顔認証によるセキュリティパス、ホテリング勤務、無人受付システム、会議室の事前予約を一元化するプラットフォーム導入事例を示している。知財面ではサステナブル調達基準で、取引先に第三者の知的財産権と営業秘密を侵害しないことを求めている。
この記事の内容
東京建物株式会社は、1896年10月1日に設立された総合デベロッパーである。本店を東京都中央区八重洲一丁目9番9号に置き、実際の業務は東京都中央区八重洲一丁目4番16号にて行っている 1。主な事業内容は、オフィスビルや商業施設等の開発、賃貸及び管理、マンション・戸建住宅の開発、販売、賃貸及び管理、不動産の売買、仲介及びコンサルティング、駐車場の開発・運営、リゾート事業、物流施設開発事業、資産運用事業、海外事業、不動産鑑定業である 1。同社は事業遂行の基盤として、国土交通大臣から宅地建物取引業者免許、特定建設業許可、不動産特定共同事業許可を取得し、東京都知事から不動産鑑定業者登録、一級建築士事務所登録を受けている。また、東京都公安委員会から警備業者認定を受けている 3。組織体制としては、取締役会および社長執行役員を中心とし、経営会議、指名諮問委員会、報酬諮問委員会を設置し、さらにリスクマネジメント委員会、サステナビリティ委員会、人権分科会、コンプライアンス分科会等の専門組織を配置している 3。グループ理念として「信頼を未来へ」を掲げ、約130年の歴史の中で培われた「お客様第一」の精神と「進取の精神」を企業活動の原点として位置付けている 4。
財務状況については、2025年12月期有価証券報告書および2026年12月期第1四半期決算短信において実績と計画が開示されている。2025年12月期(2025年1月1日〜2025年12月31日)の連結業績実績は、営業収益474,586百万円、経常利益78,187百万円、親会社株主に帰属する当期純利益58,879百万円であった 2。同四半期末時点の総資産は2,272,720百万円、純資産は603,137百万円、自己資本比率は26.0%、1株当たり当期純利益は283.08円、1株当たり純資産額は2,846.85円であった 2。続く2026年12月期第1四半期(2026年1月1日〜2026年3月31日)の連結経営成績(累計)の実績は、営業収益98,619百万円(対前年同四半期増減率22.1%減)、営業利益12,645百万円(同46.7%減)、経常利益9,249百万円(同55.1%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益5,717百万円(同60.2%減)となっている 5。同社が公表する2026年12月期の通期連結業績予想(会社予想)は、営業収益524,000百万円(対前期増減率10.4%増)、営業利益100,000百万円(同4.4%増)、経常利益80,500百万円(同3.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益63,000百万円(同7.0%増)を掲げている 5。配当金について、2025年12月期実績は年間合計105.00円であり、2026年12月期の年間配当金(会社予想)は第2四半期末61.00円、期末61.00円の合計122.00円としている 5。
技術・知的財産に関する取り組みとして、都市開発における環境再生技術やデジタル技術(デジタルトランスフォーメーション、DX)の活用が公表されている。都市環境領域では、2025年8月27日に国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所と共同で、同社が開発した「大手町タワー」の敷地内に整備された「大手町の森」を対象とした共同研究の開始を発表した 6。この研究では、都市緑地がウェルビーイング向上に与える影響の科学的検証や、ヒートアイランド現象の緩和効果の分析を実施する 6。また、2025年10月20日には東京建物八重洲ビルの八重仲ダイニング地下2階において、「倒木更新」を再現して自然の森を再生させる「木庭 MOKUTEI」プロジェクトの開始を公表した 7。デジタル・DX領域では、オフィスビルの機能向上を目的とし、顔認証によるセキュリティパス、ホテリング勤務のサポート、無人受付システム、会議室の事前予約などを一元化するオールインワンプラットフォームの導入事例を紹介している 8。知的財産管理の基本方針として、「サステナブル調達基準」において、第三者の知的財産権(特許権、著作権、意匠権等)および営業秘密を侵害しないことをサプライチェーン全体に求めている 9。全社的な特許の保有件数や研究開発費の具体的な実績数値は調査範囲内では特定できず、未確認事項として扱う 4。
同社は、中長期的な成長戦略として、2030年を目標年度とする長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」を掲げている 4。このビジョンにおいて、事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立させることを方針とし、すべてのステークホルダーにとっての「いい会社」を目指すことを表明している 4。当該ビジョンの目標年度は、策定当初(2020年)は同社が推進している複数の大規模再開発プロジェクトの竣工時期を見据えて「2030年頃」としていたが、前中期経営計画期間において利益成長の基盤が確立されたことに伴い、「2030年」と明確化して変更された 10。この長期ビジョン達成に向けたマイルストーンとして、2025年度から2027年度を対象とする新中期経営計画を策定し、当該期間を「成長の礎」を集中的に構築するための3年間と位置付けて推進している 4。次期中期経営計画においては、実績と進捗状況を精査したうえで、長期ビジョンの実現に向けた詳細なアクションプランを盛り込む方針を示している 10。財務戦略においては、規律あるバランスシートコントロールの実行を掲げている。前中期経営計画期間中から進めている政策保有株式の売却を新中計期間においても継続するとともに、固定資産の戦略的な売却を通じて含み益を実現益として顕在化させ、資金回収と投資のサイクルを加速させる方針を示している 10。
ESG経営およびリスク管理に関して、同社は環境負荷の低減とガバナンスの強化に向けた各種目標および体制を公表している。気候変動への対策においては、「東京建物グループの温室効果ガス排出削減の中長期目標」を策定し、2030年度までにScope1およびScope2の温室効果ガス排出量を46.2%削減する計画を定めている 11。また、開発する建築物の環境性能や快適性を客観的に評価するため、株式会社日本政策投資銀行が実施する「DBJ Green Building認証」、国土交通省が支援する「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」、第三者認証制度である「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」などの外部認証プログラムの取得をKPIおよび目標の対象としている 12。この目標の対象物件は、共同事業物件や特殊用途など一部の例外を除き、2023年1月以降に設計に着手した新築物件としている 11。ガバナンス体制においては、取締役会の下部組織としてサステナビリティ委員会およびリスクマネジメント委員会を配置し、さらにその下位組織として人権分科会やコンプライアンス分科会を設置している 3。調達活動に関するリスク管理としては「サステナブル調達基準」を策定し、取引先に対して、個人情報の適切な取り扱いによる機密事項の漏洩防止や、通報に係る情報の機密性および通報者の匿名性の保護、通報者に対する報復の排除等を要求している 9。
東京建物株式会社は、1896年10月1日に設立された不動産事業を展開する総合デベロッパーである。同社は、東京都中央区八重洲一丁目9番9号に登記上の本店を置き、実際の業務は東京都中央区八重洲一丁目4番16号にて行っている 1。
同社およびグループ会社が手掛ける主な事業領域は多岐にわたる。事業の具体的な内容は、オフィスビル・商業施設等の開発、賃貸及び管理、マンション・戸建住宅の開発、販売、賃貸及び管理、不動産の売買、仲介及びコンサルティング、駐車場の開発・運営、リゾート事業、シニア事業、物流施設開発事業、資産運用事業、海外事業、および不動産鑑定業である 1。全省庁統一資格情報(2023年1月18日更新)によると、同社は事業区分「サービス業」の規模「大企業」として登録されており、「役務の提供等」においてA等級の資格を有している 1。営業地域は北海道、東北、関東・甲信越、東海・北陸、近畿、中国、四国、九州・沖縄を網羅しており、取扱品目として「調査・研究」「会場等の借り上げ」「賃貸借」「建物管理等各種保守管理」「その他役務の提供」が登録されている 1。
同社が不動産事業を遂行するにあたり、関係省庁等から取得している主要な免許・登録および許可は以下の通りである 3。
また、業界の主要なネットワークとして、一般社団法人不動産協会、一般社団法人日本ビルヂング協会連合会、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会などの協会に加盟している 3。
同社はグループ理念として「信頼を未来へ」を掲げ、世紀を超えた信頼を誇りとし、企業の発展と豊かな社会づくりに挑戦することを宣言している 4。1896年の創業以来、約130年の歴史の中で、「お客様第一」の精神と、時代の流れをいち早く察知して新しいことに自発的にチャレンジする「進取の精神」を企業文化として受け継いできた 4。
同社は統合報告書において、業界に先駆けた革新的な取り組み実績を公表している。先進的な事業手法の開発事例として、日本初となるSPC(特定目的会社)法を活用した不動産証券化の実現が挙げられている 4。さらに、J-REIT市場の黎明期において「日本プライムリアルティ投資法人(JPR)」の立ち上げおよび運営を行った実績を有している 4。また、官民連携の分野では、中央官庁初となるPFI(Private Finance Initiative)事業として「霞が関コモンゲート」の推進を行った 4。都市計画と環境保護の融合事例としては、都市開発と自然環境の再生を両立させた「大手町タワー」の構築が示されている 4。同社はこれらの社会・業界に先駆けた取り組みを、従業員の自律と主体性によって実現してきたと位置付けている 4。
東京建物株式会社は、コーポレートガバナンスを機能させるための組織体制を構築している。同社の会社概要資料に記載されている組織図によれば、全社の意思決定および業務執行を監督する機関として「取締役会」があり、その構成員として「社長執行役員」が配置されている 3。さらに、役員等の指名や報酬に関する審議を行う機関として、取締役会の下に「指名諮問委員会」および「報酬諮問委員会」を設置している 3。また、監査機能を担う「監査役会」および「監査役」が存在している 3。
業務執行ラインにおける主要な会議体として、経営層による「経営会議」が設置されている 3。全社的な課題に対応するための専門委員会としては、ESG関連の取り組みを統括する「サステナビリティ委員会」および全社的なリスク管理を担う「リスクマネジメント委員会」が組織されている。サステナビリティ委員会の下部組織として「人権分科会」が設けられており、さらにコンプライアンス推進のために「コンプライアンス分科会」が配置されている 3。事業部門の例としては、「八重洲一丁目東プロジェクト推進室」や「都市開発事業第一部」などの組織が公表されている 3。
東京建物株式会社の財務実績は、有価証券報告書および決算短信において公表されている。
第208期有価証券報告書(自 2025年1月1日 至 2025年12月31日)に記載された、第204期から第208期までの主要な連結経営指標等の推移は以下の通りである 2。
なお、当該5年間の全期間において、「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」に関する記載は「−」となっている 2。
「2026年12月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月13日発表)によると、2026年12月期第1四半期の連結経営成績(累計:2026年1月1日~2026年3月31日)の実績は以下の通りである 5。
当該短信において比較対象とされている前年同四半期(2025年12月期第1四半期)の各実績数値は、営業収益126,665百万円(増減率9.0%増)、営業利益23,706百万円(増減率23.7%増)、経常利益20,592百万円(増減率6.0%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益14,347百万円(増減率23.0%増)、包括利益11,549百万円(増減率44.6%減)であった 5。なお、両期間ともに潜在株式調整後1株当たり四半期純利益の記載は「−」となっている 5。
2026年12月期第1四半期末時点(2026年3月31日)の連結財政状態に関する実績は以下の通りである 5。
1株当たり年間配当金について、2025年12月期の実績は第2四半期末48.00円、期末57.00円の合計105.00円であった 5。2026年12月期の配当予想(会社予想)については、第2四半期末61.00円、期末61.00円の合計122.00円を掲げている。また、当該予想について「直近に公表されている配当予想からの修正の有無:無」と記載されている 5。
2026年12月期の通期連結業績予想(対象期間:2026年1月1日~2026年12月31日、会社予想)は以下の通り公表されている。この予想についても「直近に公表されている業績予想からの修正の有無:無」と記載されている 5。
東京建物株式会社が手掛ける技術および研究に関連する具体的な取り組みとして、都市部における環境再生や自然を活用した空間形成の実績および共同研究が公表されている。
同社は、東京都千代田区大手町において「大手町タワー」を構築した実績を有する。公式発表に基づく大手町タワーの物件概要は以下の通りである 6。
この大手町タワーの敷地内に整備された都市緑地「大手町の森」において、2025年8月27日、東京建物は国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所(森林総研)と共同研究を開始することを公表した 6。この共同研究の目的は、都市緑地がウェルビーイング向上に与える影響を科学的に検証し、あわせてヒートアイランド現象の緩和効果を分析することにより、都市緑地の多面的な価値を定量化および可視化することである 6。当該敷地内である「大手町の森」においては、環境再生の成果として東京都のレッドリストに掲載されている「ヤマブキソウ」や「ウラナミアカシジミ」などの生物の存在が確認されている 6。
2025年10月20日には、人々が都市に居ながら自然の森を再生させることを目的とした「木庭 MOKUTEI」プロジェクトの開始を公表した 7。このプロジェクトは、「倒木更新」(倒れた樹木を苗床として新たな植物が育つ自然現象)のプロセスを施設内で再現するものであり、生物多様性の保全と利用者のウェルビーイング向上を両立させることを目指している 7。 設置場所は、東京都中央区八重洲1-4-16に位置する「東京建物八重洲ビル」の八重仲ダイニング地下2階であり、設置開始日は2025年10月20日である。本プロジェクトは、株式会社BIOTA(代表:伊藤光平)、株式会社ジャパンモスファクトリー(代表:戸上純)、および株式会社VUILD(代表:秋吉浩気)の3社を協力会社として実施されている 7。
研究開発分野に関連するその他の動向として、株式会社リバネス(本社機能および研究開発事業部)との連携事例が存在する。リバネスの公式ニュースにおいて、「リバネスと東京建物、大丸東京店・明日見世にて『リジェネラティブ・プロダクト・サイクル』実証を開始」というプロジェクトが公表されている 14。このリリースにおいて、問い合わせ先の一つとして「東京建物株式会社 コーポレートコミュニケーション部広報室」の連絡先(TEL:03-3274-1984、E-mail:ttk_koho@tatemono.com)が記載されており、同社がこの実証プロジェクトに関与している事実が確認できる 14。
東京建物株式会社は、不動産事業における価値向上の手段として、テクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。同社の公式マガジンにおいて、オフィスのDX化に関する定義やメリット、導入事例が詳細に解説されている 8。
同社はオフィスのDX化(デジタルトランスフォーメーション)を、「企業がオフィスの様々な機能をデジタル化し、抜本的な効率化や生産性向上、新しい価値の創出などを目指す取り組み」と定義している 8。DXの導入は、こうした効率化や価値創出を背景として推進されている 8。
同社は、オフィスのDX化を一元化されたプラットフォームを通じて実現する具体的な成功事例として、株式会社ビットキーのシステムの導入を取り上げている 8。このオールインワンプラットフォームの導入によって実現される機能として、以下の4点が明記されている 8。
これらの機能を連携させることで、施設の管理機能と利用者の利便性を同時に向上させるオフィス環境の構築を進めている 8。
グループ企業との関連が推測される取り組みとして、株式会社ファミリーネット・ジャパン(FNJ)が2025年9月16日に公表したニュースがある。当該ニュースにおいて、「専有部玄関前配達サービス『直達®』特許取得 ~ マンション管理業務のDX推進・レジリエンス強化・安全性向上を実現 ~」との発表が行われている 15。このサービスはマンション管理業務の省人化に貢献するとともに、「時限認証キーの照合は通信環境に依存しないため、災害時やネットワーク障害時でも入退館が可能」という特性を持ち、マンションのレジリエンス強化に寄与する技術として紹介されている 15。この技術は、マンション向けインターネット接続サービスに関連するソリューションとして位置付けられている 15。
同社は、持続可能な事業活動を推進するにあたり、知的財産の適切な管理とコンプライアンスの徹底に関する方針を明文化している。
東京建物株式会社は、事業活動を支えるサプライチェーン全体を対象とした「サステナブル調達基準」を策定・公表している 9。この基準の「5.安全性及び品質の確保」等の項目において、取引先に対して遵守を求める事項として以下を規定している 9。
このように、自社の知的財産権の保護だけでなく、事業活動における他者の知的財産権の尊重を明示的に要求している 9。
同「サステナブル調達基準」において、情報管理とコンプライアンスに関する規定も設けられている。情報の取り扱いについては、「個人情報に係る法律を遵守し、適切に取り扱い、業務上知り得た機密事項が外部に漏洩しないよう適切に管理する」ことを定めている 9。また、内部統制および自浄作用を確保するための通報制度に関連して、「通報に係る情報の機密性、通報者の匿名性を保護し、通報者に対する報復を排除する」方針を明記している 9。
本項における知財戦略の全体像に関して、同社の有価証券報告書や統合報告書を含む調査範囲内の一次情報において、「研究開発費」として計上されている具体的な全社投資金額の記載は確認できず、未確認事項として扱う 4。また、東京建物株式会社自身が出願人または権利者となっている特許権、商標権、意匠権の全社的な保有件数や、知財に関する具体的な数値目標の記載についても、提供された一次情報の範囲内では特定できていない 4。
同社は、経営の方向性を示すマスタープランとして、長期的なビジョンと、それを実現するための段階的な中期経営計画を策定している 4。
東京建物は、中長期の成長目標として長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」を掲げている 4。このビジョンのもと、事業活動を通じて「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立させることを目指している 4。これにより、すべてのステークホルダーにとっての「いい会社」を実現することを表明している 4。
この長期ビジョンの目標年度について、2020年の策定当初は、同社が推進している複数の大規模再開発プロジェクトの竣工時期を見据えて「2030年頃」と設定していた。しかし、前中期経営計画期間において今後の「利益成長の基盤」を固めることができたとの判断から、社内外に向けてビジョン実現への意志を表明するため、目標年度を「2030年」と明確な年度に変更して公表している 10。
長期ビジョン達成に向けたマイルストーンとして、同社は2025年度から2027年度を対象とする「新中期経営計画」をスタートさせ、着実に推進する方針を示している 4。この新中期経営計画は、長期ビジョンの実現・達成を念頭に置き、「成長の礎」を集中的に構築するための3年間の計画として位置付けられている 10。
同社は今後の計画策定のステップについて、「三段跳び」の比喩を用いて説明している。すなわち、前中期経営計画で踏み出した段階を「ホップ」、現在取り組んでいる新中期経営計画期間を「ステップ」とし、さらにその先の次期中期経営計画を「ジャンプ」と位置付けている。次の中期経営計画では、長期ビジョンで掲げる目標達成に向けた実績と進捗状況を精査したうえで、長期ビジョンの実現に向けた詳細なアクションプランを盛り込む方針を公表している 10。これにより、長期ビジョンの実現に向けた価値創造ストーリーを確実に実現させる構えである 10。
新中期経営計画を支える財務基盤の戦略として、規律あるバランスシートコントロールの実行を掲げている 10。具体的な施策として、前中期経営計画期間において進めてきた政策保有株式の売却を、新中期経営計画期間においても継続していく方針を明らかにしている 10。 これに加え、固定資産の戦略的な売却を進めることによって含み益を実現益として顕在化させ、資金回収・投資のサイクルを加速させる考えを示している 10。
同社は、事業活動が環境に与える影響を管理・低減するため、具体的な数値目標を設定し、外部認証プログラムを活用するサステナビリティ・ESG戦略を推進している。
気候変動への対策として、同社は「東京建物グループの温室効果ガス排出削減の中長期目標」を2023年10月5日に公表した 11。この目標において、Scope1およびScope2(自社の直接排出および間接排出)の温室効果ガス排出量を、2030年度までに46.2%削減する計画を定めている 11。この取り組みを通じ、気候変動への適応に関する様々なイニシアチブへの参加や、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめとする社会課題解決への貢献を推進する方針である 11。
同社は、保有および開発する建築物の環境性能や快適性を客観的に評価する指標として、外部機関による認証プログラムをKPIおよび目標の対象として導入している 12。公表されている主な認証プログラムは以下の3種類である 12。
これらの認証取得目標の対象となるのは、原則として2023年1月以降に設計に着手した新築物件である。ただし、共同事業物件や特殊用途など一部の物件については例外として対象から除外される旨の注記がなされている 11。
今回の調査範囲(一次情報の収集・検証)において、指定された情報要件のうち以下の事項は、一次情報内での記載が確認できず、または確証に至らなかったため未確認事項とする。
東京建物株式会社の会社概要(組織図)に記載されている主要な機関および会議体は以下の通りである 3。
|
組織・会議体名 |
備考(役割・上位組織等) |
|
取締役会 |
全社の業務執行を監督する機関 |
|
経営会議 |
取締役会の下部・社長執行役員等による会議体 |
|
指名諮問委員会 |
取締役会の下部に設置された諮問機関 |
|
報酬諮問委員会 |
取締役会の下部に設置された諮問機関 |
|
監査役会 / 監査役 |
監査を担う機関 |
|
リスクマネジメント委員会 |
全社的なリスク管理に関する専門委員会 |
|
サステナビリティ委員会 |
ESG等の推進に関する専門委員会 |
|
人権分科会 |
サステナビリティ委員会の下部に設置された組織 |
|
コンプライアンス分科会 |
コンプライアンス推進に関する専門組織 |
第208期有価証券報告書に記載されている過去5期分の主要な連結経営指標の推移は以下の通りである 2。
|
決算年月 |
回次 |
営業収益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
親会社株主に帰属する当期純利益 (百万円) |
総資産 (百万円) |
純資産 (百万円) |
自己資本比率 (%) |
区分 |
|
2021年12月期 |
第204期 |
340,477 |
46,270 |
34,965 |
1,650,770 |
427,661 |
25.3 |
実績 |
|
2022年12月期 |
第205期 |
349,940 |
63,531 |
43,062 |
1,720,134 |
456,838 |
25.9 |
実績 |
|
2023年12月期 |
第206期 |
375,946 |
69,471 |
45,084 |
1,905,309 |
508,035 |
26.1 |
実績 |
|
2024年12月期 |
第207期 |
463,724 |
71,722 |
65,882 |
2,081,226 |
547,524 |
25.8 |
実績 |
|
2025年12月期 |
第208期 |
474,586 |
78,187 |
58,879 |
2,272,720 |
603,137 |
26.0 |
実績 |
直近の主要なIR・決算関連資料の発表日は以下の通りである 2。
|
発表日 |
発表資料名 |
区分 |
|
2025年5月9日 |
2025年12月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結) |
実績公表 |
|
2026年2月12日 |
2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) |
実績公表 |
|
2026年3月23日 |
第208期 有価証券報告書 (対象期間:2025年1月1日〜12月31日) |
実績公表 |
|
2026年5月13日 |
2026年12月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結) |
実績公表 |
本レポートのPDF版をご用意しています。印刷や保存にご活用ください。
本レポートは、公開情報をAI技術を活用して体系的に分析したものです。
情報の性質
ご利用にあたって
本レポートは知財動向把握の参考資料としてご活用ください。重要なビジネス判断の際は、最新の一次情報の確認および専門家へのご相談を推奨します。
TechnoProducerは、貴社の「発明力と知財力」を最大化します
→ 月額顧問サービス
特許活用から経営戦略まで、事業成功のプロがあらゆる課題に対応
→ 発明塾®動画セミナー
個人での学習や、オンラインでの社内教育はこちら
→ まず相談したい・お問い合わせ
サービス選択に迷う場合や、個別のご相談はこちら
ここでしか読めない発明塾のノウハウの一部や最新情報を、無料で週2〜3回配信しております。
・あの会社はどうして不況にも強いのか?
・今、注目すべき狙い目の技術情報
・アイデア・発明を、「スジの良い」企画に仕上げる方法
・急成長企業のビジネスモデルと知財戦略