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AI時代に「自分の言葉」「自分の声」で語る意味とその力

AI時代に「自分の言葉」「自分の声」で語る意味とその力

「発明塾」塾長の楠浦です。
今回は、4月の1回目の月曜日号として配信した無料メールマガジン「e発明塾通信」について、「最近こんなこと考えてますよ」という、所感というかメモみたいなものを、皆さんと共有いたします。

タイトルは、『AI時代に「自分の言葉」「自分の声」で語ることについて』です。

弊社もコラムの一部で、すでに生成AIを活用しております。
基本的に新しいツールは、「その強みが活かせて、欠点が無視できる用途で使う」のが鉄則です。
最初は欠点だらけなのが「新しいもの」の特徴だからです。
これは「技術マーケティング」の鉄則でもあります

いきなり脱線しますが、2004年に設立したナノテクスタートアップで、ナノインプリントという「欠点だらけ(笑)の新技術」の事業化を短期間で成功させたコツも、この「その強みが活かせて、欠点が無視できる用途」の見つけ方を確立できたから、に尽きます。
「高い目標に向けて、欠点を解消するための開発をやろう!」というのは、威勢はよいのですが、技術シーズ型スタートアップで最初にやるべき仕事ではありません。
最初はそういう勢いに巻き込まれてみんな協力しますが、3か月ヵ月ぐらいたつと、成果が出ないことにいら立ち、疲れ果て、投資家含め、関係者が一人また一人と消えていきます(笑)。
人間の忍耐力は、だいたい3か月ヵ月が限度だというのが僕の結論です(笑)。

話題を元に戻します。
まだまだ欠点だらけではあるものの、僕たちは日々AIの可能性を実感しています。
恐怖を感じている人さえいますね。
その一方で、AIとの対比で「人間の可能性」「人間であることの意味」も見えてきたんじゃないかと、僕は思ってます。
「人間らしさ」を体感できる、素晴らしい時代に我々は生きているわけです。
もっと人生を楽しまないといけませんね(笑)。

では、本論へ。

AI時代に大事にしたい「自分の言葉」「自分の声」

結論から言うと僕は、AIと一緒に日々仕事をする中で、「自分の言葉」「自分の声」を大事にしたいなとますます思うようになりました
いや、なっていたことに気づいた、というのが正しいのかもしれません。それに気づいたきっかけは、2つあります。

1つ目は、2024年9月に出版した新著『Patent Information For Victory~「知財」から企業の”未来”を手に入れる!』のオーディブル版(音声版)が出て、それを僕が聞いたことです。
以下の note にメモしているのですが、自分が数年にわたり日夜悪戦苦闘して紡ぎ出した「自分なりの言葉」が、「他の方の声」で読み上げられているのを聞くと、様々な想いが沸き起こってきました。

AI時代に「自分の言葉」で語る
https://note.com/kusuura/n/nc82ae14dd4a3

プロのナレーターの方が読んでくださっているので、全然違う「声」なのですが、そこに確かに「僕の言葉」がある
上手く表現できないのですが、非常に不思議な感覚なんですよね。
違和感ではないんですよね。
なんかちょっとふわっとした感じというか、自分でもないし他人でもない、みたいな。
自分が書いた本を「読む」のとは、全く違う新鮮さがありました
オーディブル版が出て以来、新著は読むよりも聞くことにしています。
スーッと頭に入ってくる感じが気持ちいいんですよね。

天才・先駆者は言いたいことが上手く言えない?

聞いていて気づいたのは、誰が読んでも「楠浦の言葉」になっていること。
これは、僕自身が独自に考えた「発明塾用語」をきちんと使っていることが、大きいのかなと感じました。
そもそも誰もやっていなかったこと、誰も考えていなかったことを端的に表す言葉は、既存の言葉には存在しないんですよね。
なんとなく近いからといって、無理やり既存の言葉を当てはめると、先入観を持つ人が誤解するので伝わらない。

だから、最先端を走る人は、どんどん言葉を創っていく
既に違う意味を持っている言葉から、その意味を消して新しい意味を付与するのは大変です。
ゼロから言葉を作って、体系化していく方が早いんですよね。
これが、これからの人間の仕事なんじゃないかなと、ふと思いました。
AIは、すでにあるテキストからしか学習できませんので、全く新しい概念とそれにフィットする言葉を創ってくれたりはしませんね。

実は関連する話をしたときに、企業内発明塾の塾生さん(部長さんです)が、「天才は自分の言いたいことが既存の言葉に見つからないから、良くわからないことを言うんだ、って聞いたことがあります」と仰ってました。
長嶋茂雄さんとか、そんな感じじゃないですかと。
あぁ、なるほど、そういうことだったのかと、すごく腑に落ちました。
世の中の何歩も先を行っていると、文字通り「(あてはまる)言葉が見つからない」状態になるんですよね。

「自分のボイス」を持ち、語ろう! 不確かでも、断片的でもよい

「自分の言葉」「自分の声」を大事にしたいなとますます思うようになった、2つ目のきっかけは、内田樹さんのコラムを読んだことです。

自分のVoiceをみつける - 内田樹の研究室
http://blog.tatsuru.com/2022/12/29_1322.html

内田さんの「寺子屋ゼミ」でのお話が、書かれています。

・寺子屋ゼミの目的は、単なる知識の習得ではなく、発表を通じて「自分のボイス」を獲得すること
・「自分のボイス」とは、自身固有の思考や感情を加工せずに表出できる声のこと
・「自分のボイス」によって言葉を操る際に「自在」を得られる
・明瞭で大きな声で語ることは、重要ではない
・不確かで断片的な言葉でも、時間をかけて他者の身体に浸透し、理解されることが重要
・現代社会は「自分のボイス」で語ることを推奨しないが、寺子屋ゼミではその獲得を支援している

X(旧ツイッター)でリンクが流れてきたのですが、読んだ瞬間に、まさにこれだ!と思いました。
これこそ僕が考える「教育」「学び」「新規事業」「起業」だと。
新たな言葉を作ってでも、今までにないことを考え、周りと対話していく
最初は理解されないけど、周りに少しづつ浸透していって、その方々の血肉となって再生され、その周りに広がっていく
これは僕が考える、教育や学びのプロセスそのものです。

「新規事業」「起業アイデア」を、周りにどう伝えていくか

新規事業や起業、そして発明も、僕のなかでは同じことなんですね。
新しいアイデアや企画は、最初は理解されない言葉が通じないからです。
この「通じない」には、いろいろなレベルがあるでしょう。
「面白いでしょ」に対して「儲かるんか」のように、論点がかみ合わない、というケースが思い浮かびますね。
ただこれは、企業内発明塾で教えている方法でやっていただければ、解消されます。
ここは、証拠とロジックで詰められるからです。

もっと深刻な例として、「そもそもそういう事業があり得るのか、具体的にどうなるのか、イメージできない」というケースもありますね。
これも、企業内発明塾では「ファーストユーザー」を徹底的に調べ上げることで、解消できることがわかっています。
ぐうの音も出ないぐらい、「この人が、こんな風に使います(使いたいって言ってます)」を証拠固めしていくわけですね。
今は、生成AIがイメージ動画までサクッと作ってくれます。

企画のタイトルや、キャッチフレーズも大事です。
既存の言葉に染みついているイメージがどんなものか、この言葉を見せると何を相手が想起するか、一字一句、考えながら言葉を選んでいきます。
必要があれば、新しい言葉を「創り」ます
基本的に僕は、「言葉」を「連想のスイッチ」だと思ってます。
僕が何か言うと、相手の頭の中のどこかのスイッチが入って「連想」が始まるんですよね。
しばらくすると、「ガチャガチャ、ピーン!」って感じで、その人から、その「連想」の結果が出力されてきます。
あれ?  これ「AI」と同じですね(笑)。
人間の脳は「連想マシーン」だととらえると、コミュニケーションが変わります。

新しい言葉を使うと、相手の「誤った連想」を止められます
相手が何のイメージも持てないからです。そして、多くの場合、質問してきます。
こうやって相手の思考を止めた上で、相手の同意を得て「新しい概念をインストールする」のが、新規事業企画や起業アイデアを正しく理解してもらうコツだなということが、僕自身の経験と500名を超える参加者の観察から、わかったんですよね。
ただしこれは「本当に新しい部分に限って」の話です。
当てはまる言葉があるのに、それを無視して無理やり言葉を作っても、ただ単に遠回りするだけです。

「不確か」「断片」でよい、時間をかけて相手の身体にしみこませる

不確かで断片的な言葉でも、時間をかけて他者の身体に浸透し、理解されることが重要

これに尽きるんです。
だから僕は、新規事業企画を伝えるのに、近道はないよ、といつも伝えます。
たまに「お金さえ出ればよいので、誤解させてでも、何とか予算を引き出そう」という議論をされる方がいらっしゃいますが、僕はお勧めしません。
その場はよくても、後で結構ややこしいことになったという実例を、たくさん見ていますからね、、、

新規事業、起業、発明など、自身の新しいアイデアをどう伝えるか。
近道はない。
「言葉」に精通し、言葉で相手の中にどう入りこんでいくか、緻密な戦略を立てて、粘り強く実行する

内田樹さんの言葉で、改めて僕のやってきたことに間違いはなさそうだなと自信が持てました。
ありがとうございました。

最後に、僕が「まさにこれ」だと思う一節を引用させていただきます。

そんな言葉が他人に伝わるだろうかと不安になる人もいると思う。でも、心配するには及ばない。ちゃんと伝わる。そういう言葉は頭に入るというよりは身体にしみ込むからだ。断片的なまま、一義的でないままに、聴いた人の身体のどこかに残る。そして、長い時間をかけて消化吸収され、その人の身体の一部分になる。そして、ある日何かの折に、ふとその人の口を衝いて、「自分が言いたかったこと」として再生されるのである。私たちの多くはそういう時間のかかる、複雑なプロセスをたどって「自分のボイス」を手に入れる。
「自分のボイス」によって語られた言葉がその場でただちに共感や理解を得ることは難しい。けれども、長い時間をかけて世界に広がり、多くの人々の中に浸み込む(可能性がある)。
私はそういう声をゼミ生ひとりひとりが手に入れて欲しいと思っている。それがゼミを主宰している理由の一つである。

皆さんが、借り物でも、AIによるものでもなく、「自分の言葉(ボイス)」で、自分の企画そして「夢」と「人生」を語って実現していただけますように
これが、「企業内発明塾」、いや「発明塾」が目指すところです。
そう断言することが、ようやくできました。
内田樹さん、ありがとうございました。

そして、新著のオーディブル化を推進してくださったアマゾンの皆さん、快諾くださったプレジデント社の皆さんにも、感謝申し上げます。
実は今回、アマゾンからの申し出でオーディブル化されることになったんです。弊社からもプレジデント社からも、リクエストは出してないんです。
僕なんか、最初からさすがにそれは無理だろうと思って、視野にも入れてませんでした(笑)。
ナレーターの方にお願いするとメチャクチャお金がかかるのは、知財教材で実際にやったことがある(そして失敗した)のでよく知っていましたから、そんなことありえないと思ってたんですよね。
なんかすごいことになってます。

僕のボイス(言葉)が、より多くの方に届きますように。

まとめ

■ AI時代に「自分の言葉」「自分の声」で語る意味

  • AIが生成する言葉と人間の言葉の違い
    • AIは既存の情報や言葉の組み合わせでしか語れないが、人間は新しい概念や感情を「自分の言葉」で表現できる
    • 自分の言葉は、他者の心や身体に時間をかけて浸透し、深い共感や理解を生む力がある
  • 「自分のボイス」を持つことの重要性
    • 自分の言葉で語ることが、新規事業や起業アイデアの伝達、教育、コミュニケーションで不可欠
    • 他者の先入観や誤った連想を避け、正しく新しい概念を届ける手段になる

■ AI時代に「自分の言葉」を磨く力と方法

  • 「言葉」のイメージを使いこなし、相手の正しい連想を引き出す
    • 言葉は「連想のスイッチ」であり、正しい連想を引き出す工夫が必要
    • 既存の言葉で表現できない新規事業や革新のアイデアは、新たな言葉を生み出すことで伝わる
  • 時間をかけて言葉を浸透させる戦略
    • 不確かで断片的な言葉であっても、粘り強く相手に語り続けることで理解が広がる
    • 誤解を恐れず、自分のボイスで語り続けることがAI時代の人間らしさの証明となる

楠浦 拝

 

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