本コラムは、子育てや教育に関するお困りごとを解決するヒントになる内容をお届けしています。今回は、AI時代の到来によってさまざまなことが変化する中、求められる人材や能力について弊社代表の楠浦に聞いてみました。
この記事の内容
――AIの登場による劇的な変化についてお聞きします。現在のAIはこれからも進化し加速しているのでしょうか。
楠浦:直近では今年の4月から急に生成AIが異なるフェーズへと進化しましたが、本当に進化のスピードはより速くなってますね。GAFAMやアメリカの大手IT企業がそこに莫大な投資をしているのがその証拠です。技術の進化のスピードは 基本的にお金の投入量で決まりますから。お金がないと技術は進歩しないんですよね。
―― AIの台頭で、今ある仕事の何割かはなくなるといった話が出ています。調査機関によっては、今ある仕事の50%近くがなくなると予測しているところもあります。AIにとって代わられない仕事ってなんなのでしょうか。この先どんな人材や、どんな能力が必要とされるのでしょうか。子供の将来を見据える親としてもすごく気になるところです。
楠浦:AIが今後どう発展し、どう世の中が変わっていくのか、こればっかりは、断定することは無理なんですよね。
だって、例えば、昔は月に行くなんて不可能だと思ってたのに、行けるようになったわけですよね。
今のAIだって以前は「絶対できない」って言われていたんですよ。質問したら自由に答えを返してくれるようなAIなんて絶対にできないから、特定の質問にはこういう答えを返しましょう、というようなプログラムを作成してデータベースで会話するしかできない、と言われていた時代があったのです。でも、あっさりとそれを塗り替え、何を聞いてもある程度妥当性が高い答えが返ってくるフェーズになっていますよね。
世の中、それが欲しい、できたらいいな、というものがあったらやっぱりみんな頑張ってつくるんですよ。そうやって不可能を可能にしてきたのが科学なので、ニーズがあるものはだいたいできるようになっているのが世の中です。
特に今のスピードで変化する世の中では、もう10年後のAIに取って代わられない仕事が存在するかどうかというのははっきりはわからないんですよ。
でも、現時点のAIにできないことは分かります。今できないことが分かるので、今の段階での必要なスキルや能力はある程度言えます。現時点で予測できる近未来ということです。まずは、ここを絶対に間違えないで欲しいです。
今言えるのは、AIにとって代わられるといっても、なにかの職業全体がなくなるのではなく、職業の中の一部の業務がなくなりAIに代替されるというということだと思うんですよね。それまで10人必要だった部署や仕事が3人で済むようになるということです。
どういうことかというと、難しい仕事はやっぱり人間がやらないといけないので、残るんだけど、簡単な仕事はAIがやってくれるのでいらなくなるということです。だから、簡単な仕事にしか従事できない人は仕事を失うリスクが高まると思います。逆に高度な仕事ができるのに、簡単な仕事をやらされていた人にとってはそういう仕事をやらなくて済むのでラッキーになるかもしれませんね。
そうなるので、これまでの企業の新人育成の仕組みも、使えなくなってきます。
新卒で入社すると、最初は簡単なことから教えてもらって勉強させてもらいながら仕事を覚えますよね。でも簡単な仕事はない。企業からすると、新卒でも一定以上の水準の仕事ができるかどうかが採用基準になってくるのではないでしょうか。というか、実際になってきているんじゃないかと思います。新人の時から何ができるのかが問われるでしょうね。
――新卒の採用基準も中途採用と変わらなくなりそうですね。
楠浦:僕はそのことについては以前から言っているんです。もっと言うと、なんでも平均点まではできる人、点数で言うと60点ぐらい。まんべんなくできるけれど、何一つ得意なことがない人は多分いらなくなるのではないか、と。
今はその60点のところまではAIができちゃうんですよ。だから、そういう人は採用が難しい。
逆に、ある部分は0点なんだけど、ある部分は100点という人は、AIが0点の部分を自動的に60点にしてくれるから60点と100点になるんですよね。
でも全部が60点の人は、AIと組み合わせても全部60点のままなんです。
極端に言えば、「僕はITのことは全然わかりませんが、営業力はすごい得意です」とか「人と話して、本音を聞き出すのがめちゃくちゃ得意なんです」、なんていう人の方が採用されやすくなるかもしれません。
ITのこと全然わかららなくても「君、大丈夫だよ。他のことはAIがやってくれるから、とにかく毎日お客さんのところへ行って話を聞き出してくれたらいいよ。録音さえしてくれれば、文字起こしもレポートもAIがやってくれるからそんなスキルはいいよ」なんて言われて採用されるかもしれません。
それもそのうち、ロボットが勝手にお客さんのところへ行って、話をきくようになるかもしれませんが(笑)。
要するに、そういうなにか得意技が必要になると思います。話術など顧客に本音を聞きに行くみたいな、今のAIに難しいスキルに限っているわけではありません。現時点でAIがある程度できるプログラミングや動画制作が得意なら、それこそ、80点90点と、AIを超えるスキルや発想やアイデアが必要だと思います。そうでなければ得意とは言えなくなります。
――以前、皆さまにご協力いただいたアンケートの中で、掲載したコラムに対して「机に向かって勉強する子が『頭の良い子』という定義なのが、この先の世の中に向けては、かなり狭義であると感じる。これからの世の中は、これまでの学歴とは全く関係なく『強烈にやりたいことがあり、その分野を軸にオタク化できる。次々とその軸を元に好奇心を発揮できる人材』が結果的に強いと思う。」というご意見をいただきました。
楠浦:「オタク」が必要だというのは、その通りですね。
その回のコラム「発明塾式『頭の良い子が育つ家』〜思考を育てる環境設計〜」では、学習や受験を念頭においた上での話しになっていたと思います。受験方式が多様化してきたとはいえ、まだ高校や大学の入試基準が学習習得の点数においたものが多く、避けては通れないのも事実です。ですので、その視点での僕なりのアドバイスです。
学歴社会が完全になくなるかどうかはわかりませんが、今は同時に、それぞれの個性や何かの才能が評価される時代、つまり「オタク」が必要というのは事実だと思います。それについて僕は以前から発明塾でもそう言ってるんです。
また、例えば「文系・理系どちらを選ぶべき? 〜子どもの進路選択に悩む親が知っておきたい3つの視点」コラムの中で、発明やアイデア創出にも通じるものとして、これからは文系、理系を超えて統合するような力が今度の武器となる、とお話ししました。
一つ秀でた才能を磨くには、そういう境界を超えた新しい価値を想像できるような発想や、想像力も必要です。オタクって見た目は一つの秀でた能力に見えますが、そこにはさまざまな知識と努力があっての上ですよね。
以前中高生を対象に、「自分だけの問い」を立てて新しい発明やビジネス案まで仕上げるプロジェクト学習を行ったことがありますが、AIが得意な「最適解探し」ではなく、まだ誰も気づいていない課題を発見し、試行錯誤しながら形にする力を鍛えることを教えました。このようなことは「点数」ではなく “オタク” であることが最大の推進力になります。
―― AIに代替されないことを知っておきたくても、この先はわからない。でも少なくとも、今、自分はこれが得意なんでこれで食べていきます!と言えるほどの能力が必要な時代なのかもしれませんね。そのための、子どもの段階から適性や能力を見つけて伸ばしてくというのも親の役割になってくるのかな、と考えました。
どうもありがとうございました。
語り:楠浦崇央
聞き手・構成:鈴木素子
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