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AIリテラシーが子どもの思考力を左右する? ―研究が示す「依存」と「活用」の分岐点―

AIリテラシーが子どもの思考力を左右する? ―研究が示す「依存」と「活用」の分岐点―

AIは便利な道具か、それとも思考を奪う存在か

PC、スマホ、Google Earth、そしてAI。技術の進歩によってこれまで時間をかけて行ってきた知的活動の多くを瞬時に代替できるようになりました。
中でも、AIがそれまでのツールと異なる点は、「答え」や「記憶」だけでなく、考えることそのもの、つまり「思考のプロセス」まで代替できてしまうことです。

この変化は、子どもの思考力にどのような影響を与えるのでしょう。
最近の研究では、AIへの依存度が高いほど批判的思考力が低い傾向が確認されています。(例えばLearners' AI dependence and critical thinkingなどをご参照ください)考える機会そのものが減少し、思考力の低下につながる可能性があるということです。

ここまでの話では、AIは子どもの思考を奪ってしまう存在のように見えますよね。

でも、今やAIを使わないという選択肢のがない時代。では、子どもの思考力を弱めないようにするにはどうすればよいでしょうか。ここで、AI依存にならず、思考力を維持し、むしろ高めてくれる可能性を示唆した研究があります。 
AI literacy predicts computational thinking through multidimensional interactions among Chinese high school students (AIリテラシーは、中国の高校生間の多次元的な相互作用を通じて計算論的思考を予測する)です。

タイトルにある通り、そのポイントとなるのが「AIリテラシー」です。

AIリテラシーを簡単に説明すると以下のようになります

  • AI知識:機械学習やアルゴリズムなど、技術的な原理がわかっていること
  • AI感情:AIの利点と限界を弁証法的に捉える価値認識や、倫理的な立場、社会的な責任を持ってAIを活用しようとする主体的・合理的な姿勢のこと。ポジティブな感情。
  • AI思考(AIスキル): AIのリソースを効率的に使って問題を解決する「消費者」としての能力や、簡単なAIツールを開発する「生産者」としての実践的な能力のこと。

 

論文では、このAIリテラシーが、AIツールの利用時間など背景要因も含めて、計算論的思考にどのような影響を与えているのかを、高校生を対象にこの関係を検証しています。
計算論的思考とは、複雑な問題に対して分解・抽象化し、アルゴリズム化(手順化)しながら、解決へと導く力のことです。論理的思考を基礎としつつ最適化や効率化を特に重視したIT時代に必要な思考とされているものです。

今回はこの論文をご紹介します。

 

中国の高校生441人の調査で見えたAIリテラシーの実態

この研究は、中国の高校生699人に無作為でアンケートを調査し、441人の有効回答を分析しています。

研究方法と分析結果は以下の通りです。

〈研究方法〉

  •   分析対象
    性別、学年、居住地(都市・町・農村)、1日のAIツール利用時間など。
  •   AIリテラシーの尺度
    「AI知識」「AI感情(態度)」「AI思考(スキル)」の3次元で測定。
  •   計算論的思考の尺度
    「創造性」「アルゴリズム的思考」「協調性」「批判的思考」「問題解決力」の5次元で測定。これらのデータを、統計ソフト(SPSS、AMOS)を用いて分散分析、相関分析、および構造方程式モデリング(SEM)により解析した。

 

〈主な分析結果と考察〉

 1.AIリテラシーに関する発見

  •     家庭環境に影響を受けている(親の意識が高いほど知識やスキルが高い傾向)
  •   1日のAIツール利用時間が長い生徒は、特にAI知識のスコアが高いことがわかった。
  •     一方で、性別や学年などによる有意な差は見られなかった。

2.計算論的思考に関する発見

  •  性別差:創造性、アルゴリズム的思考、協調性、批判的思考において、男子の方が女子よりもスコアが高い傾向にあった。ただし、「問題解決力」には性別による有意差はなかった。
  • 学年:意外にも、学年が上がっても計算論的思考能力の顕著な向上は見られなかった。

 

AIリテラシーは計算論的思考力をどう伸ばすのか  ―研究が示した関係性

そして、この研究の核心は、次の点にあります。AIリテラシーと計算論的思考の相互関係、つまりAIの知識がどのように思考と結びつくのかについては、以下のような結果が示されています。

3.AIリテラシーと計算論的思考の相互関係

      • AI知識は、アルゴリズム的思考(物事を手順立てて考える論理的な枠組み)と問題解決力を促進する
      • AI感情は、協調性や創造性などの向上に寄与する。
      • AI思考は、批判的思考や問題解決力といった高次の思考スキルを支える重要な要因となっている。

         

        また、以下はAIリテラシー(知識・感情・思考)を組み合わせることで、各計算論的思考の能力のうちどれくらいの割合(決定係数)を左右しているかを示したものです。

        〈計算論的思考の各次元における決定係数〉

        計算論的思考の次元 決定係数 
        問題解決力              0.23(約23%)
        アルゴリズム的思考          0.22(約22%)
        批判的思考              0.16(約16%)
        創造性         0.15(約15%)
        協調性            0.09(約9%)


        AIリテラシーの高さと、計算論的思考の深さは相関関係がありそう、ということですね。特に問題解決能力に繋がっているというのは、ポイントだと思います。

         

        鍵は「知識+経験」―AIリテラシーの中身

        この論文の結論として、著者は、「高校生のAIリテラシーが計算論的思考の予測因子であることを明らかにした。特に、家庭環境(親の教育)と日常的なAI利用が、これら2つの能力を育む土台となっている。ただ、AI知識(概念の理解)やAI感情(態度や興味)と並んで、技術を実際にどう動かすかという実践面を担う重要な指標として位置付けられている」と述べています。


        要するに、AIリテラシーも知識だけでは実践での問題解決にはつながらない、経験が必要だということですね。ここも重要なポイントだと思います。

        そして、最後にこの研究結果を踏まえて、実生活や教育にどう生かせばよいのか著者は主に以下のように提言しています。

        • 実践的な授業:
          ただの座学ではなく、実際にAIを使ってプロジェクトを完成させるような、創造性と問題解決能力を直接的に養う実践的な授業を増やすべき。

        • 心理的動機付けの強化:
          肯定的なフィードバックや多角的な評価を通じて、達成感を醸成し、AI学習に対する前向きな感情(興味・態度)を維持させる。

        • 格差への配慮:
          家庭の環境(親の教育)によるスキルの差を埋めるために、学校がオンライン教材などのサポートを充実させることが大切。

         

        AIに任せるか、AIで考えるか ―思考力を分ける決定的な違い

        以上が論文の主な概要です。

        高校生を対象にした研究では、AIリテラシーが高い生徒ほど、問題を分解し、構造化して考える「計算論的思考」が高いことがわかったわけですが、冒頭のAIへの依存度が高いほど批判的思考力が低い傾向がある、という研究と並べて考えると、重要な分岐点が見えてくるように思います。

        つまり、AIに依存し思考を委ねるとき、人は考える力を弱めるが、一方でAIを理解し、批判的に活用するとき、AIは思考を支え、拡張する道具となる、と言えるでしょう。
        問題はAIそのものではない、ということですよね。

        そして、AIに考えさせているのか、AIを使って考えているのか。その分岐点にあるのがAIリテラシーなのだと思います。
        ですので、学校や家庭では、早いうちから子どもへAI教育を行うことが必要だと思います。

         

        ◾️タイトル:AI literacy predicts computational thinking through multidimensional interactions among Chinese high school students◾️著者:Guan Yurong、Zhang Chunquほか◾️掲載誌Scientific Reports2025年Volume:15◾️DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-025-16712-z

         

        このコラムのまとめ

        1. AIは「答え」だけでなく思考のプロセスまで代替する存在になっている。
        2. AIへの依存が高まるほど、批判的思考力が低下する可能性がある。
        3. 一方で、AIリテラシーが高いほど計算論的思考は高まる傾向がある。
        4. 特にAIの知識・感情・スキルは、それぞれ異なる形で思考力に影響を与える。
        5. AIリテラシーは知識だけでなく、実践的な経験によって初めて力になる。
        6. AIに任せるのではなく、AIを使って考える姿勢が子どもの思考力を左右する。

        文:鈴木素子

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