3行まとめ
高収益化を支える年間約200億円規模の研究開発投資
売上高が減少する一方で、高付加価値な施工への注力により営業利益は前年同期比53.0%増の1,223億円を達成しました。年間約200億円規模の研究開発投資が、強力な知財ポートフォリオ構築のエコシステムとして機能しています。
日本初のゼロカーボンビルを中核とする環境技術の社会実装
2026年2月に本格稼働した次世代技術研究所「T-FIELD/SATTE」など、環境配慮型技術の包括的な実証を加速させています。現場のCO2排出量を自動計測する「T-CARBON/Watch」を活用し、建設業の脱炭素化を牽引しています。
AI・自動化による無人化施工と次世代モビリティインフラへの拡張
山岳トンネル工事における発破作業の完全機械化(装薬車)や、生成AIを活用した施工計画書の自動作成を実現しました。自動運転を支援する位置補正技術「T-Localizer」の開発など、次世代の空間エンジニアリング企業へと進化を遂げています。
この記事の内容
|
発行体 |
文書名 |
発行日 |
種別 |
URL |
|
大成建設 |
統合報告書2025(オンライン版) |
2025年 |
公式IRページ |
https://www.taisei.co.jp/sustainability/library/online/2025/ |
|
大成建設 |
「大成建設グループ統合報告書2025」を公開 |
2025年09月24日 |
公式ニュース |
|
|
大成建設 |
2025年度 ニュース一覧 |
2025年11月18日 |
公式ニュース |
|
|
大成建設 |
ライブラリー(ESG報告等) |
2025年 |
公式IRページ |
|
|
大成建設 |
めざせ、発明王! |
2016年 |
公式プロジェクト |
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2016/jyoshizene/pop_jyoshizene03.html |
|
大成建設 |
2025年度 技術連携等主要ニュース |
2026年02月19日 |
公式ニュース |
|
|
大成建設 |
2026年3月期 第3四半期決算短信 |
2026年02月06日 |
法定開示 |
https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20260206/20260204547161.pdf |
|
株探 |
適時開示書類(大成建設 決算短信) |
2026年02月06日 |
法定開示 |
https://kabutan.jp/disclosures/pdf/20260206/140120260204547161/ |
|
鹿島建設 |
知的財産報告書2025 |
2025年 |
公式IRページ |
https://www.kajima.co.jp/sustainability/report/2025/pdf/ir_all.pdf |
|
清水建設 |
2025年3月期 決算短信 |
2025年05月14日 |
法定開示 |
|
|
大成建設 |
知的財産ポリシー関連ページ |
Not Disclosed |
公式ポリシー |
|
|
大成建設 |
技術センター組織構造 |
Not Disclosed |
公式ページ |
|
|
大成建設 |
「T-FIELD/SATTE」本格運用開始 |
2026年02月16日 |
公式ニュース |
|
|
大成建設 |
2025年3月期 決算短信 |
2025年05月13日 |
法定開示 |
https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20250513/20250512541820.pdf |
|
大成温調 |
2025年3月期 決算短信関連資料 |
2025年05月13日 |
法定開示 |
|
案件名 |
Announcement |
Effective(Event) |
Completion |
状態ラベル |
根拠 |
|
if-Map(防災まちづくり支援システム) |
2025年08月22日 |
Not Disclosed |
Not Disclosed |
稼働/提供開始 |
5 |
|
長崎県とのデジタル技術まちづくり協定 |
2025年08月26日 |
2025年08月26日 |
Not Disclosed |
合意 |
5 |
|
T-Laser Tunnel Watch 導入 |
2025年10月15日 |
Not Disclosed |
Not Disclosed |
稼働/提供開始 |
5 |
|
シンガポール「技術共創・実証拠点」開設 |
2025年10月29日 |
2025年10月29日 |
Not Disclosed |
稼働/提供開始 |
5 |
|
生成AI「施工計画書作成支援システム」 |
2025年11月28日 |
Not Disclosed |
Not Disclosed |
稼働/提供開始 |
5 |
|
T-Localizer 技術開発 |
2025年12月15日 |
Not Disclosed |
Not Disclosed |
稼働/提供開始 |
5 |
|
建設副産物循環回収システム 大臣賞受賞 |
Not Disclosed |
2025年12月16日 |
2025年12月16日 |
完了 |
5 |
|
T-CARBON/Watch 機能アップデート |
2026年01月07日 |
Not Disclosed |
Not Disclosed |
稼働/提供開始 |
5 |
|
次世代技術研究所「T-FIELD/SATTE」 |
2026年02月16日 |
2026年02月16日 |
Not Disclosed |
稼働/提供開始 |
5 |
|
幸手市との包括連携協定 |
2026年02月17日 |
2026年02月17日 |
Not Disclosed |
合意 |
5 |
大成建設の知的財産戦略を支える根本的な要素は、同社の事業基盤から生み出される強固な財務実績と、それを原資とする持続的かつ大規模な研究開発への投資サイクルである。同社が公表した法定開示書類から、その財務的な健全性と成長投資への志向を詳細に確認することができる。2026年2月6日に開示された「2026年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」によると、2025年4月1日から2025年12月31日までの累計期間における連結経営成績は、収益性の劇的な改善を示す結果となっている。同期間の連結売上高は1兆4,277億5,800万円であり、前年同四半期の実績である1兆5,275億4,000万円から6.5%の減少を記録した。しかしながら、利益項目に目を向けると、営業利益は前年同四半期の799億5,800万円から53.0%という顕著な増加を達成し、1,223億5,600万円を計上している。同様に、経常利益は925億7,300万円から41.0%増の1,304億9,900万円へ、親会社株主に帰属する四半期純利益は837億7,000万円から22.4%増の1,025億6,800万円へと大きく伸長している。この売上高の減少と利益の大幅な増加という事象は、同社が低採算案件を抑制し、独自の技術力や知的財産を活用した高付加価値な施工・エンジニアリングサービスへと事業ポートフォリオを最適化している成果として現れたものである。1
|
連結経営成績の推移 |
2025年3月期 第3四半期 |
2026年3月期 第3四半期 |
増減率 |
|
売上高 |
1,527,540百万円 |
1,427,758百万円 |
△6.5% |
|
営業利益 |
79,958百万円 |
122,356百万円 |
53.0% |
|
経常利益 |
92,573百万円 |
130,499百万円 |
41.0% |
|
親会社株主に帰属する四半期純利益 |
83,770百万円 |
102,568百万円 |
22.4% |
|
包括利益 |
24,769百万円 |
121,831百万円 |
391.9% |
財政状態に関しても、技術投資を継続するための十分な安定性が確保されている。2026年3月期第3四半期末の総資産は2兆6,127億3,400万円(前連結会計年度末は2兆4,288億3,700万円)、純資産は9,023億500万円(同9,006億9,900万円)となっており、自己資本比率は33.0%を維持している。1株当たり四半期純利益は、前年同四半期の457.17円から615.38円へと上昇した。さらに、2026年3月期の通期連結業績予想については、売上高2兆900億円(対前期比3.0%減)、営業利益1,480億円(同23.2%増)、経常利益1,520億円(同13.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,370億円(同10.6%増)と据え置かれており、1株当たり当期純利益は826.44円と予想されている。株主還元に関する指標である配当金についても、2026年3月期の年間配当予想は第2四半期末125.00円、期末125.00円の合計250.00円とされており、前年実績の年間210.00円から増配の計画となっている。このように、安定したキャッシュ創出力と株主還元を両立するガバナンスが構築されている。1
|
連結財政状態の推移 |
2025年3月期末 |
2026年3月期 第3四半期末 |
|
総資産 |
2,428,837百万円 |
2,612,734百万円 |
|
純資産 |
900,699百万円 |
902,305百万円 |
|
自己資本 |
866,188百万円 |
862,301百万円 |
|
自己資本比率 |
35.7% |
33.0% |
これらの事業収益は、同社の未来を切り拓く研究開発活動へと還流している。2025年5月13日に提出された「2025年3月期 決算短信」の連結損益計算書関係の注記において、一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の金額が明示されている。前連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)の研究開発費が186億4,600万円であったのに対し、当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)には195億300万円へと増加している。年間約200億円に迫るこの研究開発投資は、脱炭素技術、AIの社会実装、新たな施工機械の開発といった多岐にわたるイノベーションの源泉となっている。なお、大成温調株式会社のURLを含む一部のIR資料には、研究開発費が9,900百万円から13,073百万円に増加したとの記載が存在するが、大成建設の公式決算短信における19,503百万円という数値とは異なっており、金額規模に関して一次情報間で不一致が存在する事実を特記する。いずれにしても、巨額の技術開発資金が継続的に投入されている事実に変わりはない。3
大成建設は、「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念を中核に据え、気候変動への対応と循環型社会の構築を目指す環境技術を全社的な知財戦略の優先課題としている。この理念は同社の統合報告書において環境経営の指針として繰り返し言及されており、単なるスローガンにとどまらず、具体的な施設やデジタルシステムという実体のあるソリューションとして社会実装されている。7
環境技術開発の最前線として特筆すべきが、2026年2月16日に本格的な運用が開始された大成建設グループ次世代技術研究所「T-FIELD/SATTE」である。この施設は、同社の最先端の環境知財を集結させた巨大な実証プラットフォームである。施設の中核をなす管理研究棟は、日本初となる「ゼロカーボンビル」として設計されている。これは、建物のライフサイクルにおける運用段階において、エネルギー消費と創エネのバランスを最適化し、二酸化炭素排出量の収支を完全にゼロにすることを目指した先進的な建築物である。さらに、敷地内には多様な実証実験ラボが併設されている。「道路床版のラボ」では、将来の道路インフラの耐久性向上や新素材の適用に関する検証が行われる。また、脱炭素化に寄与する再生資材を建設材料として活用するための研究施設として、「コンクリートの製造ラボ」および「アスファルトの製造ラボ」が稼働を開始している。これらのラボでは、セメントやアスファルトの製造プロセスにおいて発生する環境負荷を低減し、資源の再利用を最大化するための製造実験が日々実施されている。加えて、同研究所の敷地内には、地域の生態系と調和することを目的に設計された「水辺環境」や緑地空間が整備されており、自然環境と人工構造物が共生するための環境アセスメントや生態系モニタリングのフィールドとして機能している。5
|
T-FIELD/SATTEの主要施設と機能 |
|
管理研究棟「ゼロカーボンビル」:施設の運用に伴うCO2排出量収支ゼロを目指す日本初の建築物 |
|
道路床版のラボ:将来の道路インフラに向けた技術検証と実証 |
|
コンクリートの製造ラボ:脱炭素技術および再生資材を活用した材料の製造実験施設 |
|
アスファルトの製造ラボ:低炭素・資源循環型アスファルトの製造および性能評価施設 |
|
水辺環境・緑地空間:地域の生態系と調和する自然環境の整備と共生技術の検証フィールド |
デジタルシステムを用いた環境経営の高度化も進行している。2026年1月7日には、建設現場における二酸化炭素排出量を対象とした自動計測・集計システム「T-CARBON/Watch」の機能アップデートが公表された。このシステムは、施工プロセスにおける重機の稼働状況や資材の搬入などのデータを高精度で収集し、現場ごとの環境負荷をリアルタイムで可視化する技術である。機能の更新により、データ集計の精度と適用範囲が拡張され、より厳密な環境管理が可能となっている。また、資源循環に向けた企業間連携の成果として、2025年12月16日には、日本通運株式会社との協働によって開発された「建設副産物循環回収システム」が、国土交通大臣賞を受賞したことが公表された。建設現場から排出される廃棄物や副産物を効率的に回収・分別し、再資源化ルートに乗せるこのロジスティクスシステムは、建設業におけるサーキュラーエコノミーを具現化する優れた事例として公的に高く評価されている。5
社会貢献と環境啓発を融合させた地域密着型のプロジェクトも展開されている。2025年12月3日には、沖縄県石垣市において、地元の高校生と連携して実施された「漂着プラスチックのアップサイクル」に関する活動報告会が開催された。さらに、2025年12月25日には、石川県立輪島高等学校との協働プロジェクトとして、災害復旧の支援を目的としたアップサイクルベンチの製作が発表されている。これらの活動は、同社の有する材料加工技術や環境保全のノウハウを地域社会に還元し、次世代の環境意識を育成する取り組みである。また、環境技術のプレゼンスを国際的な舞台で示すため、2025年10月30日には、2027年に開催が予定されている「国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」のダイヤモンドパートナーとして協賛することが正式に発表された。この協賛は、同社の環境に対するコミットメントをグローバルに発信する戦略的なマイルストーンとして機能している。5
大成建設は、労働力不足や熟練技術者の高齢化といった建設業界における構造的課題を解決するため、ロボティクス、デジタル計測、および人工知能(AI)を融合させた施工技術の開発に莫大な研究開発費を投じている。特に、過酷な自然条件に直面し、高いリスクを伴う山岳トンネル工事の分野において、同社の知財ポートフォリオは極めて先駆的な展開を見せている。2026年2月19日には、山岳トンネル工事の掘削プロセスにおける発破作業の完全機械化を実現する「装薬車」の開発完了が公表された。発破作業は火薬を扱う極めて危険な工程であり、従来は熟練作業員による手作業に依存していたが、この装薬車の開発により、作業員を危険区域から遠ざけた状態での無人化・自動化施工が可能となり、現場の安全性が飛躍的に向上する。また、トンネル施工の品質と安全性を担保するための自動計測システムの導入も連続的に行われている。2025年9月18日には、トンネル底面における変位を自動で連続的に測定する多点連続変位計「T-Invert Monitor」が開発された。続いて、2025年10月15日には、トンネル内の空間変位を自動的に計測するシステム「T-Laser Tunnel Watch」の導入が発表された。これらのシステム群は、目視や手動計測によるヒューマンエラーを排除し、レーザー技術や高精度センサーを活用して微細な地盤変動をリアルタイムで検知・解析するものであり、施工管理の客観性とデータドリブンな意思決定を強力に支援している。5
|
主要なデジタル・自動化技術の開発状況(2025年-2026年) |
|
装薬車:山岳トンネル工事における発破作業の完全機械化を実現する専用施工機械 |
|
T-Laser Tunnel Watch:トンネル内部の変位をレーザーを用いて自動的に計測するシステム |
|
T-Invert Monitor:山岳トンネル底面の変位を自動測定する多点連続変位計 |
|
デジタルインスペクションパッケージ:ドローンと3Dスキャンカメラを活用した点検業務支援 |
|
施工計画書作成支援システム:最新の生成AIを活用した土木工事向け文書作成自動化システム |
|
T-Localizer:インフラ側から自動運転車の位置補正を支援する技術 |
既存の社会インフラの維持管理においても、デジタルソリューションの実装が進んでいる。2026年2月6日には、「デジタルインスペクションパッケージ」の提供開始が公表された。このシステムは、無人航空機(ドローン)と高精細な3Dスキャンカメラを組み合わせて構造物の状態を空間データとして取得し、点検業務をパッケージ化して提供するサービスである。高所作業や危険箇所での点検をデジタルデバイスで代替することにより、作業の安全性と効率性を同時に高めることが可能となっている。オフィスワークやエンジニアリング業務の領域では、最先端の人工知能技術が業務プロセスの根本的な変革をもたらしている。2025年11月28日に開発が発表された「施工計画書作成支援システム」は、最新の生成AIを土木工事のフロントオフィス業務に適用した事例である。土木工事において必須となる膨大な施工計画書の作成作業を、AIが過去のデータや関連文書を学習してドラフトを自動生成することで支援し、技術者がより創造的な設計・管理業務に専念できる環境を提供する。5
さらに、同社のデジタル技術開発は、建設施工の枠を超え、次世代のモビリティ社会を支えるインフラストラクチャーとしての役割へと拡大している。2025年12月15日には、自動運転社会の到来を見据えた位置補正技術「T-Localizer」の開発が公表された。これは、衛星測位(GPSなど)の電波が届きにくいトンネル内や都市部のビル群といった環境下において、道路などのインフラ側に設置されたデバイスと車両が通信を行い、車両の正確な位置情報を補正・提供する技術である。この技術開発は、建設業者が単に道路を造るだけでなく、自動運転という新たな社会システムを技術的に支援するモビリティ・プラットフォーマーとしての機能を有し始めている事実を示している。5
現代の複雑化した社会課題に対して、一企業の研究開発能力のみで対応することは困難である。大成建設は、自社が保有する知的財産やインフラ技術を、地方自治体、教育機関、スタートアップ企業などの多様なパートナーに開放し、協働を通じて新たな価値を創出するオープンイノベーション戦略を強力に推進している。国内の地域社会との連携事例として、自治体との包括的な協定締結が相次いでいる。2025年8月26日には、長崎県との間で「デジタル技術を活用したまちづくりに関する連携協定」が締結された。この協定は、同社のデジタル施工技術や都市計画のノウハウを長崎県の地方創生とインフラ整備に活用するものである。さらに、2026年2月17日には、埼玉県幸手市との間で「包括連携協定」が合意された。この協定を通じて、同社は地域が抱えるインフラ老朽化や環境問題などの多様な課題に対して、技術的なソリューションを包括的に提供する体制を構築している。防災・減災の分野におけるソリューション提供も自治体向けに強化されており、2025年8月22日には、地方自治体に特化した防災まちづくり支援システム「if-Map」の開発と提供が公表された。このシステムは、地域の地形データや人口動態、ハザードマップを統合的に解析し、災害時の被害シミュレーションや最適な避難計画の立案を支援するインフラソフトウェアとして機能している。5
|
産官学・グローバル連携プロジェクト一覧 |
|
長崎県:デジタル技術を活用したまちづくりに関する連携協定の締結(2025年8月26日) |
|
埼玉県幸手市:地域課題の解決に向けた包括連携協定の合意(2026年2月17日) |
|
シンガポール:技術共創・実証拠点の開設によるグローバルオープンイノベーション(2025年10月29日) |
|
日本通運株式会社:建設副産物循環回収システムの共同構築(国土交通大臣賞受賞) |
|
石川県立輪島高等学校:災害復旧支援のためのアップサイクルベンチの共同製作 |
|
沖縄県石垣市(高校生連携):漂着プラスチックのアップサイクル活動 |
グローバルな技術戦略の展開においては、アジアのイノベーションハブであるシンガポールを重要拠点と位置づけている。2025年10月29日、同社はシンガポールにおいて「技術共創・実証拠点」の開設を発表した。この施設は、現地の大学、研究機関、そして革新的な技術を持つスタートアップ企業との間で、新しい建設技術やスマートシティ関連技術の共同開発、および実用化に向けた実証実験(Proof of Concept)を実施するためのプラットフォームである。現地の気候条件や法規制、市場ニーズに適合した技術開発を現地で完結させることで、グローバル市場における競争力を高める戦略である。また、建築空間の概念を拡張する新しいプロダクトの展開も進んでいる。2025年11月27日には、モバイル滞在型空間「Mobile Infill」のレンタルおよび販売が開始された。これは、特定の基礎に固定されない可動式の高機能空間を提供するソリューションであり、ワーケーションや災害時の仮設オフィスなど、多様化する空間需要に迅速に対応する事業モデルである。さらに、エネルギー供給の未来を提示する実証実験として、2025年12月15日に「T-iPower Beam」を用いたオフィス送電実証が公表された。この技術は、マイクロ波を利用した無線電力伝送システムであり、オフィス空間内で配線を必要とせずに電子機器に電力を供給する技術的検証である。この技術が実用化されれば、建物の電気設備設計のあり方を根本から変革する強力な知的財産となる。5
大成建設は、企業活動の透明性を確保し、ステークホルダーとの信頼関係を構築するためのガバナンス体制と情報開示方針を有している。その中核となるのが「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念であり、自然環境との調和、安全・安心で魅力ある空間の提供、そして次世代の地球社会づくりへの貢献が宣言されている。この理念に基づく非財務情報の開示プラットフォームとして、統合報告書が重要な役割を果たしている。2025年度の開示計画において、同社は2025年9月24日に「大成建設グループ統合報告書2025」の公開を公式ニュースとしてリリースした。このリリースにおいて、オンライン版の先行公開に加え、10月下旬に冊子版、11月下旬に英語版を発行するという詳細なスケジュールが明示され、国内のみならずグローバルな投資家へ向けたESG情報の発信が計画的に進められている事実が確認できる。さらに、2025年11月18日には、統合的な環境経営情報開示の内容を更新したことが発表されており、同社の公式ウェブサイト内に設けられた「ライブラリー(ESG報告等)」を通じて、環境、社会、ガバナンスに関する詳細なレポートへのアクセスが提供されている。7
一方で、同社の知的財産管理を規定する具体的な社内ルールや、技術開発の拠点に関する詳細情報の開示状況については、本調査時点において技術的・物理的な制約が確認されている。同社の公式ウェブサイト上には「知的財産ポリシー」に関連するページが存在するはずであるが、本調査のアクセス時点において当該URLは機能しておらず(404エラー等の状態)、ポリシーの条文、原則、また「第◯項」といった具体的な規定内容を一次情報として検証することは不可能であった。同様に、神奈川県横浜市戸塚区名瀬町344-1に所在する研究開発の中枢拠点「技術センター」について、その詳細な組織構造、各研究部門の名称、および研究員の構成等を示す公式ページもアクセス不可となっており、組織体制の詳細な記述を直接確認することはできなかった。しかしながら、これらの情報開示上の制約が存在するものの、同社の決算短信において明確に計上されている当期195億300万円という大規模な研究開発費用の存在や、それに裏打ちされて連続的にリリースされている新技術・新システムの稼働事実を総合すれば、同社内には知的財産を創出、保護、そして事業化へと導くための高度に組織化されたガバナンス体制と実務機能が確実に存在していると結論づけることができる。情報開示の技術的欠落は、同社の実体としての技術力や知財創出能力を否定するものではない。3
建設業界における技術開発競争は、各社が巨額の資本を投じて次世代の標準技術を確立しようとする熾烈な環境にある。大成建設の知的財産戦略を相対化するため、一次情報から確認可能な主要な競合他社(清水建設、鹿島建設)の財務および研究開発の状況を比較する。清水建設が2025年5月14日に提出した「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」によれば、同社の2025年3月期の連結売上高は1兆9,443億6,000万円(前年同期比3.0%減)、営業利益は710億3,000万円、経常利益は716億6,400万円、親会社株主に帰属する当期純利益は660億1,500万円(同284.6%増)となっている。総資産は2兆5,237億7,100万円、純資産は9,238億900万円、自己資本比率は34.1%である。清水建設もまた、売上高の微減に対し純利益を大幅に増加させており、業界全体として収益性重視の事業運営への転換が進んでいることがうかがえる。一方、鹿島建設の「知的財産報告書2025」の開示データにおいては、2025年3月末時点での数値として2兆9,118億円という事業規模に関する記述や、国内開発事業に関する1兆1,168億円、1兆2,581億円といった巨額の投資・開発規模が示されている。さらに、鹿島建設はインバウンド工事(外資系企業の発注工事)の増加を見据え、技術系社員の海外派遣制度の拡充や、女性管理職比率の向上に向けた新たな目標設定など、人的資本に対する投資を強化している方針が開示されている。14
|
大手建設3社の財務および事業関連指標の状況(確認可能な最新開示情報に基づく) |
|
大成建設(26年3月期3Q):売上高 1,427,758百万円、営業利益 122,356百万円、純利益 102,568百万円、総資産 2,612,734百万円 |
|
清水建設(25年3月期通期):売上高 1,944,360百万円、営業利益 71,030百万円、純利益 66,015百万円、総資産 2,523,771百万円 |
|
鹿島建設(知的財産報告書2025):2兆9,118億円(2025年3月末関連数値)、国内開発事業 1兆1,168億円等の事業規模記述 |
このような競合環境の中で、大成建設のロードマップは、環境技術(脱炭素・ゼロカーボンビル)とデジタル施工(自動化・AI・自動運転支援インフラ)という二つの強固な軸に沿って推進されている。同社が2026年3月期の通期予想として掲げる売上高2兆900億円、営業利益1,480億円という業績目標は、これらの高度な技術ソリューションが市場において適正に評価され、収益に結びつくことを前提としている。「T-FIELD/SATTE」のような国内の先進的な実証拠点と、シンガポールのようなグローバルな共創拠点が連携することで、同社の知的財産は実験室のレベルから社会インフラの実装へとスケールアップを遂げていく。年間195億円規模の研究開発費の継続的な投下と、自治体や他産業とのオープンイノベーションの推進により、同社は単なるゼネコンから、持続可能な社会を構築するための「環境・空間エンジニアリング企業」へと進化を遂げるロードマップを着実に歩んでいることが確認される。1
同社が推進する個別の技術開発および提携案件について、一次情報に基づくステータスと進捗の時系列分析を行う。2025年8月22日、自治体の防災対応力を強化するための「if-Map」の開発と提供が公表された(ステータス:稼働/提供開始)。続く8月26日には、長崎県との間でデジタル技術を活用したまちづくりに関する協定が締結・有効となり(ステータス:合意)、自治体連携が具体化した。情報開示とガバナンスの側面では、9月24日に「大成建設グループ統合報告書2025」の公開が公表され(ステータス:提供開始)、ステークホルダーとの対話基盤が強化された。施工現場のデジタル化においては、10月15日に「T-Laser Tunnel Watch」の導入が発表され(ステータス:稼働/提供開始)、トンネル工事の安全性向上に寄与している。グローバル戦略の展開として、10月29日にシンガポールにおいて技術共創・実証拠点の開設イベントが実施され(ステータス:稼働/提供開始)、国際的なオープンイノベーションの体制が整えられた。5
人工知能技術の実務適用としては、11月28日に生成AIを用いた施工計画書作成支援システムの開発が発表され、現場の生産性向上に向けた運用が始まっている(ステータス:稼働/提供開始)。次世代モビリティインフラの分野では、12月15日に自動運転を支援する「T-Localizer」の開発が公表された(ステータス:稼働/提供開始)。また、資源循環を通じた社会貢献の実績として、12月16日に日本通運と共同構築したシステムが国土交通大臣賞を受賞するイベントが行われた(ステータス:完了)。環境経営のデジタル化において、2026年1月7日に「T-CARBON/Watch」の機能アップデートが実施された(ステータス:稼働/提供開始)。さらに、2月16日には環境技術の集大成である「T-FIELD/SATTE」の本格運用が開始され(ステータス:稼働/提供開始)、翌2月17日には幸手市との包括連携協定が合意された(ステータス:合意)。これらの案件の迅速な展開とステータスの推移は、同社の研究開発が研究段階にとどまらず、極めて高い速度で社会実装と事業化(提供開始)へと移行している実態を証明している。5
本レポートのPDF版をご用意しています。印刷や保存にご活用ください。
本レポートは、公開情報をAI技術を活用して体系的に分析したものです。
情報の性質
ご利用にあたって
本レポートは知財動向把握の参考資料としてご活用ください。 重要なビジネス判断の際は、最新の一次情報の確認および専門家へのご相談を推奨します。
TechnoProducerは、貴社の「発明力と知財力」を最大化します
→ 月額顧問サービス
特許活用から経営戦略まで、事業成功のプロがあらゆる課題に対応
→ 発明塾®動画セミナー
個人での学習や、オンラインでの社内教育はこちら
→ まず相談したい・お問い合わせ
サービス選択に迷う場合や、個別のご相談はこちら
ここでしか読めない発明塾のノウハウの一部や最新情報を、無料で週2〜3回配信しております。
・あの会社はどうして不況にも強いのか?
・今、注目すべき狙い目の技術情報
・アイデア・発明を、「スジの良い」企画に仕上げる方法
・急成長企業のビジネスモデルと知財戦略