3行まとめ
「INPEX Vision 2035」に基づくネットゼロ5分野への投資拡大
2050年のネットゼロ達成に向け、水素・アンモニアやCCUSなどのネットゼロ5分野に対して技術投資と資金配分を集中させています。
成長と脱炭素の両立を目指す「60-60 Targets」の設定
2035年に向けて、2024年対比で営業キャッシュフロー(CFFO)を60%増加させる一方で、GHG排出原単位を60%削減する野心的な数値目標を掲げています。
エコシステム構築と知的財産を尊重するガバナンスの徹底
柏崎水素パークの稼働など外部パートナーとのオープン・イノベーションを推進しつつ、他者の知財権を侵害しない厳格なコーポレート・ガバナンス体制を規定しています。
この記事の内容
INPEXは、2050年のネットゼロカーボン社会実現に向けた長期的な技術・知財戦略および経営戦略を「INPEX Vision 2035」として策定し、公表している。2025年2月13日付で発表された同ビジョン(英文タイトル:INPEX Vision 2035 - Realizing a Responsible Energy Transition)において、同社は石油・天然ガスの上流事業を経営の基盤としつつ、エネルギー転換に対応するための「ネットゼロ5分野(5 Net Zero businesses)」を設定している。具体的には、水素・アンモニア事業、CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素回収・有効利用・貯留)事業、再生可能エネルギー事業などの分野への技術投資および資金配分を拡大する方針である。技術戦略の核となるのは、同社がこれまで40年以上にわたり蓄積してきた陸上開発・洋上開発(Onshore/Offshore development)、パイプライン供給(Pipeline supply)、LNG受入・輸送・液化(LNG receiving, transport, and liquefaction)などの技術的知見・組織能力(Organizational Capabilities)の活用である。2035年に向けた中長期目標として「60-60 Targets for Growth and Decarbonization」を掲げている。この目標は、2024年水準対比で営業キャッシュフロー(CFFO:Cash Flow From Operations)を60%増加させる一方で、2019年比でGHG(温室効果ガス)排出原単位(Net carbon intensity、Scope 1およびScope 2)を60%削減する数値目標を設定している。また、配当金については年間90円(90 JPY)を下限とする累進配当(A progressive annual dividend payout)を導入し、総還元性向(Dividend/Total return ratio)を50%以上とする財務基盤の強化を表明している。2025年2月13日時点では「2050年にネットゼロの達成を目指す(Net-zero challenge by 2050)」との方針が示されている。2026/02/19 時点で、以下の一次情報範囲を探索したが、状態更新を確認できず(Not Disclosed)。探索範囲:対象期間(直近24ヶ月)、対象文書種(決算資料/説明会資料/プレスリリース)、使用キーワード群(ネットゼロ, 達成, 完了)。 1
新たな事業の創出(Creation of new businesses)とエネルギーシステムの高度化を目的として、INPEXは複数の技術分野を重点的な研究開発(R&D)領域として特定し、投資を集中させている。一次情報の記載によると、注力技術分野には「次世代地熱発電(Next-Generation Geothermal Power)」「CO2技術(CO2 technologies: capture, transport, and injection)」「浮体式洋上風力(Floating Offshore Wind)」「次世代燃料(Next-Generation Fuels)」「水素輸送(Hydrogen Transport)」、および「地下流体資源回収(Subsurface Fluid Resource Recovery)」が含まれている。特に地下流体資源回収の領域においては、地下の塩水(brine)からヨウ素(iodine)などの金属資源・希少資源を回収する技術の開発に挑戦しており、これを「石油・天然ガス以外の地下資源回収(Non-oil and gas subsurface resource recovery)」という新たな成長軸(Pillar for Growth)として位置づけている。また、ヨウ素供給の強みを活かしたペロブスカイト型太陽電池(perovskite-type solar cells)の開発も視野に入れている。これらの研究開発活動は、外部の第三者パートナー(third parties)との連携を促進するための「イノベーションセンター(Innovation Center)」の構築構想と連動している。2025年2月13日時点では「イノベーションセンターを開発する(plans to develop an Innovation Center)」との方針が示されている。2026/02/19 時点で、以下の一次情報範囲を探索したが、状態更新を確認できず(Not Disclosed)。探索範囲:対象期間(直近24ヶ月)、対象文書種(公式ウェブサイト/プレスリリース/説明会資料)、使用キーワード群(Innovation Center, イノベーションセンター, 開設, 完了, 稼働)。 1
INPEXは、技術戦略および事業戦略を実行するための組織体制の構築と改編を継続的に進めている。一次情報「組織改編に関するお知らせ(2025年3月)」によれば、従来の「技術本部」を「技術統括本部」へ移管・改称し、デジタル戦略推進と技術支援機能の強化を図る組織改編を実施した。この組織改編の発効日(有効日)に関する具体的な年月日は一次情報上で確認できず(Not Disclosed)。同社の公式ウェブサイトに掲載された組織図(2025年4月1日更新)によれば、組織の内部構造としては「INPEXの技術/イノベーション(INPEX Technology / Innovation)」を中核とし、地質・物探分野(Geology and Geophysical Exploration)、油層・生産分野(Reservoir and Production)、施設分野(Facilities)、掘削分野(Drilling)といった伝統的な石油・天然ガス関連の専門技術部門が存在する。さらに、エネルギー転換を牽引するための専門事業ユニットとして、「水素・アンモニア(Hydrogen & Ammonia)」「CCS」「ヨウ素事業(Iodine Business)」「リニューアブルディーゼル事業(Renewable Diesel Business)」がそれぞれ独立して設置されている。また、技術業務におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を重点分野として推進しており、蓄積された膨大なデータとAI技術を活用して意思決定プロセスを高度化する方針を示している(プロジェクト名:I-RHEX等)。具体的な知財管理を専任する部門名や最高技術責任者(CTO)の氏名については、2026/02/19 時点で、以下の一次情報範囲を探索したが、状態更新を確認できず(Not Disclosed)。探索範囲:対象期間(直近24ヶ月)、対象文書種(役員一覧/組織図/有価証券報告書)、使用キーワード群(CTO, 知的財産部, 特許部, Chief Technology Officer)。 2
技術開発成果の社会実装および商業化検証として、INPEXは国内外で大規模なCCSおよび水素・アンモニア関連プロジェクトを推進している。国内では、新潟県柏崎市において「クリーンな水素・アンモニア製造および枯渇ガス田へのCO2圧入利用一貫実証試験」を実施しており、同施設の名称である「柏崎水素パーク」は2025年11月21日に開所し、設備の稼働を開始した。このプロジェクトはJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)およびNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)との連携により進行している。海外プロジェクトにおいては、オーストラリアの「Ichthys CCS」で年間約200万トン(2.0 million tons/year)、インドネシアの「Abadi CCS」で年間約150万トン(1.5 million tons/year)のCO2回収・貯留を目指している。また、2025年7月3日にはオーストラリアの「Bonaparte CCS Project」が同国政府からメジャープロジェクトステータス(Major Project Status)を獲得した。Abadi LNGプロジェクト全体については、現在の中期経営計画期間中(2025-2027年)に最終投資決定(FID)を行う方針である。2025年2月13日時点では「Abadi LNGプロジェクトのFIDを目指す(Target the Final Investment Decision)」との方針が示されている。2026/02/19 時点で、以下の一次情報範囲を探索したが、状態更新を確認できず(Not Disclosed)。探索範囲:対象期間(直近24ヶ月)、対象文書種(決算説明会資料/公式プレスリリース)、使用キーワード群(Abadi, FID, 完了, 決定)。 1
INPEXの知的財産に関する具体的な特許出願件数、保有特許ポートフォリオの詳細、技術ライセンスに関する財務的収益などの定量的なデータは、一次情報上で確認できず(Not Disclosed)。しかしながら、同社の企業ガバナンスおよびコンプライアンスの基盤となる公式文書「INPEXの理念(企業価値の持続的向上に向けて)」において、知的財産に関する明確な行動規範が設定されている。同理念の第9項には「他人の知的財産権を尊重し、これを侵害する行為を行わない。」と明記されており、技術開発および新規事業の推進において他社の特許権や商標権等の知的財産権を侵害しないための予防的ガバナンス体制が敷かれていることが確認できる。また、自社の技術的優位性を確保する手段として、単独での技術開発(クローズド・イノベーション)だけでなく、外部アライアンスを通じた技術エコシステムの形成を重視している。その一環として、2025年1月7日には国際的なe-メタン推進団体である「e-NG Coalition International e-Methane Alliance」に参画した。これにより、合成メタン(e-NG)のグローバルなサプライチェーン構築と標準化に向けた技術的知見の共有を図る体制を構築している。 1
本レポートの記述の根拠となる一次情報を以下の表に列挙する。すべての情報は基準日(2026/02/19)から遡及して直近の公式開示文書および公的機関の一次資料に限定している。
|
Evidence ID |
発行体 |
文書名 |
発行日 |
種別 |
URL |
|
18 |
INPEX |
IRライブラリー 有価証券報告書ページ(第19期) |
2025/03/31 |
企業公式IR |
|
|
19 |
INPEX |
IRライブラリー トップ(Basic Information, Management Plan) |
日付は一次情報上で確認できず(Not Disclosed) |
企業公式IR |
|
|
9 |
INPEX |
2025年12月期 決算説明会資料(計数データ・販売量等) |
2026/02/12 |
企業公式IR |
https://www.inpex.com/ir/library/upload/result20260212_c.pdf |
|
20 |
INPEX |
2025年12月期 決算説明会資料(プレゼンテーション資料) |
2026/02/12 |
企業公式IR |
https://www.inpex.com/ir/library/upload/result20260212_b.pdf |
|
1 |
INPEX |
INPEX Vision 2035(日本語版サマリー情報) |
2025/02/13 |
企業公式IR |
https://www.inpex.com/assets/documents/company/inpex_vision_2035.pdf |
|
2 |
INPEX |
INPEX Vision 2035 (English Document) |
2025/02/13 |
企業公式IR |
https://www.inpex.com/assets/documents/english/company/inpex_vision_2035.pdf |
|
16 |
INPEX |
統合報告書 インデックスページ(Technology Strategy関連) |
2024/07/05 |
企業公式IR |
https://www.inpex.com/ir/library/integrated_report/index.html |
|
17 |
INPEX |
Integrated Report 2024 (English) |
日付は一次情報上で確認できず(Not Disclosed) |
企業公式IR |
|
|
21 |
INPEX |
INPEX Sustainability Report 2024 (English) |
日付は一次情報上で確認できず(Not Disclosed) |
企業公式IR |
https://www.inpex.com.au/media/1bvbm5wj/inpex_sustainabilityreport2024_eng.pdf |
|
14 |
INPEX |
IR Library Integrated Report History (Back Numbers) |
日付は一次情報上で確認できず(Not Disclosed) |
企業公式IR |
|
|
6 |
INPEX |
組織図・技術部門(INPEX Technology / Innovation) |
2025/04/01 |
企業公式IR |
|
|
10 |
JOGMEC |
プレスリリース(柏崎水素・アンモニア製造設備開所) |
2025/11/21 |
公的機関 |
|
|
8 |
INPEX |
組織改編に関するお知らせ(技術本部移管) |
2025/03/01(推定禁止ルールにより日付は一次情報上で確認できず: Not Disclosed) |
企業公式IR |
|
|
13 |
INPEX |
企業理念ページ(企業価値の持続的向上に向けて) |
日付は一次情報上で確認できず(Not Disclosed) |
企業公式IR |
|
|
22 |
INPEX |
Financial Results History (Year ended December 31, 2025) |
2026/02/12 |
企業公式IR |
|
|
12 |
INPEX |
INPEX News 2025 (e-NG Coalition, Renewable Energy) |
2025/07/03 |
企業公式IR |
|
|
5 |
INPEX |
中期経営計画ウェブページ |
日付は一次情報上で確認できず(Not Disclosed) |
企業公式IR |
本表では、INPEXが推進する主要な技術実証、事業開発、および外部提携プロジェクトの時系列推移を示す。各案件のステータスは一次情報に基づく。
|
日付 |
状態ラベル |
発行体 |
文書名 |
短い原文抜粋 |
URL |
|
2025/01/07 |
[合意/契約] |
INPEX |
INPEX News 2025 |
INPEX Joins e-NG Coalition International e-Methane Alliance |
|
|
2025/01/14 |
[合意/契約] |
INPEX |
INPEX News 2025 |
Indonesia's Muara Laboh Geothermal Power Project Reaches Final Investment Decision (FID) and Project Finance Agreement for Project Expansion |
|
|
2025/02/13 |
[計画/方針] |
INPEX |
INPEX Vision 2035 |
Target the Final Investment Decision (FID) during the current mid-term plan period and aim for production commencement in the early 2030s. |
https://www.inpex.com/assets/documents/company/inpex_vision_2035.pdf |
|
2025/07/01 |
[完了/子会社化済み] |
INPEX |
INPEX News 2025 |
PT INPEX Renewable Energy Indonesia Established in Indonesia. |
|
|
2025/07/03 |
[合意/契約] |
INPEX |
INPEX News 2025 |
Bonaparte CCS Project Awarded Major Project Status. |
|
|
2025/11/21 |
[稼働/提供開始] |
JOGMEC |
JOGMEC プレスリリース |
新潟県柏崎市におけるクリーンな水素・アンモニア製造および枯渇ガス田へのCO2圧入利用一貫実証試験に係る水素・アンモニア製造設備の開所について |
本クロノロジーは、INPEXが推進する主要な事業開発および技術実証プロジェクトの具体的な進捗状況を示すものである。2025年1月7日には、国際的なe-メタン推進連合である「e-NG Coalition International e-Methane Alliance」への参加に関する合意が公表された。これにより、合成メタン(e-NG)領域における技術標準化とエコシステム構築に向けた国際的な布石が打たれた。続いて2025年1月14日には、インドネシアの「Muara Laboh Geothermal Power Project(ムアララボ地熱発電プロジェクト)」の拡張工事において、最終投資決定(FID:Final Investment Decision)およびプロジェクトファイナンス契約の締結が完了したことが発表された。2025年2月13日に発表された「INPEX Vision 2035」においては、同社の主力事業であるAbadi LNGプロジェクトに関するマイルストーンが明示された。同文書では、現行の中期経営計画期間内(2025-2027年)におけるAbadi LNGプロジェクトの最終投資決定(FID)の達成と、2030年代前半(early 2030s)における生産開始を目標とする計画が策定された。2025年2月13日時点では「Abadi LNGプロジェクトのFIDを目指す」との方針が示されている。2026/02/19 時点で、以下の一次情報範囲を探索したが、状態更新を確認できず(Not Disclosed)。探索範囲:対象期間(直近24ヶ月)、対象文書種(決算説明会資料/公式プレスリリース)、使用キーワード群(Abadi, FID, 完了, 決定)。 1
同年後半に入ると、再生可能エネルギー分野とCCS分野における組織形成およびプロジェクト展開が加速した。2025年7月1日には、インドネシア共和国において再生可能エネルギー事業を統括・推進する子会社である「PT INPEX Renewable Energy Indonesia」の設立が完了した。直後の2025年7月3日には、オーストラリア海域で推進する「Bonaparte CCS Project(ボナパルトCCSプロジェクト)」が、同国政府よりメジャープロジェクトステータス(Major Project Status)を付与される合意に至ったことが発表された。そして2025年11月21日には、新潟県柏崎市において建設が進められていた「ブルー水素・アンモニア製造・利用一貫実証試験」の拠点である「柏崎水素パーク」が開所し、製造設備の稼働が正式に開始された。本実証試験は、JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)およびNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)との共同プロジェクトとして実施されており、クリーンな水素・アンモニアの製造と、枯渇ガス田へのCO2圧入を一貫して行う国内初の取り組みとして位置づけられている。これらの案件は、技術開発と事業化をシームレスに連携させるINPEXの事業戦略の具体例である。 10
本表では、INPEXの経営戦略および財務・非財務情報(ESGデータ等)を包括的に開示する年次報告書および統合報告書の発行履歴を整理する。
|
日付 |
状態ラベル |
発行体 |
文書名 |
短い原文抜粋 |
URL |
|
2020/07/01 |
[稼働/提供開始] |
INPEX |
IR Library |
Annual Report 2020. |
|
|
2021/06/30 |
[稼働/提供開始] |
INPEX |
IR Library |
Annual Report 2021 (Double page) / (Single page). |
|
|
2022/06/30 |
[稼働/提供開始] |
INPEX |
IR Library |
Integrated report 2022 (Double page) / (Single page). |
|
|
2023/06/30 |
[稼働/提供開始] |
INPEX |
IR Library |
Integrated report 2023. |
|
|
2024/07/05 |
[稼働/提供開始] |
INPEX |
IR Library |
Integrated report 2024. A report explaining Company's value creation process for its sustainable growth. |
INPEXの公式IRライブラリーにおける年次報告書および統合報告書の発行履歴は、企業の持続的成長に向けた価値創造プロセス(value creation process for its sustainable growth)、経営戦略(management strategies)、事業活動(business activities)、および財務・非財務情報(financial and non-financial information)の開示方針の変遷を示している。2020年版の「Annual Report 2020」は2020年7月1日に公開され、続く「Annual Report 2021」は2021年6月30日に公開された。2022年度版からは、非財務情報(ESGイニシアチブ等)と財務情報の統合を強調するため、報告書の名称が「Integrated report(統合報告書)」へと変更され、「Integrated report 2022」が2022年6月30日に公開された。最新の年次総括文書の一つである「Integrated report 2023」は2023年6月30日に発行されている。さらに直近の「Integrated report 2024」は、IRライブラリー上のBack Numbersの記載によれば2024年7月5日に公開された。 14
これらの統合報告書群は、気候変動への対応やネットゼロカーボン社会に向けた事業戦略の詳細をステークホルダーに伝達する中核的なコミュニケーション媒体として機能している。文書内では、石油や天然ガスの上流事業を基盤としつつも、CCUS、水素等の新たな事業分野へ積極的に取り組む姿勢が継続的に記述されている。また、2021年4月1日に社名を「国際石油開発帝石株式会社」から「株式会社INPEX」へ変更した経緯を含め、グローバルなエネルギー転換(Energy Transition)の進展を踏まえたブランドイメージの刷新と事業領域の拡大に関する軌跡も、これら一連のアーカイブ資料から読み取ることができる。財務・非財務の定量データとして、CO2削減量や各種の投資キャッシュフローの実績値が毎年度更新され、前述の「INPEX Vision 2035」で掲げられた目標値に対する進捗のトラッキングに使用されている。 14
INPEXが推進する主要な研究開発領域と技術戦略のテーマ構成を以下の表に整理する。
|
対象技術領域 |
状態ラベル |
発行体 |
短い原文抜粋 |
関連事業・用途 |
URL |
|
次世代地熱発電 |
[計画/方針] |
INPEX |
Next-Generation Geothermal Power: Technical development for advanced geothermal energy recovery. |
再生可能エネルギー、ムアララボ地熱発電等 |
https://www.inpex.com/assets/documents/english/company/inpex_vision_2035.pdf |
|
CO2回収・貯留技術 |
[計画/方針] |
INPEX |
CO2 Technologies: Focus on CO2 capture, transport, and injection (sequestration) technologies. |
CCS事業(Ichthys CCS, Abadi CCS等) |
https://www.inpex.com/assets/documents/english/company/inpex_vision_2035.pdf |
|
浮体式洋上風力 |
[計画/方針] |
INPEX |
Floating Offshore Wind: Development of floating foundations and related offshore wind technology. |
再生可能エネルギー、ネットゼロ5分野 |
https://www.inpex.com/assets/documents/english/company/inpex_vision_2035.pdf |
|
水素輸送技術 |
[計画/方針] |
INPEX |
Hydrogen Transport: Technical solutions for the efficient transportation of hydrogen. |
水素・アンモニア事業、柏崎水素パーク等 |
https://www.inpex.com/assets/documents/english/company/inpex_vision_2035.pdf |
|
地下流体資源回収 |
[計画/方針] |
INPEX |
Subsurface Fluid Resource Recovery: Technologies to extract valuable resources from underground fluids. |
ヨウ素事業、石油・天然ガス以外の地下資源回収 |
https://www.inpex.com/assets/documents/english/company/inpex_vision_2035.pdf |
|
イノベーションセンター |
[計画/方針] |
INPEX |
plans to develop an Innovation Center as a core facility to drive R&D effectively by collaborating with third parties. |
全社R&D、オープンイノベーション拠点 |
https://www.inpex.com/assets/documents/english/company/inpex_vision_2035.pdf |
INPEXの技術戦略は、主力である石油・天然ガス事業の強靭化と、低炭素化を推進するための「ネットゼロ5分野」への事業領域拡大という二つの成長軸(Growth Axes)で構成されている。2025年2月13日に発表された「INPEX Vision 2035」では、これらを実現するための具体的な研究開発(R&D)の重点領域が詳細に明示された。第一に「次世代地熱発電(Next-Generation Geothermal Power)」が挙げられており、従来の地熱開発の限界を超える高度な地熱エネルギー回収のための技術開発が進められている。第二に「CO2技術」として、二酸化炭素の回収(Capture)、輸送(Transport)、および地下への圧入・貯留(Injection/Sequestration)に関する技術開発が特定されている。第三に「浮体式洋上風力(Floating Offshore Wind)」分野における浮体式基礎および関連する洋上風力技術の開発、第四に「次世代燃料(Next-Generation Fuels)」としての持続可能または低炭素燃料の代替品に関するR&D、第五に「水素輸送(Hydrogen Transport)」のための効率的な輸送ソリューションに関する技術開発が指定されている。 1
さらに、同社独自の強みを生かしたR&Dテーマとして「地下流体資源回収(Subsurface Fluid Resource Recovery)」が設定されている。これは、石油・天然ガスの探鉱・開発で培った地下構造の解析技術と掘削技術を応用し、地下の塩水(brine)からヨウ素(iodine)などの金属資源および希少資源を抽出・回収する技術の開発に挑戦するものである。ヨウ素事業に関連して、次世代太陽電池として有望視されているペロブスカイト型太陽電池(perovskite-type solar cells)の開発にも注力する方針が示されている。これらの研究開発を強力に推進するため、同社は組織体制の強化を図っている。一次情報によれば、従来の「技術本部」は「技術統括本部」へ移管・改編され、デジタル戦略の推進と技術支援機能の強化が図られた。この組織内部には「地質・物探分野」「油層・生産分野」「施設分野」「掘削分野」といった伝統的な石油上流部門に加え、「水素・アンモニア」「CCS」「ヨウ素事業」「リニューアブルディーゼル事業」といった新エネルギー専門の事業ユニットが編成されている。2025年2月13日時点では「イノベーションセンターを開発する」との方針が示されている。2026/02/19 時点で、以下の一次情報範囲を探索したが、状態更新を確認できず(Not Disclosed)。探索範囲:対象期間(直近24ヶ月)、対象文書種(公式ウェブサイト/プレスリリース)、使用キーワード群(Innovation Center, 稼働, 完了)。 1
一方で、これら高度な技術開発成果を保護・独占・活用するための「知的財産管理方針」や、特許出願戦略に関する具体的な記述は限られている。「INPEX Vision 2035」をはじめとする提供された一次情報において、特許の年間出願件数、技術ライセンスによる収益額、知財ポートフォリオの詳細な構成比率、あるいは最高技術責任者(CTO)や知的財産部門の責任者名といったデータは該当情報なし(Not Disclosed)。ただし、技術的専門知識や数十年にわたるプロジェクト運営で培われた「組織能力(Organizational Capabilities)」自体を企業の競争優位(competitive advantages)の源泉とし、新たなビジネスの創出(New Businesses)に活用する方針は明記されている。また、これらの技術リソースを活用してデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、蓄積されたデータとAIを用いた意思決定の高度化を図る取り組みが技術戦略の一環として位置づけられている。 1
|
日付 |
状態ラベル |
発行体 |
提携先・機関名 |
対象分野・プロジェクト |
URL |
|
2025/01/07 |
[合意/契約] |
INPEX |
e-NG Coalition International e-Methane Alliance |
合成メタン(e-NG)の技術標準化およびサプライチェーン構築 |
|
|
2025/11/21 |
[稼働/提供開始] |
JOGMEC |
JOGMEC, NEDO |
柏崎水素パーク(水素・アンモニア製造およびCO2圧入利用一貫実証試験) |
INPEXの技術・事業戦略において、外部機関とのパートナーシップやアライアンスの形成は、単独での技術開発リスクを低減し、技術の社会実装を加速させるための極めて重要な手段となっている。特に水素・アンモニア事業およびCCS(二酸化炭素回収・貯留)の領域においては、公的機関との強固なエコシステムが構築されている。2025年11月21日に稼働を開始した「柏崎水素パーク」における「ブルー水素・アンモニア製造および枯渇ガス田へのCO2圧入利用一貫実証試験」は、その代表的な事例である。本事業は、JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)およびNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)との共同事業として実施されている。この実証試験により、クリーンな水素・アンモニア製造技術とCO2の地下貯留技術を統合した実際のオペレーションデータの蓄積が可能となり、将来の事業化に向けた知見が外部パートナーと共有される技術エコシステムの体制が構築されている。 10
国際的なエコシステムの構築においても積極的な動きが見られる。2025年1月7日、INPEXは「e-NG Coalition International e-Methane Alliance」への参画を完了した。合成メタン(e-NG)は、既存の都市ガスインフラストラクチャやLNG設備をそのまま活用できる次世代の低炭素エネルギーキャリアとして注目されている。INPEXがこの国際連合に参加したことは、自社の技術的知見を提供するだけでなく、グローバルな技術標準規格の策定プロセスに直接関与し、サプライチェーンの構築に向けた国際的な技術連携を深める意図を示している。さらに、再生可能エネルギー分野においては、2025年1月14日にインドネシアの「Muara Laboh Geothermal Power Project(ムアララボ地熱発電プロジェクト)」の拡張に関する最終投資決定(FID)とプロジェクトファイナンス契約を締結し、同年7月1日には同国における再生可能エネルギー事業を統括する「PT INPEX Renewable Energy Indonesia」を設立した。これにより、インドネシア政府や現地の事業パートナーと強固なアライアンスを築き、地熱を中心としたクリーンエネルギーの供給網を拡大するエコシステムを形成している。 12
また、「INPEX Vision 2035」において、同社は技術開発を加速させるための中核施設として「イノベーションセンター(Innovation Center)」の開発を計画している旨を表明している。この施設は、社内の技術リソースを活用するだけでなく、第三者機関(third parties)とのコラボレーションを促進するための拠点として位置づけられている。このように、INPEXは自社単独での技術開発(クローズド・イノベーション)に留まらず、国内外の公的機関、国際的コンソーシアム、および第三者企業との協業を通じたオープン・イノベーションのエコシステム構築を事業戦略の中核に据えている。 2
|
項目番号 |
発行体 |
規範の名称・対象 |
短い原文抜粋 |
URL |
|
第5項 |
INPEX |
職場環境・人権 |
役員及び従業員その他の者に対して暴力行為を行わない。 |
|
|
第7項 |
INPEX |
株主関係・公正取引 |
当社又は関係会社の株主による権利の行使に関し、利益供与を行わない。 |
|
|
第9項 |
INPEX |
知的財産権の尊重 |
他人の知的財産権を尊重し、これを侵害する行為を行わない。 |
INPEXは、企業の持続的成長と社会に対する責任を果たすための基盤として、厳格なガバナンスとコンプライアンスの体制を敷いている。同社の公式ウェブサイトに掲載されている「INPEXの理念(企業価値の持続的向上に向けて)」には、役員および従業員が遵守すべき行動規範が明示されている。特筆すべきは、知的財産に対する基本姿勢がこの最上位の企業理念の中に明確に組み込まれている点である。理念の第9項には「他人の知的財産権を尊重し、これを侵害する行為を行わない。」と規定されている。これは、同社が推進する「ネットゼロ5分野(再生可能エネルギー、CCS/CCUS、水素・アンモニア等)」における新規事業開発や、次世代地熱発電、浮体式洋上風力、地下流体資源回収などの新技術の研究開発過程において、他社の保有する特許権、実用新案権、商標権、著作権などの知的財産を無断で使用・侵害する法的リスクを未然に防ぐためのコーポレート・ガバナンスの方針を示している。 13
また、同理念の他の項目においても、公正かつ倫理的な事業活動を確保するための規定が設けられている。例えば、第5項では「役員及び従業員その他の者に対して暴力行為を行わない」とし、健全な職場環境の維持を定めている。第7項では「当社又は関係会社の株主による権利の行使に関し、利益供与を行わない」とし、株主との透明かつ公正な関係性の維持を義務付けている。これらの行動規範は、単なる社内のスローガンではなく、国内外の多様なパートナー企業や政府機関(JOGMEC、NEDOなど)との共同プロジェクトを円滑に推進し、国際的な資本市場における信頼を維持するための大前提となっている。「Integrated Report 2024」等の開示資料において、知的財産に関する具体的なガバナンス体制(例えば、知財侵害リスク評価の具体的な業務プロセスや、特許クリアランス調査の手法に関する社内規定など)の詳細な運用実態については、一次情報上で確認できず(Not Disclosed)。しかし、最上位の企業理念に知的財産権の尊重が掲げられている事実は、経営層が知財リスクマネジメントをコンプライアンス上の重要課題として認識している証左である。 13
本セクションでは、INPEXの技術戦略や知的財産ポートフォリオを相対的に評価するための、競合他社に関する情報を整理する。しかしながら、提供されたすべての一次情報の範囲内(対象期間:直近24ヶ月、対象文書種:決算説明会資料/統合報告書/中期経営計画/有価証券報告書/公式プレスリリース、使用キーワード群:Competitor, 競合, シェア, 出願動向比較)を探索したが、他の国際石油資本(スーパーメジャー)や国内エネルギー企業など、具体的な競合企業名への言及は存在しなかった。競合各社との特許出願動向の比較、ネットゼロ分野における市場シェアの推移、あるいは特定技術領域(CCSや水素製造技術など)における競合優位性を示す定量的な比較データは、すべて該当情報なし(Not Disclosed)。企業公式資料は自社の計画と目標値の記述に終始しており、他社との相対的なポジションを比較・記載したデータは含まれていない。 1
|
指標カテゴリ |
指標名称 |
現状値(ベース年) |
目標値(2027年) |
目標値(2035年) |
URL |
|
財務(成長) |
営業キャッシュフロー(CFFO) |
8,999億円(2024年実績) |
3年間累計 2兆2,000億円以上 |
2024年対比 60%増加 |
|
|
非財務(脱炭素) |
GHG排出原単位(Scope 1+2) |
2019年水準(数値非開示) |
2019年比 35%削減 |
2019年比 60%削減 |
https://www.inpex.com/assets/documents/english/company/inpex_vision_2035.pdf |
|
株主還元 |
年間配当金(下限) |
86円(2024年実績) |
90円(累進配当の起点) |
数値非開示 |
|
|
株主還元 |
総還元性向 |
55.0%(2024年実績) |
50%以上 |
50%以上 |
|
|
安全・操業 |
重大事故(Major Incidents) |
ゼロ(2024年実績) |
ゼロ |
ゼロ |
|
|
社会貢献 |
CO2削減貢献量 |
該当情報なし(Not Disclosed) |
該当情報なし(Not Disclosed) |
年間約820万トン |
https://www.inpex.com/assets/documents/english/company/inpex_vision_2035.pdf |
INPEXの事業・技術開発に関する長期的なロードマップは、2025年2月13日に発表された「INPEX Vision 2035」およびその中で定義された「中期経営計画(2025-2027年)」によって構成されている。このロードマップの最終的なゴールは「2050年におけるネットゼロの達成(Net-zero challenge by 2050)」であり、そこからバックキャストする形で2027年および2035年の定量的なマイルストーンが厳格に設定されている。2035年に向けた中核的なロードマップは「60-60 Targets for Growth and Decarbonization」と名付けられている。これは企業の経済的成長と脱炭素化の両立を示す指標であり、2024年の実績水準と比較して「営業キャッシュフロー(CFFO)を60%増加」させる一方で、2019年の実績水準と比較して「GHG排出原単位(Scope 1および2のネットカーボンインテンシティ)を60%削減」することを目指すものである。また、社会全体の脱炭素化への貢献として、CCSやブルー水素、再生可能エネルギーなどのソリューションの提供により、2035年までに年間約820万トン(8.2 million tons of avoided emissions by 2035)のCO2削減に貢献する目標を掲げている。 1
直近の中期経営計画期間(2025-2027年)におけるロードマップとしては、財務と環境の両面で詳細なKPIが設定されている。財務指標においては、3年間累計の営業キャッシュフロー(CFFO)を「2兆2,000億円以上(油価70ドル/bbl、為替135円/USDの前提)」と定め、株主還元については「年間配当金90円を下限とする累進配当」および「総還元性向(Total return ratio)50%以上」を目標としている。投資効率の指標としては、ROEおよびROICにおいて「株主資本コストおよびWACCを上回ること(目安として10%以上)」を目指す。環境および操業指標においては、2027年までにGHG排出原単位を2019年比で「35%削減」する目標を達成すること、および重大事故(Major Incidents:死亡事故、重傷、Tier 1プロセス安全イベント等)を「ゼロ」に維持することがロードマップに組み込まれている。2025年2月13日時点では「2027年までにGHG原単位35%削減、2035年までに60%削減を目指す」との方針が示されている。2026/02/19 時点で、以下の一次情報範囲を探索したが、状態更新を確認できず(Not Disclosed)。探索範囲:対象期間(直近24ヶ月)、対象文書種(決算説明会資料/統合報告書)、使用キーワード群(GHG削減, 達成, 完了)。 1
主要プロジェクトの実行ロードマップに関しては、以下のスケジュールが設定されている。
本レポートの作成にあたり、指定された一次情報の探索範囲内で厳密な確認を試みたものの、言及が存在しなかった、あるいは一次情報の定義(法定開示、企業公式IR、特許一次情報、公的機関一次資料)を満たす情報ソースが発見できなかった論点を以下に列挙する。これらは推測を排除し、事実に基づくファクトブックの完全性を担保するための記録である。
本レポートのPDF版をご用意しています。印刷や保存にご活用ください。
本レポートは、公開情報をAI技術を活用して体系的に分析したものです。
情報の性質
ご利用にあたって
本レポートは知財動向把握の参考資料としてご活用ください。 重要なビジネス判断の際は、最新の一次情報の確認および専門家へのご相談を推奨します。
TechnoProducerは、貴社の「発明力と知財力」を最大化します
→ 月額顧問サービス
特許活用から経営戦略まで、事業成功のプロがあらゆる課題に対応
→ 発明塾®動画セミナー
個人での学習や、オンラインでの社内教育はこちら
→ まず相談したい・お問い合わせ
サービス選択に迷う場合や、個別のご相談はこちら
ここでしか読めない発明塾のノウハウの一部や最新情報を、無料で週2〜3回配信しております。
・あの会社はどうして不況にも強いのか?
・今、注目すべき狙い目の技術情報
・アイデア・発明を、「スジの良い」企画に仕上げる方法
・急成長企業のビジネスモデルと知財戦略