「発明塾」塾長の楠浦です。
今回はnote記事の紹介、および、補足です。
「越境」が、スキルアップ・キャリアアップ、イノベーション創出・経営改善、および、人材育成に、どのような影響を及ぼすか(1)~カギは「支援」にあり|楠浦崇央/発明塾 塾長 & TechnoProducer CEO
https://note.com/kusuura/n/n2b5719215c0b
以前のコラムに、リンクを貼っていましたが、内容には触れていませんでした。
中途半端なので(笑)、今回、解説します。
では、早速本題へ。
この記事の内容
僕はそんなに深く考えていませんでしたが、一応、言葉の定義を確認しておきます。
越境とは何か。
「部署・職種・階層等を超えて、活動すること」
企業においては、こういう定義になりそうですね。
僕のカワサキ時代の「コンカレント・エンジニアリング」活動で言うと、
・”設計のくせに”、生産現場に入り浸って、製造現場の課題を設計で先回りして解決した(しようとした)
⇒結果として、製造不具合が減り、ラインの立ち上げが早くなって、かつ、品質が向上した
・”ペーペー(新人)のくせに”、製造現場や生産技術部門と交渉し、設計仕様や性能を満たすための製造技術の開発や改善に取り組んでもらった
⇒結果として、極めて少ない人数で、差別化された商品を、短い開発期間で出すことができた
僕の考えでは、”XXのくせに”と言われるのが、越境なんだと思ってます(笑)
noteで紹介している研究においては、「越境学習」が、以下のようなものだと定義されています。
一時的に越境先に入り込む
・そこでの経験に「違和感」や「ズレ」を感じる
・その意味を考え、概念化する
・元の組織に戻り、仕事のやり方や役割を再設計する(ジョブクラフティング)
いずれにせよ、「公式に」「権限として」定められた境目を超えて活動することで、「自分の力が通用しない」「相手の言葉が(互いに)理解できない」という課題を克服し、(組織として)力をつけていくことだ、と僕は理解しています。
僕の場合、まさに「従来の設計の仕事の枠(固定観念)」をぶち壊して、新しい設計手法を確立するのが、一つの仕事になっていました。
固定観念として、例えば「図面を書いたら、後は製造部門で何とかしてね」「後で何か言ってきたら、その時対応すればよい」のような発言は、当時よく耳にしました(笑)。
僕はそれを、「設計が全体最適を主導して、短納期、手戻りなしで高品質で高性能な製品を顧客に提供する」という考え方に、勝手に変えたわけです(笑)。
迷惑な新人ですね...(笑)。
入社1年目と2年目の話です。
ある意味、1年目、2年目の怖いもの知らずの新人だから、できたのかもしれません。
まぁ、今やれと言われてもやりますけどね(笑)。
越境の肝は何か。
note内の以下の記載に、僕は注目しています。
BSB(越境)が非公式な地位(informal status)を高め、それを介して創造的パフォーマンスを向上させる仕組みを示しています。(Cambridge University Press & Assessment)
越境行動でチームに貢献 → 周囲からの評価が上がる →「影響力のある人」として創造的な提案を通しやすくなる、というメカニズムです。
(note記事 4-1参照)
僕はこの「非公式」に注目しています。
公式なものは、後からついてくるんですよね(笑)。
「一目(いちもく)置かれる」という言葉がありますが、まさにそういうことでしょう。
境目を超えたところで、認められる。
それが、仕事のパフォーマンスに直結する。
僕は、越境自体を「非公式」に始めてもらうのが良いと、思っています。
なぜか。
「公式」だと、失敗は許されないですよね(笑)。
目標管理シートにのったりしますからね(笑)。
だから、非公式にちょっとやってみてもらう。
もちろん、周囲はそれを支援し、上司(管理者)は責任を持つ。
でも、うまく行かなくても、正規業務ではないので、誰も気にしない。
多くの人にとっては、これぐらいが、いいんでしょうね。
それで、周囲からある程度認められるようになれば、「公式」にどんどん越境していけばよいのです。
僕の場合は、もともとそういう「気が利いた」(笑)先輩がいたのと、忙しすぎて上司もいちいち管理しきれなかったので、勝手にやっていただけです(笑)。
ただ、上司に怒られた記憶はないですね...忙しすぎて記憶にないだけ、という可能性もありますが...
「学習」の目的が、仕事ができるようになることだとすると、ローテーションがどうのこうのというデカい話ではなく、現場で今日から、自分たちの権限ですぐにできること、に注目するのが良いと思います。
こんなことを、いちいち本社の人事部門に相談したりすると、それだけで数年経ってしまうでしょうね(笑)。
それこそ、「非公式」に始めて、効果があれば「公式」にしてもらえばよいわけです。
僕はいつも、この方式で仕事を進めていましたが、「ほとんど」怒られたことはないですね(笑)。
ほぼ全ての経営者が、
部門横断、地域横断、ステークホルダー横断の協働が「戦略実行・変革・イノベーションの最上位課題」であると答える一方、
「自分は境界を越えるリーダーシップを十分に発揮できている」と自信を持つ人は少ない、
という**ギャップ(ケイパビリティギャップ)**が存在する。つまり、経営課題の多くは**「中身の問題」というより、「境界をどうつなぐかの問題」**になってきている、といえます。
(note記事 5-1参照)
リーダーこそ、複数のステークホルダー(利害関係者)に協働してもらうのが仕事です。
よく話題に出る「オープンイノベーション」は、その最たる例ですね。
一方で、ここに自信がある人は少ない。
新規事業では、「顧客との共創」といったキーワードもよく出ますが、これも「境界を越えた」活動になりますね。
開発部門が、営業と一緒に、あるいは、営業を飛び越して、顧客と直接やり取りする、みたいなことが必要だからです。
僕がコマツで新規事業を担当していた時代は、毎週、三菱重工の長崎造船所(長船)に出張していました。
当時の顧客が、三菱重工さんだったからです。
最初は営業の方もついてきましたが、そのうち勝手に行くようになりました(笑)。
認められたということですね(笑)。
前職のナノテクスタートアップでは、共同研究・共同開発先は70以上あったそうです。
当時の社長が作ったプレゼン資料に、そう書いてありました(笑)。
僕はCTOだったので、そのほぼ全てと、やり取りしていました。
結果が出ずに苦労した、あるいは、モメた(笑)ものもありますが、それが仕事です。
何とかするしかありません。
共同研究契約のひな型が、どんどん分厚くなっていきましたね(笑)。
言語化とは、そういうことです(笑)。
「越境学習」という観点では、「支援者」「伴走者」が重要であると、指摘されています。
RIETIガイドラインは、企業が越境学習を人材育成として活かすうえで、伴走者の役割を詳細に整理しています。
① 越境前
・期待値のすり合わせ(何を学び、どう活かすのか)
・業務調整・評価への反映方針の明確化
② 越境中
・学びの言語化を促す対話
・精神的負担や文化的ストレスへのサポート
③ 越境後
・経験の共有の場づくり(社内セミナー、ラーニングレポートなど)
・新たな役割付与(社内プロジェクトリーダー、社外連携窓口など)
これにより、
「越境してきた人だけが変わって、組織は何も変わらない」
という“もったいない越境”を避け、組織学習・組織開発と一体化した人材育成にしていくことができます。
(note記事 6-2参照)
よくまとまってますね。
ここで重要なのは、「言語化」だろうな、と思っています。
期待値のすり合わせ、は、言語化です。
方針の明確化、も、言語化。
共有も、言語化。
言語化が苦手な方には、それなりのサポートが必要でしょうね。
僕が、企業内発明塾で支援者に求めていることの一つも、まさに「言語化」です。
提案者の「説明できていない気づき」を、適切な情報(事実)を通じて言語化していくのが、支援者の仕事だからです。
企業内発明塾の場合、「結果を出す」ことを優先する部分もありますので、終了後速やかに、言語化をしていただくのが良いと考えています。
そのためのサポートメニューも、提供しております。
特に提案者は、提案を通す作業に追われるため、自身の経験を共有する余裕がない場合が、多いですからね。
これは、やむを得ないと思います。
結果が出てないノウハウを共有されても、共有される側も困りますからね(笑)。
越境には、相応のリスクもあります。
よく言われるのが、「消耗」「バーンアウト」です。
要するに、負担が大きいので、疲れるということです。
越境をプラスに振らせるための条件として、研究やガイドラインから共通して見えてくるのは:
・心理的安全性と組織サポート:越境先で得た学びや提案を、否定せず受け止める風土。
・タスク相互依存性の高さ:イノベーション研究では、チームのタスク相互依存性が高いと、
越境で得たアイデアが成果に結びつきやすいとされています。(MDPI)・伴走者・ブリッジャーの存在:個人の経験を組織の課題・戦略と結びつける人。
・越境後の「場」と「役割」の設計:経営改善や新規事業、人材育成の場に、越境経験者を意図的に関与させる
(note記事 7-2参照)
いろいろ書かれていますが、僕が注目するのは「経験者」「支援者」です。
最後に、「越境経験者を意図的に関与させる」とありますが、これに尽きる気がします。
先日、あるお客様と「越境」について雑談させていただいたのですが、その方も「越境」経験が豊富な方でした。
なんとなく、そうじゃないかなと思っていましたので、普段の言動や仕事の進め方に、「越境経験」が出るということなんでしょうね。
経験者を増やし、広げていくことで、仕事の方法も自然に変わっていくのだろうと思います。
顧客との共創、外部とのアライアンス、オープンイノベーションなど、「境目を超えて」仕事をする組織文化の有無は、結局のところ、メンバーの「越境経験」に依存するのだと、僕は考えています。
さすがに、掛け声だけで何とかなると思ってる人はいないと思いますが(笑)、成功事例、手法やノウハウを学べばよい、と思っている人は多いかもしれませんね。
個人的には、外部との連携の前に、まず、社内で普段から越境して仕事をしてもらい、境目を超えて仕事をするノウハウを、成果を出しながら身につけてもらうのが良い気がします。
企業内発明塾でも、開始当初は、以下の発言をよく聞きます。
「顧客を探すのは、営業の仕事だと思ってました」(技術者の方)
「知財の話は、知財部でやってもらいたい」(技術者の方)
「ビジネスモデルや、どう儲けるのかを考えるのは、事業部の仕事ですよね」(技術者の方)
企業内発明塾では、すべて、最終的に提案者に考えていただき、役員に提案していただきます。
知財部の方が、事業提案された例も、多数あります。
営業の方が、技術開発を含む、新規事業の提案をされたこともあります。
事業は総合格闘技なので、越境しないと実現しません。
「こういうことやりましょうよ!」と、旗を掲げて越境していただくのが、発明塾です。
僕がそうやって、毎日仕事をしてきたからです。
当然ですが、提案者の方には、提案の実現に最後まで責任を持っていただきます。
(僕には、それを命令する権限は一切ありませんので、常にそうお伝えしているというか、お願いしています)
その程度のことができずに、「オープンイノベーション」「アライアンス」「共創」とか言っても、無理じゃね、と思うのは、僕だけでしょうか(笑)。
普段は、「僕はここしかやりません」「ほかの部分は、誰かお願いします」「私の担当以外の部分は知りません」「自分ができることだけやります」と言っているわけですから、ノウハウもないし、そもそもマインドもない。
うまく行く理由がないですよね。
「越境」の本質は、「ブリッジ」すること、橋を架けること、「つなげること」なんですよね。
全体最適のために、異なるものをつなげられるか。
これが、意外に理解されていない気がします。
行ったり来たりすると、境目を超えて、異なるもの(組織)を、上手くつなぐコツと「信頼」が得られます。
僕が、企業内発明塾や月額顧問で、「ここと組めばいいじゃないですか(ただし、あれとこれは先に特許押さえておきましょう)」というのは、そういうことなんですよね(笑)。
どうでしょう?
ご意見、あるいは、ご経験談などを、お待ちしております!
楠浦 拝
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