この記事の内容
学校教育におけるAI活用について、近年、教科ごとの特性に合わせた活用の方法や新しいシステムなどが各国で検討されています。
そこで今回は地理×AI活用を探してみました。調べたところ、まだ論文の数は少ないのですが、一つ、かなり興味深いものがありました。
論文タイトルは「Engaging Students in Learning Geography as a Multidisciplinary Subject Through GeoAI(地理教育における地理空間人工知能(GeoAI)の活用:初等・中等教育の地理学習の新たな展望)」です。
著者が提案しているのが、GeoAI(地理空間人工知能)というツール。GeoAIを活用して小学校から高校までの地理教育に活用し、地理をリアルでダイナミックなものに変える手法について論じています。
GeoAIとは何か、具体的に地理学習のどのようなことに可能性があるのかご紹介します。
まず、著者は地理学習について「地理は自然環境と人間社会を結びつける学問である一方、従来の小学生〜高校生の教育では、抽象的で日常と結びつきにくいと感じられがちである」という課題を挙げています。
その現状に対し、GeoAIが実データ分析や現実世界の課題探究を通じて、地理をより身近で学際的な学問として学ばせる可能性を提示している、と述べています。
そのGeoAIとはどんなものでしょう。論文では以下のように書いています
「GeoAIとは、人工知能(AI)と地理情報科学(GIS)を組み合わせた技術である。地図や場所に関する複雑な課題を解決するために、コンピューターに地理学者に近い思考や分析を行わせることを目的としている」
補足すると、GISは衛星写真とか人口の分布、土地の高さといった場所に関するありとあらゆるデータを地図の上で重ねて分析する技術です。
ですので、簡単に言うと、AIとGISを合わせることで、これまで人間だけでは難しかった複雑な予測やパターンの発見が可能になるというものです。

図:GISイメージ図(ChatGPT5.2で生成)
これにより、例えば、衛星写真から自動的に建物の数を数えたり、過去の雨量データから将来の洪水リスクを予測したりすることができるようになります。
また、このGeoAIは、新しい技術に見えますが、実は長い歴史があり、1980年代のルールベースAIから始まり、生成AIの登場によって進化し、現在の形になっているものだ、と書いています。
では、GeoAIを授業に取り入れることで、地理の学習はどのような体験をもたらすのでしょう。著者は以下のように示しています。
少し付け加えると、例えば、パソコンのスライダーを動かして、もし海面が1m上昇したときに海岸線がどう変わるのか、2m上昇したらどうなるのか。氷河がどう溶けていくのか、といったシミュレーションを鮮やかな視覚情報として確認できる、ということです。
教科書のみだった抽象的な知識が「リアルな映像」として理解できるようになるんですね。
さらに、著者は効果的な実践方法として、プロジェクト型学習や、フィードバック、ゲーミフィケーション(ゲームの要素を取り入れて楽しさや達成感を学びに取り入れる)など生成AIが教育をさらにパーソナライズすると述べています。
つまり、教科書を読むだけの受動的な学びが、生徒主体になっていくということですね。
このような「体験」ができるGeoAI。現在、世界中の大学や研究機関で、すでにGeoAIを活用した教育が始まっているようです。
論文では以下の事例などが紹介されています。
最後に著者はGeoAIのまとめとして、
今後は生徒向けの簡略されたインターフェースの開発や、教師がGeoAIの使い方を学ぶ時間、AIの情報を鵜呑みにせず、批判的にチェックするなどの必要性があるが、GeoAIは、地理教育を「データを活用した、対話的で刺激的な学び」へと進化させる強力な力を持っていて、生徒たちは21世紀に必要なデータリテラシーや問題解決能力を身につけることができるものだ、と書いています。
以上が論文の内容です。
大学や教育機関で始まっているGeoAIを活用した教育について、成果など新しい情報に注目したいと思います。
個人的なことですが、私は子どもの頃、毎日のように地球儀を回しながら、教科書には出てこないような場所を見て、ここはどんな自然や環境でどんな生活があるのだろう、過去から移り変わりはどうなっているんだろうと想像を膨らませていました。
GeoAIは、世界中どこにでも行くことができて、何世代にもわたるような変化もクリック一つでわかる。地理の面白さを存分に発揮できるツールだと感じます。子どもの時に欲しかったです。
これは歴史学習などにも応用できそうですね。
GeoAIの活用で地理は「知る」だけでなく、生徒が主体となって地球規模のいろいろな課題に情熱をもって関わっていける教育へとなりそうですね。地理を暗記科目から、現実社会を読み解く学問へ変える新たなツールへ期待したいです。
◾️タイトル:Engaging Students in Learning Geography as a Multidisciplinary Subject Through GeoAI ◾️著者:Mr. Sandesh Ravindra Baviskar, Dr. Sudhakar Jagannath Borase ◾️発行:International Journal on Science and Technology ◾️発行日:2025.07.30◾️DOI:https://doi.org/g9vzd2
このコラムのまとめ
文:鈴木素子
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