3行まとめ
戦略的IT投資による収益構造の劇的な転換
システム関連コストの増加(143億円)を上回る手数料収益増(144億円)を実現し、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高の2,133億円(前期比34.2%増)を達成しました。
1,000万DL超のアプリ基盤と知財ポートフォリオの進化
国内銀行最大級となる1,098万ダウンロードのアプリ基盤を確立し、特許戦略をハードウェアからUI/UXやビジネスモデルの保護へシフトさせることで、競争優位性を強固にしています。
デジタルガレージとの提携による次世代決済の開拓
株式会社デジタルガレージを持分法適用関連会社化し、ステーブルコインの実店舗決済実証やB2B決済ソリューションなど、オープンイノベーション型の事業開発を加速させています。
この記事の内容
りそなホールディングス(以下、りそなHD)における2024年度(2025年3月期)の財務実績は、過去数年間にわたる技術投資と知的財産戦略が、企業の収益構造を根本から変革しつつあることを如実に示しています。親会社株主に帰属する当期純利益は2,133億円を記録し、前期比で34.2%という大幅な増益を達成しました 1。この数値は、単なる金利環境の好転という外部要因だけでなく、デジタルチャネルを通じた顧客接点の拡大と、それに伴うフィービジネス(役務取引等利益)の伸長という内部要因が強く寄与しています。特に、連結業務粗利益が6,916億円(前期比+10.2%)に達した背景には、スマートフォンアプリ「りそなグループアプリ」を起点とした金融サービスのクロスセルが機能している事実があります 2。
特筆すべきは、ITおよびシステム関連への投資が「コスト」ではなく「収益を生む資産」として機能し始めている点です。2024年度の営業経費は4,441億円となり、前期比で275億円増加していますが、その内訳を詳細に分析すると、機械化関連経費の増加(+143億円)が大きな割合を占めています 3。これは、デジタルトランスフォーメーション(DX)への戦略的な資源配分が行われている証左であり、同時にトップラインの伸びが経費の増加を吸収していることから、経費率(OHR)の改善にも寄与しています。システム投資が業務プロセスの自動化を促進し、有人店舗における事務負担を軽減させることで、行員を高付加価値なコンサルティング業務へシフトさせるという「リテールNo.1」戦略の財務的裏付けがここにあります。知財戦略の観点からは、アプリのUI/UXや決済プラットフォームに関する技術が、顧客の利便性を高め、結果としてロイヤルティ向上と手数料収入の増加という好循環(Flywheel Effect)を生み出していると言えます。
りそなHDが掲げる技術戦略の中核は、「顧客体験(CX)のデジタル化」と「決済インフラの次世代化」の二軸に集約されます。まず、顧客接点のデジタル化においては、「りそなグループアプリ」が圧倒的なプレゼンスを示しています。2025年9月末時点でのダウンロード数は1,098万件に達しており、これは日本の銀行アプリとしては最大級の規模です 4。特筆すべきは、このアプリが単なる残高照会ツールではなく、振込、資産運用、ローン申し込み、住所変更といったあらゆる銀行取引を完結できる「手のひらの銀行」として機能している点です。バージョンアップ履歴(例:Ver 4.13.0におけるマイナンバーカード連携による口座開設機能の追加 5)からは、UI/UXの改善と機能拡張が継続的に行われており、これが顧客の自己解決率を高め、店舗負荷の軽減に直結しています。
次に、決済プラットフォーム領域においては、株式会社デジタルガレージ(DG)との提携強化が最大のトピックです。2025年7月にDGを持分法適用関連会社化したことは、りそなHDが決済ビジネスを単なる付帯サービスから、中核的な収益の柱へと引き上げる意思決定を行ったことを意味します 6。この提携により、両社はB2B決済ソリューションの開発や、ステーブルコインの実店舗決済パイロット(2025年-2026年実施予定)など、ブロックチェーン技術を含む先端領域への取り組みを加速させています 7。また、生体認証技術においては、パナソニック コネクトやJCBと共同で「顔認証マルチチャネルプラットフォーム」の実証と実装を進めており、物理的なカードやデバイスに依存しない「手ぶら」での金融取引を実現するインフラ構築が進行中です 8。これらの技術領域は、相互に連携しながら、りそなHDが目指す「金融+(プラス)」の世界観を具現化するための技術的基盤となっています。
りそなHDの特許ポートフォリオを分析すると、その焦点が従来の「銀行勘定系システムの処理効率化」から、「顧客接点におけるユーザー体験(UX)」および「新たなビジネスモデルの保護」へと質的に変化していることが確認できます。公開されている特許情報によれば、近年出願・登録された特許には、「情報処理システム」「金融機関端末システム」「給与前払いシステム」といった名称が並びます 9。これらは、具体的なサービスの実装形態や、顧客が利用する際の操作フロー、さらには企業顧客向けの福利厚生サービスといったビジネスモデルそのものを権利化しようとする意図を反映しています。
特に、バンキングアプリのUI/UXに関する技術保護は、FinTech企業や異業種からの参入障壁を構築する上で極めて重要です。銀行アプリの使い勝手が顧客獲得の主要因となる中、直感的な操作性や画面遷移のロジックを知財として押さえることは、競争優位の維持に直結します。また、生体認証を用いた本人確認プロセスに関する特許は、セキュリティと利便性を両立させるためのコア技術であり、今後の「印鑑レス・通帳レス」化を推進する上での法的基盤となります。さらに、デジタルガレージとの提携深化に伴い、今後は決済処理、データ解析、ブロックチェーン応用技術に関する共同出願やライセンス活用が増加することが予想され、知財ポートフォリオはより「オープンイノベーション型」へと進化していく兆候が見られます。
日本の銀行業界における技術競争において、りそなHDはメガバンク(三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ)とは明確に異なるポジショニングを確立しています。メガバンクが数千億円規模の巨額なIT予算を投じ、グローバルなプラットフォーム構築や量子コンピュータ等の基礎研究を含む全方位的な技術開発を展開しているのに対し 10、りそなHDは「国内リテール」に資源を集中投下する戦略を採っています。りそなHDのシステム投資は年間数百億円規模ですが、その投資対効果(ROI)は非常に高く、特にアプリのダウンロード数やアクティブ率においてはメガバンクに引けを取りません。
りそなHDの技術的優位性は、「有人店舗網とデジタル基盤の高度な融合」にあります。ネット銀行が店舗を持たず、メガバンクが店舗の統廃合を進める中で、りそなHDは818の有人拠点を維持しつつ、それらをデジタル技術で「コンサルティング拠点」へと変革しています 12。このオムニチャネル戦略を支えるのが、店舗タブレットとアプリをシームレスに連携させるデータ基盤であり、これは他社が容易に模倣できない独自の強みです。一方で、課題としては、生成AIの基盤モデル開発や大規模なクラウドインフラの構築において、資金力で勝るメガバンクや外資系テックジャイアントへの依存度が高まるリスクが挙げられます。この点については、キンドリルジャパンや日本マイクロソフトとの戦略的パートナーシップを通じて、外部の最先端技術を効率的に取り込むエコシステム型のアプローチで補完を図っています 13。
りそなHDは、2025年度を最終年度とする現行の中期経営計画において、ITインフラの構造改革を完遂し、次なる成長フェーズへの跳躍を準備しています。R&Dおよびシステム投資のロードマップにおいて、2025年は極めて重要な転換点となります。具体的には、2025年4月より開始されるキンドリルジャパンとの新たな戦略的パートナーシップにより、メインフレームを含む基幹システムの運用体制が抜本的に見直されます 12。これにより、システムの安定稼働を維持しつつ、クラウドネイティブな開発環境への移行を加速させ、新サービスの市場投入期間(Time to Market)を短縮することが可能となります。
長期的には、2030年に向けて「金融デジタルプラットフォーム」の外部提供を拡大し、地域金融機関や一般事業会社に対する「Banking as a Service(BaaS)」プロバイダーとしての地位を確立する構想を描いています。また、デジタルガレージとの提携により設立されたCVCファンド「DGりそなベンチャーズ」を通じ、スタートアップへの投資(総額130億円規模)を継続することで、自社単独では開発困難な破壊的技術(Disruptive Technologies)へのアクセスを確保します 6。これらの投資活動を通じて、りそなHDは自己資本利益率(ROE)10%超の常態化と、フィー収益比率の向上を目指し、金利変動に左右されにくい強靭な収益構造を構築していく計画です 14。
りそなHDにおける技術開発(R&D)およびシステム投資は、過去の「公的資金注入からの再生」という文脈を脱し、明確な「成長ドライバー」としての位置づけへと変化しています。特に近年の投資動向は、単なる勘定系システムの更新に留まらず、顧客接点の革新と新規ビジネス創出のための戦略的支出が中心となっています。
以下の表は、公開されたIR資料(統合報告書、決算説明資料)に基づき、システム関連投資、経費、およびそれがもたらした財務的成果を時系列で整理したものです。
表1:りそなホールディングス システム投資・経費および関連指標の定量的推移
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会計年度 (Fiscal Year) |
システム関連投資・経費動向 (Fact Base) |
戦略的焦点 (Strategic Focus) |
連結業務粗利益 |
連結実質業務純益 |
備考・主要イベント |
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FY2022 |
ITインフラ投資: 3カ年累計で約300億円規模 (実績) |
関西みらいFGとのシステム統合、アプリ基盤の強化 |
6,275億円 |
1,604億円 |
グループアプリのUI/UX刷新、完全子会社化に伴うシステム一本化プロジェクト始動 12。 |
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FY2023 |
システム経費: 前年比微増 (戦略投資枠の活用) |
顔認証プラットフォーム実証、クラウドシフト準備 |
6,275億円 |
1,757億円 |
パナソニック・JCBとの顔認証決済実証実験開始。デジタルガレージとの資本業務提携強化 8。 |
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FY2024 |
営業経費全体: 4,441億円 (うち機械化関連経費増 +143億円) |
DX投資比率の引き上げ、決済PFへの出資 |
6,916億円 |
2,133億円 |
過去最高益更新。アプリ1,000万DL達成。デジタルガレージ持分法適用化に向けた追加出資決定 1。 |
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FY2025 (計画) |
年間IT投資: 290億円 (CFO資料) / DX配分80% |
インフラ刷新完了、生成AI全社展開 |
目標: 2,400億円 |
- |
キンドリルジャパンとの新パートナーシップ開始。ステーブルコイン実証実験。自己株式取得300億円枠設定 6。 |
【詳細解説:投資対効果の分析】
2024年度(2025年3月期)の決算において、営業経費が前期比275億円増加の4,441億円となったことは、表面的なコスト増に見えますが、その中身は質の高い「前向きな投資」です。内訳として「機械化関連経費」が143億円増加しており、これはサーバー能力の増強、クラウド利用料、および新規アプリ開発にかかる費用が含まれています 3。この投資の結果、連結業務粗利益は前期比10.2%増の6,916億円に達しており、特にシステム投資と相関の高い「フィー収益」が144億円増加(2,279億円)しています 2。つまり、143億円のシステムコスト増に対し、144億円以上の手数料収入増を実現しており、投資が即座に収益に転換される効率的な構造が構築されています。
また、2025年度のIT投資計画として「年間290億円」という数値がCFOメッセージで示されています(前期比+40億円) 17。さらに、CIOメッセージでは「システム関連投資予算の80%をDX関連プロジェクトに配分する」と明言されており 13、これは既存システムの維持管理(ランニングコスト)を徹底的に圧縮し、浮いた原資を新規開発(イノベーション)に回すという「攻めのITガバナンス」が機能していることを証明しています。
りそなHDの経営陣は、技術を「経営課題」として捉え、自らの言葉でその重要性を語っています。過去の「りそなショック」からの再生を成し遂げた同社にとって、技術は効率化の道具であると同時に、新たな価値創造の源泉です。
南 昌宏 グループCEO(2025年 統合報告書 / CEOメッセージ)
「銀行界はいま、金融政策の転換、金融と非金融の融合、業界の垣根の融解やテクノロジーの急速な進化などによって、新たな競争環境に直面しています。(中略)だからこそ、変化を新たな成長機会と捉え、常に学び続けること、いち早く変化に適応していくことが唯一の勝ち筋だと考えています。グループの全役職員が、もう一度グロースマインドを呼び起こし、固定観念を捨てて、変化を乗り越えていく時であると考えています。」
「リアルとデジタルが高次元で融合する次世代型モデルへの転換を着実に図りながら、同時に、プロセス改革や社内DXを加速させることで、顧客体験の革新と生産性の飛躍的な向上の両立を目指します。」18
このメッセージからは、CEO自身が「テクノロジーの進化」を最大の外部環境変化として認識し、それに対する「適応」こそが生存戦略であると定義していることが読み取れます。「リアルとデジタルの融合」というフレーズは、りそなHDの強みである店舗網とアプリを対立させず、補完関係に置くという戦略的意図を示しています。
CIOメッセージ(2025年 統合報告書)
「『Resona NEXT』と題した第2次システム構造改革の最終年度を迎え、私たちは『汎用化』『オープン化』『スリム化』を着実に推進しています。(中略)システム関連投資予算の80%をDX関連プロジェクトに配分し、中長期的なサービス開発のスピードアップを戦略的に支援するITインフラの高度化を進めています。(中略)さらに、全社員の標準ツールとして生成AIを導入しました。これにより、業務効率化だけでなく、新たなサービスの創出も図っていきます。」13
CIOの発言はより具体的です。「投資の80%をDXへ」という数値目標は、組織全体に対する強力なメッセージとなっています。また、「生成AIの全社導入」についての言及は、先端技術の採用において、一部の専門部署だけでなく、全従業員(約3万人)を巻き込んだボトムアップ型のイノベーションを志向していることを示唆しています。
りそなHDの知的財産および技術ポートフォリオは、銀行という枠組みを超え、情報産業としての側面を強めています。ここでは、重点技術領域、特許分析、およびサービス実装の3つの観点からその全貌を記述します。
りそなHDが資源を集中している技術領域は、顧客とのインターフェース(接点)と、それを支える認証・決済インフラです。
表2:重点技術領域と主要プロジェクトの実装状況詳細
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重点領域 |
主要プロジェクト・製品 |
技術的詳細・実装状況・特許性 |
パートナーシップ |
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モバイルバンキング (Mobile Banking) |
りそなグループアプリ (Resona Group App) |
[概要] 2025年9月末時点で1,098万DLを達成。振込、資産運用、ローン等、ほぼ全ての銀行取引をスマホで完結。
[技術的特徴] マイナンバーカード読取によるeKYC機能、直感的なUI/UX、他行へのOEM提供(プラットフォーム化)。
[ビジネス貢献] 店舗来店数の削減とデジタル完結率の向上によるコスト削減。フィー収益のチャネル化。 |
NTTデータ (共同開発) / フラー (UI/UX支援) |
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生体認証・ID (Biometrics & Identity) |
顔認証マルチチャネルプラットフォーム |
[概要] 手ぶらでの決済・本人確認を実現する認証基盤。
[技術的特徴] 顔画像データと決済情報を紐付け、カードやスマホすら不要にする。1:N認証の精度向上と高速化技術。
[実装] りそなグループ各社の入退室管理、営業店での印鑑レス取引、提携施設での決済実証。 |
Panasonic Connect / JCB / DNP |
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次世代決済・ブロックチェーン (Web3 Payment) |
ステーブルコイン実証 (Stablecoin Pilot) |
[概要] 法定通貨担保型ステーブルコインを用いた店舗決済の実証実験(2025-2026)。
[技術的特徴] ブロックチェーン上の移転記録と銀行預金の連動。即時決済と手数料低減。
[ビジネス貢献] 加盟店手数料の削減によるアクワイアリング事業の競争力強化。B2B送金の効率化。 |
Digital Garage (Crypto Garage) / JCB |
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業務効率化・AI (BPR & Generative AI) |
生成AI全社導入基盤 |
[概要] 全従業員(約3万人)が利用可能なセキュアな生成AI環境。
[技術的特徴] Azure OpenAI Serviceを活用した閉域網でのAI利用。社内ドキュメント検索(RAG)との連携。
[実装] 稟議書作成支援、規定照会、プログラミング補助、マーケティング案の作成。 |
Microsoft Japan |
【詳細解説】
りそなグループアプリの成功は、りそなHDの技術戦略の最大の成果です。1,000万ダウンロードという数字は、日本の生産年齢人口の約1割強に相当し、メガバンクに次ぐ規模です。特筆すべきは、このアプリが単なる自行顧客向けツールに留まらず、地銀などへシステムごと提供する「BaaS(Banking as a Service)」の商材となっている点です。関西みらい銀行やみなと銀行などグループ内銀行への展開はもちろん、グループ外への提供(198万DL分)も進んでおり、知財としてのアプリ基盤が外販収益を生んでいます 4。
生体認証技術においては、パナソニックの顔認証技術とJCBの決済網を組み合わせたプラットフォーム構想が進行しています。これは、従来「カード」という物理媒体に依存していた銀行・決済業務を、「生体情報(顔)」というデジタルIDに置き換える試みです。りそな銀行は、このプラットフォームにおける「本人確認(KYC)」と「資金移動」の役割を担い、そのプロセスにおける特許出願も行っています 8。
特許データベースおよび公開情報に基づき、りそなHD(および主要子会社のりそな銀行)の知的財産活動を分析します。近年の出願傾向は、ハードウェア(ATM筐体等)から、ソフトウェア(処理フロー、UI、ビジネスモデル)へと完全にシフトしています。
表3:主要な公開特許・出願リストと戦略的意図(2018年〜2025年)
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公開番号 / 出願番号 |
発明の名称 (Title) |
分類 (Category) |
戦略的意図とビジネス実装 |
ステータス |
|
JP2023085048A |
情報処理システム、情報処理装置、方法、プログラム |
FinTech / UI |
[意図] 顧客の金融行動データを解析し、最適なタイミングで商品をレコメンドするロジック、あるいはアプリ上の画面遷移に関する特許。
[実装] りそなグループアプリの「アドバイス機能」やマーケティングオートメーションに活用。 |
公開中 (2023.06) |
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JP2022073131A |
金融機関端末システム |
Branch Tech / OMO |
[意図] 営業店で使用するタブレット端末等において、顧客操作と行員操作をシームレスに連携させるシステム。
[実装] 「りそなタブレット」による店頭ペーパーレス取引の中核技術。事務ミス削減と接客時間創出。 |
公開中 (2022.05) |
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JP2021114162A |
給与前払いシステムおよびその制御方法 |
HR Tech / B2B2E |
[意図] 企業の従業員が、働いた分の給与を給料日前に受け取れる仕組み。
[実装] 法人顧客向け福利厚生ソリューションとして提供。融資収益だけでなく、決済・送金手数料の獲得を狙う。 |
公開中 (2021.08) |
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JP2018173736A |
受付業務支援システム |
Operation / CX |
[意図] 来店予約、用件の事前入力、当日の受付フローを最適化するシステム。
[実装] 全店導入されている「スマート受付」システム。待ち時間短縮によるCX向上と、効率的な人員配置を実現。 |
登録済み |
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JP2018081342A |
マネープール装置、ネットショップ決済方法 |
E-commerce / Payment |
[意図] ECサイト等における資金管理、プール機能に関する決済特許。
[実装] 決済代行子会社(りそな決済サービス)のソリューション基盤。 |
公開中 |
【分析:知財による競争の壁】
りそなHDの特許戦略の特徴は、「オペレーションの知財化」にあります。例えば、「金融機関端末システム」の特許は、りそな独自の「行員が顧客の横に座って一緒にタブレットを操作する」という接客スタイルをシステム的に支えるものであり、他行が同様のスタイルを模倣しようとした際の技術的な障壁となり得ます。また、「給与前払いシステム」のようなビジネスモデル特許は、FinTechスタートアップが先行しがちな領域において、銀行としての信頼性と法的権利をセットにして市場を防御・開拓するための武器として機能しています 9。
また、株式会社メルペイなどが決済UIに関する特許を出願している事例 23 を踏まえ、りそなHDもアプリのUI/UXに関する権利保護を強化しており、デジタル接点における「使いやすさ」を法的資産として蓄積しています。
知財と技術は、りそなHDのサービス収益構造を「金利依存」から「フィービジネス」へと転換させる原動力となっています。
りそなHDは、自前主義に固執せず、外部の優れた技術を持つ企業と資本関係を含む深い提携を結ぶことで、R&Dのスピードと質を飛躍させています。
表4:主要な戦略的提携・M&A・出資案件(2023年〜2025年)
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提携先 / 出資先 |
提携形態 |
発表・実行時期 |
戦略的狙い・獲得技術・シナジー |
|
株式会社デジタルガレージ (DG) |
持分法適用関連会社化 (資本業務提携強化) |
2025年7月 |
[最大かつ最重要の提携]
・決済: DGの決済代行技術とりそなの顧客基盤(法人50万社)を統合。りそな決済サービスへのDG出資受け入れ。
・次世代技術: ブロックチェーン、ステーブルコインの共同実証。
・投資: CVCファンドの共同運営によるスタートアップ発掘。 |
|
Kyndryl Japan (キンドリル) |
戦略的パートナーシップ |
2025年4月 |
****
メインフレーム運用の最適化とクラウド移行の並走。りそなHDのシステム子会社(DACS等)との人材交流と技術移転。 |
|
日本マイクロソフト |
戦略的枠組み契約 |
2025年5月 |
[生成AI・クラウド]
Azure OpenAI Serviceの全社導入。行員のデジタルリスキリング支援。クラウドネイティブなアプリ開発基盤の構築。 |
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株式会社ジェーシービー (JCB) |
共同プロジェクト |
2025年1月 |
****
DG、JCB、りそなの3社によるステーブルコイン店舗決済の実証実験。既存のクレジットカード網と次世代決済のハイブリッド化。 |
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フラー株式会社 |
投資先 (IPO) |
2025年7月 |
[アプリ開発]
りそなキャピタル等が出資。りそなグループアプリのUI/UX改善において重要なパートナーシップを持つ(推定)。 |
|
株式会社トヨコー |
投資先 (IPO) |
2025年3月 |
[インフラメンテ]
レーザー技術によるインフラ補修。技術系スタートアップへの投資実績として。 |
【詳細解説:デジタルガレージとのアライアンス】
2025年7月に完了したデジタルガレージ(DG)の持分法適用関連会社化は、りそなHDの技術戦略における「分水嶺」です。これまで銀行が苦手としてきた「EC決済」「アジャイル開発」「先端技術の目利き」を、DGというパートナーを内部に取り込むことで一挙に解決しようとしています。具体的には、りそなHDがDG株を保有するだけでなく、りそなHDの子会社である「りそな決済サービス(RKS)」にDGが出資することで、RKSを両社のジョイントベンチャー的な位置づけに変革しました。これにより、DGが持つ「DG FinTech Shift」戦略とりそなの「リテールNo.1」戦略が融合し、B2B決済やステーブルコインといった新規領域での開発が加速しています 6。
CVC機能「DGりそなベンチャーズ」:
りそなHDは単独のCVC機能に加え、DGと共同で「DGりそなベンチャーズ(DG Resona Ventures)」を運営しています。このファンドは、FinTechのみならず、AI、不動産テック、ヘルスケアなど幅広い領域のスタートアップに投資を行っており、銀行本体との協業(オープンイノベーション)のハブとして機能しています。投資先企業の技術を銀行サービスに組み込むことで、自社開発のリスクを抑えながらサービスラインナップを拡充しています 6。
金融機関としての信頼性を担保するため、りそなHDはサイバーセキュリティに対して巨額の投資を行っています。
りそなHDの独自性は、メガバンクと比較した際の「リテール特化」と「国内集中」にあります。以下の表で、主要競合との戦略的差異を比較します。
表5:主要競合との技術・財務指標比較(2024年度実績/2025年度計画ベース)
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指標 |
りそなホールディングス (Resona HD) |
三菱UFJフィナンシャル・グループ (MUFG) |
三井住友フィナンシャルグループ (SMFG) |
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連結純利益 |
2,133億円 (FY2024実績) |
1兆8,629億円 (FY2024実績) |
1兆1,600億円規模 (FY2024予想) |
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ROE |
7.8% (FY2024) -> 8.4% (FY2025計画) |
9.9% (FY2024) |
約8% (目標) |
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IT/DX投資規模 |
年間 約300億円 (システム投資) |
年間 数千億円 (IT関連費用) |
年間 8,000億円 (IT投資枠) |
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主要アプリ |
りそなグループアプリ
(1,098万DL)
特徴: フルバンキング、シンプル、BaaS展開 |
MUFGアプリ
特徴: グローバル対応、多機能 |
Olive (三井住友銀行)
特徴: 決済・ポイント統合、フレキシブルペイ |
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技術戦略の焦点 |
国内リテールDX
有人店舗とアプリの融合 (OMO)、中小企業DX、決済PFの外販。 |
グローバルプラットフォーム
海外銀行買収、AIの大規模活用、クロスボーダー決済。 |
経済圏構築
Vポイント経済圏、個人向け総合金融サービス (Super App)。 |
|
提携パートナー |
Digital Garage, Kyndryl, IBM, JCB |
Morgan Stanley, Grab (Asia) |
NEC, SBI (証券), TSUBASAアライアンス |
【比較分析:りそなの勝ち筋】
対SMFG (Olive): SMFGが「Olive」によってクレジットカード、銀行口座、ポイント(Vポイント)を統合した巨大な経済圏を構築しようとしているのに対し、りそなHDは「地域密着」と「対面コンサルティング」をデジタルの力で強化する方向に舵を切っています。りそなHDのアプリは、決済機能よりも「銀行窓口の代替」としての機能(振込、手続き、相談)に特化しており、店舗網を持つ地銀としての強みを最大限に活かす設計となっています 11。
対MUFG: MUFGは圧倒的な資金力でグローバルなシステム統合やAIの基礎研究を行っていますが、りそなHDはその規模を追わず、「必要な技術はパートナーから調達する」という割り切った戦略を採っています。キンドリルやデジタルガレージとの提携は、自前主義の限界を突破し、メガバンク並みの技術水準を低コストで実現するための現実的な解です 10。
りそなHDが公式に発表している、あるいはIR資料から読み取れる今後のマイルストーンは以下の通りです。
本調査において、以下の事項については具体的な数値や詳細が確認できませんでした。
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