3行まとめ
食×薬の融合研究と独自指標「明治ROESG」で知財・技術経営を推進
明治ホールディングスは、乳・カカオ・微生物・発酵・バイオテクノロジーの基礎研究を基盤に、食品と医薬品の知見を融合した機能横断的な知財マネジメントを競争優位の源泉と位置づけている。ROEとESGを統合した独自KPI「明治ROESG」を経営の最上位指標に据え、財務成果と社会課題解決の両立を図る。
研究開発費388億円を投入し、連結ROIC目標10%達成へ資本効率を強化
2024年度の研究開発費は388億円。2026年3月期Q3累計では売上高8,823億円(前年同期比+0.8%)、営業利益700億円(同+5.4%)を計上し、中期経営計画で掲げる連結ROIC 10%水準の達成に向けてWACCスプレッドの拡大を推進している。
mRNAワクチン・抗菌薬原薬の国産化など、感染症領域で知財の事業実装が加速
医薬品セグメントでは次世代mRNAワクチン「コスタイベ」や5種混合ワクチン「クイントバック」を上市。2025年12月には岐阜工場で抗菌薬原薬の国内生産を開始し、経済安全保障に対応した供給体制を構築。食品セグメントでも機能性表示食品「チョコレート効果Wプラス」や腸活ソリューション開発など、健康価値の事業実装が進む。
この記事の内容
観点1:最新の経営体制および知財・技術ガバナンスの構造的変化 As-of 2026/02/21時点において、明治ホールディングス株式会社における経営体制および技術・知財ガバナンスの統括構造は、複数の一次情報(法定開示書類および公式IRページ)を通じて確認される。2026年2月12日に公表された『2026年3月期 第3四半期 決算短信〔日本基準〕(連結)』の表紙および同社の公式役員紹介ページにおいて、代表取締役社長CEOは松田克也であることが明示されている。これは、2024年11月11日に提出された過去の開示資料である『2025年3月期 第2四半期(中間期)決算短信』において代表取締役社長CEOの氏名が川村和夫と記載されていた事実と比較して、経営トップの役職者に変更が生じていることを示す一次情報上の不一致(更新)である。事業執行および技術開発の実装体制に関しては、医薬品セグメントの事業執行を統括する取締役執行役員COOに永里敏秋、食品セグメントの事業執行を統括する取締役執行役員COOに八尾文二郎がそれぞれ就任しており、事業ドメインごとの専門性を有するトップマネジメントが配置されている。さらに、グループ全体の経営資源配分や専門戦略を担う役員として、デジタルテクノロジー戦略を統括する取締役副社長CDOに古田純、財務戦略および経営管理を統括する取締役専務執行役員CFOに菱沼純、サステナビリティに関する戦略と活動を統括する常務執行役員CSOに松岡伸次、人財戦略および人財マネジメントを統括する執行役員CHROに関根利泰が任命されている。知的財産に関するガバナンス方針について、統合報告書2025においては、食と薬の知見が融合された機能横断的な研究開発力と、それに伴う知的財産マネジメントを同社独自の競争優位性の源泉と位置づけている。この体制により、基礎研究から製品化、製造技術に至るまでの技術資本の蓄積が経営の最上位指標の達成に向けた基盤として機能することが方針として示されている1。
観点2:財務・資本効率および研究開発に対する投資実績の実態 明治ホールディングスの技術経営を支える財務基盤と投資の実態は、2026年3月期第3四半期の最新決算および統合報告書の開示から詳細に把握される。2026年2月12日発表の決算短信によれば、2026年3月期第3四半期(累計期間:2025年4月1日~2025年12月31日)の連結経営成績実績において、売上高は882,327百万円(=8,823.27億円)で対前年同四半期増減率0.8%増、営業利益は70,063百万円(=700.63億円)で同5.4%増、経常利益は72,404百万円(=724.04億円)で同11.3%増を記録した。一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益は38,819百万円(=388.19億円)となり、同11.0%減となっている。財政状態実績(2025年12月31日時点)については、総資産1,305,823百万円(=1兆3,058.23億円)、純資産809,441百万円(=8,094.41億円)、自己資本比率58.5%である。研究開発への資本投下実績として、統合報告書2025の価値創造プロセスにおいて、知的資本に対するインプットとして2024年度実績区分で「研究開発費」の費目に38,800百万円(=388.00億円)が投入されたことが明示されている。中長期的な資本効率のKPIとして、同社は「2026中期経営計画」において資本収益性の向上を重要課題(マテリアリティ)に掲げ、将来的には連結ROIC(投下資本利益率)10%水準の達成を目標としている。統合報告書に示された過去の連結ROIC実績は、8.4%(投下資本8,011億円、調整後NOPLAT673億円)、6.3%(投下資本8,229億円、調整後NOPLAT516億円)、6.2%(投下資本8,223億円、調整後NOPLAT511億円)、6.8%(投下資本8,087億円、調整後NOPLAT553億円)と推移しており、WACC(加重平均資本コスト)5%とのスプレッドを拡大する方針が明確に描かれている1。
観点3:イノベーションと独自指標「明治ROESG」に基づく価値創造 明治グループは、中長期的な企業価値向上を実現するための独自の経営指標として「明治ROESG」を最上位のKPIとして設定し、これを技術開発および知的財産戦略と連動させている。統合報告書2025において示されているグループ理念では、「『おいしさ・楽しさ』の世界を拡げ、『健康・安心』への期待に応えてゆくこと」を使命として掲げている。この理念を実現するための提供価値のコンセプトが「CURE(なおす)」「CARE(まもる)」「SHARE(わかちあう)」である。CUREおよびCAREは、赤ちゃんからお年寄りまであらゆる世代の人々に対してこころとからだに良い変化を起こすスイッチを入れ、一人一人を長くサポートすることで健やかで幸せな笑顔にすることを意味し、SHAREはその笑顔を周囲の大切な人たちへ伝播させることと定義されている。これらを通じて「meijiらしい健康価値」をすべてのステークホルダーに提供することが目指されている。この理念に基づくマテリアリティ(重要課題)として、資本収益性の向上、事業ポートフォリオ変革、既存事業の収益力向上といった財務的課題に加え、健康な食生活への貢献、新興・再興感染症の脅威への対応、多様な人財の成長と活躍といった非財務的(ESG)課題が列挙されている。技術開発や知的財産の管理といったイノベーションの創出は、これら財務指標(ROE)と非財務指標(ESG)の統合スコアであるROESGを高めるための価値創造ロジックツリーの中核を担う方針として位置づけられており、持続可能な社会への貢献と企業収益の拡大を両立させる仕組みが構築されている2。
観点4:食品セグメントにおける基礎研究の蓄積と新市場創出の事業実装 食品セグメントにおける知財戦略および技術開発は、同社が長期にわたって蓄積してきた特定の要素技術を基盤として事業実装に至っている。統合報告書2025によれば、乳、カカオ、微生物、発酵、バイオテクノロジーに関する基礎研究の知見が同社の競争力の中核であり、これらの知見が製品化技術や製造技術へと応用されている。具体的な研究成果として、乳酸菌やカカオが有する健康価値に関する学術データや論文が発表されており、これらの科学的根拠(エビデンス)を獲得した知見が製品の特長として活用されている。事業化の実績として、機能性表示食品「チョコレート効果Wプラス」が市場に提供され、既存製品の付加価値向上と新市場の牽引が図られている。さらに、現在進行中の技術開発領域として、カカオセラミドを美容サポート成分として活用する研究や、個人の腸内環境のタイプに合わせた腸活ソリューションの開発、デジタル技術を活用した育児サポートサービスの構築が示されており、食品の枠を超えた健康ソリューションビジネスへの展開が進められている。これらの製品・サービスの実装を支える生産基盤として、市乳の製造を担う戸田工場(埼玉県)や、流動食および栄養食品の製造を担う関西栄養食工場(大阪府)が稼働しており、基礎研究拠点である明治イノベーションセンター(東京都八王子市)で創出された技術を安定的に市場へ供給する体制が確立されている1。
観点5:医薬品セグメントにおける感染症対策研究と生産体制の自立化 医薬品セグメントにおいては、感染症領域における研究開発と、経済安全保障を見据えた国内生産体制の構築が重点的に推進されている。2026年2月12日に公表された決算補足情報によれば、抗菌薬原薬の国内生産体制の構築が課題として設定されており、その解決策として2025年12月より岐阜工場において抗菌薬原薬の生産が開始されたことが稼働実績として報告されている。ワクチン領域におけるイノベーションの実装として、新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチン「コスタイベ」の2人用バイアル製剤が上市された実績が示されている。また、統合報告書2025によれば、2024年に5種混合ワクチン「クイントバック」が市場に導入されており、予防(ワクチン)から治療(抗菌薬)に至る包括的な感染症ポートフォリオの強化が図られている。未充足医療ニーズに対する新規開発案件としては、薬剤耐性(AMR)対策に貢献する新規β-ラクタマーゼ阻害剤「OP0595(ナキュバクタム)」の開発や、中枢神経系領域への貢献を目的とした不眠症治療薬の開発が進行中である。これらの研究開発を推進する体制として、Meiji Seika ファルマ株式会社およびKMバイオロジクス株式会社の傘下に、製薬研究所、新木場ラボ、ウェルネスサイエンスラボ、菊池研究所といった専門施設群が整備されており、麻布大学との産学連携によるAMR対策研究など、オープンイノベーションを通じた知財の創出と蓄積が図られている1。
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案件名 |
Announcement |
Effective(Event) |
Completion |
Start |
状態ラベル |
根拠 |
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5種混合ワクチン「クイントバック」導入 |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
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2024年 |
稼働/提供開始 |
2 |
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岐阜工場における抗菌薬原薬の生産 |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
2025年12月 |
稼働/提供開始 |
1 |
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次世代mRNAワクチン「コスタイベ」2人用バイアル製剤の上市 |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
稼働/提供開始 |
1 |
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新規β-ラクタマーゼ阻害剤「OP0595(ナキュバクタム)」の開発 |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
計画/方針 |
1 |
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不眠症治療薬の開発 |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
計画/方針 |
1 |
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機能性表示食品「チョコレート効果Wプラス」の市場導入 |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
調査範囲内では確認できず |
稼働/提供開始 |
2 |
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センター名(公式表記) |
根拠ページ名 |
URL |
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明治イノベーションセンター |
国内の事業所・グループ会社 |
https://www.meiji.co.jp/corporate/recruit/new-graduate/business/location/ |
※公式ページ側で施設数の全体数が明示されていないため、Gate-10のリスト整合ルールに基づき施設総数は断定せず、公式ページで紹介されている施設の列挙のみを行っている。
As-of 2026/02/21時点における明治ホールディングス株式会社の経営統括体制は、複数の公式開示文書によって証明される。2026年2月12日に公表された『2026年3月期 第3四半期 決算短信』の表紙において、代表取締役社長CEOの氏名は松田克也であると記載されている。また、問い合わせ先責任者としてIR部長の田中正司が記載されている。一方、過去の法定開示である2024年11月11日公表の『2025年3月期 第2四半期(中間期)決算短信』においては、代表取締役社長CEOの氏名が川村和夫と記載されていた。このことから、発行日の異なる一次情報間で代表取締役社長CEOの氏名に不一致が存在しており、役職者の変更という更新の事実が確認される。経営体制の全体像について、公式の役員紹介ページには、取締役(代表取締役および執行役員兼務を含む)と執行役員の一覧が明示されている1。
事業別の技術および執行ガバナンス体制として、医薬品セグメントの事業執行を統括する取締役執行役員COOに永里敏秋、食品セグメントの事業執行を統括する取締役執行役員COOに八尾文二郎が任命されている。企業価値創造を牽引する全社的な機能別戦略を担う役員として、グループのデジタルテクノロジー戦略を統括する取締役副社長CDOに古田純、グループの財務戦略および経営管理を統括する取締役専務執行役員CFOに菱沼純が就任している。さらに、グループのサステナビリティに関する戦略と活動を統括する常務執行役員CSOに松岡伸次、グループの人財戦略および人財マネジメントを統括する執行役員CHROに関根利泰が配置され、その他執行役員として古賀猛文、河端恵子、山縣洋一郎、島田勇人が選任されている。コーポレート・ガバナンスの監督機能を担う体制として、社外取締役には松村眞理子、河田正也、久保山路子、ピーター D. ピーダーセンが就任し、監査役として常勤監査役の田巻正順および渡辺康、社外監査役の安藤まことおよび小松正和が選任されている4。
統合報告書2025において、同社はコーポレート・ガバナンスの強化をマテリアリティ(重要課題)の一つとして掲げており、これを通じてリスク低減と中長期的な利益創出を図る方針を示している。知的財産に関するガバナンス方針としては、食と薬の知見が融合された研究開発力と、それに伴う機能横断的な知的財産マネジメントを同社ならではの競争優位性の源泉と位置づけている。このガバナンス構造のもとで、乳、カカオ、微生物、発酵、バイオテクノロジー、創薬に関する基礎研究の蓄積が適切に管理・運用され、新たな市場創出を実現する「meijiの強み」として機能することが方針として明記されている2。
明治ホールディングスの研究開発活動を支える財務基盤と投資の実態は、直近の決算短信および統合報告書において詳細な数値とともに開示されている。2026年2月12日発表の『2026年3月期 第3四半期 決算短信』における連結経営成績(累計期間:2025年4月1日~2025年12月31日)の実績として、売上高は882,327百万円(=8,823.27億円)で対前年同四半期比0.8%増、営業利益は70,063百万円(=700.63億円)で同5.4%増、経常利益は72,404百万円(=724.04億円)で同11.3%増となった。一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益の実績は38,819百万円(=388.19億円)であり、対前年同四半期比で11.0%減となっている。包括利益の実績は56,172百万円(=561.72億円)で対前年同四半期比10.0%増である。1株当たり四半期純利益は143円24銭の実績が示されている1。
同決算短信に記載された2025年12月31日時点の連結財政状態実績によれば、総資産は1,305,823百万円(=1兆3,058.23億円)、純資産は809,441百万円(=8,094.41億円)、自己資本は763,644百万円(=7,636.44億円)であり、自己資本比率は58.5%の実績である。1株当たり純資産は2,816円81銭と報告されている。株主還元に関する配当の状況については、2025年3月期の年間配当金実績が第2四半期末50円00銭、期末50円00銭の合計100円00銭であった。これに対し、2026年3月期の配当は、第2四半期末の実績が52円50銭、期末の配当予想が52円50銭であり、年間配当金予想の合計として105円00銭が掲げられている。また、2026年3月期の通期連結業績予想として、売上高1,177,000百万円(=1兆1,770億円)、営業利益91,000百万円(=910億円)、経常利益87,500百万円(=875億円)、親会社株主に帰属する当期純利益54,000百万円(=540億円)が計画値として示されている1。
研究開発にかかわる資本投入の実績について、統合報告書2025の「価値創造ロジックツリー」インプット指標に開示がある。2024年度実績として、知的資本の区分において「研究開発費」の費目で38,800百万円(=388.00億円)が投資された事実が明記されている。資本収益性の向上に関する中長期的な目標として、同社は「2026中期経営計画」において、将来的には連結ROIC(投下資本利益率)10%水準の達成を目標として掲げている。実績の推移として、過去の連結ROICは8.4%(投下資本8,011億円、調整後NOPLAT673億円)、6.3%(投下資本8,229億円、調整後NOPLAT516億円)、6.2%(投下資本8,223億円、調整後NOPLAT511億円)、6.8%(投下資本8,087億円、調整後NOPLAT553億円)、7.2%といった数値が図示されており、WACC(加重平均資本コスト)5%とのスプレッドを着実に拡大する方針が示されている5。
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財務指標・投資実績区分 |
期間/時点 |
数値 |
単位 |
区分 |
出典資料名/項目 |
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売上高 |
2026年3月期第3四半期(累計) |
882,327 |
百万円 |
実績 |
2026年3月期 第3四半期 決算短信 / 連結経営成績 |
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営業利益 |
2026年3月期第3四半期(累計) |
70,063 |
百万円 |
実績 |
2026年3月期 第3四半期 決算短信 / 連結経営成績 |
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経常利益 |
2026年3月期第3四半期(累計) |
72,404 |
百万円 |
実績 |
2026年3月期 第3四半期 決算短信 / 連結経営成績 |
|
親会社株主に帰属する四半期純利益 |
2026年3月期第3四半期(累計) |
38,819 |
百万円 |
実績 |
2026年3月期 第3四半期 決算短信 / 連結経営成績 |
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総資産 |
2025年12月31日時点 |
1,305,823 |
百万円 |
実績 |
2026年3月期 第3四半期 決算短信 / 連結財政状態 |
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自己資本比率 |
2025年12月31日時点 |
58.5 |
% |
実績 |
2026年3月期 第3四半期 決算短信 / 連結財政状態 |
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研究開発費 |
2024年度 |
38,800(388億円表記) |
億円 |
実績 |
統合報告書2025 / 価値創造ロジックツリー |
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連結ROIC |
将来的な目標(時期未定) |
10 |
%水準 |
目標 |
統合報告書2025 / 2026中期経営計画 |
明治グループは、中長期的な企業価値の向上を測る独自の経営最上位KPIとして、ROE(自己資本利益率)とESG(環境・社会・ガバナンス)の要素を組み合わせた「明治ROESG」を設定している。統合報告書2025に記載されたグループ理念において、同社の使命は「『おいしさ・楽しさ』の世界を拡げ、『健康・安心』への期待に応えてゆくこと」と明文化されている。そして、「『お客さまの気持ち』に寄り添い、日々の『生活充実』に貢献すること」を願いとして掲げ、「食と健康」のプロフェッショナルとして常に一歩先を行く価値を創り続けることが宣誓されている5。
同社が提供を目指す価値の中核概念として、「CURE(なおす)」「CARE(まもる)」「SHARE(わかちあう)」が定義されている。一次情報によれば、CURE・CAREとは、赤ちゃんからお年寄りまであらゆる世代の人々に対して、こころとからだに良い変化を起こすスイッチをたくさん入れ、一人一人により多く、より長くサポートしていくことで健やかで幸せな笑顔にすることである。SHAREとは、その笑顔を周囲にいる大切な人たちにまで広く伝播させていくことであり、これらを通じて一人の健康をみんなの笑顔につなげていくことが「meijiらしい健康価値」であると規定されている。この健康価値をすべてのステークホルダーに対してお届けすることが、同社が目指す姿として方針に示されている2。
この理念に基づき、同社は企業価値創造に向けたマテリアリティ(重要課題)を特定している。財務的・構造的な課題として、「資本収益性の向上」「事業ポートフォリオ変革」「既存事業の収益力向上」「継続的な増配と機動的な自己株式の取得」「成長投資と財務規律の調和」が設定されている。同時に、事業を通じた社会課題解決のテーマとして、「健康な食生活への貢献」「新興・再興感染症の脅威への対応」「多様な人財の成長と活躍」がマテリアリティに掲げられている。技術開発および知的財産戦略からなるイノベーションの創出は、これらマテリアリティ課題を解決し、明治ROESGのスコアを向上させるための価値創造ロジックツリーの中核に組み込まれている。例えば、実績評価の枠組みとして「2025年度計画 年度計画の達成」「AA 72点以上」「C+(スコア50点以上)」といった基準がロジックツリー内に図示されており、財務実績と非財務スコアを連動させた経営管理体制が運用されていることが確認される2。
食品事業における研究開発および知的財産戦略は、長年にわたって蓄積された独自要素技術の応用によって牽引されている。統合報告書2025によれば、明治グループのイノベーションの基盤には、乳、カカオ、微生物、発酵、バイオテクノロジーに関する基礎研究の厚い蓄積が存在する。同社はこれらの知見を製品化技術や製造技術へと発展させ、それらを適切に知的財産として管理・運用する方針をとっている。特に注目されるのは、機能横断的な研究開発と知的財産マネジメントの連携であり、これにより優れた製品特長を科学的根拠とともに市場へ提供する体制が構築されている2。
具体的な研究開発の成果として、乳酸菌やカカオの健康価値に関する研究が学術データや論文として発表されており、これらのエビデンスに基づく科学的知見が製品価値に直結している。事業化・製品実装の実績として、機能性表示食品である「チョコレート効果Wプラス」が市場に導入されており、カカオポリフェノール等に関する知見が既存製品の付加価値向上に活用されている事実が確認される。また、決算補足情報等によれば、新たな健康価値ソリューションの構築に向けた技術開発領域として、カカオセラミドを美容サポート成分として活用する研究や、個人の腸内環境のタイプに合わせたカスタマイズ型の「腸活」ソリューションの提供に向けた取り組みが進行している。加えて、デジタルテクノロジーと食の知見を融合させた育児サポートサービスの開発も進められており、単なる食品製造にとどまらない健康ソリューションビジネスへのポートフォリオ変革が推進されている1。
これらの食品領域における技術革新と製品提供を物理的に支える拠点インフラとして、公式企業情報ページには複数の施設が列挙されている。基礎研究の拠点として、東京都八王子市に「明治イノベーションセンター」が設置されている。また、製造実装の拠点として、市乳の製造を専門とする「戸田工場」(埼玉県戸田市)や、流動食および栄養食品の製造を担う「関西栄養食工場」(大阪府貝塚市)が稼働している。このように、基礎研究から製品設計、量産化に至る一貫したサプライチェーンと技術インフラが同社の知財戦略の基盤として機能している7。
医薬品セグメントにおいては、新興・再興感染症の脅威への対応というマテリアリティ課題に直結する研究開発と、経済安全保障上の要請に応える事業投資が展開されている。最新の決算短信補足資料(2026年2月12日公表)によれば、同社は抗菌薬原薬の国内生産体制の構築を経済安全保障上の重要課題として位置づけ、その解決策として2025年12月より岐阜工場における抗菌薬原薬の生産を開始した。これにより、輸入に依存しがちな基礎的医薬品の国内安定供給網の強化が図られた事実が稼働実績として報告されている1。
ワクチンを中心とする予防医療領域の研究開発においても、具体的な事業実装が進展している。2024年には5種混合ワクチン「クイントバック」が市場に導入された実績がある。さらに、新型コロナウイルス感染症に対応するワクチン領域では、次世代mRNAワクチン「コスタイベ」の2人用バイアル製剤が上市されたことが決算資料において確認されている。これにより、感染症に対する予防(ワクチン)から治療(抗菌薬)に至る包括的な製品ポートフォリオの拡充が図られている。一方で、未充足の医療ニーズに対する新規の技術開発案件として、薬剤耐性(AMR)対策に貢献する新規β-ラクタマーゼ阻害剤「OP0595(ナキュバクタム)」の開発方針が示されている。また、中枢神経系領域への貢献を目指した不眠症治療薬の開発も進行しており、多様な疾患領域へのR&Dパイプラインの構築が進められている1。
医薬品セグメントの研究開発および知財創出を支える専門的なインフラ体制は、Meiji Seika ファルマ株式会社およびKMバイオロジクス株式会社の両社にわたって整備されている。公式の採用および企業情報ページには、本社および大蔵製薬株式会社に加え、KMバイオロジクス株式会社の傘下にある本社/熊本事業所、菊池研究所、合志事業所が列挙されている。また、Meiji Seika ファルマの専門研究施設として、製薬研究所、新木場ラボ、ウェルネスサイエンスラボが設置されており、医薬九州支店や岐阜工場といった広範なネットワークが構築されている。これらの自社拠点網に加えて、麻布大学との連携による薬剤耐性(AMR)対策の研究開発が進められているなど、産学連携を通じたオープンイノベーションによる知的財産の蓄積が推進されている。食品事業と医薬品事業の両方の知見が融合されることにより、他社にはない競争優位性が創出される方針が統合報告書に明記されている1。
明治グループのイノベーション創出および知財戦略は、サステナビリティに関する基本方針と不可分に結びついており、各ステークホルダーに対する提供価値の源泉として位置づけられている。統合報告書2025によれば、同社は事業活動を通じて関与する様々なステークホルダーに対して、明確な価値提供の指針を定めている6。
お客さまに対しては、「健康寿命の延伸」「健康で豊かな生活」「おいしさ・楽しさ」を提供し、「製品における安全・安心」を保証することが方針として示されている。株主・投資家に対しては、「持続的な成長」を実現し、「健全な財務基盤、資本の効率化、安定した利益還元」を提供することが明記されている。自社の事業活動を支える社員に対しては、「一人一人の力が発揮できる職場環境」および「心身ともに安心して働くことのできる職場環境」を整備することが重要課題として認識されている。また、外部のパートナーシップ構築として、ビジネスパートナーや政府機関・NPO/NGO・関連団体とは「相互信頼関係の構築」を図る方針である。さらに、地域社会・自然・将来世代に対しては、「地域社会とのパートナーシップ」を深め、「環境負荷の低減」や「生物多様性」の保全に貢献することが明文化されている6。
これらのステークホルダーに対する価値提供を実現する推進力となるのが、グループ全体の研究開発体制と知財マネジメントである。CDO(最高デジタル責任者)が統括するDX戦略と融合することで、研究開発効率の向上や新市場創出が加速される方針が示されており、デジタル技術と知的財産の相乗効果が期待されている。また、CSO(最高サステナビリティ責任者)の統括のもと、環境負荷低減や社会課題解決に向けた技術開発がマテリアリティと紐づいて実行されている。このように、財務的な資本収益性の向上(ROE)と、非財務的な持続可能性への貢献(ESG)を両立させる「明治ROESG」の経営サイクルの中心に、知的資本の投資と技術革新が据えられていることが各種一次情報から確認される2。
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