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日揮ホールディングスの知財戦略:技術実装と事業変革を牽引する無形資産マネジメント

3行まとめ

事業戦略と知財戦略を一体化させる統合的IPガバナンス

将来の理想的な社会・事業形態から逆算するバックキャスティングアプローチを採用し、特許データに基づくIPランドスケープ分析を活用して経営や技術開発の意思決定を客観的に支援しています。

次世代事業創出に向けた総額2,000億円の戦略的投資と特許網

中期経営計画において将来成長エンジンの構築等に総額2,000億円を投じ、2024年度末時点で合計1,948件の特許を保有するグローバルな強固なポートフォリオを構築しています。

外部共創と独自工法によるサステナビリティ技術の社会実装

外部パートナーと連携し、廃プラスチックのケミカルリサイクル(EUPライセンス)の展開や、博多駅でのペロブスカイト太陽電池(シート工法)の実証実験など、次世代インフラ技術の社会実装を推進しています。

この記事の内容

エグゼクティブサマリ

1. IPガバナンスと統合戦略

日揮ホールディングスは、「Enhancing planetary health(人と地球の健やかな未来を創る)」というグループパーパスに基づき、長期経営ビジョン「2040 Vision」および中期経営計画「BSP 2025」(対象期間:2021年度から2025年度)を推進しており、その達成に向けた中核的なリソースとして知的財産(IP)および無形資産を位置付けている1。公式に表明されたIPポリシーは、「創造(Creation of IP and Intangible Assets)」「保護(Protection of IP and Intangible Assets)」「適用(Promotion of Business by Application)」「リスク管理(Risk Management Regarding IP and Intangible Assets)」の4つの柱から構成されており、これらが事業戦略の基盤として機能している3。知財戦略の策定においては、将来の実現すべき望ましい事業形態や社会状況を起点として現在必要な技術要件を定義する「バックキャスティングアプローチ」が採用されており、事業計画および技術開発計画と緊密に連携しながらPDCAPlan-Do-Check-Act)サイクルを継続的に反復する統合的なガバナンス体制が構築されている3。技術の商業化に向けた審議の場においては、IP部門が直接的に参加し、事業および技術目標とIP保護の連動を確認するとともに、特許データに基づく競合・市場分析を統合した「IPランドスケープ分析」を実施して戦略的意思決定を客観的に支援する仕組みが稼働している3。また、研究開発から商業化への移行段階における「ゲート審査(Gate Examinations)」を通じたIPレビューが義務付けられており、技術の各開発ステージにおいて技術戦略と知財戦略の整合性が体系的かつ厳格に管理されている3

2. IPポートフォリオとR&D投資動向

日揮グループの研究開発投資および知財ポートフォリオは、同社のグローバルな事業展開および事業ポートフォリオの変革に連動して継続的な拡大と再構築を示している2。『JGC Report 2025(統合報告書)』に開示された財務・非財務データによれば、直近の2024年度(20253月期)における「研究開発費」(区分:実績)は43億円(単位:円)に達している2。特許ポートフォリオの規模に関して、2024年度末(20253月期末時点)における「国内特許保有件数」(区分:実績)は1,185件、「海外特許保有件数」(区分:実績)は763件であり、「合計特許保有件数」(区分:実績)は1,948件という規模を確保している2。さらに、中期経営計画「BSP 2025」における「投資計画」(対象期間:2021年度から2025年度、区分:目標)においては、全社的な成長に向けて総額2,000億円の資本投下が計画されており、その内訳として既存の中核事業である「EPC事業の深化」に700億円、「機能材製造事業の拡大」に500億円、そして次世代事業の創出やR&Dを含む「将来成長エンジンの構築」に対して800億円が割り当てられている1。特許出願の地域戦略としては、グローバルビジネスの継続的な拡大に伴い、特に事業の重点領域として位置付けられているアジア地域における体系的な権利取得が増加している実績が公式方針として明記されており、成長市場における競争力維持の姿勢が確認される3

3. 知財活用による新規事業創出と共創

日揮グループは、中核事業である「総合エンジニアリング事業(Total Engineering Business)」において、同社独自の高度な「IPエコシステム」を構築し運用している4。このエコシステムは、EPC(設計・調達・建設)業務およびプラントのメンテナンスから得られる物理的な「ハードサービス」の知見と、技術コンサルティングなどの「ソフトサービス」を融合させ、プラントのライフサイクル全般で獲得した実践的なノウハウや顧客からの直接的なフィードバックを無形資産として体系化し、グループ内で循環的に活用する仕組みである4。また、新規事業モデルの確立に向けた手法として、内部での多角的なアイデア創出を意味する「知識の創造」に加え、外部の優れた技術を特定してパートナー企業と共創する「知識の融合」が推進されている3。産官学連携や政府の研究開発プロジェクトへの参画を通じた社会実装の実例として、廃プラスチックのガス化ケミカルリサイクルを推進するためのEUPEbara Ube Process)ライセンス契約の締結実績が報告されている3。さらに、次世代技術の社会実装として、博多駅のホーム屋根等におけるフィルム型ペロブスカイト太陽電池の発電実証実験の開始が発表されており、同社の独自施工法(シート工法)を活用した新たなビジネスモデルへのIP拡張が図られている5

4. IPリスクマネジメントと人的資本の育成

知財に関するリスクの極小化とコンプライアンスの徹底は、日揮グループの事業活動において不可欠な経営課題として位置付けられている3。他者の知的財産権を尊重し、特許訴訟等の法的トラブルを未然に防止するための具体的な措置として、事業部門、技術開発部門、法務部門、およびIP部門の横断的な連携による「パテントクリアランス」が事業プロセスに組み込まれている3。加えて、他社との共同開発、ライセンス供与、プラント建設プロジェクトの遂行に伴う各種の技術契約に関する厳密な審査・管理(技術契約レビュー)が実施されている3。また、EPCの実施ノウハウや機能材の製造技術といった同社の競争力の源泉たる重要無形資産(営業秘密:トレードシークレット)の保護については、情報管理システムの構築といった物理的対策(Object-related measures)と、情報セキュリティ規則の整備や社内教育を通じた人的対策(Human-related measures)の両面から強固なセキュリティ環境が維持されている3。従業員の知財リテラシー向上を目的とした取り組みとして、独自の社内教育プログラム「JGC IP Academy」が展開されており、初級者(Beginners)、実務者(Practitioners)、経営層(Management)の3階層向けに設計された教育カリキュラムを通じて、全社的なコンプライアンス意識の醸成とイノベーションを推進する人的資本の高度化が図られている3

5. サステナビリティ・ESGと知財の連動

日揮グループは、知財戦略を全社的なESG(環境・社会・ガバナンス)目標と連動させ、持続可能な社会インフラの構築に向けた技術開発を中長期的に推進している1。サステナビリティにおけるマテリアリティ(重要課題)として、「環境と調和する社会の実現」「エネルギーアクセスの確保」「社会・産業インフラの構築」等の項目が特定されており、これらに対応する知財の創出に注力している1。具体的には、自社の特許ポートフォリオ全体に占めるSDGs(持続可能な開発目標)関連特許の比率を戦略的に増加させる方針を掲げており、SDGsの目標7(クリーンエネルギー)、目標12(つくる責任・つかう責任)、目標13(気候変動対策)、目標15(陸の豊かさ)等に合致する無形資産の蓄積が進められている3。研究開発の重点事業領域としては、「エネルギー移行(CCS、水素・アンモニア等)」「ヘルスケア&ライフサイエンス」「高機能材」「サーキュラーエコノミー」「産業・都市インフラ」の5分野が明確に設定されている1。また、建設現場等における事業運営プロセスにおいても、社内のCO2削減分科会(CO2 Reduction Subcommittee)を通じた温室効果ガス(GHG)排出量の削減活動が展開されており、気候変動対策を包含した全社的なサステナビリティ経営の実践が知財戦略の強固な基盤となっている4

Evidence Index

 

発行体

文書名/ページ名

発行日/公開日

種別

URL

日揮HD

JGC Holdings Integrated Report 2025 (IP strategy)

Not Disclosed

公式ページ

https://www.jgc.com/en/business/tech-innovation/intellectual_assets/

日揮HD

JGC Report 2025 (Chapter 1-7)

Not Disclosed

統合報告書

https://www.jgc.com/en/ir/ir-library/annual-reports/pdf/JGCReport2025_e_04.pdf

日揮HD

JGC Report 2025 (Management Message)

Not Disclosed

統合報告書

https://www.jgc.com/en/ir/ir-library/annual-reports/pdf/JGCReport2025_e_02.pdf

日揮HD

Annual Reports IR Library

Not Disclosed

公式IR

https://www.jgc.com/en/ir/ir-library/annual-reports/

日揮HD

JGC Report 2025 (Full Report English)

Not Disclosed

統合報告書

https://www.jgc.com/en/ir/ir-library/annual-reports/pdf/JGCReport2025_e.pdf

日揮HD

Intellectual Property (IP) Policy

Not Disclosed

公式ページ

https://www.jgc.com/en/business/tech-innovation/intellectual_assets/#anc01

日揮HD

JGC Report 2025 (Japanese PDF)

Not Disclosed

統合報告書

https://www.jgc.com/jp/ir/ir-library/annual-reports/pdf/JGCReport2025_j.pdf

日揮HD

2026年3月期 第3四半期決算短信

2026年210

法定開示/IR

https://www.jgc.com/jp/ir/ir-library/assets/pdf/fy25_3q_tanshin.pdf

日揮HD

2026年3月期 第3四半期決算短信(TDnet)

2026年210

法定開示/IR

https://assets.minkabu.jp/news/article_media_content/urn:newsml:tdnet.info:20260209552100/010120260209552100.pdf

日揮HD

博多駅ホーム屋根における実証実験を開始

2025年228

公式ニュース

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000304.000065135.html

日揮HD

シート工法がNEDO公募事業に採択

2025年924

公式ニュース

https://www.jgc.com/jp/news/2025/20250924_11.html

主要案件クロノロジー

 

案件名

Announcement

Effective(Event)

Completion

状態ラベル

根拠

中期経営計画「BSP 2025」の推進

Not Disclosed

2021年度

Not Disclosed

稼働

2

ペロブスカイト太陽電池 発電実証実験開始(博多駅)

2025年228

2025年228

Not Disclosed

稼働

5

代表取締役副社長兼CFO Kiyotaka Terajima 就任

Not Disclosed

2025年4

Not Disclosed

稼働

7

シート工法のNEDO公募事業採択

2025年924

Not Disclosed

Not Disclosed

合意/契約

6

2026年3月期 第3四半期決算発表

2026年210

2026年210

2026年210

完了

8

組織・施設スナップショット(As-of 2026/02/20

研究組織(センター一覧)

 

センター名(公式表記)

根拠ページ名

URL

2026/02/20時点で特定できず(Not Disclosed

研究開発(R&D)ページ

https://www.jgc.com/jp/business/tech-innovation/rd/

施設一覧

 

施設名(公式表記)

根拠ページ名

URL

2026/02/20時点で特定できず(Not Disclosed

グローバルネットワーク拠点ページ

https://www.jgc.com/jp/about/network/index.html

※ Gate-10の規則に基づき、公式ページからの一次情報による施設名およびその数の明示を抽出する試みを行ったが、対象URLへのアクセスが不可(Unverifiable)であったため、本報告書ではリストの断定を行わず非開示(Not Disclosed)として扱う。

 

 

1章:日揮ホールディングスの経営ビジョンと統合的IPガバナンス

1.1 企業パーパスと長期経営ビジョンの枠組み

日揮ホールディングスは、グローバルな事業活動を展開する上での根本的な理念および存在意義として、「Enhancing planetary health(人と地球の健やかな未来を創る)」というグループパーパスを公式に掲げている1。このパーパスを具現化し、事業ポートフォリオの抜本的な変革と持続的な成長を実現するための長期的な道標として、同社は長期経営ビジョン「2040 Vision」を策定している1。この長期ビジョンの実行における初期フェーズとして位置付けられているのが、中期経営計画「BSP 2025Building a Sustainable Planetary Infrastructure 2025)」である1。本計画は、対象期間を2021年度から2025年度までの5年間と定めており、大規模な一括請負EPC(設計・調達・建設)事業を支える強固な財務基盤の維持、成長領域への投資に対する柔軟な対応、および株主還元の着実な実行という3つの基本原則に基づいて推進されている7As-of 2026/02/20時点における最高経営体制に関して、2026210日に発表された最新の法定開示である「20263月期 第3四半期決算短信」の記載によれば、代表取締役会長兼社長CEOを佐藤雅之が務めている事実が確認される8。また、財務および資本政策の統括責任者として、代表取締役副社長兼CFOKiyotaka Terajima(寺島清隆)が務めており、同氏は20254月に現在の役職に就任したことが統合報告書の役員情報において開示されている7

1.2 知財ポリシーを構成する4つの基本柱

同社の経営ビジョンの達成に向け、知的財産(IP)および無形資産は、単なる法的権利の集合体ではなく、技術と社会課題の解決を繋ぐ極めて重要な「戦略的資産」として明確に定義されている4。日揮グループの公式IPポリシーは、グループのコアコンピタンスであるマネジメント能力、ビジョン構築力、技術的専門性、およびリスク管理能力を基盤とし、以下の4つの主要な柱によって構成されている3

第一の柱は「創造(Creation of IP and Intangible Assets)」である3。これは、グループ内部における多面的なアイデアの概念化を通じた「知識の創造(Creation of knowledge)」と、外部組織が保有する優れた技術を探索しパートナー企業と共同で価値を創出する「知識の融合(Fusion of knowledge)」の2つの経路を指す3。これらのアプローチを通じて、社会的ニーズの変化に対応する新規性の高い技術と無形資産の継続的な創出を推進する方針が示されている3

第二の柱は「保護(Protection of IP and Intangible Assets)」である3。企業の持続的な成長とステークホルダーへの価値提供を支援するため、特許、商標、意匠、ノウハウ、システム、ソフトウェア、およびテクニカルブランドといった多岐にわたる無形資産のポートフォリオを適切に構築・維持する方針である3。特に、競争力の源泉となるトレードシークレットの管理については、厳格な保護措置を講じることが明記されている3

第三の柱は「適用(Promotion of Business by Application)」である3。蓄積されたIPおよび無形資産を、グループの中核事業である一般エンジニアリング事業および機能材製造事業へ適用することにより、市場における持続的な競争優位性を確保する目標が設定されている3。同時に、自社の保有技術を第三者へ供与する技術ライセンス事業を強化し、他者との協働による新たなビジネスモデルの確立と技術の商業化を促進する方針が示されている3

第四の柱は「リスク管理(Risk Management Regarding IP and Intangible Assets)」である3。グローバルな事業活動を展開するにあたり、第三者の知的財産権を厳格に尊重し、国内外のIP関連法令および規制を遵守することを通じて、特許紛争をはじめとする知財リスクを極小化する方針を掲げている3。また、これを実現するための基盤として、組織全体のIPリテラシーを向上させる取り組みが重視されている3

1.3 バックキャスティングアプローチとPDCAサイクル

知財戦略の策定およびその実行プロセスにおいては、「バックキャスティングアプローチ」が公式な手法として採用されている3。この手法は、現在の技術水準からの延長線上で未来を予測するのではなく、将来実現すべき望ましい事業形態や社会状況(例えば脱炭素社会の実現など)を明確なゴールとして起点とし、そこから逆算して現在確保すべき技術開発テーマと必要とされる知財要件を定義するアプローチである3。この手法により策定されたIP戦略は、独立して運用されるのではなく、グループの事業計画および技術開発計画と緊密に連携・統合される3。戦略の実行状況については、PDCAPlan-Do-Check-Act)サイクルを継続的に反復させることにより、事業環境の変動に応じた軌道修正と目標達成に向けた進行管理が厳密に実施されている3

1.4 IPランドスケープとゲート審査による意思決定支援

技術開発および新規事業の推進における意思決定プロセスにおいて、IP部門は戦略的パートナーとしての役割を担っている3。技術の商業化に関する重要な審議会議には、事業部門および技術開発部門の代表者に加えて、IP部門が直接的に参加する体制が構築されている3。当該会議においてIP部門は、特許データの解析に基づく競合他社の動向分析や技術的市場分析を統合した「IPランドスケープ分析(IP landscape analysis)」の結果を提供し、経営層や各事業部の戦略的な意思決定を客観的データに基づいて支援する機能を有している3

さらに、技術開発プロジェクトが研究段階から実証・商業化段階等の次のフェーズへと移行する際に行われる「ゲート審査(Gate Examinations)」においては、必須の検証要件としてIPレビューがプロセスに組み込まれている3。この審査プロセスを通じて、プロジェクトが進行する各ステージにおいて、権利化の妥当性や技術的優位性の確認、および他社特許への抵触リスクの有無が体系的に検証されており、技術戦略と知財戦略の整合性が厳格に管理されている3。また、戦略の実施状況はPDCAシートを用いてモニタリングされ、全社的なビジネスプランとの一貫性が継続的に担保されている3

2章:研究開発投資と知財ポートフォリオの定量的実績

2.1 研究開発費の推移と中期的な投資配分

日揮グループは、技術力の維持・向上および将来の事業基盤の構築を目的とした研究開発活動に対して、継続的かつ計画的な資本投下を行っている。『JGC Report 2025(統合報告書)』(Page 109, 113等)にて開示された非財務およびESGデータに基づき、過去5年間における研究開発費の実績推移を以下に示す。

2020年度(対象期間、20213月期)における「研究開発費」(区分:実績)は、46億円(単位:円)であることが『JGC Report 2025Page 113)』(出典)に記載されている2 2021年度(対象期間、20223月期)における「研究開発費」(区分:実績)は、31億円(単位:円)であることが『JGC Report 2025Page 109, 113)』(出典)に記載されている2 2022年度(対象期間、20233月期)における「研究開発費」(区分:実績)は、41億円(単位:円)であることが『JGC Report 2025Page 109, 113)』(出典)に記載されている2 2023年度(対象期間、20243月期)における「研究開発費」(区分:実績)は、48億円(単位:円)であることが『JGC Report 2025Page 109, 113)』(出典)に記載されている2。 直近の確定値である2024年度(対象期間、20253月期)における「研究開発費」(区分:実績)は、43億円(単位:円)であることが『JGC Report 2025Page 77, 109, 113)』(出典)に記載されている2

これらの研究開発への投資は、単年の成果のみならず、中期的な資本配分計画に裏打ちされている。中期経営計画「BSP 2025」(対象期間:2021年度〜2025年度)においては、全社的な成長と事業構造の転換に向けた総額2,000億円の「投資計画」(区分:目標)が設定されている2。この投資計画の戦略的な内訳として、既存の収益基盤である「EPC事業の深化」に対して700億円、「機能材製造事業の拡大」に対して500億円の投資目標が掲げられている2。さらに、新規分野の研究開発や次世代ビジネスの創出を主眼とする「将来成長エンジンの構築」に対して、全体の4割に相当する800億円の投資枠が設定されており、R&D活動、デジタルトランスフォーメーション(DX)、および商業化に向けた実証実験(Proof of Concept)などに資本を集中的に投下する方針が示されている1

2.2 特許ポートフォリオの構築実績とグローバル地域戦略

研究開発活動によって生み出された技術的成果は、国内外における特許権の取得という形でグループの「知的資本」として体系的に蓄積されている。同社の特許取得に関する基本方針は、既存事業の防御的保護に留まらず、第三者との共創活動の促進や技術ライセンス事業の展開を戦略的に支援するためのポートフォリオ構築を志向している3。『JGC Report 2025(統合報告書)』(Page 113等)に開示されたデータに基づき、過去5年間における特許保有件数の推移を以下に示す。

2020年度(対象期間、20213月期末時点)における「国内特許保有件数」(区分:実績)は1,173件であり、「海外特許保有件数」(区分:実績)は671件であることが『JGC Report 2025Page 113)』(出典)に記載されている2 2021年度(対象期間、20223月期末時点)における「国内特許保有件数」(区分:実績)は1,146件であり、「海外特許保有件数」(区分:実績)は636件であることが『JGC Report 2025Page 113)』(出典)に記載されている2 2022年度(対象期間、20233月期末時点)における「国内特許保有件数」(区分:実績)は1,189件であり、「海外特許保有件数」(区分:実績)は652件であることが『JGC Report 2025Page 113)』(出典)に記載されている2 2023年度(対象期間、20243月期末時点)における「国内特許保有件数」(区分:実績)は1,176件であり、「海外特許保有件数」(区分:実績)は712件であることが『JGC Report 2025Page 113)』(出典)に記載されている2。 最新の確定値として、2024年度(対象期間、20253月期末時点)における「国内特許保有件数」(区分:実績)は1,185件であり、「海外特許保有件数」(区分:実績)は763件であることが『JGC Report 2025Page 113)』(出典)に記載されている2。これらを合算した2024年度(対象期間)の「合計特許保有件数」(区分:実績)は、1,948件であることが『JGC Report 2025Page 77)』(出典)に記載されている2

この特許ポートフォリオは、事業区分において「一般エンジニアリング領域(石油・ガス、LNG、化学、ライフサイエンス等)」および「機能材製造領域(触媒、ファインケミカル等)」に重点を置いて構築されている3。また、地域別の権利取得戦略としては、同社のグローバルな事業展開の進展に歩調を合わせ、特に事業の重点成長領域として位置付けられているアジア地域において、体系的な特許出願の件数が増加傾向にあることが公式方針として明記されており、グローバル市場における競争優位の確保に向けた意図が確認される3

2.3 最新の財務実績と中期経営計画の進捗

企業全体の収益基盤および事業規模の現在地を示す実績として、2026210日(発表日)に開示された法定開示書類である「20263月期 第3四半期決算短信」のデータを取り上げる。同短信によれば、20263月期 第3四半期(対象期間:202541日〜20251231日)の累計期間における「売上高」(区分:実績)は566,816百万円(単位:円)、「営業利益」(区分:実績)は26,707百万円(単位:円)、「経常利益」(区分:実績)は42,685百万円(単位:円)、および「親会社株主に帰属する四半期純利益」(区分:実績)は29,905百万円(単位:円)と報告されている8

また、同短信に記載された20263月期 通期(対象期間:202541日〜2026331日)の連結業績予想として、「売上高」(区分:予想)は740,000百万円(単位:円)、「営業利益」(区分:予想)は31,000百万円(単位:円)、および「親会社株主に帰属する当期純利益」(区分:予想)は30,000百万円(単位:円)として開示されている8

これに対して、中期経営計画「BSP 2025」の策定時に設定された最終年度(2025年度)の財務的な到達目標は、2025年度(対象期間)の「売上高」(区分:目標)が8,000億円(単位:円)、「営業利益」(区分:目標)が600億円(単位:円)、「親会社株主に帰属する当期純利益」(区分:目標)が450億円(単位:円)、および「ROE」(区分:目標)が10%と設定されていることが『JGC Report 2025Page 23)』(出典)に記載されている2。これらの数値は、大規模プロジェクトの採算性やグローバルな事業環境の変動による影響を受ける性質のものであるが、技術開発および知財投資を支える全社的なキャピタルアロケーションの規模感を示す重要な指標となっている。

3章:中核事業におけるIPエコシステムと外部共創戦略

3.1 総合エンジニアリング事業におけるIPエコシステムの構造

日揮ホールディングスの収益の大半を占める中核事業である「総合エンジニアリング事業(Total Engineering Business)」において、同社は特有の「IPエコシステム」の構築と運用を技術戦略の重要な柱として位置付けている4。この独自のエコシステムは、EPC関連のグループ企業4社が緊密に協働し、プラントインフラの構築に関するライフサイクル全体(計画、設計、調達、建設、運転、保守に至る各フェーズ)を通じて得られる暗黙知や現場での経験則を、形式知としてのIP・無形資産へと変換し、グループ内で体系的に蓄積・管理・共有する枠組みである4

具体的には、プラントの設計や建設という物理的なインフラストラクチャーを提供する「ハードサービス」と、稼働後の保守メンテナンスに関する技術コンサルティングなどの「ソフトサービス」を密接に融合させるアプローチが採用されている4。既存プラントのメンテナンス業務に伴う技術コンサルティング等のソフトサービスを通じて得られる実際のプラント稼働データや、顧客からの直接的な運用に関するフィードバックを収集し、それらを自社の技術基盤や設計手法の改善プロセスに再適用する4。この一連のデータとノウハウの還流により、技術水準の継続的な向上とエンジニアリングサービスの高度化を循環的に達成する強固な仕組みが構築されている4

3.2 「知識の創造」と「知識の融合」によるオープンイノベーション

日揮グループは、単独での自前主義的な技術開発に留まらず、外部の専門組織との協業を通じて新規事業の創出を加速させる「知識の融合(Fusion of knowledge)」を公式な事業方針として推進している3。この方針に基づき、新たな事業領域の開拓やビジネスモデルの多様化を図るため、特にシステムインテグレーション分野やデジタルトランスフォーメーション(DX)分野における外部パートナー企業との協業体制の強化が進められている3

オープンイノベーションの具体的な対象として、クリーンエネルギーの社会的な普及やケミカルリサイクル技術の大規模な実用化といった、中長期的な性能検証および安定的な運用実証が不可欠となるサステナビリティ関連の技術テーマが挙げられている3。これらの領域においては、自社のリソースのみに依存するのではなく、政府系機関が主導する大規模な研究開発プロジェクトへの積極的な参画が方針化されている3。これにより、産業界、政府機関、および学術機関などの多様なステークホルダーが連携する産官学の枠組みの中で、社会的に要請される課題を解決するための技術ソリューションの社会実装を目指す方針が明確に示されている3

3.3 ケミカルリサイクル技術の社会実装とライセンス事業

外部共創戦略および知財のライセンス活用による具体的な事業成果の一つとして、廃プラスチック問題を解決するための先進的なガス化ケミカルリサイクル技術に関する事業推進の事例が存在する3。同社は、この分野における技術の普及と事業の確立を目的として、「EUPEbara Ube Process)ライセンス契約」を締結した実績を有している3。この契約の締結は、第三者との協力体制のもとで自社または共有の知財ライセンスを戦略的に活用し、環境負荷低減に資するリサイクル事業の早期の立ち上げと、市場への広範な普及を加速させるためのビジネスモデルの展開を示すものである3。知財を自社内での独占的な実施に留めるのではなく、外部へのライセンス供与を通じて技術のデファクトスタンダード化を図り、ロイヤルティ収益の獲得と社会課題の解決を両立させるアプローチが確認される。

4章:次世代技術の社会実装と重点研究開発領域

4.1 フィルム型ペロブスカイト太陽電池の実証実験と施工法開発

日揮ホールディングスは、再生可能エネルギーの普及拡大と脱炭素社会の実現に向けた次世代技術の社会実装において、フィルム型の「ペロブスカイト太陽電池」の施工・設置技術の開発に注力している。2025228日(発表日および実施日)付で公表された同社の公式ニュースリリースによれば、日揮は九州旅客鉄道株式会社(JR九州)などの事業パートナーの協力を得て、博多駅のホーム屋根におけるペロブスカイト太陽電池の発電実証実験を正式に開始した5。この実証実験に用いられる技術は、薄膜太陽電池が本来有する「軽く、薄く、曲がる」という物理的特性を損なうことなく、平坦ではない工場の屋根や駅舎の構造物など、重量制限や形状の制約により従来のシリコン系太陽電池では設置が困難であった多様な場所への適用を可能にする同社独自開発の施工法である4。同社はこれまでに、寒冷地である北海道の苫小牧や、塩害等の影響が想定される神奈川県の江の島など、異なる環境条件下においても同様の実証試験を進めてきた実績を持ち、技術の信頼性向上に努めている5

さらに、本技術の開発推進に関連する重要な進展として、2025924日(発表日)の公式ニュースにおいて、日揮が開発を進めるフィルム型次世代太陽電池向け施工法である「シート工法」が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「設置場所に応じた太陽光発電システム技術開発」事業に採択されたことが公表された6。この政府系機関の公募事業への採択を受け、日揮はシート工法の持つ高い施工性をさらに改善し、実用化に向けた技術開発を加速させる方針である。2025924日時点では、この技術開発の完了に伴い、従来型のシリコン製太陽電池の設置工事と比較して「約35%の施工コスト削減」を目指すとの目標値が公式に示された62026/02/20時点で公式ニュース等(直近24ヶ月)を確認したが、状態更新を一次情報で特定できず(Not Disclosed)。この一連の取り組みは、同社が培ってきたエンジニアリング技術を、プラント建設以外の新たなインフラストラクチャー領域へと応用する知財の横展開の事例と言える。

4.2 成長戦略を牽引する5つの重点研究開発ドメイン

中期経営計画「BSP 2025」の枠組みのもと、日揮グループは「将来成長エンジンの構築」に資する技術分野を5つの主要なドメイン(領域)に指定し、研究開発投資を集中的に推進している1

第一の領域は「エネルギー移行(Energy Transition)」である1。炭素排出を伴わない持続可能な社会インフラへの転換を目指し、CCSCarbon Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)技術、洋上風力発電技術、燃焼時にCO2を排出しないグリーン水素およびブルー水素、次世代燃料としてのアンモニアの大量製造技術、ならびに分散型電源として期待されるSMRSmall Modular Reactors:小型モジュール炉)に関する最先端の研究開発が対象とされている1

第二の領域は「ヘルスケア&ライフサイエンス(Healthcare & Life Sciences)」である1。ここでは、再生医療等の高度な医療技術を含む最先端の医薬品製造プラントの設計・建設技術の開発に加え、IT技術を応用したデジタルヘルスケアの基盤構築、および医療現場の効率化を図るスマートホスピタルの実現に関する技術開発が推進されている1

第三の領域は「高機能材(High-performance Functional Materials)」である1。グループ内の機能材製造事業が中心となり、半導体産業向けの高度な窒化ケイ素基板や半導体研磨材、エネルギー貯蔵効率を高めるための先進的な材料開発、およびカーボンリサイクルやケミカルリサイクルのプロセスに不可欠な高性能触媒の開発が進められている1

第四の領域は「サーキュラーエコノミー(Circular Economy)」である1。使い捨てを前提とした経済からの脱却を図るため、廃プラスチックや廃棄される繊維類を化学的処理によって元の原料レベルにまで戻し、再利用を可能にするケミカルリサイクル技術のプロセス確立に向けたR&Dが集中的に行われている1

第五の領域は「産業・都市インフラ(Industrial & Urban Infrastructure)」である1。プラント建設で培ったプロジェクトマネジメントとエンジニアリングの知見を応用し、高度な水処理技術システム、鉄道インフラの整備、および複数のインフラ要素が統合された複合的な都市インフラの設計・構築に関する技術的進歩が対象領域として指定されている1

5章:事業リスクの極小化とIPリスクマネジメント体制

5.1 全社横断的な知財リスク管理体制の構築

日揮グループは、グローバルに展開する事業運営に伴う知財リスクを極小化し、企業の存続と利益を保護するため、事業部門、技術開発部門、法務部門、およびIP部門が横断的に緊密に連携する共同リスク管理体制を整備している3。知財に関するコンプライアンスの違反や法的紛争は、プロジェクトの遅延や巨額の賠償責任を招く可能性があるため、リスク管理の実務は厳格なプロトコルに従って実行されている。

5.2 パテントクリアランスと技術契約レビューの実務

知財リスク管理の実務は、主に2つの対外的なプロセスによって実行されている。第一のプロセスは「パテントクリアランス(Patent Clearance)」の徹底である3。新たな製品の製造やサービスの提供、あるいはプラントの設計・建設プロセスにおいて、事前に第三者が保有する特許権等の知的財産権の調査・監視を網羅的に行う3。これにより、他者の権利を意図せず侵害するリスクを事前に特定・排除し、特許訴訟等の法的紛争を未然に防止する手続きが日常の業務プロセスの中に不可欠なステップとして組み込まれている3

第二のプロセスは「技術契約レビュー(Technology Contract Review)」である3。他社との共同開発プロジェクト、技術ライセンス契約(外部からの技術導入および自社技術の供与)、ならびにプラント建設プロジェクトの遂行に伴って発生する各種の技術関連契約について、権利義務の帰属関係を明確化する3。顧客、ライセンサー、ライセンシー、およびパートナー企業との間で予期せぬトラブルを防ぎ、適切かつ健全な事業関係を構築・維持するための厳密な契約書の審査と管理が行われている3

5.3 トレードシークレット保護に向けた物理的・人的対策

第三の極めて重要なリスク管理領域として、「トレードシークレットの管理(Trade Secret Management)」が存在する3。日揮グループにおいて、長年のEPC事業の経験によって蓄積されたプロジェクト実施のノウハウや、機能材製造事業における独自の製造技術などの無形資産は、特許として公開するよりも秘匿することに価値がある極めて重要な営業秘密(トレードシークレット)として位置付けられている3

これらの機密情報が外部へ漏洩したり不正に流出したりする事態を防ぐため、同社は多角的な保護措置を講じている。具体的には、アクセス権限の制御や情報管理システムの堅牢化を図る「物理的・システム的対策(Object-related measures)」が導入されている3。これと並行して、情報セキュリティに関する厳密な社内規則の整備や、従業員に対する継続的な社内教育の実施等を通じた「人的対策(Human-related measures)」が徹底されており、情報保護の観点から強固なセキュリティ環境が維持されている3

6章:イノベーションを支える人的資本と社内教育プログラム

6.1 知財人材の育成方針と「JGC IP Academy」の役割

日揮ホールディングスは、新しい技術の商業化や革新的なビジネスモデルの展開を成功させるためには、イノベーションの継続的な創出が不可欠であると認識している3。そして、そのイノベーション活動を推進する主要な原動力は従業員(人的資本)であると位置付け、組織全体を「革新的なエンジニア集団(Innovative engineer group)」へと育成するため、独自の社内教育プログラムである「JGC IP Academy」を設立し、運営している3。この教育プログラムは、一部の専門部署だけでなく、全従業員が知的財産および無形資産のビジネス上の重要性を正しく認識し、日々の業務プロセスの中に知財的な視点(IP perspective)を自然と組み込むことができる組織文化の醸成を目的として構築されている3

6.2 階層別教育プログラムを通じたコンプライアンスの徹底

JGC IP Academy」の教育カリキュラムは、画一的な内容ではなく、受講者の職務内容と求められる知識レベルに応じて、明確に3つの階層別に設定されている3。具体的には、基礎的な知識を習得する「初級者(Beginners)」向けコース、日常業務において知財実務に直面する「実務者(Practitioners)」向けコース、そして戦略的な意思決定とリスク管理を担う「経営層・管理職(Management)」向けコースの3階層である3

この教育プログラムの根底には、「日揮グループ行動規範(JGC Group Code of Conduct)」に定められた情報管理および知財権保護に関する厳格なコンプライアンス要件が存在する3。プログラムの主眼は、従業員が他者の知的財産権を尊重するための社内ルールや潜在的なリスク要因を正確に理解し、コンプライアンスの徹底を組織の隅々にまで浸透させることにある3。技術的な創造性と、法的リスクに対する防御的な知見の双方を従業員に付与することで、強靭な人的資本の形成が図られている。

7章:サステナビリティ経営とESG課題への知財的アプローチ

7.1 特定されたマテリアリティとSDGs関連特許の推進

日揮グループは、中長期的なサステナビリティ経営を実現し、企業価値と社会的価値を同時並行で向上させるため、国際的なガイドライン(SDGsGRIISO 26000等)や世界的な社会動向、およびステークホルダーからの要請を総合的に評価し、事業活動を通じて優先的に取り組むべき6つの「マテリアリティ(重要課題)」を特定している1

環境(E)の分野における主要なマテリアリティとしては、「環境と調和する社会の実現(Societies in harmony with environment)」が設定されている1。具体的には、化石エネルギー利用に伴う環境負荷の低減、再生可能エネルギーの利用割合の拡大、生態系の保護と生物多様性の維持、および地球温暖化の抑制に直接的に寄与する製品や技術の開発を組織の目標として掲げている1。 社会(S)の分野におけるマテリアリティとしては、事業活動を通じた課題解決として「新興国における経済産業の発展への貢献」「新興国における雇用創出」「新興国での技術移転と人材育成の支援」が挙げられている1。また、組織内部の健全性に関わる課題として「職場におけるダイバーシティの推進」「女性の採用促進とスキル構築の強化」「全事業活動における人権の尊重」が明記されている1。さらに、事業の成果として達成すべき社会目標として「世界的なエネルギー需要の増加への対応」「グローバルなエネルギー効率の向上」「老朽化が進行する社会・産業インフラへの的確な対応」が設定されている1

知財部門は、これらの特定されたマテリアリティの解決に直接的に貢献するため、特許分析ツール(LexisNexis®PatentSight®等)を駆使し、自社の保有する特許ポートフォリオ全体に占めるSDGs(持続可能な開発目標)関連特許の比率を戦略的に増加させる取り組みを実行している3

7.2 環境調和と社会インフラ構築に向けた特許戦略

SDGsの達成に向け、同社が重点的に特許権を取得・維持している技術分野は、マテリアリティと緊密に連動している。 「環境調和型社会の実現」に向けては、SDGs目標7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)、目標12(つくる責任 つかう責任)、目標13(気候変動に具体的な対策を)、および目標15(陸の豊かさも守ろう)に関連する知財ポートフォリオの構築が推進されている3。 「エネルギーアクセスの確保」という課題に対しては、安定的かつ持続可能なエネルギー供給を支えるため、SDGs目標7および目標13に関する技術領域の知財保護が重点対象となっている3。 「社会・産業インフラの確立」に関しては、SDGs目標3(すべての人に健康と福祉を)、目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)、および目標11(住み続けられるまちづくりを)に貢献する基盤的技術の特許権確保が、今後の事業化に向けた必須要件として位置付けられている3

7.3 事業運営プロセスにおける温室効果ガス(GHG)排出量削減活動

サステナビリティの実現に向けた具体的なアクションとして、顧客へのソリューション提供のみならず、日揮グループ自身の事業運営プロセス(建設現場等)における環境負荷の直接的な低減も推進されている4。国内外の多様なプラント建設現場において、日揮ホールディングスの「サステナビリティ委員会(Sustainability Committee)」が策定した全社的な方針に基づき、その下部組織として設置された「CO2削減分科会(CO2 Reduction Subcommittee)」が主導的な役割を果たしている4

2024年度(測定対象期間)のGHG削減に関する活動が『JGC Report 2025』(発行日非開示のためNot Disclosed)にて報告されている。同報告書によれば、再生可能エネルギーの積極的な利用等を通じて、現場オペレーションに伴う温室効果ガス(GHG)排出量の物理的な削減が推進されている4。さらに、各環境施策の有効性をデータに基づいて定量的に把握・評価するための管理体制の構築を目指し、GHG排出量を可視化するITシステムの導入検討が順次進められていることが公式に報告されている4。これらの環境管理の取り組みは、単なる廃棄物削減やGHG排出の抑制に留まらず、各EPCプロジェクトの地域的特性や環境条件に応じた騒音対策や生物多様性の保護など、広範かつ多岐にわたる領域での持続可能な事業運営(Sustainable business operations)の一環として、事業プロセス全体に深く組み込まれている4

未確認/確認不能事項 (Not Disclosed / Unverifiable)

本報告書の作成にあたり、設定された厳格な調査基準(Gate-116)および指定された一次情報源の範囲内で事実確認を試みたが、以下の項目については要件を満たす事実を特定・検証することができなかった。

  • 研究開発拠点(研究所・センター等)のリストおよび所在地
    2026/02/20時点で、公式の研究開発関連ページ(https://www.jgc.com/jp/business/tech-innovation/rd/index.html 等)およびグローバルネットワーク拠点ページ(https://www.jgc.com/jp/about/network/index.html)を確認した範囲では、対象URLへのアクセスが不可であったため(Unverifiable:理由 サーバーアクセス不可等)、施設・センターの名称や具体的な数、所在地を一次情報として特定・断定できず(Not Disclosed)。
  • CO2排出量削減目標(2030年度および2050年度)の具体的数値
    2026/02/20時点で、参照を試みた公式のサステナビリティ・気候変動ページ(https://www.jgc.com/jp/sustainability/climate-change/index.html)およびESGデータページ(https://www.jgc.com/jp/sustainability/esg-data/)へのアクセスが不可であった(Unverifiable)。また、『JGC Report 2025』等の参照可能な開示書類内において「2030年・2050年のCO2排出量削減目標」という具体的な数値指標の明記を確認できなかった。2026/02/20時点で、有報・決算短信・統合報告書・公式IR(直近24ヶ月)を確認した範囲では、当該削減目標の具体的数値を一次情報として特定できず(Not Disclosed)。
  • 役員(取締役・執行役員等)の全氏名と役職名の完全なリスト
    2026/02/20時点で、公式の役員一覧ページ(https://www.jgc.com/jp/about/executives/index.html 等)へのアクセスが不可であった(Unverifiable)。本報告書内の代表取締役CEOおよびCFOに関する記述は、決算短信や統合報告書で確認可能な範囲に限定して記述しており、全役員の完全なリストについては特定できず(Not Disclosed)。
  • 特許ランキングおよび出願・登録件数の外部集計情報に関する事実認定
    調査過程において、第三者の特許情報集計サイト(IP Force)における日揮株式会社のランキングデータへのアクセスが含まれていたが、これは特許庁等の公的データベース(公報・登録原簿等)が直接提供する一次情報ではなく、集計母集団・期間・検索条件の明示も不足しているため(Gate-14要件未達)、当報告書ではこれらのランキング順位を断定せず(条件により変動し得るため判断不能)、内容の本文引用を控えている(Not Disclosed)。
  • 「シート工法」の約35%コスト削減目標の進捗更新
    2025年924日時点では従来型比で約35%の施工コスト削減を目指すとの方針が示された。2026/02/20時点で公式ニュース等(直近24ヶ月)を確認したが、目標達成や状態更新を一次情報で特定できず(Not Disclosed)。
  • JGC Report 2025』等の発行日(Announcement)の特定
    2026/02/20時点で、参照した統合報告書(JGC Report 2025)や公式知財ページ上部に、明示的な発行日・公開日の記載を確認できなかった。このため、これらの文書を根拠とする事項について、Announcement日付を断定せず(Not Disclosed)。

 

引用文献

  1. Growth Strategy, 2月 20, 2026にアクセス、 https://www.jgc.com/en/ir/ir-library/annual-reports/pdf/JGCReport2025_e_04.pdf
  2. JGC Report - 日揮ホールディングス, 2 20, 2026にアクセス、 https://www.jgc.com/jp/ir/ir-library/annual-reports/pdf/JGCReport2025_j.pdf
  3. Approach to IP (Intellectual Property) and Intangible Assets ..., 2月 20, 2026にアクセス、 https://www.jgc.com/en/business/tech-innovation/intellectual_assets/
  4. JGC Report, 2月 20, 2026にアクセス、 https://www.jgc.com/en/ir/ir-library/annual-reports/pdf/JGCReport2025_e.pdf
  5. 博多駅ホーム屋根におけるペロブスカイト太陽電池の発電実証実験を開始 - PR TIMES, 2 20, 2026にアクセス、 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000304.000065135.html
  6. フィルム型次世代太陽電池向け施工法「シート工法」がNEDO公募「設置場所に応じた太陽光発電システム技術開発」事業に採択 | 2025年ニュースリリース | 日揮ホールディングス株式会社, 2 20, 2026にアクセス、 https://www.jgc.com/jp/news/2025/20250924_11.html
  7. CEO Message, 2月 20, 2026にアクセス、 https://www.jgc.com/en/ir/ir-library/annual-reports/pdf/JGCReport2025_e_02.pdf
  8. 2026年3月期 第3四半期 決算短信 - 日揮ホールディングス, 2 20, 2026にアクセス、 https://www.jgc.com/jp/ir/ir-library/assets/pdf/fy25_3q_tanshin.pdf
  9. 2026年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結), 2 20, 2026にアクセス、 https://assets.minkabu.jp/news/article_media_content/urn:newsml:tdnet.info:20260209552100/010120260209552100.pdf

 

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  • 2025年12月時点の情報に基づきます
  • 企業の非公開戦略や内部情報は含まれません
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