3行まとめ
知財とバリューチェーンを一体化した経営戦略——特許保有8,000件超、3年間で4,500億円の投資枠を設定
IHIは知的財産を重要な経営資源と位置づけ、多様なコア技術の結合によるバリューチェーン創造を競争優位の源泉と定義。特許保有件数は約8,016件(国内4,029件・海外3,987件)に達し、「グループ経営方針2023」では営業キャッシュ・フロー1,000億円以上の継続的創出と3ヵ年総額4,500億円の投資枠を掲げている。
アンモニア燃焼技術で世界初の成果を連発——石炭混焼・ガスタービン100%専焼・船舶エンジンの3領域で実証完了
JERA碧南火力での20%アンモニア混焼実証に続き、GE Vernovaと共同でFクラスガスタービンにおける100%アンモニア燃焼に成功。船舶分野でも世界初のアンモニア燃料タグボート「魁」でGHG削減率最大約95%を達成し、混焼バーナー特許(Patent No. 7049773)は全国発明表彰の発明賞を受賞した。
海外売上比率53.7%・国際標準化への参画で、脱炭素技術のグローバル社会実装を加速
IHIは海外関係会社131社・海外拠点20カ所のグローバル基盤を活かし、海外売上収益率53.7%(2024年度)を達成。アンモニア燃料の国際規格ISO/TS 21343の策定活動や、米国X-energyとの高温ガス炉協業など、知財化と国際標準化の両輪で脱炭素技術の世界展開を推進している。
この記事の内容
株式会社IHI(以下、IHI)は、1889年(明治22年)1月17日の有限責任石川島造船所の設立を設立日とする日本の重工業企業であり、創業日は嘉永6年(1853年)12月5日の石川島での造船所創設に遡る。「株式会社IHI / IHI Corporation」の会社案内資料等によれば、代表取締役社長として井手博氏が就任しており、資本金の実績は1,071億円である。「IHI統合報告書 2025」(発行日:2025年9月30日)の「会社概要と株価・株式関連情報」の項目によれば、2025年3月末を対象期間とする従業員数(連結・実績)は27,990人であった。同社は「技術をもって社会の発展に貢献する」という経営理念を掲げており、技術と人を価値観の中心に据えた企業変革を継続して実施している。経営戦略の基本方針として、将来のありたい姿を「自然と技術が調和する社会を創る」ことに設定し、多様なコア技術を結合させることで価値連鎖(バリューチェーン)を創造することを自社の競争優位性の源泉と定義している。持続的な成長を実現するための資本配分戦略については、「グループ経営方針2023」において、継続的に1,000億円以上の営業キャッシュ・フロー(実績・目標区分については言及の文脈において創出目標)を創出し、期間中3ヵ年を対象期間とする総額4,500億円の投資枠(計画)を設定する方針が提示されている。この投資原資は、営業キャッシュ・フロー、構造改革、資産売却等を通じて捻出する計画が示されている。1
知的財産に関する基本方針において、IHIは知的財産を重要な経営資源の一つとして明確に位置づけており、社会課題の解決と顧客の価値向上に資する形態で事業領域に活用する方針を示している。「IHI統合報告書 2025」の「イノベーション・マネジメント」の項目においては、ものづくり技術を中核とするエンジニアリング力によってソリューションを提供し続ける姿勢が記載されている。知財ポートフォリオと事業ポートフォリオは密接に連動して議論されており、中長期的に目指すポートフォリオの構築に向けて技術・知財の最適化が進められている。特許保有実績に関する具体的な数値については、公表されている一次情報間で複数のデータが提示されている。「IHI統合報告書 2025」の「イノベーション・マネジメント」の項目内では、特許取得件数(実績)が598件、特許保有件数(実績)が8,016件(うち国内4,029件、海外3,987件)と報告されている。一方で、「IHI Sustainability Data Book 2024」においては、特許保有件数(実績)が8,172件(うち国内4,094件、海外4,078件)と記載されている(一次情報間で不一致)。また、情報セキュリティ対策レベル評価については、同報告書の「情報セキュリティの強化」の項目において5点満点中3.8点(実績)を獲得しており、顧客や取引先の機密情報、および会社の経営情報や技術情報を保護する体制が運用されていることが記載されている。知的財産に関する個別のKPI項目は財務データ表には設けられていないものの、サステナビリティデータとして公開する方針がとられている。1
環境対応技術の領域において、IHIは「IHIカーボンニュートラル2050」の実現に向けた取り組みを推進しており、その中核として燃料アンモニアのバリューチェーン事業の収益化と社会実装に注力している。JERA碧南火力発電所4号機においては、熱量の20%に相当する燃料アンモニアの大量転換実証試験を実施し、これを完了した実績がある。この実証試験に用いられた「Ammonia Co-Firing Burner for Coal-Fired Power Plant Boilers(Patent No. 7049773、出願日2017年)」は、2025年の「National Commendation for Invention」にてInvention Awardを受賞した。さらに、2026年3月18日には公式提携先であるGE Vernovaと共同で、同社のFクラスガスタービンに適合するフルスケールのコンポーネントを使用し、全負荷条件に一致する圧力、温度、流量において100%アンモニア燃焼の実証に成功したことを発表している。船舶分野の技術展開においても、アンモニア燃料舶用レシプロエンジンを開発し、世界初の商用利用を前提としたアンモニア燃料タグボート「魁」の実証航海を成功させた。このアンモニア燃料エンジンは、GHG(温室効果ガス)削減率として最大約95%(実績)を達成し、排気中に含まれるアンモニアおよびN2O(亜酸化窒素)の濃度を排気後処理装置の後段においてほぼゼロに抑えることに成功しており、2025年6月18日にCIMAC Congress 2025にてCIMAC会長賞を受賞した。加えて、アンモニアの国際標準化に向けた技術仕様(ISO/TS 21343)の作成活動にも参画している。1
「IHI統合報告書 2025」(発行日:2025年9月30日)の「財務データ」の項目によれば、2024年度(2025年3月期)を対象期間とする研究開発費(実績)は340億円(IFRS)と報告されている。同様に、同資料の同項目において、2023年度を対象期間とする研究開発費(実績)は393億円(IFRS)、2022年度を対象期間とする研究開発費(実績)は340億円(IFRS)であったことが示されている。同時に、同報告書の「イノベーション・マネジメント」の項目内においては、対象期間の明記がない研究開発費用(実績)として399億円という数値も明記されている(一次情報間で不一致)。直近の業績として、「2026年3月期 第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(公表日:2026年2月10日)によれば、当第3四半期連結累計期間(2025年4月1日~2025年12月31日)の売上収益(実績)は1兆1,293億3,900万円となり、前年同期比で1.8%の減収となった。同期間の営業利益(実績)は1,025億3,600万円であり、前年同期比で0.9%の減益であった。営業利益の変動要因としては、民間向け航空エンジンでの整備費用の増加や、研究開発費等を含む販売費及び一般管理費の増加が挙げられている。同四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費(実績)は1,726億3,100万円であったが、研究開発費単独の累計額に関する具体的な数値は、今回の調査では未確認(PDF図表で該当箇所を特定できず)である。2026年3月期通期の連結業績予想としては、売上収益1兆6,400億円(前期比0.8%増)、営業利益1,600億円(前期比11.5%増)を見込んでいる。1
IHIは、企業変革を加速するための重要な柱としてDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を策定している。「IHI統合報告書 2025」においては、デジタル技術の導入を単なる業務効率化にとどめず、企業文化、人財、および多様なコア技術を結合させるための手段として位置づけ、バリューチェーン全体を俯瞰する視点から施策を実行する計画が示されている。社会基盤分野におけるインフラ維持管理技術の展開として、市民を巻き込む仕組みを取り入れたスマートフォンアプリ「水門アクアリウム」の開発を進めている。また、先進的なエネルギー技術の探求の一環として、2026年3月16日には米国のX-energyと高温ガス炉分野における協業検討に向けた覚書(MOU)を締結したほか、「大気からエネルギーを生む技術」の開発プロジェクトにも挑戦している。グローバルな事業体制としては、2025年3月31日時点を対象期間とする会社概要において、海外事業開発拠点が20カ所、海外関係会社が131社(子会社110社、関連会社21社)存在することが示されている。「財務データ」の項目によれば、2024年度(2025年3月期)を対象期間とする海外売上収益率(実績)は53.7%に達している。これらのグローバル基盤を活用し、デジタル化や先進インフラ技術の社会実装を世界規模の市場で推進する方針である。1
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発行体(会社名) |
許可ドメイン |
根拠URL |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
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米国特許商標庁(USPTO) |
data.uspto.gov |
https://data.uspto.gov/patent-file-wrapper/search/details/19098873/application-data |
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GE Vernova |
gevernova.com |
https://www.gevernova.com/news/press-releases/ihi-ge-vernova-achieve-milestone-100-ammonia |
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発行体(会社名) |
ドメイン |
文書名 |
発行日 |
種別 |
URL |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
IHI統合報告書 2025 |
2025年9月30日 |
統合報告書 |
https://www.ihi.co.jp/ir/library/annual/pdf/IHI_Integrated_Report2025_all.pdf |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
決算短信・決算説明資料 バックナンバー |
2026年2月10日 |
公式IRページ |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
2026年3月期 第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結) |
2026年2月10日 |
決算短信 |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
2025年度(2026年3月期)第3四半期決算説明資料(IFRS) |
2026年2月10日 |
決算説明資料 |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
2025年度 第3四半期 決算説明資料 質疑応答の要旨 |
2026年2月19日 |
質疑応答要旨 |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
IHI Sustainability Data Book 2024 |
2024年 |
データブック |
https://www.ihi.co.jp/sustainable/data/sustainabilitydatabook/pdf/sdb2024_interactive.pdf |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
IHI wins Prestigious Invention Award for Ammonia Burner |
2025年 |
公式ニュース |
https://www.ihi.co.jp/en/all_news/2025/resources_energy_environment/1201551_13737.html |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
IHI received the General Incorporated Association Japan Institute of Energy Award |
2025年 |
公式ニュース |
https://www.ihi.co.jp/en/all_news/2025/resources_energy_environment/1201905_13737.html |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
アンモニアを燃料とするエンジンがCIMAC会長賞を受賞 |
2025年6月18日 |
プレスリリース |
https://www.ihi.co.jp/all_news/2025/resources_energy_environment/1201471_13752.html |
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株式会社IHI |
ihi.co.jp |
会社概要 |
日付表記なし |
企業情報 |
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GE Vernova |
gevernova.com |
IHI and GE Vernova achieve milestone 100% ammonia |
日付表記なし |
公式ニュース |
https://www.gevernova.com/news/press-releases/ihi-ge-vernova-achieve-milestone-100-ammonia |
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USPTO |
data.uspto.gov |
Application Data: 19/098,873 |
2025年4月2日 |
公的特許DB |
https://data.uspto.gov/patent-file-wrapper/search/details/19098873/application-data |
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資料種別 |
公表日 |
対象期間 |
FY |
根拠URL |
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決算短信 |
2026年2月10日 |
2025年4月1日~2025年12月31日(第3四半期累計) |
2026年3月期 |
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決算説明資料 |
2026年2月10日 |
2025年4月1日~2025年12月31日(第3四半期累計) |
2026年3月期 |
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質疑応答要旨 |
2026年2月19日 |
2025年4月1日~2025年12月31日(第3四半期累計) |
2026年3月期 |
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対象期間(一次情報表記) |
金額 |
単位 |
出典資料名 |
掲載場所(項目名) |
根拠URL |
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2024年度 |
340 |
億円 |
IHI統合報告書 2025 |
財務データ(研究開発費) |
https://www.ihi.co.jp/ir/library/annual/pdf/IHI_Integrated_Report2025_all.pdf |
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2023年度 |
393 |
億円 |
IHI統合報告書 2025 |
財務データ(研究開発費) |
https://www.ihi.co.jp/ir/library/annual/pdf/IHI_Integrated_Report2025_all.pdf |
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2022年度 |
340 |
億円 |
IHI統合報告書 2025 |
財務データ(研究開発費) |
https://www.ihi.co.jp/ir/library/annual/pdf/IHI_Integrated_Report2025_all.pdf |
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対象年度表記なし |
399 |
億円 |
IHI統合報告書 2025 |
イノベーション・マネジメント(研究開発費用) |
https://www.ihi.co.jp/ir/library/annual/pdf/IHI_Integrated_Report2025_all.pdf |
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特許番号 |
発明名称(一次情報表記) |
出願人・権利者 |
根拠(公的DB URL等) |
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Patent No. 7049773 |
Ammonia Co-Firing Burner for Coal-Fired Power Plant Boilers |
当社 |
https://www.ihi.co.jp/en/all_news/2025/resources_energy_environment/1201551_13737.html |
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Application # 19/098,873 |
Hydrated Lime for Carbon Capture |
未確認 |
https://data.uspto.gov/patent-file-wrapper/search/details/19098873/application-data |
株式会社IHIは、1889年(明治22年)1月17日の有限責任石川島造船所の設立を設立日とする日本の重工業企業であり、その創業日は嘉永6年(1853年)12月5日の石川島での造船所創設に遡る。「株式会社IHI / IHI Corporation」の会社案内資料等によれば、代表取締役社長として井手博氏が就任しており、資本金の実績は1,071億円である。「IHI統合報告書 2025」(発行日:2025年9月30日)の「会社概要と株価・株式関連情報」の項目によれば、2025年3月末を対象期間とする従業員数(連結・実績)は27,990人であった。同社は「技術をもって社会の発展に貢献する」という経営理念を掲げており、技術と人を価値観の中心に据えた企業変革を継続して実施している。経営戦略の基本方針として、将来のありたい姿を「自然と技術が調和する社会を創る」ことに設定し、多様なコア技術を結合させることで価値連鎖(バリューチェーン)を創造することを自社の競争優位性の源泉と定義している。1
事業領域は大きく4つのセグメントによって構成されている。「資源・エネルギー・環境」セグメントは、脱CO2および循環型社会の構築に向けたトータルソリューションの提供を目的としている。「社会基盤」セグメントは、橋梁やトンネルのライフサイクルを通じた安全なインフラの提供を担っている。「産業システム・汎用機械」セグメントは、産業インフラの運用最適化を追求し、「航空・宇宙・防衛」セグメントは、航空輸送、防衛システム、宇宙利用を通じた先進技術の展開を行っている。これら4セグメントによるポートフォリオ経営を推進するため、知財化と国際標準化を加速させており、社会実装と収益化に向けた課題を解消しながら事業拡大を目指す方針である。世界規模の市場を含む厳しいグローバル競争環境において、革新的な技術優位性の確立が戦略の中核に据えられている。1
持続的な成長を実現するためのIHIの資本配分戦略については、「グループ経営方針2023」において具体的な数値目標が示されている。同方針では、継続的に1,000億円以上の営業キャッシュ・フロー(創出目標)を創出し、期間中3ヵ年を対象期間とする総額4,500億円の投資枠(計画)を設定する方針が提示されている。この投資原資は、営業キャッシュ・フロー、構造改革、資産売却等を通じて捻出する計画が示されている。投資の使途としては、成長事業や育成事業への技術開発、知的財産の獲得、および設備投資が含まれる。人財マネジメント上の課題については、「グループ人財戦略2023」での取り組みの方向性を2024年7月22日の取締役会で報告しており、経営的観点から経営陣が人財マネジメントに関するディスカッションを行う人財委員会や経営会議への定期的な報告のほか、人事部が展開する人財マネジメント施策について人事担当管理職が意見を交わす体制が構築されている。1
知的財産に関する基本方針において、IHIは知的財産を重要な経営資源の一つとして明確に位置づけており、社会課題の解決と顧客の価値向上に資する形態で事業領域に活用する方針を示している。「IHI統合報告書 2025」の「イノベーション・マネジメント」の項目においては、ものづくり技術を中核とするエンジニアリング力によってソリューションを提供し続ける姿勢が記載されている。知財ポートフォリオと事業ポートフォリオは密接に連動して議論されており、中長期的に目指すポートフォリオの構築に向けて技術・知財の最適化が進められている。「技術担当役員メッセージ」(35ページ)においては、IHIの技術戦略や競争優位性の源泉についての方針が述べられており、「価値創造プロセス図」(14ページ)においては、経営資本としての知的資本の位置づけが示されている。また、「多様なコア技術をつなぎ、束ねることで、本質的な課題とニーズを把握し、価値連鎖を創造する」というバリューチェーンの創造を軸とした技術戦略が説明されている。1
特許保有実績に関する具体的な数値については、公表されている一次情報間で複数のデータが提示されている。「IHI統合報告書 2025」の「イノベーション・マネジメント」の項目内では、特許取得件数(実績)が598件、特許保有件数(実績)が8,016件(うち国内4,029件、海外3,987件)と報告されている。一方で、「IHI Sustainability Data Book 2024」においては、特許保有件数(実績)が8,172件(うち国内4,094件、海外4,078件)と記載されている(一次情報間で不一致)。情報セキュリティ対策レベル評価については、同報告書の「情報セキュリティの強化」の項目において5点満点中3.8点(実績)を獲得しており、顧客や取引先の機密情報、および会社の経営情報や技術情報を確実に保護する体制が運用されていることが記載されている。知的財産に関する個別のKPI項目は「IHI統合報告書 2025」の財務データ表には設けられていないものの、統合報告書のインタラクティブ化を進めるための見直しとして、サステナビリティデータとして継続的に開示する方針がとられている。1
環境対応技術の領域において、IHIは「IHIカーボンニュートラル2050」の実現に向けた取り組みを推進しており、その中核として燃料アンモニアのバリューチェーン事業の収益化と社会実装に注力している。アンモニアは燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないという特性を有しており、将来の持続可能なエネルギー技術としての発展が期待されている。同社は、JERA碧南火力発電所4号機において、熱量の20%に相当する燃料アンモニアの大量転換実証試験を実施し、これを完了した実績がある。この実証試験に用いられた「Ammonia Co-Firing Burner for Coal-Fired Power Plant Boilers(Patent No. 7049773、出願日2017年)」は、2025年の「National Commendation for Invention」においてInvention Awardを受賞した。同賞の授賞式には、コーポレートリサーチ&デベロップメント部門やカーボンソリューションビジネスユニットの共同開発者が参加している。当該実証試験では、燃焼性(安定性および窒素酸化物排出濃度)、プラント操作性、安全性の全評価基準において良好な結果が得られており、社会実装に向けた有力な脱炭素ソリューションとしての評価を獲得している。1
アンモニア燃焼技術の適用範囲は、石炭火力発電所の混焼技術にとどまらず、ガスタービン分野へも拡大している。2026年3月18日、IHIは公式提携先であるGE Vernovaと共同で、GE VernovaのFクラスガスタービンに適合するフルスケールのコンポーネントを使用し、全負荷条件に一致する圧力、温度、流量において100%アンモニア燃焼の実証に成功したことを発表している。このプロジェクトは、燃焼時のCO2排出量を削減またはゼロにすることで、エネルギーセクターの脱炭素化に貢献する計画である。また、世界初の液体アンモニア専焼ガスタービンの開発も進行している。4
船舶分野の技術展開においても、IHIはアンモニア燃料の利活用モデルの開発に取り組んでいる。同社は、アンモニア燃料舶用レシプロエンジンを開発し、世界初の商用利用を前提としたアンモニア燃料タグボート「魁」の実証航海を成功させた。このアンモニア燃料エンジンは、アンモニア燃料混焼率およびGHG(温室効果ガス)削減率として最大約95%(実績)を達成し、排気中に含まれるアンモニアおよびN2O(亜酸化窒素)の濃度を排気後処理装置の後段においてほぼゼロに抑えることに成功している。この技術的成果が評価され、同技術は2025年6月18日に開催されたCIMAC Congress 2025においてCIMAC会長賞を受賞した。さらに、アンモニアをカーボンフリー燃料としてグローバルに普及させるための取り組みとして、国際標準化に向けた技術仕様(ISO/TS 21343)の作成活動にも参画している。アンモニア燃料分野における研究開発と社会実装へ向けた一連の取り組みは、日本エネルギー学会からも賞を授与されるなど、外部から高い評価を獲得している。4
脱炭素分野およびクリーンエネルギー分野における研究開発は、アンモニア技術以外にも多岐にわたる。2026年3月16日、IHIは米国のX-energyと高温ガス炉分野における協業検討の覚書(MOU)を締結し、次世代の原子力エネルギーの活用に向けた体制構築を進めている。エネルギー需要の拡大やデータセンター関連の需要増を背景として、原子力分野における設備投資も視野に入れた事業展開が予定されている。さらに、「大気からエネルギーを生む技術」の開発にも挑戦しており、持続可能な社会インフラに向けた広範な技術的探求が継続されている。8
IHIは、技術戦略の一環としてデジタル技術の導入とビジネスプロセスの変革(DX)を推進している。「IHI統合報告書 2025」においては、DX戦略が企業変革を加速するための重要な柱として独立したセクション(37ページ)で説明されている。デジタル化を単なる業務ツールやシステムの導入にとどめず、企業文化、人財、および多様なコア技術を結合させるための重要な手段として位置づけ、バリューチェーン全体を俯瞰する視点から施策を実行する方針である。社会基盤分野においては、インフラの維持管理に関する新たなアプローチとして、市民を巻き込む仕組みを取り入れたスマートフォンアプリ「水門アクアリウム」の開発が行われている。このようなデジタルツールの積極的な活用を通じて、インフラの保守管理作業の効率化と社会的な関与の向上を目指している。1
グローバルな事業展開を支える組織基盤として、2025年3月31日時点を対象期間とする会社概要データによれば、海外事業開発拠点が20カ所、海外関係会社が131社(子会社110社、関連会社21社)存在している。「IHI統合報告書 2025」の「財務データ」の項目によれば、2024年度(2025年3月期)を対象期間とする海外売上収益率(実績)は53.7%に達しており、2023年度を対象期間とする45.1%の実績から上昇している。同社は、研究開発の拠点をグローバルに展開するとともに、国際的な環境規制や技術標準化の動向に対応した技術開発を進めている。持続的な成長を実現するため、研究開発投資の継続と知財化の推進、およびグローバル市場での収益化に向けた戦略的な活動が維持されている。1
「IHI統合報告書 2025」(発行日:2025年9月30日)の「財務データ」の項目によれば、2024年度(2025年3月期)を対象期間とする研究開発費(実績)は340億円(IFRS)と報告されている。同様に、同資料の同項目において、2023年度を対象期間とする研究開発費(実績)は393億円(IFRS)、2022年度を対象期間とする研究開発費(実績)は340億円(IFRS)であったことが示されている。同時に、同報告書の「イノベーション・マネジメント」の項目内においては、対象期間の明記がない研究開発費用(実績)として399億円という数値も明記されている(一次情報間で不一致)。1
直近の四半期業績として、「2026年3月期 第3四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(公表日:2026年2月10日)によれば、当第3四半期連結累計期間(2025年4月1日~2025年12月31日)の売上収益(実績)は1兆1,293億3,900万円となり、前年同期比で1.8%(206億円)の減収となった。減収の要因として、防衛事業の拡大や車両過給機での需要拡大・販価改善があったものの、中核事業における事業譲渡に伴う減収や前年同期の大型工事進捗の反動が挙げられている。同四半期連結累計期間の営業利益(実績)は1,025億3,600万円であり、前年同期比で0.9%(9億円)の微減となった。営業利益の売上収益に対する利益率は9.1%である。2026年3月期通期の連結業績予想としては、売上収益1兆6,400億円(前期比0.8%増)、営業利益1,600億円(前期比11.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,250億円(前期比10.9%増)を見込んでいる。8
2026年3月期 第3四半期におけるセグメント別の売上収益および営業損益(いずれも当第3四半期累計・実績)は以下の通りである。資源・エネルギー・環境事業の売上収益は2,570億円(前年同期比15.4%減)、営業利益は26億円(前年同期比76.3%減)となった。社会基盤事業の売上収益は970億円(前年同期比1.4%増)、営業損益は7億円の損失(前年は31億円の損失)であった。産業システム・汎用機械事業の売上収益は3,299億円(前年同期比5.8%減)、営業利益は287億円(前年同期比872.1%増 ※構造改革費用の反動等)となった。航空・宇宙・防衛事業の売上収益は4,238億円(前年同期比12.3%増)、営業利益は706億円(前年同期比25.3%減)であった。全体の営業利益の減少要因として、決算短信の経営成績の概況には「民間向け航空エンジンでの整備費用の増加や研究開発費等販管費の増加」が利益を押し下げる要因であったと明記されている。当第3四半期連結累計期間の「販売費及び一般管理費」の合計実績は1,726億3,100万円(前年同期は1,626億8,300万円)と増加している。ただし、この販管費に含まれる研究開発費単独の累計額の具体的な数値については、今回の調査では未確認(PDF図表で該当箇所を特定できず)である。8
IR情報の公開運用に関し、同社は四半期ごとに決算短信および決算説明資料の開示を実施している。公式IRページに掲載されている「決算短信・決算説明資料」のバックナンバーによれば、2020年2月6日には「2020年3月期 第3四半期決算短信」が、2019年11月1日には「2020年3月期 第2四半期決算短信」が、2019年8月7日には「2020年3月期 第1四半期決算短信」がそれぞれ公表されている。同様に、2018年、2012年、2011年、2010年、2009年の各四半期においても決算短信および決算説明資料の継続的な開示が行われており、投資家に対する情報提供の体制が整備されている。11
技術開発および事業活動を支えるサステナビリティとコンプライアンス体制に関する指標が、「IHI統合報告書 2025」において多数報告されている。IHIおよび国内・海外連結子会社のQMS(品質マネジメントシステム)認証取得率(実績)は79%(認証対象となる72拠点のうち57拠点)に達しており、提供する製品・サービスの安全性の確保や顧客およびユーザーの満足度向上に向けた運用がなされている。社会貢献活動の支出総額(実績)は483百万円(前年度比49百万円減)であった。コーポレート・ガバナンスの強化策として、役員報酬の業績連動賞与(年次インセンティブ)において、ESG経営の推進を目的とした「ESG指標」が導入されている。1
コンプライアンスの徹底に関する指標として、コンプライアンス・ホットラインの通報件数(実績)は246件(うちコンプライアンス違反認定件数9件)であった。また、競争法違反件数(実績)は1件、贈賄禁止法違反件数(実績)は0件と報告されている。事業の継続、役員および従業員とその家族の安全確保、経営資源の保全、社会的信用の確保を目的としたリスク管理の徹底が図られており、リスク管理に関する取り組み方針の策定、課題の抽出および是正措置の検討が実施されている。事業部門および本社部門各々の役割と責任を明確化し、リスク管理活動を遂行することで、知的財産の保護を含む安定的な事業運営体制を維持している。1
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