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富士電機の知財戦略:コア技術と事業成長を牽引する知財ランドスケープと標準化の統合

3行まとめ

知財ランドスケープ分析を30件超のプロジェクトに適用し、攻めの知財経営を実践

富士電機は特許情報や学術論文データを活用した知財ランドスケープ分析を製品開発の初期段階から導入し、FY2024には30件以上のプロジェクトに適用。未参入の新規事業領域における開発テーマ策定にも活用し、データ駆動型の意思決定を推進している。

成長・新分野の発明提案比率を62%から72%へ引き上げ、R&D投資は397億円規模に拡大

GX・DX関連の成長分野および燃料転換・熱の電化などの新分野における発明提案比率を、FY2023実績の62%からFY2026目標の72%へ10ポイント引き上げる計画を掲げる。研究開発費もFY2025計画で397億円に増額し、新製品売上高をFY2023比1.2倍以上とする目標を設定している。

国際標準化・オープンイノベーションで知財の市場支配力を拡張

各事業本部長で構成される国際標準化委員会を設置し、GX領域では規格の草案段階からルールメイキングに関与。さらに東北大学との先端技術共創研究所の設立やスタートアップ2社への出資など、外部共創を通じて次世代の知財獲得基盤を強化している。

エグゼクティブサマリ

知財戦略と経営統合の全体像 富士電機株式会社は、知的財産を自社の持続的な事業成長を牽引するための極めて重要な経営資源として明示的に位置付けている。公式統合報告書「Fuji Electric Report 2025」の「Research and Development / Intellectual Property(研究開発・知的財産)」セクションによれば、同社は明確な知的財産方針の下、知的財産権の戦略的な獲得と活用を通じて製品の競争優位性を確保することを第一の基本方針として掲げている。同社の事業モデルは、1923年の創業以来培われてきた中核技術を基盤とし、エネルギーの供給側から需要側に至るまで広範なシステムソリューションを提供するものである。この事業モデルを支えるため、知的財産活動は単なる法的な権利保護の枠組みにとどまらず、研究開発部門、製造部門、および調達部門と緊密に連携する「横ぐし戦略(Cross-functional Strategy)」の一環として機能している。中長期的には、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)といった成長分野の事業および製品を対象とした知的財産活動を全社的に強化する方針を示す。脱炭素社会への移行とデジタル化の進展という世界的なマクロトレンドに対応し、クリーンエネルギーの創出、エネルギーの安定供給、省エネルギー化、さらには生産現場の自動化に寄与するソリューション群を強力な特許網で保護・強化することが、同社の経営における最重要課題の一つとなっている。1

コア技術と戦略的研究開発投資 同社の技術的基盤は、「パワー半導体(Power Semiconductors)」、「パワーエレクトロニクス(Power Electronics)」、「計測・制御技術(Measurement and Control Technology)」、および「冷熱技術(Thermal Technology)」の4つのコア技術によって構成されている。これら4分野のシナジーを追求することで、革新的な製品の創出を目指す方針を掲げる。この技術戦略を裏付けるため、同社は大規模な研究開発投資を継続的に実行している。公式資料によれば、研究開発費(実績)は2020年度の33,562百万円から、2021年度に33,756百万円、2022年度に36,216百万円、2023年度に36,059百万円、そして2024年度(FY2024)には37,822百万円へと着実に増加している。さらに、2025年度(FY2025)の計画として、研究開発費を前年度実績から18億円増額した39,700百万円(資料表記:397億円。換算式:1億円=100百万円)とする予算方針を示している。この増額分は、主に成長分野および新分野に対する開発リソースの拡充に充当される計画である。研究開発ポートフォリオは「現状分野(I)」「成長分野(II)」「新分野(III)」の3層に分類されており、特にFY2030以降の市場拡大を見据えた「新分野(III)」においては、燃料転換、熱の電化システム、CO2分離回収などの最先端GX技術の獲得に向けた重点的な投資が行われる構造となっている。2

知財ランドスケープ分析と発明提案ポートフォリオ 新製品の創出および市場分析力の飛躍的な向上を図るため、富士電機株式会社は「知財ランドスケープ(IP Landscape)」分析を積極的に導入し、実践している。同報告書によれば、公開された特許情報や学術論文のデータを活用して技術動向や主要業界プレイヤーの動向を可視化し、製品開発の初期段階における戦略的な意思決定を支援する体制を構築している。FY2024の実績として、この知財ランドスケープ分析は30件以上のプロジェクトに対して適用された。この分析手法は、同社がまだ参入していない新規事業領域における新たな開発テーマの策定にも用いられており、将来の競争優位性を担保する羅針盤として機能している。ポートフォリオ戦略のKPI(重要業績評価指標)としては、成長分野(GXDX)および新分野(燃料転換、熱の電化など)に関連する発明提案の比率向上を掲げる。FY2023実績において、これら成長・新分野における発明提案の比率は全提案の62%を占めていた。同社は、FY2026の目標としてこの比率を10ポイント増加させ、72%に引き上げる計画を示す。また、製品化の成果を測る指標として「新製品売上高(過去5年以内に市場投入された製品による売上高)」を設定し、FY2026計画においてこれをFY2023実績の1.2倍以上に拡大する目標を掲げている。知財分析、発明提案、および財務的成果を直結させる高度な技術経営を実践している。1

オープンイノベーションと外部共創エコシステム 自社内の研究開発リソースに依存するだけでなく、外部の知見や先端技術を戦略的に取り込むオープンイノベーションを推進し、知財エコシステムの拡張を図っている。学術機関との連携における具体的な実績として、202411月に宮城県の東北大学内に「富士電機×東北大学先端技術共創研究所(Fuji Electric × Tohoku University Advanced Technology Co-creation Research Institute)」を設立した。この共創研究所の設立は、同社のコア技術であるパワーエレクトロニクスおよびパワー半導体分野における基礎研究を産学連携によって強化することを目的としている。また、スタートアップ企業に対する出資を通じた技術獲得も進行している。FY2024の実績として、同社はAI技術を活用した外観検査システムや生産ライン最適化技術を有する「Futsuper」へ出資し、スマートファクトリー事業の基盤強化を図った。同時に、独自の固溶体合金ナノ粒子製造技術を保有する「Illumines」にも出資し、次世代パワー半導体や触媒向けの高性能材料開発におけるブレークスルーを目指す体制を整えた。さらに、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトに参画し、伊藤忠商事株式会社と共同でアンモニア燃料船向けの漏洩センサーおよび残留アンモニア回収装置の開発を推進している。多角的な共創活動を通じて、次世代の知財獲得基盤を強化している。2

国際標準化・ルールメイキングを通じた市場形成 グローバル市場における事業展開を加速させるため、国際標準への対応およびルールメイキング活動を経営の重要戦略として実践している。同社の国際標準化に関する方針と戦略は、各事業本部長をメンバーとする「国際標準化委員会(International Standardization Committee)」によって決定される。策定された方針は、特定事業分野ごとのワーキンググループを通じて国内外の標準化団体に対する具体的な活動へと移行する。特にGX領域のような新分野においては、規格の草案作成段階から関与するルールメイキング活動を推進している。FY2024の実績として、同社は一般社団法人日本電機工業会(JEMA)と共同で、生産現場におけるインバータや太陽光発電設備などの導入に伴うCO2排出削減量を認証・可視化する新システムの実証実験に参画した。このシステムは、自社の省エネ製品がもたらす環境貢献を「グリーンバリュー(green value)」として客観的に証明し、環境意識の高い顧客に対する製品の付加価値を高めることを企図したものである。保有する特許技術を自社製品の差別化に用いるだけでなく、国際標準というルールを通じて市場全体にその優位性を定着させ、事業リスクを低減しつつ持続的な収益機会を確保する戦略構造となっている。1

Evidence Index

 

発行体(会社名)

ドメイン

文書名

発行日

種別

URL

富士電機株式会社

fujielectric.co.jp

Fuji Electric Report 2025

2025年

統合報告書

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_11.pdf

富士電機株式会社

fujielectric.co.jp

Fuji Electric Report 2025 (Full PDF)

2025年7

統合報告書

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all.pdf

富士電機株式会社

fujielectric.co.jp

Fuji Electric Report 2025 (Strategy Web)

2025年

統合報告書(公式IRページ)

https://www.fujielectric.co.jp/ir/library/detail/ar2025_strategy_01.html

富士電機株式会社

fujielectric.co.jp

IR Library Index

2026年1月(アクセスランキング対象期間等に基づく)

公式IRページ

https://www.fujielectric.co.jp/ir/library/index.html

富士電機株式会社

fujielectric.co.jp

IR News Index

2026年326

公式ニュース

https://www.fujielectric.co.jp/ir/news/index.html

富士電機株式会社

fujielectric.co.jp

2025年度 第3四半期 決算説明資料

2026年129

決算説明資料

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/20260129_1.pdf

富士電機株式会社

fujielectric.co.jp

2024年度 決算説明資料

2025年425

決算説明資料

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/20250425_3.pdf

IRイベント表

 

種別

公表日(または予定日)

対象期間/FY

根拠URL

決算説明会(通期)

2026年428日(予定)

FY2025

https://www.fujielectric.co.jp/ir/news/index.html

役員人事異動発表

2026年326

該当なし(202641日効力発生)

https://www.fujielectric.co.jp/ir/news/index.html

株主様向け報告書公開

2026年220

FY2025

https://www.fujielectric.co.jp/ir/news/index.html

新製品(ECS-V8)ニュースリリース

2026年25

FY2025

https://www.fujielectric.co.jp/ir/news/index.html

決算発表・決算説明資料(第3四半期)

2026年129

FY2025 3Q

https://www.fujielectric.co.jp/ir/news/index.html

統合報告書(Fuji Electric Report 2025)発行

2025年88

FY2024実績/FY2025計画等

https://www.fujielectric.co.jp/ir/news/index.html

市場シェア/ポジション表

 

品目ラベル(公式表記)

シェア・ポジション(公式表記)

対象期間または出典資料名

掲載場所

根拠URL

Geothermal Power (Ngatamariki, 140MW)

world’s largest single-unit capacity geothermal plant at the time

2010年稼働開始実績

Fuji Electric Report 2025

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all.pdf

Geothermal Binary Power (Takigami Binary Power Plant, 5,050kW)

one of Japan’s largest geothermal binary power generation facilities

2017年納入実績

Fuji Electric Report 2025

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all.pdf

Mega-Solar Power combined with storage batteries (Suzuran Kushiro-cho)

one of Japan’s largest of its kind

2020年稼働開始実績

Fuji Electric Report 2025

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all.pdf

Centralized monitoring and control system for electric power companies (using FACOM-R)

Japan’s first

1971年開発実績

Fuji Electric Report 2025

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all.pdf

UPS using IGBT technology

world’s largest capacity at that time

1992年開発実績

Fuji Electric Report 2025

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all.pdf

知財対応表

特許番号

発明名称(公式表記)

出願人・権利者

根拠

JP

未確認候補(特開2025-27046等)

半導体装置および半導体装置の製造方法

今回の調査では未確認

今回の調査では未確認(民間サイトIP Forceの示唆のみであり、公的DBで照合不可)

組織・拠点スナップショット

 

研究開発組織(公式表記)

拠点(公式表記)

根拠ページ名

URL

R&D Strategy Unit

調査範囲内では確認できず

Fuji Electric Report 2025

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all.pdf

富士電機×東北大学先端技術共創研究所

宮城県(東北大学内)

Fuji Electric Report 2025

https://www.fujielectric.co.jp/ir/library/detail/ar2025_strategy_01.html

国内連結子会社(20社)

国内

Fuji Electric Report 2025

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all.pdf

海外連結子会社(48社)

インド、タイ等(東南アジア)

Fuji Electric Report 2025

https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all.pdf

本文

1. 知財戦略の中核的役割と全社横断的アプローチ

富士電機株式会社は、知的財産を自社の事業継続および長期的な成長を支える最重要の経営資源として定義し、その獲得と活用を経営の根幹に据えている。公式統合報告書「Fuji Electric Report 2025」の「Research and Development / Intellectual Property」セクションにおいて、同社は明確な知的財産方針に基づき、特許権などの知的財産権を戦略的に獲得および活用することで、自社製品の競争優位性をグローバル市場において確保する役割を担うことを示している。同社の知的財産活動は、単一部門内で完結するものではなく、研究開発部門、製造(モノづくり)部門、および調達部門が広範に連携する「横ぐし戦略(Cross-functional Strategy)」の中核的要素として機能している。サプライチェーン全体を通じた温室効果ガス(GHG)排出削減やサーキュラーエコノミーの推進といった環境課題の解決において、知財部門が部門間連携のハブとなり、技術的な解決策を権利化することで事業の保護と拡張を図る体制が構築されている。中長期的な方針として、同社はGX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)に関連する成長分野の事業および製品群を重点的な知財活動の対象としている。ブランドプロミスであるエネルギー技術の革新の追求と、エネルギーを最も効率的に使用する製品の創出を担保するため、知財活動は経営戦略と不可分の構造となっている。1

2. 研究開発投資の推移と財務的裏付け

同社の知財創出の源泉となる研究開発活動は、継続的かつ大規模な財務投資によって裏付けられている。公式統合報告書「Fuji Electric Report 2025」の「Research and Development / Intellectual Property」セクションに記載された研究開発費(R&D Expenses)の実績数値は以下の通りである。2020年度(FY2020)の実績として33,562百万円が計上された研究開発費は、2021年度(FY2021)実績で33,756百万円、2022年度(FY2022)実績で36,216百万円、2023年度(FY2023)実績で36,059百万円、そして直近の2024年度(FY2024)実績においては37,822百万円へと着実な増加傾向を示している。さらに、将来の技術革新を見据えた投資として、2025年度(FY2025)の予算方針においては研究開発費を前年度実績から18億円増額し、39,700百万円(資料表記:39.7 billion yen397億円。換算式:1億円=100百万円)とする計画を掲げている。この投資額の拡大は、全社的な安定した収益基盤によって支えられている。「2024年度 決算説明資料(2025425日公表)」によれば、同社のFY2024の全社売上高(実績)は1,123,400百万円(資料表記:11,234億円)、営業利益(実績)は117,600百万円(資料表記:1,176億円)であり、営業利益率(実績)は10.5%を記録した。FY2021の実績における営業利益率が5.5%であった事実と比較し、収益性の向上が確認される。全社レベルの利益創出能力の向上が、知財基盤を強化するための継続的な研究開発投資を可能にしている。2

3. 技術領域別ポートフォリオの構造と進化

富士電機株式会社の研究開発および知財獲得の対象領域は、技術の成熟度と市場の成長性に基づいて明確に3つの階層に分類され、ポートフォリオ管理されている。「Fuji Electric Report 2025」の「R&D Portfolio and Investment」セクションにおいて、第一の領域は「現状分野(Current Fields - I)」と定義されている。この領域は、現行事業の維持・拡大を主目的としており、次世代プログラマブルコントローラ、エレベータ用インバータ、自然エステル変圧器などの次世代機器開発、製品競争力の強化、および技術プラットフォームの拡大に投資が集中する。第二の領域は「成長分野(Growth Fields - II)」である。ここでは、FY2026までにGXDX関連技術、およびグローバル新製品を市場投入することで、全社の成長戦略を直接的に牽引する役割を担う。具体例として、電気自動車(EV)向けおよび再生可能エネルギー向けのパワー半導体モジュール、並びにエネルギーマネジメントプラットフォームの開発がこの領域に含まれる。そして第三の領域が、FY2030以降の長期的な市場拡大を見据えた「新分野(New Fields - III)」である。同社はこの領域において、「燃料転換(fuel conversion)」、「熱の電化システム(heat electrification systems)」、「CO2分離回収(CO2 separation and recovery)」といった未踏のGX技術の獲得と、これに基づく全く新しい製品群の創出を目指す方針を示す。これら3つの領域への戦略的な資源配分により、短期的なキャッシュカウの保護と長期的な次世代技術の権利化を同時並行で進める構造となっている。2

4. 知財ランドスケープ分析の導入と実践

新製品の創出プロセスにおいて市場分析力と知財戦略を融合させるため、富士電機株式会社は「知財ランドスケープ(IP Landscape)」分析手法を経営の意思決定に組み込んでいる。「Fuji Electric Report 2025」の「Intellectual Property Strategy」セクションによれば、同社は製品開発の初期段階(early stages of product development)から知財ランドスケープ分析を積極的に活用し、市場における自社製品の高い競争力を確保する方針を採っている。この手法の具体的な実践として、世界中で公開されている特許情報や最新の学術論文の膨大なデータを分析し、マクロな技術トレンドの推移や主要な競合プレイヤーの研究開発動向を可視化している。FY2024の実績において、同社はこの知財ランドスケープ分析を30件以上の開発プロジェクトに対して横断的に適用した。特筆すべきは、この手法が既存事業の延長線上にある製品改良のみならず、同社がこれまで参入していない新規事業領域における新たな開発テーマの策定(formulating new development themes in business areas the company has not yet entered)にも活用されている点である。単なる侵害予防や他社特許の回避といった守りの知財活動から脱却し、データ駆動型のアプローチによって次世代の市場機会を特定し、そこに資源を集中投下するための攻めのツールとして知財情報が活用されている。1

5. 発明提案のKPI管理と次世代製品の創出

同社は、研究開発投資の成果が確実に将来の収益へと結びつくよう、知財活動および製品開発に対して明確な定量的KPI(重要業績評価指標)を設定している。「Fuji Electric Report 2025」の「IP Portfolio and Metrics」セクションによれば、同社は単純な特許保有総数の拡大ではなく、将来の事業戦略に合致した領域における良質な発明提案を増やすことに重きを置いている。具体的には、成長分野(GXDX)および新分野(燃料転換、熱の電化など)に関連する発明提案の比率向上を重要目標としている。FY2023の実績において、これら成長・新分野における発明提案の比率は全提案の62%であった。これに対し、FY2026の計画として、同社はこの比率を10ポイント増加させ、72%に引き上げる目標(FY2026 Target)を掲げている。また、開発された技術を市場価値へと変換する指標として、「新製品売上高(過去5年以内に市場投入された製品による売上高)」を設定している。FY2026の計画において、この新製品売上高をFY2023実績の1.2倍以上に拡大する目標を示す。保有する特許ポートフォリオは、各事業の主要技術に基づいて事業ごとに管理されており、事業ステータスの変化に応じて特許の維持(メンテナンス)や放棄といったポートフォリオの最適化作業が継続的に実施されている。これにより、無駄な特許維持コストを削減しつつ、事業リスクを最小化する効率的な知財マネジメントを実現している。2

6. オープンイノベーションを通じた知財エコシステムの拡張

自社内部の研究開発リソースのみに留まらず、外部の先端知見や技術を戦略的に取り込むオープンイノベーション戦略が、富士電機株式会社の知財活動の重要な柱となっている。学術機関との連携(Academia)の具体例として、同社は202411月に宮城県の東北大学内に「富士電機×東北大学先端技術共創研究所(Fuji Electric × Tohoku University Advanced Technology Co-creation Research Institute)」を設立した。「Fuji Electric Report 2025」によれば、この研究所の目的は、同社のコア技術であるパワーエレクトロニクスおよびパワー半導体分野における基礎研究を産学共創によって加速することにある。また、スタートアップ企業に対する出資(Startups)を通じた外部技術の獲得も進行している。FY2024の実績として、同社は2社のスタートアップへの出資を実施した。1社目は「Futsuper」であり、同社はAI技術を活用した外観検査システムや生産ラインの最適化技術を有している。この出資は、富士電機が推進する「スマートファクトリー(Smart Factory)」事業の基盤強化に直結する。2社目は「Illumines」であり、同社は独自の固溶体合金ナノ粒子製造技術を保有している。この技術は、次世代のパワー半導体や触媒に向けた高性能材料の開発に活用される。さらに、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進するプロジェクトに参画し、伊藤忠商事株式会社と共同でアンモニア燃料船向けの漏洩センサーおよび残留アンモニア回収装置の開発を進めている。アンモニアは次世代のクリーン燃料として期待されており、この領域での共創は「新分野(III)」における「燃料転換」戦略と深く合致している。2

7. 国際標準化およびルールメイキングの戦略的展開

優れた技術を開発し特許を取得するだけでなく、その技術が市場で適正に評価される環境を構築するため、富士電機株式会社は「国際標準化(International Standardization)」および「ルールメイキング活動(Rule-making)」を極めて重要視している。「Fuji Electric Report 2025」の「International Standardization and Rule-making」セクションによれば、同社における標準化のガバナンス体制は、各事業本部のトップ(heads of each headquarters)を委員として構成される「国際標準化委員会」によって統括されている。ここで策定された戦略は、事業分野ごとのワーキンググループを通じて、具体的な標準化機関に対する活動へと移行する体制である。特にGX領域などの新たな市場形成期にある分野において、同社は受け身の対応ではなく、国内外の標準規格の草案作成段階(drafting stages)から積極的に関与するルールメイキング活動を展開している。FY2024の具体的な実績として、同社は一般社団法人日本電機工業会(JEMA)と共同で、生産現場におけるインバータや太陽光発電設備などの省エネ製品の導入に伴うCO2排出削減量を認証し、可視化する新システムの実証実験に参画した。この取り組みは、自社の製品が提供する環境貢献を「グリーンバリュー(green value)」として客観的に証明するシステムを構築するものである。業界標準の形成を通じて環境配慮型製品の付加価値を高め、顧客に対する訴求力を強化することで、自社特許製品の市場における競争力を間接的かつ持続的に保護する仕組みを機能させている。1

8. セグメント別事業戦略と知財の連動(エネルギー・半導体分野)

富士電機株式会社の知財戦略は、エネルギー、インダストリー、半導体、食品流通の4つの主要な事業セグメントにおける経営課題と密接に連動して展開されている。「2024年度 決算説明資料(2025425日公表)」の記載によれば、「エネルギー」セグメントは、発電設備やエネルギーマネジメントシステムを提供する同社のGX戦略を体現する事業である。同セグメントにおけるFY2024の売上高(実績)は354,300百万円(資料表記:3,543億円)、営業利益(実績)は36,300百万円(資料表記:363億円)であった。FY2025の計画として、同社は売上高を374,500百万円(資料表記:3,745億円)、営業利益を46,500百万円(資料表記:465億円)へと増加させる目標を設定している。この成長の背景として、再生可能エネルギーの導入拡大、データセンター(IDC)や半導体工場の新設に伴う膨大なエネルギー需要、および老朽化した設備の更新需要が挙げられている。同社はこれらの需要に応えるため、生産能力の増強とともにプロジェクトマネジメントを強化する方針を示す。一方、「半導体」セグメントは、産業用および自動車用パワー半導体の開発・製造を担う同社のコア領域である。同セグメントにおけるFY2024の売上高(実績)は236,800百万円(資料表記:2,368億円)、営業利益(実績)は37,100百万円(資料表記:371億円)であり、営業利益率(実績)は15.7%に達した。FY2025の計画において、同社は売上高223,000百万円(資料表記:2,230億円)、営業利益21,500百万円(資料表記:215億円)を見込む。同資料によれば、電気自動車(EV)市場の成長ペースには想定を下回る鈍化が見られるものの、再生可能エネルギー向けの需要は引き続き堅調に推移している。この市場環境の変化に対応し、同社は需要動向に合わせて生産能力拡大のための投資スピードを柔軟に調整しつつも、将来の競争力を左右する研究開発投資については継続する方針を明示している。3

9. セグメント別事業戦略と知財の連動(インダストリー・食品流通分野)

「インダストリー」セグメントは、インバータ、モータ、サーボシステム、制御機器、測定機器の提供を通じて、多様な生産現場の省エネと自動化に直接的に貢献している。「Fuji Electric Report 2025」によれば、同分野では既存のハードウェア技術に加え、AIIoT技術を融合させたスマートファクトリーソリューションの開発が進行しており、前述のスタートアップ「Futsuper」への出資等もこのセグメントの知財戦略を補完するものである。「食品流通」セグメントにおいては、自動販売機や店舗向けソリューションが主要な製品群である。「2024年度 決算説明資料」によれば、同セグメントのFY2024の売上高(実績)は111,500百万円(資料表記:1,115億円)、営業利益(実績)は13,900百万円(資料表記:139億円)であった。FY2025の計画として、同社は売上高105,000百万円(資料表記:1,050億円)を見込んでいる。FY2024における好業績の要因として、高付加価値製品の市場展開に加え、新紙幣発行に伴う機器の更新対応需要(currency update response)が存在したことが記載されている。FY2025に向けた戦略として、同社は既存の領域にとどまらず、レストランチェーンや一般食品流通といった新規分野への開拓能力を強化する方針を示す。この方針を裏付ける具体的な製品展開として、同社は202625日の公式ニュース(IR News)において、セルフレジの普及拡大を支援する省スペース型の新しい自動釣銭機「ECS-V8」の発売を公表した。各セグメントにおける個別の製品市場シェア(パーセンテージでの具体的な数値)については、有報(直近FY)・決算短信(直近4四半期)・統合報告書(直近版)・公式IR/公式ニュース(直近24ヶ月)を確認した範囲では、当該情報を一次情報として特定できない(調査範囲内では確認できず)。同社は、これら4つのセグメントごとに事業戦略と知財ポートフォリオを高度に連動させ、全社的な成長を持続させている。3

未確認/到達性まとめ

  • 有報(直近FY)・決算短信(直近4四半期)・統合報告書(直近版)・公式IR/公式ニュース(直近24ヶ月)を確認した範囲では、当該情報を一次情報として特定できない(調査範囲内では確認できず)。
    • 特許の具体的な保有総件数(ルール1に基づき、別会社ドメインco.jpの資料を排除したため)
    • 各事業セグメント(エネルギー、インダストリー、半導体、食品流通)内における個別の製品市場シェアの具体的なパーセンテージ数値
    • IRカレンダーに記載される配当支払日等の詳細(ルール1に基づき、別会社ドメインfujifilm.comの資料を排除したため)
  • 今回の調査では未確認
    • 特許番号(特開2025-27046等)および発明名称の詳細(民間検索サービスIP Force上での存在示唆はあるものの、公的特許DBの一次情報で権利者や内容の照合を完了できていないため)
  • 参照リンクにアクセスできず

引用文献

  1. 研究開発・知的財産 - 富士電機, 4 9, 2026にアクセス、 https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_11.pdf
  2. 富士電機レポート2025 | 富士電機, 4 9, 2026にアクセス、 https://www.fujielectric.co.jp/ir/library/detail/index09.html
  3. 環境への配慮 社外からの評価 - 富士電機, 4 9, 2026にアクセス、 https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/ar2025_all.pdf
  4. 2024年度決算説明会 ごあいさつ - 富士電機, 4 9, 2026にアクセス、 https://www.fujielectric.co.jp/common-resource/ir/data/20250425_3.pdf
  5. 過去のニュース | 富士電機, 4 9, 2026にアクセス、 https://www.fujielectric.co.jp/ir/news/index.html

 

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【本レポートについて】

本レポートは、公開情報をAI技術を活用して体系的に分析したものです。

情報の性質

  • 公開特許情報、企業発表等の公開データに基づく分析です
  • 2025年12月時点の情報に基づきます
  • 企業の非公開戦略や内部情報は含まれません
  • 分析の正確性を期していますが、完全性は保証いたしかねます

ご利用にあたって
本レポートは知財動向把握の参考資料としてご活用ください。 重要なビジネス判断の際は、最新の一次情報の確認および専門家へのご相談を推奨します。

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