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長谷工コーポレーションの知財戦略:技術・品質基盤とサステナビリティ駆動型の研究開発ポートフォリオ分析

3行まとめ

新中期経営計画に基づく技術開発の強化とBIMの全面活用

長谷工コーポレーションは新中期経営計画「HASEKO Evolution Plan」において技術開発を経営の柱に据え、2021年に構築した100%BIM活用体制を基盤として建設プロセスの全社的な変革を進めています。

累計72万戸超の施工実績を支えるDXによる生産性向上

国内マンションストックの約10%にあたる累計726,455戸の大規模な施工実績を支えるため、ICTやロボットを活用して測量業務の人員50%削減や検査作業の工数約30%削減など、現場の生産性向上に直結する成果を上げています。

2050年脱炭素化に向けた環境技術と木造化戦略の加速

独自方針「HASEKO ZERO-Emission」に基づき建設現場の使用電力100%再エネ化を完了したほか、2028年4月本格稼働予定の新工場を通じた国産材「HS Wood」の製造など、持続可能な社会の実現に向けた技術実装を推進しています。

この記事の内容

エグゼクティブサマリ

観点1:中期経営計画「HASEKO Evolution Plan」と事業・技術戦略の統合

長谷工コーポレーションは、持続的な企業価値向上と社会課題解決の両立を志向し、経営の根幹に技術開発と知的財産の創出を据えている。20252月に発表された新中期経営計画「HASEKO Evolution Plan20263月期~20313月期)」において、同社は「住まい」と「暮らし」のリーディングカンパニーとしての地位を確立する方針を示している。この計画の柱として「技術開発の強化」が明記されており、既存の事業基盤を磨き上げる「継承」と、グループの枠組みを進化させる「変革」を組み合わせた持続的成長が企図されている。具体的な技術展開の方向性としては、持続可能な生産体制の構築と建設領域の拡大を目指すとともに、メタバース、スマートシティ、ヘルスケア、フード・アグリ、建材製造といった新領域への研究および事業拡大の計画が示されている。同社は1968年に初の自社管理マンションを建設して以来、実績を蓄積しており、726,455戸(202512月末時点・実績・公式IRページ)という累計マンション施工実績を有し、日本のマンションストックの約10%に相当する規模を構築している。また、市場占有率として、33.9%(202512月末時点・実績・公式IRページ)を首都圏で、19.0%(202512月末時点・実績・公式IRページ)を近畿圏で獲得している実績が報告されている。これらの大規模な事業展開を支えるための研究開発は、環境配慮型住宅の企画開発や維持管理コストの低減といった具体的な技術成果として現れており、事業活動そのものを通じて持続可能な社会の実現に貢献する企業理念が具現化されている。1

観点2:技術研究所を中心とした研究開発・実証インフラの展開と組織体制

同社の技術開発と実証を物理的に支える中核拠点が「長谷工コーポレーション技術研究所」および「長谷工テクニカルセンター」である。技術研究所は、マンションの長寿命化、耐震性強化、CO2削減等の環境課題対応を主目的とし、居住者が長期間にわたり安全で快適に暮らせる集合住宅の実現に向けた研究開発を推進している。同研究所には「住宅実験棟」「多目的実験棟(環境実験エリア、材料実験エリア、構造実験エリア)」「音響実験棟」といった専用施設が整備されており、実物大の振動実験や各種性能評価が日常的に実施されている。研究分野は、構工法、地盤基礎、躯体材料、内装、外装、設備、環境、木造・木質、ロボット・DXICT9つのカテゴリに分類され、多角的な技術アプローチが行われている。さらに、20183月に開設された長谷工テクニカルセンターは、技術研究所、長谷工マンションミュージアム、グループ技術研修センター、アウル24センターなどの施設を集約した複合拠点である。202310月には、同センター内に設けられたビオトープが環境省から「自然共生サイト」として認定された。この事実は、同社の技術開発インフラが単なる建築性能の検証施設にとどまらず、生物多様性の保全と環境共生技術の実証環境として統合的に機能していることを示している。5

観点3:建築基盤技術(構造・地盤・材料・設備)の高度化と生産性向上の具体的成果

構工法、地盤基礎、躯体材料、および設備領域における技術開発は、建設生産プロセスの合理化と建物の長寿命化を直接的に推進している。構造分野では、高強度鉄筋を用いた現場打ちコンクリート杭工法や、角形鋼管を用いた「異幅柱接合部工法」、床スラブの拘束効果を利用して横補剛材を省略する「鉄骨梁の横座屈補剛工法」などが開発されている。さらに、設計基準強度150N/mm²の超高強度コンクリート「Fc150」の設計・施工指針の策定により、超高層RC造建物のスリム化が実現されている。ひび割れ制御においては、増打ち不要でひび割れを誘発目地へ誘導する「CCB-NAC工法」が導入されている。地盤基礎分野では、現地の土と固化材・気泡を混合する「HLS地盤改良工法」や、杭頭の径を拡大して免震装置を設置する「拡頭杭免震構法」が確立されている。設備インフラ技術においては、スリーブ穴埋め作業を上階のみで完結させる「ストック共用水栓管更新工法」や、重力・水勾配に依存せず間取りの自由度を高める「サイホン排水システム」、災害時の汚物閉塞を防ぎ水道復旧後に高圧洗浄機で洗い流せる「マンホールトイレ『汚物捕捉装置』」など、既存ストックの長寿命化および防災対応を強化する独自技術が多数実用化されている。5

観点4:デジタルトランスフォーメーション(BIM/ICT/ロボット)による建設プロセスの変革

デジタルトランスフォーメーション(DX)と建設生産プロセスの革新において、同社は「長谷工版BIM」を基軸とした技術展開を推進している。2021年には、マンションの設計・施工において100BIMを活用する体制が構築され、設計情報の一次元管理による干渉チェックや図面間の整合性確認、3D可視化による意思決定の迅速化が実現された。このBIM技術は、単なる設計ツールにとどまらず、施工現場の支援システムとの統合による生産性向上に寄与している。20241122日には、日本コントロールシステムとの共同開発により、根切り(掘削)工事における測量業務を自動化し、測量専任者を不要とすることで50%(数値)人員(単位)自動化システム導入時(対象期間)実績(区分)『ニュースリリース(20241122日)』(出典)の削減を達成したことが報告されている。施工管理のICT化としては、コンクリート硬化時の強度発現を遠隔監視するRFIDセンサーシステムや、排水管ボール試験を自動化し作業時間を約30%削減する「DrainTrace」、画像データから施工部位の厚さを自動算出する厚さ計測システムが導入されている。さらに、小型床清掃ロボット「HRXスイーパーS HIPPO」の実装や、独自の「BIMビューア」を用いた販売センターでのVR内覧システムの展開など、施工現場から販売・顧客接点に至るまで、ICT・ロボティクス技術の全社的な統合が進められている。3

観点5:「HASEKO ZERO-Emission」に基づくサステナビリティ・木造化技術の実装と知財創出動向

気候変動対応と環境技術、ならびに建築の木造化戦略において、同社は20211216日に制定した長谷工グループ気候変動対応方針「HASEKO ZERO-Emission」に基づき、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた目標を掲げている。再生可能エネルギーの導入に関しては、202011月より現場での切り替えを開始し、20255月末時点で長谷工コーポレーションの建設現場(対象外を除く)における使用電力の100%再生可能エネルギー化を完了した。環境配慮型材料の開発においては、独自開発のH-BAコンクリートに加え、再生骨材を利用した低炭素型コンクリート「CELBIC-RA」の実用化・商用化が202526日に発表された。木造化・木質化の推進分野では、一方向ラーメン構造と耐力壁を組み合わせた木造架構システム「P&UA構法」の開発が進められており、国産スギ材を用いた新素材「HS Wood」の製造を行う奈良県五條市の新工場が20258月に着工され、20284月の本格稼働を目標としている。知的財産ポートフォリオについては、J-PlatPatのデータにおいて、3(数値)件(単位)2026年(対象期間)実績(区分)『J-PlatPat 出願公開件数ランキング(2026216日時点)』(出典)の特許出願公開が確認されており、「現場打ち杭工法と吸着剤入り逸泥防止材(特開2026-23671)」や「管路の構造、及び、管路の更新工法(特開2026-11511)」など、開発された技術を継続的に権利化し、事業競争力を保護する知財戦略が機能している。3

Evidence Index

 

発行体

文書名/ページ名

発行日/最終更新日

種別

URL

長谷工コーポレーション

2025年3月期 決算短信 補足資料

2024/09/30

決算補足資料

https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20250930/20250930565088.pdf

長谷工コーポレーション

新中期経営計画「HASEKO Evolution Plan」概要

2025/09/30

公式ニュース

https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20251001/20250930565110.pdf

長谷工コーポレーション

長谷工グループ統合報告書 2025

2025/09/30

統合報告書

https://www.haseko.co.jp/hc/csr/pdf/integrated_report_2025.pdf

長谷工コーポレーション

109期(20263月期)中間報告書

2025/12/05

公式IR

https://www.haseko.co.jp/hc/ir/library/pdf/20251205_1.pdf

長谷工コーポレーション

108期(20253月期)期末報告書

2025/06/27

公式IR

https://www.haseko.co.jp/hc/ir/library/pdf/20250627_2.pdf

長谷工コーポレーション

108期(20253月期)中間報告書

2024/12/05

公式IR

https://www.haseko.co.jp/hc/ir/library/pdf/20241205_1.pdf

長谷工コーポレーション

2026年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

2026/02/12

決算短信

https://www.haseko.co.jp/hc/ir/news/upload_files/20260212_1.pdf

長谷工コーポレーション

長谷工コーポレーション技術研究所 公式ページ

2025/02/06

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/

長谷工コーポレーション

構工法 - 長谷工コーポレーション技術研究所

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/construction/

長谷工コーポレーション

地盤基礎 - 長谷工コーポレーション技術研究所

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/ground/

長谷工コーポレーション

躯体材料 - 長谷工コーポレーション技術研究所

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/material/

長谷工コーポレーション

内装 - 長谷工コーポレーション技術研究所

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/interior/

長谷工コーポレーション

設備 - 長谷工コーポレーション技術研究所

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/infrastructure/

長谷工コーポレーション

環境 - 長谷工コーポレーション技術研究所

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/environment/

長谷工コーポレーション

木造・木質 - 長谷工コーポレーション技術研究所

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/wooden/

長谷工コーポレーション

ロボット・DXICT - 長谷工コーポレーション技術研究所

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/cutting_edge/

長谷工コーポレーション

施設紹介(住宅実験棟)

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/layout/hl.html

長谷工コーポレーション

施設紹介(環境実験エリア)

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/layout/m_laboratory/eea.html

長谷工コーポレーション

施設紹介(材料実験エリア)

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/layout/m_laboratory/mea.html

長谷工コーポレーション

施設紹介(構造実験エリア)

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/layout/m_laboratory/sea.html

長谷工コーポレーション

施設紹介(音響実験棟)

Not Disclosed

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/tri/layout/sound.html

長谷工コーポレーション

長谷工テクニカルセンター 公式ページ

2023/10

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/htc/

長谷工コーポレーション

ニュースリリース(プレスリリース一覧)

2026/02/02

公式ニュース

https://www.haseko.co.jp/hc/information/press/index.html

長谷工コーポレーション

技術・品質(長谷工版BIM)公式ページ

2026/02/12

公式PJページ

https://www.haseko.co.jp/hc/technology/bim/

長谷工コーポレーション

IRライブラリ(有価証券報告書等)

2026/02/12

公式IR

https://www.haseko.co.jp/hc/ir/library/financial.html

長谷工コーポレーション

IRライブラリ(決算説明資料等)

2026/02/12

公式IR

https://www.haseko.co.jp/hc/ir/library/presentation.html

長谷工コーポレーション

コーポレートサイト トップページ

2026/02/17

公式サイト

https://www.haseko.co.jp/hc/

INPIT

J-PlatPat 特許出願・登録ランキング情報

2026/02/16

公的DB

https://ipforce.jp/applicant-4201/publication

長谷工コーポレーション

HASEKO ZERO‐Emission 公式ページ関連情報

2021/12/16

公式ポリシー

https://www.haseko.co.jp/hc/csr/environment/climate.html/

VANE

企業ニュース:HASEKO ZERO-Emission

2023/07/04

公式ニュース転載

https://vane.online/2023/07/04/%E9%95%B7%E8%B0%B7%E5%B7%A5%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%81%AE%E6%B0%97%E5%80%99%E5%A4%89%E5%8B%95%E5%AF%BE%E5%BF%9C%EF%BD%9E2050%E5%B9%B4%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%83%8B/

主要案件クロノロジー

 

案件名

Announcement

Effective(Event)

Completion

状態ラベル

根拠

長谷工版BIMの設計・施工100%体制構築

Not Disclosed

2021年

Not Disclosed

稼働/提供開始

6

長谷工グループ気候変動対応方針「HASEKO ZERO-Emission」制定

2021年1216

2021年1216

Not Disclosed

完了

8

新中期経営計画「HASEKO Evolution Plan」策定

2025年2

Not Disclosed

Not Disclosed

完了

1

長谷工コーポレーション建設現場の使用電力100%再生可能エネルギー化

Not Disclosed

Not Disclosed

2025年5月末

完了

8

長谷工グループ全建設現場の使用電力100%再生可能エネルギー化計画

Not Disclosed

2025年末

Not Disclosed

計画/方針

8

HS Wood製造工場(奈良県五條市)着工

Not Disclosed

2025年8

Not Disclosed

稼働/提供開始

3

霞ヶ浦PCa工場(茨城県)本格稼働

Not Disclosed

Not Disclosed

2025年10

稼働/提供開始

3

根切り工事における測量専任者不要化(50%人員削減)システム統合

2024年1122

2024年1122

Not Disclosed

稼働/提供開始

6

低炭素型コンクリート CELBIC-RA 実用化・商用化発表

2025年26

2025年26

Not Disclosed

稼働/提供開始

3

HS Wood製造工場 本格稼働目標

Not Disclosed

2028年4

Not Disclosed

計画/方針

3

組織・施設スナップショット(As-of 2026/02/20

技術研究所の研究組織(分野)一覧表

※公式ページにおいて特定のセンター名を列挙したリストが存在しないため、指定された数を断定した表記については特定できず(Not Disclosed)。Gate-10に基づき、明示されている「研究・技術分野(9領域)」の列挙に代替して記載する。

 

研究分野名(公式表記)

根拠ページ名

URL

構工法

構工法 - 長谷工コーポレーション技術研究所

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/construction/

地盤基礎

地盤基礎 - 長谷工コーポレーション技術研究所

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/ground/

躯体材料

躯体材料 - 長谷工コーポレーション技術研究所

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/material/

内装

内装 - 長谷工コーポレーション技術研究所

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/interior/

外装

外装 - 長谷工コーポレーション技術研究所

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/exterior/

設備

設備 - 長谷工コーポレーション技術研究所

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/infrastructure/

環境

環境 - 長谷工コーポレーション技術研究所

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/environment/

木造・木質

木造・木質 - 長谷工コーポレーション技術研究所

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/wooden/

ロボット・DXICT

ロボット・DXICT - 長谷工コーポレーション技術研究所

https://www.haseko.co.jp/tri/archives/cutting_edge/

研究施設一覧表

※公式ページでは以下の施設が紹介されている。

 

施設名(公式表記)

根拠ページ名

URL

住宅実験棟

施設紹介(住宅実験棟)

https://www.haseko.co.jp/tri/layout/hl.html

多目的実験棟(環境実験エリア)

施設紹介(環境実験エリア)

https://www.haseko.co.jp/tri/layout/m_laboratory/eea.html

多目的実験棟(材料実験エリア)

施設紹介(材料実験エリア)

https://www.haseko.co.jp/tri/layout/m_laboratory/mea.html

多目的実験棟(構造実験エリア)

施設紹介(構造実験エリア)

https://www.haseko.co.jp/tri/layout/m_laboratory/sea.html

音響実験棟

施設紹介(音響実験棟)

https://www.haseko.co.jp/tri/layout/sound.html

1. 経営計画と連動する技術開発・知財投資の基本方針

長谷工コーポレーションは、建設業界が直面する労働力不足や環境負荷といった社会課題の解決と、企業価値の向上を両立させるため、中長期的な視点に基づく技術戦略を策定している。20252月に策定された新中期経営計画「HASEKO Evolution Plan20263月期~20313月期)」において、同社は「住まい」と「暮らし」のリーディングカンパニーとしてのビジョンを掲げている。この経営計画の中で、経営基盤を強化するための中核的な柱として「技術開発の強化」が明確に位置付けられている。同社は、既存の強みをさらに高める「継承」のアプローチと、グループ全体を進化させる「変革」のアプローチを融合させることで、持続的な成長を実現する方針を示している。技術的注力領域としては、持続可能な生産体制の構築、建設領域の拡大に加え、新たな事業領域であるメタバース、スマートシティ、ヘルスケア、フード・アグリ、建材製造への挑戦が挙げられている。これらの取り組みは、設計・施工から維持管理・修繕に至るまで、建設生産プロセスの全段階における効率化と品質向上を目的としている。1

同社の事業基盤を支える技術的な優位性の一つが、設計部門と施工部門が一体となって機能する「設計・施工一貫体制」である。2024年における同社のマンション建設プロジェクトの95%がこの一貫体制によって実施されている実績が報告されている。このシステムにより、施工現場で得られた知見や物理的制約に関するデータが設計段階に即座にフィードバックされ、高い施工品質の維持と生産性の向上が図られている。また、建設事業部門の評価基準として「商品企画力」と「効率的な生産体制」が設定されており、これが直接的に研究開発の方向性を規定している。研究開発における投資額(R&D費用)の具体的な数値について、2026/02/20時点で、有報・決算短信・統合報告書・公式IR(直近24ヶ月)を確認した範囲では、当該情報を一次情報として特定できず(Not Disclosed)。しかしながら、SPARKプロジェクトと呼ばれる社内新規事業提案制度を創設し、従業員からの新たな製品やサービスのアイデアを奨励するなど、イノベーション文化の醸成に向けた無形資産への投資が継続的に行われている事実が確認されている。3

全社的な業績規模として、893,096(数値)百万円(単位)20263月期第3四半期累計(対象期間)実績(区分)『20263月期 第3四半期決算短信』(出典)の売上高、および63,831(数値)百万円(単位)20263月期第3四半期累計(対象期間)実績(区分)『20263月期 第3四半期決算短信』(出典)の営業利益を計上している。この強固な財務基盤を背景に、同社は大規模なプロジェクトを通じた技術実装を推進している。その代表例が、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けた取り組みである。長谷工コーポレーションは、石黒浩氏がプロデュースするテーマ事業「いのちの未来」シグネチャーパビリオンのプラチナパートナーとして参画している。このパビリオンの開発において、同社は無機物と有機物を繋ぐ生命の象徴としての「水」に着目し、外装材に「膜」を用いたファサード技術を開発した。屋根から外壁を伝って水がカスケード状に流れ落ちる「水膜」ファサードの実現に向け、長谷工コーポレーションの大阪エンジニアリング事業部が設計協力を担い、同社および富士古河E&Cが共同で施工を実施している。こうした特殊プロジェクトを通じた要素技術の蓄積は、将来の集合住宅や都市基盤施設への技術転用を見据えた戦略的な投資行動の一環として機能している。3

2. 研究開発を牽引する施設基盤と技術検証体制

長谷工コーポレーションの技術戦略を物理的なインフラとして支える中核拠点が「長谷工コーポレーション技術研究所」である。同研究所は、「安全で、安心で、快適な、長く住み続けられる集合住宅」の創造を目指し、建物の長寿命化、耐震性の強化、CO2削減等の環境課題解決を主目的とした研究開発を遂行している。敷地内には高度な性能検証を可能とする複数の実験施設が整備されており、主要な施設として「住宅実験棟」「多目的実験棟」「音響実験棟」が稼働している。住宅実験棟では集合住宅に関連する総合的な居住性能試験が行われ、多目的実験棟はさらに専門性の高い「環境実験エリア」「材料実験エリア」「構造実験エリア」の3つの領域に分割されている。環境実験エリアでは温熱や空気環境の評価が、材料実験エリアでは各種建築資材の耐久性・物理特性試験が、構造実験エリアでは実大スケールの部材を用いた構造性能や完全性の評価がそれぞれ実施されている。音響実験棟は、集合住宅において重要となる床衝撃音や界壁の遮音性能など、音響性能の評価と改善に特化した専用施設である。3

これらの物理的施設において展開される研究活動は、建築の要素技術を網羅する9つの主要カテゴリに分類されている。具体的には「構工法」「地盤基礎」「躯体材料」「内装」「外装」「設備」「環境」「木造・木質」「ロボット・DXICT」の分野において、新技術の創出と既存技術の改良が並行して進められている。例えば、構造・外装分野の研究の一環として、実大スケールの5階建ておよび10階建ての建物を対象とした振動台実験が実施されており、地震発生時の構造体および外装材の動的挙動や損傷メカニズムの詳細な分析が行われている。このように、実験室レベルの基礎研究から、実大スケールでの検証、そして実際の建設現場への適用へと至る一連の技術開発プロセスが、技術研究所という単一の拠点内でシームレスに連携して機能している。3

技術研究所と並ぶもう一つの重要な施設基盤が、20183月に長谷工グループの創立80周年記念事業の一環として開設された「長谷工テクニカルセンター」である。同センターは、居住者の視点に立った安全・安心で快適な暮らしを実現するための研究、技術開発、および人材育成の機能を集約した複合拠点である。センター内には、前述の技術研究所に加え、マンション建築技術と商品開発の歴史を体験的に学習できる「長谷工マンションミュージアム」、高品質なマンション管理の専門人材を育成する最新機能を備えた「グループ技術研修センター」、および緊急情報や住まいのトラブルに24時間365日対応する監視拠点「長谷工コミュニティ アウル24センター」が併設されている。また、2018年の開設に合わせて同センター敷地内に整備された「ビオトープ」は、多様な生物を育む自然空間として機能しており、その継続的な生態系保全活動の成果として、202310月に環境省から「自然共生サイト」としての公式認定を取得している。この認定は、同社の技術開発が単なる建物の性能向上にとどまらず、生物多様性の確保や地域環境との共生というESG領域の目標と深く結びついて実証されていることを示している。6

3. 主要研究分野における技術開発実績と社会実装

3.1 構工法および地盤基礎分野における構造最適化技術

長谷工コーポレーションの技術研究所は、地震や地盤沈下等の自然災害に対する建物の安全性と、施工の合理化を両立させるための構工法および地盤基礎技術の開発に注力している。構工法の分野では、高品質かつ安全で快適な居住空間を実現するための技術群が実用化されている。高強度鉄筋を用いた現場打ちコンクリート杭工法は、従来の鉄筋よりも強度の高い主筋を採用することで、構造設計の合理化を図るとともに、現場での施工性および品質の向上を実現している。角形鋼管を用いた「異幅柱接合部工法」では、接合パネルと上階柱の間に最大150mmの径差を許容する設計手法が確立されている。また、「床スラブの拘束効果を考慮した鉄骨梁の横座屈補剛工法」は、シアコネクタを介して鉄骨梁と連続的に結合された床スラブの拘束効果を利用し、従来必要とされていた横補剛材の省略を可能とする技術である。さらに、誘発目地にけい砂と繊維入りエポキシ樹脂を混合して充填し、壁のひび割れ挙動を吸収する多孔質メカニズムを形成する「多孔質樹脂砂(PRS)目地充填工法」や、バルコニーの眺望を妨げることなく、幅広扁平梁・補強柱・補強間柱からなるフレームを既存建物に直接取り付ける耐震補強技術「長谷工ノンブレス補強フレーム工法」などが開発されている。3

高層化と居住性向上のための構造技術として、「超高強度材料(Fc150)設計・施工指針」が策定されており、設計基準強度が150N/mm²の超高強度コンクリートを用いることで、超高層RC造建物のさらなる高層化と構造部材のスリム化が可能となっている。これに関連して、設計基準強度120N/mm²を用いた「Fc120超高層RC造建物構造設計指針」も独自に開発されている。施工の省力化技術としては、通常は梁の中央部に位置する機械式継手を柱梁接合部(仕口)内に統合した「仕口内継手工法」や、柱梁接合部を梁と一体化したプレキャスト部材として製造することで工期を大幅に短縮する「柱梁接合部プレキャスト工法」が導入されている。壁面のひび割れ制御においては、コンクリートの増打ちを必要とせず、無開口のRC耐震壁における収縮ひび割れを誘発目地へと誘導する「CCB-NAC工法(鉄筋挿入型ひび割れ制御・増打ち不要)」が実用化されている。居住空間の開放感向上に向けては、幅広扁平梁とハイサッシを組み合わせた「HCFB工法(幅広扁平梁架構)」や、柱型を持たない複数階にわたる耐震壁(コアウォール)を主要な抵抗要素とし、間取りレイアウトの自由度を高める「コアウォール架構」が展開されている。既存建物の耐震補強手法としては、柱と非構造壁(袖壁や腰壁など)の間に高精度の部分スリットを設けて柱の変形性能を向上させる「柱の部分スリット工法」や、柱の外側に鉄筋コンクリートを増打ちして変形性能を高める「柱増打ち補強工法」、さらにはエネルギー吸収材として鋼材を用い、低コストかつ高いメンテナンス性を実現した「低降伏点鋼を用いた制震ダンパー」が提供されている。5

地盤基礎の分野においては、地震、液状化、斜面崩壊、地盤沈下等によるマンション構造への被害を完全に根絶することを目標とした研究が推進されている。地盤改良技術である「HLS地盤改良工法」は、現地の土に水、固化材、および気泡を混合して軽量土を生成する手法である。環境配慮型の技術としては、杭汚泥の固化処理において従来のセメント系固化材の代わりに竹チップを用いる「竹チップによる杭汚泥の固化処理技術」が開発されており、セメント製造・使用に伴うCO2排出量の削減に寄与している。杭工法においては、既存杭を引き抜いた後の空隙内に静的締固め砂杭工法を用いて適切な強度の砂杭を構築する「HiFill-CP工法」や、鉛直支持力と引抜き抵抗力の向上を目的として、杭の中間部や先端部に拡径部を設ける場所打ちコンクリート杭工法「HND-NB工法」が実用化されている。また、基礎免震構法として、杭頭部の径を拡大し、その拡大された杭頭上に免震装置を直接設置する「拡頭杭免震構法」が開発されている。さらに、場所打ち杭用の杭頭半固定工法である「キャプテンパイル工法」は、プレキャストコンクリートリング(PCリング)を杭頭に被せて杭と基礎を接合する独自の手法である。5

3.2 躯体材料の進化とコンクリート技術の高度化

建築構造を構成する躯体材料の研究領域において、長谷工コーポレーションは建物の長期耐久性の確保と環境負荷の低減を両立させるための材料技術の開発に取り組んでいる。環境配慮型材料の代表例として「H-BAコンクリート(長谷工版環境配慮型コンクリート)」が挙げられる。これは、一般的なコンクリートと同等の施工性を維持しつつ、材料由来のCO2排出量を削減する目的で開発された技術である。さらに、高炉スラグ微粉末を活用し、建築構造物に必要な品質を確保しながらCO2排出量を削減する環境配慮型コンクリート「CELBIC」の研究も推進されている。耐久性と強度の追求においては、国土交通大臣の認定を取得した設計基準強度150N/mm²の「高強度コンクリート(Fc150)」が実用化されている。この高強度コンクリート特有の課題である、火災等の高温下で表層が剥離・脱落する「爆裂現象」を抑制するため、コンクリート中にポリプロピレン樹脂粉末を混入する「高強度コンクリートの爆裂防止工法」の研究が行われている。5

コンクリート構造物の長期的な維持管理に向けては、耐久性を向上させるための「コンクリートひび割れ低減技術」の実用化に向けた取り組みが継続されている。加えて、既存のRC造架構の劣化状況を調査し、将来の劣化進行をシミュレーションする「RC造架構の劣化予測プログラム」が開発されている。このプログラムにより、長期にわたる供用を保証するための適切な建物管理および修繕計画の立案が可能となっている。5

3.3 内外装および設備インフラ技術における居住性向上

内装・外装および設備領域の研究開発は、マンションの品質、生産性、および市場競争力を高めるために多岐にわたる展開を見せている。内装技術においては、居住者のライフスタイルや家族構成の変化に合わせて、個室、リビング・ダイニング、収納のスペース配分を柔軟に変更できる可動収納システム「UGOCLO Plus(ウゴクロプラス)」が開発されている。下地材・仕上げ材としては、セルフレベリング材を改良し、床の自己平滑性を維持しながら必要な断熱性能を提供する高流動床用湿式断熱材「タイガー断熱フローHC」や、高度な施工技能を要するカーテンボックスを工場加工化することで現場作業の削減を図る「カーテンレール内蔵の樹脂製カーテンBOX」が実用化されている。また、電気式床暖房システムにおいて、既存の床を剥がすことなく直接施工が可能で、同社独自の遮音床暖房システムの仕様を維持できる床材「暖cer-R(ダンサーR)」や、遮音性能と間取りの可変性を向上させる「床先行二重床HBYSシステム」、さらには傷や汚れに対する高い耐性を持ち、施工時の損傷を低減し日常のメンテナンスを容易にする内装建材「リノ・シリーズ」が展開されている。5

外装技術においては、安全性の向上と意匠性を両立させるため、安全水切り(Safety Mizukiri)、R-HatS-Formworkといった専用部材の開発が行われている。改修工事や再生可能エネルギー対応としては、太陽光パネルの低基礎設置工法や、リニューアル工事専用の太陽光パネル架台の研究が進められている。建具や換気システムに関連しては、ALC無溶接工法、ユニット型手すり、および網戸と面格子を一体化した換気サッシ等の技術が開発されている。5

設備インフラ技術の領域では、給排水システムおよび換気設備の革新に向けた研究が行われている。CO2排出量の削減、施工性の向上、配管清掃の容易化、および避雷設備工事の簡略化を目的として「全樹脂製屋上換気システム(HC-VC/HC-VCR)」が開発されている。既存ストック向けには、スリーブ穴埋め作業を上階からのみで完結させ、下階での作業を不要とする「ストック共用水栓管更新工法」や、排水溝の轍を排水枝管ソケットまで特殊塩化ビニル管で一体的に覆い、漏水の原因を根本的に排除する「HJインコア工法」、さらには排水口や配管の径を大きく変更することなく新築同等の排水性能を維持する「シート防水ルーフドレン改修工法」が実用化されている。給水システムにおいては、汎用ステンレス鋼管の端部にロールグルーブ加工を施し、ハウジング型継手で接続する「SAPS工法(ステンレス給水プレハブ配管システム)」や、従来品の配管修繕コスト、重量、施工効率の課題を改善し、同社専用のメーターボックスに適合するよう改良された「新メーターユニット」が提供されている。また、ポリエチレンを配管材料として用いることで、従来の免震継手の施工性と耐久性の課題を解決した「水道用ポリエチレン免震継手配管」や、クボタケミックスとの共同開発による、電気融着を必要としない「ポリエチレン管用継手」がマンションの共用給水管接続用に導入されている。重力や水勾配に依存せず排水を行うことで、間取り設計の自由度を飛躍的に高める「サイホン排水システム」も重要な設備技術の一つである。災害対策設備としては、マンホールトイレが汚物で閉塞するのを防ぎ、水道復旧後に家庭用高圧洗浄機で下水道へ洗い流せるように設計された「マンホールトイレ『汚物捕捉装置』」が開発されており、同社が設計・施工するマンションには「防災3点セット(WELL UPシステムなど)」の導入が推進されている。5

3.4 環境技術と音響・温熱・空気環境のシミュレーション

環境研究の分野において、同社は居住環境と周辺環境の双方を最適化するための分析および評価技術を深化させている。室内空気環境に関しては、建築基準法の改正以前からシックハウス症候群に関する実態調査と研究を実施しており、法的要求事項に加えて独自の自主基準に基づく運用を行っている。換気性能については、各種換気部材の性能を実験的に確認するとともに、数値解析を用いた最適な換気設計の提案が行われている。また、室内および共用部における結露の発生要因を調査し、有効な対策を立案するための技術が確立されている。空調設備の効率化に向けた取り組みとして、エアコン室外機の排気が再び吸い込まれて効率が低下する「ショートサーキット」現象を数値シミュレーションによって予測・判定する技術が導入されている。周辺の風環境については、計画の初期段階から数値流体力学(CFD)解析を実施し、設計者に対して最適な風環境の提案を行っている。さらに、自然風を利用して環境に配慮した排気を行う風向追従型換気装置「Wing Jetter System(標準型および中型)」が開発され、マンションだけでなく病院、介護施設、学校等にも採用されている。5

音響および音環境の研究においては、3Dマイクを用いたシステムにより音の強さの空間分布を測定し、音源の360度の位置を可視化する技術が運用されている。外部騒音(交通騒音など)の侵入を抑制しつつ必要な換気量を確保する製品として、一般的な防音スリーブの性能を上回る「サイレントスリーブ」や「高性能防音ガラリ(高遮音低圧損換気口)」が開発されている。また、建物構造体を伝わる固体伝播音の低減に向けた研究が、現地調査、伝播メカニズムの解析、および机上推定手法を通じて進められている。新規構工法を導入する際には、数値シミュレーションを用いて重量床衝撃音を予測し、建物の音響性能が基準を満たすことを事前に確認するプロセスが組み込まれている。5

4. デジタルトランスフォーメーションとICT・ロボティクスの実装

建設業界が直面する労働力不足の課題に対応し、生産性と品質を飛躍的に向上させるため、長谷工コーポレーションはロボット工学、ICT、およびデジタルトランスフォーメーション(DX)技術を建設生産プロセスに積極的に統合している。同社のDX戦略の基盤となる中核技術が、コンピューター上に建物の形状、空間構成、および部品の数量、材質、仕様などの属性データを含む3Dモデルを構築する「長谷工版BIM」である。2021年には、同社のマンション設計・施工において100BIMを活用するシステムが構築された。このBIMシステムは、マンションの設計、施工から維持管理に至るライフサイクル全体での活用を前提としており、設計情報の一次元管理による干渉チェックや図面間の整合性確認、3D可視化による関係者間の意思決定の迅速化を実現している。3

施工現場における具体的なDXおよび自動化技術の実装例として、IoTセンサーとICT機器の連携システムが挙げられる。20241122日には、日本コントロールシステムとの共同開発により、長谷工版BIMと施工支援システムを統合し、根切り(掘削)工事における測量業務を自動化するシステムが稼働を開始した。これにより測量専任者を不要とし、当該作業における50%(数値)人員(単位)自動化システム導入時(対象期間)実績(区分)『ニュースリリース(20241122日)』(出典)の削減を達成したことが報告されている。品質管理の面では、「RFIDセンサーシステム」が導入されており、温度センサーを搭載したRFIDタグを用いてコンクリートが硬化する過程での強度発現を遠隔から監視している。また、建物完成時に実施される排水管のボール試験作業を自動化するシステム「DrainTrace」は、この検査作業に必要な工数を約30%削減することに成功している。画像解析技術を用いた「厚さ計測システム」は、施工前後の画像データをコンピューターに取り込み、プログラム解析によって施工部位の厚さを自動的に算出する仕組みである。現場の省力化を図るためのロボット技術としては、スイッチを押すだけで容易に清掃を開始できる小型軽量の床清掃ロボット「HRXスイーパーS HIPPO」が導入されている。5

顧客接点の高度化と営業部門におけるDXの推進においては、BIMデータをすべてのマンション住戸タイプ向けに「早く、安く、きれいに」3D CG化する長谷工独自の「BIMビューア」アプリが開発されている。販売センターにおいてこのビューアを営業ツールとして活用することで、物理的なモデルルームが12タイプに限定される制約を超え、顧客はVR機器を通じて任意の住戸タイプを仮想的に内覧したり、カラーセレクトのシミュレーションを体験したりすることが可能となっている。さらに、ICTを活用した居住環境の質的向上に向けた取り組みとして、睡眠科学の知見を取り入れた「快眠のための住環境に関する研究」が行われており、最適な温度・湿度設定、内装材への木材の利用(木質化)、およびサーカディアンリズム照明を用いて、居住者の睡眠を促進するスマートホーム機能の創出が進められている。5

生産体制の工業化(プレキャスト化)もDXと連動して進められている。生産性の向上と品質の安定化を図るため、同社はPCa(プレキャストコンクリート)工法による部材製造を拡大している。茨城県の霞ヶ浦に建設された自社PCa工場は202510月に本格稼働を開始した。この施設では「最新のPCa床板製造ライン」を活用し、年間4,000戸分以上の内部床PCa部材を製造し、関東圏内の建設現場へ供給する体制が構築されている。これにより、現場作業の削減と持続可能な生産体制の確立が目指されている。3

5. 気候変動対応と環境・サステナビリティ技術

長谷工グループは、気候変動を世界的な社会課題として認識し、持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定の枠組みに沿った事業運営を推進している。同社は2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、20211216日付で長谷工グループ気候変動対応方針「HASEKO ZERO-Emission」を制定した。この方針に基づき、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明し、Science Based TargetsSBT)に準拠したCO2排出量の削減目標の設定と認定取得に向けたプロセスを進めている。8

環境負荷の低減に向けた具体的な実行計画として、同社は建設現場における使用電力の再生可能エネルギーへの転換を強力に推進している。202011月から順次進められてきたこの取り組みにより、20255月末時点で、長谷工コーポレーションの建設現場(着工後の再エネ電力への切替申請中現場、および引渡前の電力会社との本受電への切替済現場を除く)において、使用電力の100%再生可能エネルギー化が完了したことが報告されている。さらに、不二建設、長谷工リフォーム、細田工務店等を含む長谷工グループの全建設現場の使用電力についても、2025年末までに100%再生可能エネルギーへ切り替える目標が示されていた。この目標の達成状況について、2026/02/20時点で公式IR/公式ニュース/公式PJページ(直近24ヶ月)を確認したが、状態更新を一次情報で特定できず(Not Disclosed)。8

建設生産プロセスそのものからのCO2排出削減に向けた材料技術の開発も加速している。同社独自開発の環境配慮型コンクリートである「H-BAコンクリート」(コンクリート由来のCO2排出量を約20%削減)の積極的な採用提案が行われている。さらに、202526日には、再生骨材を利用した低炭素型コンクリート「CELBIC-RA」の実用化・商用化が技術研究所より発表された。このプロジェクトは13社による共同事業として進行しており、低炭素社会の実現と建築資材の資源循環の促進を目的としている。また、施工現場における重機の電動化の推進や、環境配慮型燃料であるGTL燃料・バイオディーゼルB5の積極的採用、およびバイオディーゼルB100の試験採用が進められている。3

マンションそのものの環境性能向上としては、ZEH-MNet Zero Energy House Mansion)の普及拡大が中核的な戦略として位置付けられている。同社は、強化外皮基準(断熱性能の向上)を満たし、省エネによる一次エネルギー消費量を基準値から20%以上削減した「ZEH-M Oriented」の積極的な採用提案を行っており、自社開発マンションについては2022年度以降、すべてZEH-M Oriented化する方針を定めている。また、デベロッパーがZEH-M Orientedの性能基準を満たすマンションを設計するための仕様検討支援ツールも独自に開発し、提供している。さらに、集合住宅の敷地内に植栽された中高木が大気中から吸収し、幹に蓄積するCO2の量を定量化する研究が行われており、建築物と造園の両面から炭素固定に寄与するソリューションが提供されている。これらの総合的な環境対応およびサステナビリティ経営の取り組みが評価され、2026113日には、同社として初めてCDP「気候変動」の最高評価であるAリストに認定されたことが発表されている。4

6. 木造化技術の事業化と木質資源カスケード

環境負荷の低減と持続可能な社会の実現を目指す中で、建築の木造化および木質化は同社の重要な技術戦略の一つとなっている。この領域の代表的な研究成果として、一方向ラーメン構造と耐力壁を組み合わせた木造架構システム「P&UA構法」が開発されている。同構法は、高い耐荷重能力(強度)、高い剛性、および高い靭性を実現するために設計されており、現在その第二期開発が進行中である。第二期開発では、ラーメン構造を二方向に拡張することで建築デザインの柔軟性を高め、より自由度の高い空間の実現を目指している。このP&UA構法の枠組みの中で機能する新たな要素技術として「GIUA技術」が開発されており、「シアリングコッター耐力壁」と併用されることで、システム全体としての高強度・高剛性・高靭性性能が担保されている。これらの木造技術は、耐火性や遮音性といった要求性能を満たしつつカーボンニュートラルに寄与する木造耐火マンション等の普及を見据えたものである。また、RC造と木造を融合させた独自の「ハイブリッド木造住宅」の開発も推進されている。3

部材製造の面においては、持続可能な生産体制の構築を目指し、国産スギ材を用いた新素材「HS WoodHaseko Sustainable Wood)」の製造計画が進行している。この素材は、従来内装の壁や天井の下地材として使用されてきた輸入単板積層材(LVL)を代替するものであり、トレーサビリティの確保、CO2排出量の削減、および建築物における炭素貯蔵量の増加を目的としている。20258月には、このHS Woodを製造するための新工場が奈良県五條市に着工されており、20284月の本格稼働を目標として掲げている。さらに、20251218日には、放置竹林という社会課題の解決と資源の有効活用を目的として、千葉県成田市に「竹チップ製造工場」を新設したことが発表された。製造された竹チップは、前述の地盤改良における杭汚泥の固化処理技術等に応用される。これらの取り組みは、子会社であるウッドフレンズを通じた「木質資源カスケード事業」とも連動しており、地域の森林資源の循環と木材資源の完全利用を図る戦略として位置付けられている。3

7. 知的財産ポートフォリオと特許出願動向

長谷工コーポレーションの技術開発成果は、特許権などの知的財産として継続的に権利化され、事業の競争優位性を担保する無形資産ポートフォリオを形成している。日本国特許庁(JPO)等の公的データベースを反映したJ-PlatPatの出願人別統計情報によれば、同社の特許出願および登録活動は安定して推移している。2026216日に更新された最新のランキング情報において、3(数値)件(単位)2026年(対象期間)実績(区分)『J-PlatPat 出願公開件数ランキング(2026216日時点)』(出典)の出願公開件数が記録されており、全体のランキングは第1046位となっている。また、特許取得件数については、3(数値)件(単位)2026年(対象期間)実績(区分)『J-PlatPat 特許取得件数ランキング(2026216日時点)』(出典)が記録され、ランキングは第832位に位置している。前年である2025年の実績と比較すると、2025年の出願公開件数は31(数値)件(単位)2025年(対象期間)実績(区分)『J-PlatPat 出願公開件数ランキング』(出典)で第787位、特許取得件数は14(数値)件(単位)2025年(対象期間)実績(区分)『J-PlatPat 特許取得件数ランキング』(出典)で第1332位であった。これらの数値は筆頭出願人としての案件のみをカウントした実績である。7

2026年に入り公開された特許案件の詳細を確認すると、同社が推進する建築技術、設備改善、防災対策といった多岐にわたる領域で権利化が進められていることがわかる。具体的に公開された7件の発明名称とその公開日は以下の通りである。

公報番号

発明の名称

公報発行日

特開2026-2506

山留め壁用の芯材とそれを備えた山留め壁、および合成壁

2026年18

特開2026-3349

管継手の耐火・耐熱カバー

2026年113

特開2026-5435

非常用飲料水貯水装置

2026年116

特開2026-11511

管路の構造、及び、管路の更新工法

2026年123

特開2026-17203

読み取りシステム及び読み取り機

2026年24

特開2026-23671

現場打ち杭工法と吸着剤入り逸泥防止材

2026年213

特開2026-25243

集合住宅用門柱

2026年216

これらの出願内容は、前述した技術研究所における「地盤基礎(山留め壁、現場打ち杭工法)」「設備(管継手カバー、管路更新工法、非常用水貯水装置)」「ICTDX(読み取りシステム)」等の研究分野の成果と直接的に対応している。現場の施工課題の解決や居住者の安全性向上に直結する実用的な技術開発が、迅速かつ体系的に知財化の対象となっていることを示している。7

未確認/確認不能事項

  • 研究開発費の具体的な金額・内訳: 2026/02/20時点で、有報・決算短信・統合報告書・公式IR(直近24ヶ月)を確認した範囲では、当該情報を一次情報として特定できず(Not Disclosed)。
  • 長谷工グループ全建設現場の2025年末100%再エネ化目標の達成状況: 2026/02/20時点で公式IR/公式ニュース/公式PJページ(直近24ヶ月)を確認したが、状態更新を一次情報で特定できず(Not Disclosed)。
  • コーポレートガバナンス報告書における知財戦略の詳細: 当該の一次情報URLにアクセス不能であったため、Unverifiable(理由:アクセス不可 11)。
  • HASEKO Evolution PlanにおけるR&DDX、技術への具体的な投資計画額: 当該の一次情報URLにアクセス不能であったため、Unverifiable(理由:アクセス不可 12)。
  • 技術研究所の研究組織(センター名)一覧: 公式ページにおいて特定のセンター名を列挙したリストが存在しないため、指定された数を断定した表記については特定できず(Not Disclosed)。Gate-10に基づき、明示されている「研究・技術分野(9領域)」の列挙に代替して記載した。

引用文献

  1. 「長谷工グループ統合報告書 2025」発行に関するお知らせ, 2 20, 2026にアクセス、 https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20250930/20250930565088.pdf
  2. 思 い を は せ る ︒ - 長谷工コーポレーション, 2 20, 2026にアクセス、 https://www.haseko.co.jp/hc/csr/pdf/integrated_report_2025.pdf
  3. 決算説明資料等|IRライブラリ|長谷工コーポレーション, 2 20, 2026にアクセス、 https://www.haseko.co.jp/hc/ir/library/report.html
  4. 2026年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結) - 長谷工 ..., 2 20, 2026にアクセス、 https://www.haseko.co.jp/hc/ir/news/upload_files/20260212_1.pdf
  5. 長谷工コーポレーション 技術研究所, 2 20, 2026にアクセス、 https://www.haseko.co.jp/tri/
  6. プレスリリース|お知らせ|長谷工コーポレーション, 2 20, 2026にアクセス、 https://www.haseko.co.jp/hc/information/press/index.html
  7. 株式会社長谷工コーポレーションの特許出願公開一覧 - IP Force, 2 20, 2026にアクセス、 https://ipforce.jp/applicant-4201/publication
  8. 長谷工グループの気候変動対応~2050年カーボンニュートラルを目指した取り組み~長谷工コーポレーションの建設現場の使用電力を100%再生可能エネルギー化 - Vane.Online, 2 20, 2026にアクセス、 https://vane.online/2023/07/04/%E9%95%B7%E8%B0%B7%E5%B7%A5%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%81%AE%E6%B0%97%E5%80%99%E5%A4%89%E5%8B%95%E5%AF%BE%E5%BF%9C%EF%BD%9E2050%E5%B9%B4%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%83%8B/
  9. 長谷工グループ気候変動対応方針「HASEKO ZERO‐Emission」を制定 - Vane.Online, 2 20, 2026にアクセス、 https://www.vane.online/monthly_page/page61.html
  10. 長谷工グループの気候変動対応 ~ HASEKO ZERO-Emission ..., 2 20, 2026にアクセス、 https://www.haseko.co.jp/hc/csr/environment/climate.html/
  11. 1月 1, 1970にアクセス、 https://www.haseko.co.jp/hc/ir/policy/governance.html
  12. 1月 1, 1970にアクセス、 https://www.haseko.co.jp/hc/ir/news/upload_files/20250212_2.pdf

 

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