3行まとめ
巨額設備投資による「グリーンインフラ」への集中投下
豊田通商は知財・技術戦略を事業投資と統合しており、2025年3月期の連結設備投資2,403億円のうち、約37%(891億円)をグリーンインフラ領域に重点配分しています。
モビリティとエネルギーを融合する独自技術の実装
トヨタ自動車と共同開発した電力需給調整システム(VPP)の特許保有や、北米でのLG Energy Solutionとの合弁を通じた廃バッテリーからの有価金属抽出・再資源化プロセスの実装を進めています。
「DX 2.0」と脱炭素目標の達成に向けた事業モデルの転換
2030年までの温室効果ガス(GHG)50%削減に向けた社内カーボンプライシングの導入や、ビジネス変革を目指すDX 2.0の推進により、製造現場の自動化などを含めた機能提供型ビジネスへの移行を図っています。
この記事の内容
豊田通商株式会社(以下、豊田通商)の公式開示資料(有価証券報告書、統合報告書)において、知的財産および技術戦略は、伝統的な「研究開発費(R&D Expenses)」として独立して語られることは稀であり、むしろ事業投資および設備投資(Capital Expenditure)と不可分な形で財務諸表に統合されている。2025年3月期(第104期)の有価証券報告書に基づくと、連結全体の設備投資額は2,403億円に達しており、その配分は技術戦略の優先順位を如実に反映している。具体的には、「グリーンインフラ」領域に891億円(全投資の約37%)、「サーキュラーエコノミー」領域に166億円が重点配分されている 1。これは、同社が掲げる「カーボンニュートラル」および「循環型社会」への移行戦略が、単なる概念的なスローガンではなく、風力発電設備や金属リサイクルプラントといった具体的な「技術資産(Technical Assets)」への巨額資本投下によって裏付けられていることを示している。また、これらの投資は、IFRS(国際財務報告基準)に基づく連結バランスシート上で有形固定資産あるいはのれん(Goodwill)として計上されており、知財権(特許・商標等)はこれらハードウェア資産の運用効率を高めるための「付帯的無形資産」として機能している構造が見て取れる。財務指標と技術実装の連動性は極めて高く、特に再生可能エネルギー事業における発電容量(MW)や、リサイクル事業における処理トン数が、技術力の代理指標(Proxy KPI)として機能している 1。
同社の注力技術領域は、中期経営計画および「Global Vision - Be the Right ONE」の下、明確に「再生可能エネルギー(Renewable Energy)」「次世代モビリティ(Next Mobility)」「循環型経済(Circular Economy)」の3本柱に集約されている。 第一に、再生可能エネルギー領域では、2024年4月にテラスエナジー株式会社を完全子会社化し、さらに2025年4月にはユーラスエナジーホールディングスの経営統合を完了することで、風力・太陽光発電における国内最大手としての地位を技術・資産の両面から固めている 3。これにより、風況解析や発電所運営(O&M)に関する膨大なデータ資産とノウハウがグループ内に蓄積されている。 第二に、モビリティ領域では、EV(電気自動車)普及に不可欠なリチウム等の重要鉱物資源の確保から、廃バッテリーのリサイクル(Urban Mining)に至るまでのバリューチェーン全体における技術的優位性の確立を目指している。具体的には、2025年6月に発表された北米におけるLG Energy Solutionとの合弁によるバッテリースクラップ再資源化事業(Green Metals Battery Innovations, LLC)の設立が挙げられる。ここでは、バッテリー製造工程や廃車から発生するスクラップから、リチウム、コバルト、ニッケルを効率的に抽出する前処理・精製技術の実装が進められている 4。 第三に、サーキュラーエコノミー領域では、米国子会社Radius Recycling(旧Schnitzer Steel)が保有する「Advanced Metal Recovery Technology」を活用し、金属スクラップからの資源回収率向上と不純物除去の高度化を推進している 5。
一次情報に基づく特許データベース(USPTO、JPO等)の確認によると、豊田通商単体および主要子会社(ユーラスエナジー、Radius Recycling等)を含む特許ポートフォリオは、量的な規模(件数競争)よりも、事業上のチョークポイントを押さえる質的な戦略性に重点が置かれている。
公開されている特許公報からは、以下の技術分野における出願集中が確認される:
一次情報に基づく競合他社(三菱商事、三井物産等)との直接的な技術指標の比較は、各社が開示するセグメント区分や計上基準が異なるため、横並びでの厳密な数値比較は困難である(Not Disclosed)。しかし、豊田通商の開示資料において特徴的なのは、トヨタグループという巨大な自動車エコシステムを背景にした「モビリティ」と「エネルギー」の結合領域における具体性と実装速度である。例えば、他商社が上流の資源権益確保に重きを置く傾向がある中で、豊田通商は「廃車リサイクル」「バッテリー材料の再資源化」「工場内CO2削減技術」といった、製造現場(Gemba)に近い下流〜中流レイヤーでの技術ソリューションを強調している点が差別化要因として読み取れる。また、アフリカ地域における再エネ比率の向上(2030年に50%目標)や、ヘルスケア・医薬品物流におけるコールドチェーン技術の展開など、地域特化型の技術実装(Local Implementation)においても独自性が高い 1。
公式に開示されたロードマップにおいて、R&D投資計画は「カーボンニュートラル」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進計画と完全に一体化している。2030年に向けた温室効果ガス(GHG)削減目標(Scope 1 & 2で2019比50%削減、2050年ネットゼロ)の達成プロセス自体が、同社にとっての技術ロードマップとして機能している 2。 これを実現するために、社内炭素価格(Internal Carbon Pricing)制度を導入し、脱炭素技術への投資を経済的に動機付けるガバナンスを構築している。また、DX戦略においては、2023年4月にCDTO(Chief Digital & Technology Officer)を「CTO(Chief Technology Officer)」に改称し、デジタル技術による業務効率化(DX 1.0)から、ビジネス変革・新規事業創出(DX 2.0)への移行を宣言している。具体的には、AIによる電力価格予測システムの運用や、農業分野におけるデジタルマーケティング支援など、実証実験(PoC)を超えた事業実装フェーズへの移行が計画されている 10。
豊田通商の技術投資戦略を分析する上で、「研究開発費(R&D Expenses)」という単一の勘定科目のみを追跡することは、同社の実態を見誤るリスクがある。総合商社という業態柄、基礎研究への直接投資よりも、事業会社を通じた技術実装や、設備投資(Capex)を通じた技術資産の取得が主となるためである。実際、有価証券報告書の「研究開発活動」の項目においては、「特記すべき事項なし」とされるか、あるいは軽微な活動として報告されるケースが多い 2。しかし、その背後にある「設備投資額」の推移と配分を見ると、明確な技術戦略の意図が読み取れる。
特に直近の第104期(2025年3月期)においては、連結設備投資額が2,403億円に達している。この巨額の投資は、主に「グリーンインフラ」および「サーキュラーエコノミー」という、高度な技術運用能力を必要とする領域に集中している。以下に、有価証券報告書に基づく主要な投資指標の推移を示す。
表1:連結経営指標と設備投資の推移(単位:百万円)
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会計年度 |
決算年月 |
収益 |
税引前利益 |
当期利益(親会社帰属) |
設備投資額(合計) |
備考(投資の技術的背景) |
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第104期 |
2025年3月 |
10,309,550 |
536,865 |
362,506 |
240,334 |
グリーンインフラへ891億円、アフリカへ452億円を投資。再エネ設備と現地インフラ技術への集中投下。 |
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第103期 |
2024年3月 |
10,188,980 |
469,639 |
331,444 |
253,388 |
過去最高益更新。ユーラスエナジーやテラスエナジーの子会社化・統合プロセスに伴う資産取得が寄与。 |
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第102期 |
2023年3月 |
9,848,560 |
427,126 |
284,155 |
Not Disclosed |
モビリティ・資源高騰の影響下での投資判断。 |
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第101期 |
2022年3月 |
8,028,000 |
330,132 |
222,235 |
Not Disclosed |
コロナ禍からの回復基調とサプライチェーン再構築。 |
|
第100期 |
2021年3月 |
6,309,303 |
221,425 |
134,602 |
Not Disclosed |
パンデミック影響下での守りの経営。 |
構造分析:
第104期(2025年3月期)の設備投資額2,403億円の内訳を詳細に見ると、技術戦略の重心がどこにあるかが明確になる。
この配分は、同社が技術的な勝負所を「脱炭素エネルギーの供給能力拡大」と「資源循環技術の実装」に定めていることを如実に示している。また、第103期(2024年3月期)においても2,533億円という高水準の投資が実行されており、これはユーラスエナジーやテラスエナジーといった再生可能エネルギー事業会社の子会社化・統合プロセスに伴う資産取得や設備増強が背景にある。商社機能としてのトレーディング(口銭ビジネス)から、事業投資によるリターン(配当・持分法損益)への構造転換が進む中で、技術資産の品質と運用能力が収益性を左右するフェーズに入っていると言える 1。
経営トップのメッセージからは、技術を単なるツールとしてではなく、企業価値創造の源泉(Core Value)として位置づけ、組織体制を変更してまで推進しようとする強い意志が読み取れる。特に、CDTOからCTOへの役割変更と、カーボンニュートラル推進会議の運営は、技術戦略と経営戦略の完全な統合を象徴する動きである。
Fact Log:経営陣の発言とコミットメント(原文抜粋・要約)
豊田通商の技術ポートフォリオは、伝統的な商社ビジネスの枠を超え、特定領域においてはメーカーに匹敵する、あるいはそれを補完する高度な技術資産を有している。以下に、主要な重点技術領域ごとの開発プロジェクト、製品実装、および関連特許の状況を詳述する。
この領域は、豊田通商が最も巨額の投資(FY2024で891億円)を行っている分野であり、ハードウェア(発電設備)とソフトウェア(電力需給調整・系統連系)の両面で技術資産の蓄積が進んでいる。
表2:グリーンインフラ領域における技術・事業開発一覧
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プロジェクト/技術名 |
概要・進捗(一次情報に基づく) |
関連資産/特許・知財 |
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ユーラスエナジー統合 |
2024年4月にテラスエナジーを完全子会社化し、2025年4月にはユーラスエナジーホールディングスの経営統合を完了。風力・太陽光発電容量で国内トップクラスの規模を確立。 |
資産: Eurus Energy Holdings株式(100%)
知財: サイト開発ノウハウ、風況データ資産、O&Mマニュアル |
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電力需給調整システム |
複数の電力調整リソース(蓄電池、EV等)を系統に接続し、管理装置によって最適制御するシステムの開発。トヨタ自動車との共同開発を含む。 |
特許: US 12040617
特許: US 12040615 等
出願人: Toyota Tsusho, Toyota Motor |
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風力発電所直結型データセンター |
風力発電所の敷地内にデータセンターを設置し、再生可能エネルギーを直接利用する国内初の事業モデル。送電ロスをゼロにする技術実証。 |
資産: 北海道地区の風力発電所設備
技術: 系統非依存型電力供給システム |
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Iwaya / Shitsukari Wind Farm |
最新鋭の風力タービン(4.2MW級-117m)を導入した大規模ウィンドファームの建設・運営。2025年1月に供給契約締結。 |
資産: 大型風力タービン(14基)
技術: 寒冷地・強風対応タービン運用技術 |
詳細解説:
ユーラスエナジーの完全子会社化は、単なる持分比率の変更にとどまらず、同社が30年以上にわたり蓄積してきた風況解析データ、環境アセスメントのノウハウ、および運転保守(O&M)技術を豊田通商グループ全体のコア技術資産として取り込むことを意味する。風力発電は立地選定とメンテナンスが収益性を決定づけるため、これらの無形資産(Soft IP)は特許以上に重要な競争優位の源泉となる。
一方、特許(Hard IP)の側面では、米国特許第12040617号「Electric power system, server, charge-and-discharge controller, and power demand-and-supply adjustment method」(2024年7月16日登録)が象徴的である。この特許は、トヨタ自動車と豊田通商の共同出願であり、多数の分散型電源(EVや定置用蓄電池を含む)を統合制御し、電力系統の安定化に資する技術(バーチャルパワープラント:VPP技術)をカバーしている。発明者にはHorii Yusuke氏らが名を連ねており、モビリティとインフラの接点における技術開発が着実に知財化されていることが確認できる。また、風力発電の適地が偏在する日本において、発電した電力を長距離送電せずにその場で消費する「発電所直結型データセンター」の取り組みは、送電ロス削減と系統制約の回避を両立する技術的ソリューションとして位置づけられており、デジタルインフラとグリーンインフラの融合事例として注目される 2。
自動車産業の電動化シフト(CASE)に対応し、バッテリーの原材料確保から製造、リサイクルに至る循環型バリューチェーンの構築を進めている。また、パワー半導体の中核素材であるSiC(炭化ケイ素)に関する独自技術の保有も確認される。
表3:モビリティ・素材領域における技術・事業開発一覧
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プロジェクト/技術名 |
概要・進捗(一次情報に基づく) |
関連資産/特許・知財 |
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SiCエピタキシャル基板製造 |
SiC基板上に、より低濃度のドーピング層を有するSiC材料を積層する製造方法および装置に関する技術。 |
特許: US 12534825
発明名称: SiC epitaxial substrate manufacturing method...
技術分野: 半導体材料プロセス |
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バッテリースクラップ再生(GMBI) |
LG Energy Solutionとの合弁会社(GMBI)を北米に設立。バッテリー製造工程や廃車から出るスクラップから、リチウム、コバルト、ニッケルを抽出・再資源化する技術プロセスを実装。 |
合弁会社: Green Metals Battery Innovations, LLC
資産: 北米リサイクルプラント(NC州)
技術: 湿式製錬前処理プロセス |
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リチウム資源確保 |
オロコブレ社(現アルケム社)等との提携を通じたリチウム資源の開発権益確保と、精製技術の実装。 |
資産: 鉱山権益、精製プラント
技術: 炭酸リチウム/水酸化リチウム製造技術 |
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アルミボディ骨格部品製造 |
アイシン、Minthとの合弁により、北米にてアルミダイキャスト技術を用いた車体部品製造拠点を設立。 |
合弁会社: 北米製造JV
技術: アルミダイキャスト成形技術 |
詳細解説:
特許US 12534825「SiC epitaxial substrate manufacturing method and manufacturing device therefor」は、豊田通商が素材技術の深層領域に関与していることを示す重要な証拠である。SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体は、EVのインバータ効率を劇的に向上させ、航続距離延伸や急速充電を実現するためのキーデバイスである。その製造工程において最も難易度が高いとされるエピタキシャル成長プロセスに関する特許を保有していることは、同社が単なる商社機能を超えた「技術提案型」のビジネスモデルを有していることを裏付けている。
また、バッテリーリサイクルにおいては、LG Energy Solutionとの合弁事業(GMBI)が北米での重要な拠点となる。ここでは、バッテリースクラップを破砕・選別し、ブラックマス(Black Mass)と呼ばれる中間原料を生成する技術が実装される。LG Energy Solutionは世界的なバッテリーメーカーであり、その製造ノウハウと豊田通商のリサイクル物流網・資源処理技術を融合させることで、北米におけるクローズドループ・サプライチェーンの構築を目指している。この合弁は、単なる工場建設ではなく、バッテリー材料の成分分析や安全な破砕処理に関する技術移転(Technology Transfer)を伴うプロジェクトである 2。
米国子会社Radius Recycling(旧Schnitzer Steel)を中心に、高度な金属選別技術と環境負荷低減技術を展開している。この領域における技術力は、廃棄物から「商品」を生み出す錬金術に等しい。
表4:サーキュラーエコノミー領域における技術・事業開発一覧
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プロジェクト/技術名 |
概要・進捗(一次情報に基づく) |
関連資産/特許・知財 |
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Advanced Metal Recovery Technology |
シュレッダー後の混合物から、銅、アルミ、真鍮などの非鉄金属をセンサーや磁力選別機を用いて高純度で回収するシステム。 |
資産: Radius Recycling, Inc.設備
技術: 選別アルゴリズム、センサー技術
特許: プロセス関連特許(詳細番号Not Disclosed in snippet) |
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ネットカーボンフリー電力 |
事業運営における使用電力を100%ネットカーボンフリー化(3年連続達成)。再生可能エネルギー調達と省エネ技術の組み合わせ。 |
実績: Sustainability Report認証
技術: エネルギーマネジメントシステム |
|
GRANIC(グラニック) |
廃プラスチック等を活用した環境配慮型素材の開発・供給。自動車部品への適用拡大。 |
商標: GRANIC
製品: 再生プラスチックコンパウンド |
詳細解説: Radius RecyclingのForm 10-K(2024年8月期)によると、同社は「特許は保有しているが、事業全体に対して個々の特許が決定的な重要性を持つわけではない」と慎重な表現を用いている。しかし、その競争力の源泉は明らかに「Advanced Metal Recovery Technology」と呼称される一連の選別システムにある。これは、巨大なシュレッダーで自動車や家電を破砕した後、渦電流選別機や光学センサー選別機を組み合わせ、ミリ単位の金属片を種類ごとに自動選別する技術である。この技術により、従来は埋め立て処分されていた残渣(ASR: Automobile Shredder Residue)を減らし、資源回収率を向上させることが可能となっている。 また、同社はITシステムやデータ解析を用いた業務効率化にも言及しており、スクラップの受入から製品出荷までのトレーサビリティ管理や、相場変動に対応した在庫最適化など、物理的なリサイクル技術とデジタル管理の融合(Cyber-Physical System)が進んでいることが窺える.5
豊田通商の技術戦略の中核をなすのが、外部パートナーとの戦略的提携(Alliance)である。自前主義にこだわらず、最適な技術を持つ企業と資本業務提携を結ぶことで、時間を買い、技術ポートフォリオを迅速に拡充している。
表5:主要な技術提携・M&A案件(2023-2026)
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時期 |
パートナー/対象企業 |
形態 |
技術的・戦略的狙い(公式発表ベース) |
Evidence |
|
2025/04 |
Eurus Energy Holdings |
経営統合 |
再生可能エネルギー(風力・太陽光)の開発・運営能力の完全取り込み。国内No.1事業者としての基盤強化と意思決定の迅速化。 |
3 |
|
2025/06 |
LG Energy Solution |
合弁設立 |
北米におけるバッテリースクラップからの有価金属(Ni, Co, Li)回収プロセスの確立。バッテリー製造技術とリサイクル技術の融合。 |
4 |
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2026/02 |
Linkwiz |
出資 |
ロボット自律制御ソフトウェア技術の獲得。産業用ロボットのティーチングレス化、溶接・検査工程の自動化推進(DX 2.0案件)。 |
11 |
|
2024/04 |
Terras Energy |
完全子会社化 |
再生可能エネルギー事業の再編。太陽光発電を中心としたポートフォリオの統合と効率化。 |
3 |
|
Not Disclosed |
Toyota Motor Corp |
共同研究 |
EV向け電力需給調整システム、V2G技術、および環境技術の共同開発(特許共願より判明)。 |
7 |
解説: 特筆すべきは、2026年2月に発表されたLinkwiz社への出資である。Linkwizはロボットの「目(3Dスキャナ)」と「脳(制御ソフト)」を開発するスタートアップであり、この出資は豊田通商が製造現場(Gemba)の自動化・DX(Digital Transformation)に深く関与しようとしていることを示している。これは、単に製品を右から左へ流す商流ビジネスから、生産工程の効率化や品質向上そのものを提供する「機能提供型」ビジネスへの転換を図る動きと解釈できる。 また、LG Energy Solutionとの提携は、EVシフトに伴うバッテリー供給不足と廃棄物問題という「静脈」と「動脈」の両方の課題を同時に解決する、極めて戦略的な一手である。ここでは、LG側のセル製造技術と、豊田通商側のリサイクル原料調達力が相互補完関係にある。トヨタグループ内での連携(トヨタ自動車との特許共願)に加え、グループ外のグローバルリーダーとも手を組む柔軟なオープンイノベーション戦略が展開されている.4
豊田通商およびその子会社における知財ガバナンスは、各社の行動規範(Code of Conduct)やサステナビリティ方針の中で明確に規定されている。
有価証券報告書の「事業等のリスク」において、技術革新への対応遅れ(Disruptive Innovation Risk)や、情報システムへのサイバー攻撃が重要なリスク要因として挙げられている。特に、再生可能エネルギー発電所や電力需給調整システムといった重要インフラ(Critical Infrastructure)を抱える同社にとって、IT(Information Technology)だけでなく、制御システムを守るOT(Operational Technology)セキュリティの確保は経営上の最優先課題の一つとなっている。これに対応するため、全社的な情報セキュリティ管理体制の強化や、DX推進に伴うセキュリティ対策への投資が行われていることがリスク情報として開示されている 2。
一次情報が入手可能な範囲において、豊田通商と同業他社(総合商社)の技術・知財戦略に関連する指標を比較する。なお、他社の詳細なR&Dデータが本調査の一次情報ソースに含まれていないため、主に豊田通商側の開示に基づく相対的な立ち位置の記述にとどめる。
表6:競合比較(Available Primary Sources Only)
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項目 |
豊田通商 (Toyota Tsusho) |
競合他社 (Mitsubishi / Mitsui etc.) |
|
注力技術領域 |
モビリティ(EV/Battery)、再生可能エネルギー(風力・太陽光)、資源循環(スクラップ/リサイクル) |
Not Disclosed within current sources |
|
再エネ発電容量 |
国内最大級(No.1 Class)。Eurus Energy + Terras Energyの統合により、圧倒的なシェアとアセットを保有。 |
Not Disclosed within current sources |
|
特許戦略の特徴 |
トヨタ自動車との共同出願(電力制御、V2G)や、SiC素材技術など、自動車バリューチェーンに特化した技術資産が目立つ。 |
Not Disclosed within current sources |
|
DX戦略 |
CDTOをCTOに改称し、ビジネス変革(DX 2.0)を志向。**現場(Gemba)**のデジタル化に強み。 |
Not Disclosed within current sources |
|
R&D/設備投資 |
連結設備投資額:約2,400億円(FY2024)。**グリーンインフラへの集中投資(約37%)**が顕著。 |
Not Disclosed within current sources |
解説: 他社の一次情報が不足しているため直接比較はできないが、豊田通商の最大の特徴であり強みは、「トヨタグループ」という明確なアンカーが存在することである。これにより、技術開発の方向性が「自動車産業の未来(CASE対応)」と完全に同期しており、投資の不確実性が相対的に低減されている。他商社が資源価格のボラティリティにさらされやすい上流権益に強みを持つのに対し、豊田通商は「廃車リサイクル」や「工場内CO2削減」といった、製造業のバリューチェーンに深く組み込まれた技術領域で差別化を図っている。また、アフリカ市場における先行者利益と技術実装の実績は、他の総合商社が容易に模倣できない独自のポジションを築いている 2。
豊田通商が公式に掲げる技術・経営ロードマップの主要マイルストーンは、気候変動対応と事業ポートフォリオの再編を軸に構成されている。
表7:技術・経営ロードマップ(時系列)
|
時期 |
マイルストーン・目標(公式発表) |
関連技術・分野 |
Evidence |
|
2025年4月 |
Eurus Energy Holdings経営統合完了 |
再生可能エネルギー |
3 |
|
2026年3月 |
中期経営計画(2024-2026)終了年度。DX 2.0の実装フェーズ深化。 |
全社/DX |
12 |
|
2030年 |
Scope 1 & 2 GHG排出量 50%削減(2019年比)。 これを達成するための省エネ・創エネ技術の導入完了。 |
環境技術/省エネ |
2 |
|
2030年 |
アフリカにおける再エネ比率50%到達(予測・目標)。これに貢献するインフラ整備。 |
インフラ技術 |
10 |
|
2035年 |
電動車(BEV/FCEV)向けバッテリー・資源供給体制の確立(トヨタグループ目標との連動)。 |
モビリティ/資源 |
19 |
|
2050年 |
カーボンニュートラル(Net Zero)達成。 |
全領域 |
2 |
本調査における一次情報探索範囲内では、以下の事項について詳細な情報の確認ができなかった。
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本レポートは、公開情報をAI技術を活用して体系的に分析したものです。
情報の性質
ご利用にあたって
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