3行まとめ
AI実装による収益改善とインフラ刷新への集中投資
生成AI活用により営業利益3,150億円の過去最高益を達成する一方、データ主権確保のため5,000億円超を投じてインフラの国内回帰を進めています。
独自ツール「Ark Developer」による開発資産の高度化
RAGやグラフ解析技術を組み合わせた社内AIツールにより、開発効率を劇的に向上させつつ、組織的な技術ナレッジの形式知化を実現しています。
統合チェーン「Kaia」始動によるWeb3戦略のグローバル展開
旧来のプライベートチェーンからアジア最大級のパブリックチェーン連合Kaiaへ移行し、実需に基づくトークン経済圏の確立を目指しています。
この記事の内容
2026年2月現在、LINEヤフー株式会社(以下、LY Corporation)の知財・技術戦略は、2023年の経営統合以降の構造改革を経て、明確な収益貢献フェーズへと移行している。2025年3月期(FY2024)における連結売上収益は1兆9,174億円、営業利益は3,150億円、純利益は1,534億円を記録し、過去最高益を更新する結果となった。この財務的成果の背景には、重複する技術資産の整理と、生成AI(Generative AI)の実装によるコスト構造の劇的な変革が存在する。従来、LINEとYahoo! JAPANはそれぞれ独立したID基盤と広告配信システム(Ad Tech)を運用していたが、これらを統合し、共通のAIモデルによるターゲティング精度向上を図ったことが、広告単価(eCPM)の維持とメディア事業の収益性改善に直結している。特に、検索連動型広告においては、生成AIによる検索クエリの意図解釈と回答要約機能の実装が、ユーザーの滞在時間延長とコンバージョン率の向上をもたらしており、これが営業利益率16.4%(FY2024実績)という高水準な収益性を支える主要因となっている 1。
さらに、投資キャッシュフロー(Investing Cash Flow)の動向は、同社の技術戦略が「インフラの刷新」と「次世代計算基盤」に集中していることを如実に示している。FY2024の投資CFはマイナス5,056億円と、前年のマイナス4,440億円から支出規模が拡大している。この巨額投資の内訳は、主に生成AIの学習および推論に必要なGPUサーバー群への設備投資(CAPEX)と、経済安全保障上の要請に基づくデータセンターの国内回帰プロジェクトに関連するものである。財務データが示すのは、単なるサービスの維持管理ではなく、将来のプラットフォーム競争力を左右する「知財の物理的基盤」への資本配分が加速しているという事実である。R&D投資が、直接的なサービス収益(トップライン)の成長と、業務効率化による利益率(ボトムライン)の改善の双方に寄与する「両利きの経営」が機能し始めていると言える 1。
LY Corporationが現在、経営資源を最も集中的に投下している技術領域は、「生成AIによる開発・業務プロセスの自律化」と「Web3/ブロックチェーン基盤の再構築」の二点に集約される。生成AI領域においては、汎用的な大規模言語モデル(LLM)の独自開発競争にリソースを浪費するのではなく、OpenAI等の外部モデルと自社データを組み合わせた「応用実装」に特化する戦略を採っている。具体的には、社内開発者向けツール「Ark Developer」の開発と全社導入が挙げられる。このツールは、RAG(Retrieval-Augmented Generation)技術とグラフ解析(Graph Analysis)を組み合わせることで、社内の膨大なレガシーコードとドキュメント構造を理解し、エンジニアのコーディング業務を高度に支援・自動化している。これは単なる生産性向上ツールにとどまらず、開発ナレッジの形式知化と、属人性の排除による技術資産の継承性担保という、組織的な知財管理の側面も有している 6。
一方、デジタルアセット/Web3領域では、2026年初頭にかけて歴史的な転換点を迎えている。独自のブロックチェーンプロジェクトであった「Finschia(旧LINE Blockchain)」は、韓国Kakao系の「Klaytn」とのメインネット統合を完了し、新たな統合チェーン「Kaia」として再出発を果たした。この統合は、単独企業によるプライベートチェーン的な運用から、アジア最大級のTVL(Total Value Locked)を有するパブリックチェーン連合への戦略的ピボットを意味する。また、NFTプラットフォーム「DOSI」に関しては、投機的なユーザー基盤に依存していた旧来の「DOSI Citizen」エコシステムを見直し、ゲームやエンターテインメント(DOSI Adventure)への参加と貢献度に基づいた動的な報酬設計(Dynamic Prize System)へと移行している。これにより、持続不可能なインフレを抑制し、実需に基づくトークン経済圏の確立を目指す姿勢が鮮明となっている 7。
LY Corporationの特許ポートフォリオは、事業統合と技術トレンドの変化に伴い、その「質」と「重心」を劇的に変化させている。パテント・リザルト社の2025年版分析によると、情報通信・ネットワーク分野における同社の特許資産規模は、NTTドコモ等の通信キャリアに次ぐ国内トップクラスの地位を維持しており、特に「他社牽制力」の観点において極めて高いスコアを記録している。これは、同社が保有する特許群が、競合他社の事業活動に対して強力な参入障壁として機能していることを示唆する。かつてのポートフォリオが、メッセンジャーアプリのUI/UXやスタンプ課金モデル等の「コミュニケーション機能」に偏重していたのに対し、直近3年間(2023-2026)の出願傾向は、AIによるデータ処理、プライバシー保護技術、および本人確認(eKYC)技術へとシフトしている 10。
特筆すべきは、AI倫理とガバナンスに関連する知財の蓄積である。生成AIの普及に伴い、ハルシネーション(幻覚)の抑制技術や、AI生成コンテンツの著作権保護、さらにはフェイクニュース対策に関する技術特許の出願が増加している。また、コマース領域においては、Yahoo!オークションやフリマアプリにおける「模倣品検知AI」に関する特許網が構築されており、画像認識とテキスト解析を組み合わせた複合的な判定ロジックが権利化されている。これらの知財は、単なる技術的権利の主張にとどまらず、プラットフォームの健全性と信頼性(Trust & Safety)を担保するための「防衛壁」として機能しており、ESG経営における「S(社会)」および「G(ガバナンス)」の評価向上にも寄与している 11。
国内の主要な競合である楽天グループおよびサイバーエージェントとの比較において、LY Corporationの技術的優位性は「圧倒的なユーザー接点(Touchpoint)の多様性」と「ID連携によるデータ深度」にある。LINEのメッセージングデータ、Yahoo! JAPANの検索・閲覧データ、PayPayの決済データが単一のIDで紐づけられるエコシステムは、競合他社が模倣困難な独自の競争優位の源泉となっている。楽天グループがモバイル通信インフラ(完全仮想化ネットワーク)というハードウェアレイヤーでの革新に注力し、巨額の設備投資負担と戦っているのに対し、LY Corporationはアプリケーションレイヤーでのデータ統合とAI化にリソースを集中させることで、相対的に高い資本効率を実現している。また、サイバーエージェントがゲームやエンタメ領域での「クリエイティブAI」や独自LLM開発に特化しているのに対し、LYは検索、金融、コマースという生活インフラ全般をカバーする「汎用的なAIエージェント」の実装を目指しており、そのカバー範囲の広さが差別化要因となっている 12。
しかしながら、重大な課題も存在する。それは、親会社である韓国NAVER Corporationへの技術的依存構造と、それに起因する経済安全保障上のリスクである。総務省からの度重なる行政指導が示す通り、認証基盤やネットワークインフラの一部をNAVERに依存している現状は、経営の独立性とガバナンスの観点から深刻な脆弱性となっている。競合の楽天グループが自社で通信インフラを保有・制御しているのに対し、LY Corporationは基幹システムの「自律性」において劣後しており、この解消に向けたシステム分離と再構築が、技術戦略上の最優先課題かつ最大のコスト要因となっている。この「技術的負債」の解消スピードが、今後の競争優位の持続可能性を左右することになる 12。
今後の中長期的なR&D投資計画において、LY Corporationは「検索と広告の再定義」および「自律型AIエージェントの社会実装」を掲げている。従来のキーワード入力型の検索エンジンから、生成AIがユーザーの潜在的な意図を汲み取り、最適なアクション(予約、購入、送金等)を提案・実行する「Action-Oriented Search」への転換を進めている。この実現のため、2025年度以降も年間数千億円規模のR&Dおよび設備投資が継続される見通しである。特に、マルチモーダルAI(画像、音声、テキストの統合処理)の精度向上と、それを支える推論インフラへの投資が重点的に配分される。公式ロードマップによれば、2026年中にはNAVERとのシステム分離を概ね完了させ、国内データセンターを中心としたセキュアなインフラ基盤の上で、AIサービスを本格展開する計画となっている 4。
また、Web3領域におけるロードマップでは、統合チェーン「Kaia」を基盤としたグローバル展開が加速する。2026年以降、アジア各国のパートナー企業と連携し、DeFi(分散型金融)やRWA(現実資産)トークン化プロジェクトを順次ローンチすることで、メッセージングアプリの枠を超えた「次世代の金融プラットフォーム」としての地位確立を狙う。これら一連の取り組みは、単なる機能追加ではなく、インターネットの利用体験そのものを変革する試みであり、その成否は、技術開発のスピードだけでなく、規制当局との対話やガバナンス体制の強化と密接に連動して進められることになる 7。
企業の技術戦略を理解する上で、財務諸表に現れる投資動向の定量的な把握は不可欠である。LY Corporationの場合、国際会計基準(IFRS)を採用しており、研究開発費は販売費及び一般管理費(SG&A)等に含まれる場合があるため、ここでは「営業費用内の人件費・委託費の変動」および「投資キャッシュフロー(設備投資)」を複合的に分析し、技術投資の規模感を特定する。
以下の表は、直近の決算資料および有価証券報告書から抽出した、主要な財務・投資指標の推移である。
表1:LY Corporation 財務・技術投資関連指標の推移(単位:百万円)
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会計年度 (Fiscal Year) |
売上収益 (Revenue) |
営業利益 (Op. Profit) |
投資CF (Investing CF) |
親会社所有者帰属当期利益 |
注記・技術的マイルストーン |
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FY2025 (Forecast) |
2,000,000 |
(Not Disclosed) |
(Not Disclosed) |
(Not Disclosed) |
売上2兆円到達予想。AIエージェント商用化とKaiaメインネット移行の年。 1 |
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FY2024 (2025/03) |
1,917,478 |
315,033 |
-505,633 |
153,465 |
過去最高益。NAVER分離コスト及びAIサーバー投資により投資CF支出拡大。 1 |
|
FY2023 (2024/03) |
1,814,663 |
208,191 |
-444,060 |
113,199 |
LINE・Yahoo統合の実質初年度。ID連携開始。セキュリティ事案発生。 1 |
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FY2022 (2023/03) |
1,672,377 |
314,533 |
319,786 |
178,868 |
PayPay子会社化等による一時的利益変動。PayPay連結化。 1 |
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FY2021 (2022/03) |
1,567,421 |
189,503 |
-303,899 |
77,316 |
経営統合完了。PMIプロセスの開始。 1 |
データ解説と戦略的含意:
企業の技術戦略は、経営トップの意志と言語化されたコミットメントによって牽引される。過去3年間の統合報告書、CEOレター、およびプレスリリースから、技術・知財に関する重要発言を抽出し、その文脈を解説する。
AI革命への対峙と組織変革: 「AI革命の中、変化を恐れるのではなく、変化しないことを恐れる組織をつくる。垣根を越えた複数のサービスを通じ、多層的な社会貢献を実現する。未来思考と現実思考の両面から、企業価値を最大化する。」 (出典:統合報告書2024 骨子 / 2025年公開) 4
解説: このメッセージは、AIを単なる「ツール」としてではなく、組織文化そのものを変革する「触媒」として位置づけていることを示している。「変化しないことを恐れる」という表現は、かつての成功体験(PC時代のYahoo!、スマホ初期のLINE)に安住することへの強い危機感の表れであり、生成AI時代における自己否定と再創造を全社員に求めている。
ユーザー中心の価値創出とAIエージェント: 「AIエージェントの早期提供に向けてプロダクト開発を推進する。ユーザーの課題を起点にサービスを設計し、ユーザー中心の価値創出と挑戦文化を定着させる。」 (出典:LINEヤフー プレスリリース 2025) 5
解説: ここでは具体的なプロダクトとして「AIエージェント」が明示されている。これは、従来の「ユーザーが情報を探す」検索モデルから、「AIがユーザーに代わって行動する」エージェントモデルへの移行を、全社的なプロダクトロードマップの中心に据えていることを意味する。
データガバナンスと社会的責任: 「LY Corporationは、ユーザープライバシーファーストの概念に基づき、データ保護の5原則を制定している。NISTのサイバーセキュリティフレームワークを考慮し、システム構築とサービス提供を行う。」 (出典:Basic Policy on Data Protection / Cybersecurity Policy) 17
解説: 技術の暴走を防ぐための「ブレーキ」としてのガバナンスへの言及である。特筆すべきは「NIST(米国国立標準技術研究所)」の基準への準拠を明言している点である。これは、国内基準にとどまらず、グローバルスタンダード、特に米国の経済安全保障基準に適合することを目指すという、国際的な信頼獲得に向けた強い意志表示である。NAVER問題で揺らいだ信頼を、国際基準の採用によって回復しようとする戦略的意図が読み取れる。
本レポートの核心部分として、LY Corporationが保有する技術資産、特許、およびそれらが実装された具体的なプロダクト群を詳細に記述する。
企業が定義する重点領域(Materiality)に基づき、以下の3つの主要技術領域について現状を詳述する。
LY Corporationは、AI開発において「実用性」と「生産性」を最優先事項としている。
表2:生成AI関連プロダクト・技術詳細
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プロダクト/プロジェクト名 |
技術区分 |
実装機能・技術仕様・アーキテクチャ |
ビジネス/開発への貢献・成果 |
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Ark Developer |
Internal Dev Tool |
RAG (Retrieval-Augmented Generation): 社内の膨大な技術文書や仕様書をリアルタイムで参照し、ハルシネーションを抑制した回答を生成。
Graph Analysis: コードのディレクトリ構造や依存関係をグラフとして解析・保持し、ファイル単体ではなくプロジェクト全体の文脈(Context)を理解したコード補完を行う。
Pipeline Integration: GitHubからプルリクエスト(PR)の自動生成、コードレビュー、セキュリティチェックまでを一気通貫で支援。 |
社内エンジニア数千人が利用。「GitHub Copilot」等の汎用ツールと比較し、社内特有のライブラリや規約への準拠率が高く、開発リードタイムの大幅な短縮を実現。エンジニアの体験(DevEx)向上により、採用競争力の強化にも寄与。 6 |
|
LINE PLANET |
Voice AI Agent |
End-to-End Pipeline: STT (Speech-to-Text) → LLM (推論・対話生成) → TTS (Text-to-Speech) を低遅延で統合。
Turn Detection: ユーザーの発話終了や割り込み(Barge-in)を正確に検知するターン制御技術。
Acoustic Echo Cancellation: 車内や雑踏などのノイズ環境下でもクリアな音声を抽出する信号処理技術。 |
コールセンター業務の自動化(LINE AiCall)や、カーナビゲーションシステム、スマートスピーカー等への実装。外部企業へのソリューション販売(B2B)としても収益化。 6 |
|
Image Quality Eval |
Gen-AI Quality Control |
Evaluation Metrics: FID (Fréchet Inception Distance), IS (Inception Score) による分布ベースの評価。
Aesthetic Score: LAIONデータセットを用いた美的スコアの算出。
LLM-based Eval: CLIP-IQA, Q-Align, VQA (Visual Question Answering) を用いた、意味的整合性と品質の自動判定。 |
広告クリエイティブやLINEスタンプの自動生成において、人間による目視チェックのコストを削減しつつ、ブランド毀損リスクのある低品質・不適切な画像の生成を未然に防ぐ品質管理ゲートとして機能。 6 |
解説: 特に「Ark Developer」におけるグラフ解析技術の導入は、LLMのコンテキストウィンドウの制限を克服する実用的なアプローチとして注目に値する。単にテキストを放り込むのではなく、コードの構造的な意味(依存関係)を理解させることで、精度の高いコード生成を実現しており、これはソフトウェア開発企業としての「生産性革命」の中核をなす技術である。
2024年から2026年にかけて、Web3戦略は「統合」と「グローバル化」へ大きく舵を切った。
表3:Web3/ブロックチェーン技術変遷と現状
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旧プロジェクト |
新プロジェクト/ステータス |
技術的変更点・統合詳細 |
戦略的意図 |
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Finschia (FNSA) |
Kaia (KAIA) |
Mainnet Merger: LINE主導のFinschiaとKakao主導のKlaytnのメインネットをハードフォークを伴い統合。
Token Swap: FNSA:KAIA = 1:148.079656 のレートで交換。
Tech Stack: Ethereum互換(EVM)の完全サポート、EIP-4844 (Blob Transactions) の実装によるL2スケーリング対応。 |
日韓のメッセージングアプリ(LINE/Kakao)のユーザー基盤を統合し、アジア最大級のWeb3エコシステムを構築。流動性の分断を解消し、DeFiやGameFi開発者を呼び込むためのプラットフォーム競争力強化。 7 |
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DOSI |
DOSI (Rebranded) |
Economy Update: 固定報酬型(Earn)モデルからの脱却。DOSI Adventure等のゲーミフィケーションを通じた「動的報酬(Dynamic Prize)」システムへの移行。
Marketplace Integration: LINE NFT等の国別プラットフォームをDOSIに一本化。 |
「DOSI Citizen」等の投機的インセンティブによる持続不可能なエコシステムを健全化。Botによる搾取を防ぎ、真のファンやユーザーに還元する仕組みへの転換。Nifty Gateway等の競合撤退が続く中での生き残り戦略。 9 |
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LINE Blockchain |
Kaia DLT Foundation |
Governance: 運営主体をアブダビ(ADGM)およびドバイ(DIFC)の財団に移管。
Validator: CertiK等のセキュリティ企業や大手Web3プレイヤーがバリデータとして参画。 |
日本国内の厳格な暗号資産規制(税制、期末時価評価等)のリスクからプロジェクトを切り離し、Web3フレンドリーな法域(UAE)で迅速な意思決定を行うためのグローバル・ガバナンス体制の構築。 8 |
解説: Kaiaへの移行は、LINEヤフー単独でのブロックチェーン覇権争いからの撤退ではなく、より大きな連合体(Alliance)への合流による実利の追求である。技術的には、Klaytnの基盤をベースとしつつ、Finschiaの資産を取り込む形をとっており、EVM互換性を重視することで、Ethereum経済圏の開発者や資産を取り込む現実的な路線を選択している。
LY Corporationの知財活動は、攻撃的な権利行使よりも、事業の自由度確保(Freedom to Operate)と参入障壁構築に重点を置いている。
表4:主要な特許分類と戦略的焦点
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技術分野 (CPC/IPC) |
概要と出願傾向 |
ビジネス上の役割 |
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G06Q (Data Processing) |
検索エンジン、レコメンデーション、広告配信ロジック、決済処理。 |
メディア・コマース事業の収益源泉(アルゴリズム)の保護。競合他社による模倣防止。 |
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G06N (AI & ML) |
ニューラルネットワークの学習方法、生成AIのプロンプト制御、ハルシネーション抑制。 |
AIサービスの品質差別化。OpenAI等の基盤モデルを利用しつつ、アプリケーション層での独自性を権利化。 |
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H04L (Transmission) |
メッセンジャーアプリの通信制御、即時性確保、スタンプ送信UI。 |
LINEアプリのUX(ユーザー体験)の保護。他社アプリとの差別化要因の維持。 |
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G06F (Security/Access) |
認証(Authentication)、アクセス制御、ブロックチェーン鍵管理。 |
サービスの安全性担保。特にNAVER分離後の独自認証基盤に関する技術保護が急務。 |
分析: パテント・リザルト社のランキング(2024-2025)において、LY Corporationは情報通信分野でNTTグループ等に次ぐ上位に位置しており、特に「他社牽制力(他社の特許審査過程で引用され、拒絶理由として機能した回数)」が高い。これは、同社の特許が業界標準的な技術や、他社が開発したくなるような「通り道」となる技術を的確に押さえていることを意味する。近年は、生成AIの出力制御や、プライバシー保護技術(Federated Learning等)への出願シフトが鮮明である 10。
知財は、以下のように具体的なサービス収益モデルに組み込まれている。
LY Corporationは、自前主義の限界を認識し、グローバルな技術パートナーシップを積極的に構築している。
表5:主要な技術提携・パートナーシップ
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パートナー企業/組織 |
提携領域 |
戦略的狙いと詳細 |
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OpenAI |
Generative AI |
Enterprise Adoption: "ChatGPT Enterprise"の全社導入(2025年6月開始)。API連携による自社サービスへの組み込み基盤として活用。また、OpenAIのモデルをファインチューニングするためのデータ連携も視野に入れる。 17 |
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Cloud/AI |
Infrastructure: Google Cloudの活用およびGemini等のAIモデルのベンチマーク。特定のクラウドベンダー(NAVER等)への依存度を下げるマルチクラウド戦略の一環。 17 |
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CertiK |
Web3 Security |
Audit & Node Operation: Kaia(旧Finschia)チェーンのセキュリティ監査およびバリデータノードとしての参画。スマートコントラクトの安全性担保と、機関投資家からの信頼獲得。 19 |
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SoftBank Corp. |
Network/Infra |
Synergy: 5Gネットワーク、データセンター、HAPS(成層圏通信)等のインフラ共有。NAVER離脱後の物理インフラの受け皿として、親会社であるソフトバンクの資産を最大限活用。 |
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PayPay |
FinTech |
Data Integration: 決済データとLINE/YahooのID連携。マーケティングソリューション(PayPay Ads)の共同開発。 13 |
LY Corporationにとって、現在進行形の最大のリスクは、総務省による行政指導への対応である。
国内プラットフォーマーである「楽天グループ」および「サイバーエージェント」との比較分析を行う。
表6:主要競合3社の技術・財務指標比較(2024-2025年度実績ベース)
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比較項目 |
LY Corporation (LINE Yahoo) |
Rakuten Group |
CyberAgent |
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主力技術領域 |
メッセージング, 検索, 決済, 生成AI, ブロックチェーン(Kaia) |
モバイル通信(Open RAN), Eコマース, フィンテック, AI(Rakuten AI) |
ゲーム(ウマ娘等), メディア(ABEMA), 広告AI, 日本語LLM |
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R&D/Tech戦略 |
ID統合とAIエージェント: LINE/Yahoo/PayPayのID連携によるデータ基盤強化。NAVER分離とインフラ自立化が最優先課題。外部LLM活用による応用重視。 |
完全仮想化ネットワーク: モバイルインフラのAI化と、独自LLM「Rakuten AI」によるエコシステム効率化。モバイル事業の黒字化達成による投資回収フェーズへ。 12 |
クリエイティブAI: 広告制作の自動化および、日本語特化型LLMの自社開発。クリエイターとの協業によるコンテンツ生成力の強化。 14 |
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Web3/BC |
Kaia (Public Chain): パブリックチェーンへの移行とアジア連合構築。グローバル展開志向。 |
Rakuten NFT: 自社経済圏内(ポイント活用)でのNFT展開。比較的クローズドで保守的。 |
GameFi: 子会社を通じたブロックチェーンゲーム開発。エンタメ重視。 |
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財務トレンド |
高収益・再編: 純利益1,500億円超。投資CFは大きいが、既存事業がCash Cowとして機能。 1 |
モバイル黒字化: FY2025にモバイル事業が通期黒字化を達成。巨額投資からの収穫期入り。 12 |
ゲームヒット依存: ゲーム事業のボラティリティがあるが、メディア事業の赤字は縮小傾向。 |
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特許資産 |
通信・UI/UX: 検索・広告・メッセンジャーのUI特許に強み。情報通信分野で高い他社牽制力。 10 |
通信インフラ: 仮想化ネットワーク関連の特許網(4G/5G/6G)をグローバル展開し、通信機器ベンダーとしての側面も持つ。 22 |
AI/広告: 広告配信ロジックおよびゲーム内AI、3Dグラフィックスに関する特許。 |
比較分析とインサイト:
本調査(2026年2月18日時点)において、以下の事項は公開情報から特定できなかったため、継続的なモニタリングが必要である。
本レポートのPDF版をご用意しています。印刷や保存にご活用ください。
本レポートは、公開情報をAI技術を活用して体系的に分析したものです。
情報の性質
ご利用にあたって
本レポートは知財動向把握の参考資料としてご活用ください。 重要なビジネス判断の際は、最新の一次情報の確認および専門家へのご相談を推奨します。
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