3行まとめ
「ファッションの数値化」を支える特許と論文のデュアル戦略
ZOZOSUITの計測技術特許による参入障壁構築と、AI分野でのトップカンファレンス論文発表(ICLR等)を組み合わせ、技術独占と高度人材獲得を両立しています。
偽サイト700件を排除した「守りのDX」と体験の保護
自動検知ツールの内製化により2年間で約700件の偽サイトを削除。さらにリアル店舗「niaulab」の内装を意匠権で保護し、顧客体験(UX)までも知財化しています。
Amazon包囲網を突破するB2Bライセンスへの収益構造転換
競合のマーカーレス技術に対抗すべく、米国版「ZOZOFIT」や物流AIなどのIP資産を外部提供し、B2B収益を創出する新たな成長フェーズへ移行しています。
エグゼクティブサマリ
株式会社ZOZOの知的財産戦略は、同社の経営戦略「MORE FASHION × FASHION TECH」¹⁹˒ ²⁰と不可分一体の関係にあり、従来の「防衛機能」としての知財実務を超え、事業創出を牽引する「イネーブラー」として明確に位置づけられています。本レポートは、同社の知財戦略の全体像を、R&D体制、中核技術、ブランド防衛、競合比較の観点から網羅的に分析したものです。
本分析から得られた主要な調査結果は以下の11点です。
- 戦略の核心: 知財戦略の核は、R&D組織「ZOZO NEXT」および「ZOZO研究所」⁹が推進するミッション「ファッションの数値化」⁹にあります。これは、従来は感性や経験則に依存していた「似合う」といった概念を、データとAIで科学的に解明し、技術的優位性を確立する試みです。
- 二本柱のポートフォリオ: 知財ポートフォリオは、黎明期の「計測技術(ZOZOSUIT)」に関連する中核特許群²⁹と、現在の「AI・データサイエンス」分野におけるR&D成果(論文・ノウハウ)²⁷˒ ²⁸という、二つの異なる性質の柱で構成されています。
- 計測技術の収益化: ZOZOSUIT²⁹で確立した計測技術特許は、B2Cでのデータ収集フェーズを経て、米国市場におけるB2Bボディーマネジメントサービス「ZOZOFIT」¹⁰として、知財の直接的なライセンス・サービス収益化へと移行しています。
- AI戦略のデュアリズム: AI分野では、トップカンファレンスでの論文発表(ICLR等)²⁷による「学術的公開」と、サービス(「WEAR」¹⁹、「ZOZOマッチ」²⁴)への「事業的実装」を並行して進めています。これは、優秀な人材の獲得と技術の秘匿(特許化または営業秘密化)という、相反する目的を両立させる高度なデュアル戦略と見られます。
- 「事業を育てる」知財部: 専門組織である「知的財産部」は、「特許・意匠」と「商標・著作権」のブロック体制³を敷き、事業部と密に連携します。その役割は「ブレーキ」ではなく「アクセル」であり、「事業を一緒に育てる」文化³が醸成されています。
- 卓越したブランド防衛: 「守り」の知財活動として、偽サイト・SNSの不正広告対策に注力し、過去2年間で約700件もの偽サイトをテイクダウン³させた実績を持ちます。この業務は、情報システム部門と連携した「自動検出ツールの内製」³によって支えられています。
- 保護対象の拡張(UX): リアル店舗「niaulab by ZOZO」の事例では、サービス本体(人)の特許化が困難なため、「試着室に飛び込む」という内装コンセプトを「意匠権」で保護³しました。これは、技術やブランドに加え、「顧客体験(UX)」までも知財ポートフォリオに組み込む先進的なアプローチです。
- 最大の競合脅威: 競合であるAmazonは、3Dボディスキャン企業「Body Labs」の買収²⁵や「バーチャルミラー」特許³¹により、ZOZOの「マーカー式」²⁹計測技術の弱点である「スーツ(マーカー)不要」の技術で包囲網を築いており、中核技術の陳腐化リスクが顕在化しています。
- 訴訟防衛の経験値: 過去に「ネット広告システム」に関する特許訴訟(被告)において、知財高裁で勝訴(請求棄却)³⁰した経験を有します。この防衛成功のノウハウが、現在のFTO(Freedom to Operate)調査や防衛戦略の基盤となっていると推察されます。
- 中長期リスク: 短期的にはグローバル展開(LYST、MUSINSA)¹⁹に伴う国際知財紛争リスク、中期的には上記(8)のマーカーレス技術への移行遅延、長期的にはAI生成物やメタバース³⁷といった新領域の法的課題への対応がリスクとして識別されます。
- 戦略的示唆: 今後は、LINEヤフーグループのシナジー³⁸を活かしたデータ・AIの共同IP創出と、ZOZOFIT¹⁰に続くAIアルゴリズム(物流最適化⁹、需要予測等)のB2Bライセンス化による収益源の多様化が、同社の知財戦略における次なる焦点となると見られます。
背景と基本方針 —「ソウゾウのナナメウエ」を支える知財
株式会社ZOZO(以下、ZOZO)の知的財産戦略は、同社の経営戦略と不可分に結びついており、単なる法務・管理部門の機能を超え、企業の競争優位性そのものを定義する中核的な役割を担っています。本章では、ZOZOの経営戦略における「FASHION TECH」の位置づけを明確にし、それが知的財産部の基本方針、すなわち「ソウゾウのナナメウエ」の保護というミッション³にどのように結びついているかを分析します。
1.1. 経営戦略「MORE FASHION × FASHION TECH」の定義
ZOZOが2024年度の統合報告ポータルなどで掲げる経営戦略は「MORE FASHION × FASHION TECH 〜 ワクワクできる『似合う』を届ける 〜」¹⁹˒ ²⁰˒ ᴮ²です。このスローガンは、同社が単なるファッションのEコマース(EC)事業者から、テクノロジーを駆使してファッションの新たな価値を創造する企業へと変革を遂げていることを明確に示しています。
ここで定義される「FASHION TECH」とは、単にECサイトの利便性を高めるシステム開発に留まりません。ZOZOのIR資料やサービス展開(2024年〜2025年)を分析すると、その内実は以下の3つの技術要素に集約されると見られます。
- AI(人工知能): コーディネートアプリ「WEAR by ZOZO」における「AIファッションジャンル診断」¹⁹˒ ᴮ²や、AIが「ファッションの好み」を解析して相手を紹介するマッチングアプリ「ZOZOマッチ」¹⁹˒ ²⁴など、AIを活用して個人の嗜好や感性を解析・予測する技術。
- 3D計測技術: ZOZOSUIT²⁹、ZOZOMAT、ZOZOGLASSᴮ²に代表される、個人の身体的特徴を3Dデータとして正確に取得する一連の計測技術群。
- データサイエンス: 上記1・2で収集・生成された膨大なデータを基に、「ファッションを科学的に解明する」⁹ための研究開発活動。
これらの技術群は、従来のファッション業界が「感性」や「経験」に依存していた領域、すなわち「何がその人に『似合う』のか」という問いに対し、科学的かつ定量的なアプローチで解を提示しようとする試みです。
この経営戦略において、知的財産が果たす役割は極めて重要です。なぜなら、「FASHION TECH」によって生み出された技術的優位性(例:独自のAIアルゴリズム、高精度な計測方法)は、模倣が容易なデジタル領域において、特許権、意匠権、商標権、そして営業秘密といった知的財産権によって法的に保護されなければ、持続的な競争力とはなり得ないためです。したがって、ZOZOの知財戦略は、この「FASHION TECH」戦略の根幹を成す「防衛線」であると同時に、技術開発(R&D)の方向性を定める「羅針盤」としての機能も有していると推察されます。
1.2. 知的財産部のミッション:「ソウゾウのナナメウエ」の保護
ZOZOの知的財産部の基本方針は、同社の企業文化を象徴する言葉に端的に表されています。同社の知的財産部へのインタビュー記事によれば、ZOZOらしさを表す3つの言葉「ソウゾウのナナメウエ、日々進歩、愛」のうち、知的財産部は特に「ソウゾウのナナメウエ」の発想から生まれた技術やサービスを保護し、ビジネスの成長を支える役割を担っているとされています³。
「ソウゾウのナナメウエ」とは、単なる奇抜さではなく、常識にとらわれない創造的な発想で課題を解決することを意味します。このミッション定義は、ZOZOの知財部が一般的な企業の法務・知財部門と一線を画す可能性を示唆しています。多くの企業において、知財部が「リスク管理部門(コストセンター)」として、事業部門の活動に法的な「ブレーキ」をかける役割を(少なくとも一部は)担うのに対し、ZOZOの知財部は、むしろ「ソウゾウのナナメウエ」という「アクセル」を法的にどう実現するかを考える「事業支援・創出部門(プロフィットセンター)」として機能することが期待されていると見られます。
実際に、同インタビューでは、広報担当者から見た知財部の印象として、「事業にブレーキをかけるだけでなく、事業に寄り添ってサービスを成長させる意識が強い組織」「『攻めと守りのバランス』をとても意識している」³との評価が述べられています。この「事業に寄り添う」姿勢こそが、ZOZOの知財戦略の基本方針を体現していると言えます。
この方針は、具体的な業務プロセスにも反映されています。新サービスが立ち上がる際、事業部から相談を受けるだけでなく、知財部が自ら積極的に情報収集し、「どんな用途で商標を使うか?」といったヒアリングを通じて、保護すべき対象を発掘します³。これは、知財部が単なる申請代行ではなく、事業戦略の初期段階から関与する「ビジネス・パートナー」として振る舞っていることを示しています。
1.3. Eコマースからテクノロジーカンパニーへの変遷と知財
ZOZOの知財戦略の基本方針は、同社の事業フェーズの進化と共に形成されてきたと推察されます。
フェーズ1:Eコマース(EC)プラットフォーマー期(〜2016年頃)
創業期からZOZOTOWNが国内最大級のファッションECサイトとして成長したこの時期、知財戦略の焦点は、主として「ZOZOTOWN」というサービスブランドを保護するための「商標権」管理と、偽サイト・模倣品対策(ブランド保護)にあったと見られます。技術的な側面は、ECプラットフォームの運営ノウハウが中心であり、それらは主に「営業秘密(ノウハウ)」として管理されていた可能性が高いです。
フェーズ2:テクノロジー主導型への転換期(2017年〜)
このフェーズの転換点は、2017年に発表された「ZOZOSUIT」の登場です。これは、単なるECの枠を超え、テクノロジー(3D計測)を用いて顧客の「体型データ」という新たな無形資産を取得し、ファッションの根本的な課題(サイズ問題)を解決しようとする試みでした。この転換により、ZOZOの知財戦略は「商標」中心から、中核技術(計測方法)を守る「特許」中心へと、その重心を大きくシフトさせたと推察されます。この時期に、「FASHION TECH」カンパニーとしてのアイデンティティと、それを支える特許ポートフォリオの構築が始まったと考えられます。
フェーズ3:AI・データ主導型への再変遷期(2021年頃〜現在)
ZOZOSUITによる大規模なデータ収集(と、その後の戦略的転換)を経て、2021年には研究開発機関「ZOZO NEXT」および「ZOZO研究所」が発足⁹します。この組織のミッションが「ファッションを数値化する」⁹ことにある通り、このフェーズでは「取得したデータ」を「AIで解析・活用する」ことへと焦点が移っています。
「WEAR by ZOZO」のAI診断¹⁹や「ZOZOマッチ」²⁴のAIレコメンデーションは、その具体的な成果です。この再変遷に伴い、知財戦略もまた新たな課題に直面しています。それは、ハードウェア(スーツ)や明確なプロセス(計測手順)を伴う特許とは異なり、AIアルゴリズムや学習済みモデルといった、より流動的で定義の難しい技術的成果を、いかにして「特許」または「営業秘密」として最適に保護するか、という高度な戦略判断です。
このように、ZOZOの歴史は「FASHION TECH」企業への変遷の歴史であり、その知財戦略もまた、事業戦略の進化に合わせて、その保護対象と戦略的焦点をダイナミックに変えてきたと結論付けられます。
当章の参考資料
- https://hr.tokkyo-lab.com/column/pinfosb/zozo
- https://corp.zozo.com/sustainability/social/soc_innovation/
- https://corp.zozo.com/news/20220824-zozofit/
- https://bizzine.jp/article/detail/12013
- https://home.kingsoft.jp/news/app/dx_app/2540ko71-1.html
(https://chizaizukan.com/news/4WWlJhupUPPn15zwsgTplc/)
- https://zozonext.com/news/20240214_zozoresearch
- https://netkeizai.com/articles/detail/14647
(https://patentimages.storage.googleapis.com/dd/85/8f/3b1bfeeecee8c0/JP6980097B2.pdf)
- https://idarts.co.jp/3dp/amazon-patent-additive-manufacturing-products/
- https://www.millenniapat.com/archives/53650
- https://corp.zozo.com/news/20210715-zozo_technologies-18450/
https://corp.zozo.com/ir/20250613-_27/ (※統合報告書 Strategy & Business ページの情報を含む)
全体像と組織体制 — ビジネスを育てる知財部
ZOZOの知財戦略を支える組織体制は、専門性の高い「知的財産部」と、先端技術の源泉であるR&D組織「ZOZO NEXT」という、二つの異なる機能を持つ組織間の緊密な連携によって特徴づけられます。本章では、これらの組織の内部構成と機能、両者の連携プロセス、そして求められる人材像について詳細に分析します。
2.1. 知的財産部の組織構成と機能
ZOZOの知的財産部は、ZOZOグループ全体の知的財産業務(グループ企業や海外拠点を含む)を管掌する本社機能として位置づけられています³。その組織は、保護対象とする権利の種類に応じて、大きく二つのブロックに分かれていることが確認されています³。
- 特許・意匠ブロック
このブロックは、主に「攻め」の知財を担当します。具体的な業務内容は、R&D部門(後述のZOZO NEXT等)が生み出す技術的アイデア(発明)の発掘、特許出願・権利化実務、他社の技術動向や権利状況を分析する特許分析、そして自社サービスが他社特許を侵害していないかを確認するFTO(Freedom to Operate)調査などです³˒ ⁴。ZOZOSUIT²⁹の計測技術や、niaulabの内装意匠³など、ZOZOの技術的・デザイン的優位性を法的に確立する中核的な役割を担います。
- 商標・著作権ブロック
このブロックは、主に「守り」の知財を担当します。中核業務は、ZOZOTOWN、WEARといった既存サービスから、ZOZOマッチ²⁴のような新サービスに至るまで、サービス名やロゴの商標調査および権利化です³。
しかし、その役割は権利化に留まりません。ZOZOの知財部が最重要業務の一つとして挙げるのが「ブランド保護」³です。これには、ZOZOTOWNの名を騙る偽サイトや、SNS上の悪質な広告に対する監視と撲滅(テイクダウン申請)が含まれます³。この活動は、単なる権利管理を超え、ECプラットフォームの信頼性、ひいては企業収益の根幹を守る、極めて実務的かつ重要な機能と言えます。
この組織体制は、技術的発明(特許・意匠)とブランド価値(商標)という、FASHION TECH企業の両輪をそれぞれ専門的に扱うための合理的な構成であると評価できます。
2.2. R&D体制:ZOZO NEXTとZOZO研究所
ZOZOグループの技術革新のエンジンとなっているのが、2021年に発足した株式会社ZOZO NEXT⁹です。ZOZO NEXTは、先端テクノロジーの活用と新たな価値創造を使命とし、その内部にR&D部門である「MATRIX」と、研究機関「ZOZO研究所」を擁しています⁹。
特に「ZOZO研究所」は、ZOZOの知財戦略における「発明の源泉」として極めて重要な存在です。そのミッションは「ファッションを数値化する」⁹と明確に定義されています。これは、ZOZOグループが保有するファッションに関する膨大な情報資産(例:コーディネートデータ、購買データ、体型データ)を基に、ファッションを科学的に解明するための基礎研究および応用研究を行うことを意味します⁹。
ZOZO研究所の活動は、単なる社内開発に留まらず、極めて「アカデミック(学術的)」な性格が強い点が特徴です。
- 学術的成果の公表: AI分野のトップカンファレンスである「ICLR 2024」²⁷や「IJCAI 2025」²⁸などで論文が採択されており、その研究水準が世界的に認められています。
- オープンイノベーション: 大規模コーディネートデータセット「Shift15M」をオープンソースとして研究コミュニティに公開⁹し、ファッションの流行変化予測といった課題を世界中の研究者と共有しています。
- 外部連携: 米イェール大学⁹˒ ²³や早稲田大学²⁶、千葉工業大学²⁸など、国内外の大学と積極的に共同研究を行っています。
このように、ZOZO NEXT(ZOZO研究所)は、目先のサービス改善だけでなく、中長期的な技術的優位性の構築を目指す、学術志向の強い先端R&D組織として機能しています。2025年3月期の有価証券報告書(第27期)によれば、ZOZOグループの研究開発費は10億4000万円(前連結会計年度は6億3700万円)ᴮ²に上っており、この領域への投資が強化されていることが伺えます。
2.3. 連携フロー:R&Dと知財部の「ブリッジ」
ZOZOの組織体制において、R&D機能(ZOZO NEXT)⁹と知財機能(本社の知的財産部)³が組織的に分離されていることは、両者の専門性を高める一方で、連携の断絶(いわゆる「サイロ化」)というリスクを内包します。ZOZOは、この潜在的な課題に対し、組織文化と実務プロセスの両面から対策を講じていると見られます。
インタビュー記事³によれば、知財部と事業部(R&D部門を含む)との連携は、以下のように進化してきました。
設立当初は、知財部側から各部門へ積極的に声がけをする必要がありました。しかし、コミュニケーションを繰り返すことで事業部側の知財への意識が向上し、現在では「事業部の方々から知財部に相談したいと連絡があるシチューショションがかなり増えた」³とされています。
この緊密な連携を実現するため、知財部では「スタッフが事業部担当としてアサインされている」³可能性が示唆されています。これにより、知財部員が特定分野の発明発掘やFTO調査に継続的に関与し、事業部との「共通言語」を構築していると推察されます。
この連携において、知財部員は単なる法律の専門家ではなく、R&D部門(研究者)と事業部(ビジネスサイド)の間に立つ「ブリッジ(翻訳者)」としての役割を果たすことが求められます。研究者が生み出した先端技術(シーズ)を法的に保護可能な「発明」へと昇華させると同時に、それがどのようなビジネス価値(ニーズ)を持つのかを理解し、事業部門と連携して権利化戦略を立案する必要があります。求人情報⁴で「コミュニケーションを大切にし、部内外問わず協力する姿勢」「自ら考え、周囲を巻き込みながら積極的に業務を行う」といった人物像が必須とされているのは、まさにこの「ブリッジ」機能への強い期待の表れと考えられます。
2.4. 知財人材の採用と育成
ZOZOが「FASHION TECH」企業として進化し続けるためには、その戦略を理解し実行できる高度な知財人材の確保が不可欠です。同社の特許担当者の求人情報⁴˒ ⁷からは、その要求水準の高さが伺えます。
必須要件は「企業または事務所における特許業務全般の経験3年以上」⁴と、実務経験が重視されています。しかし、特筆すべきは、単なる実務(発明発掘、出願・権利化、特許分析、FTO調査)⁴に留まらない業務内容が明記されている点です。
それは、「特許業務を推進するうえでの戦略立て」や、「会社にどう特許の文化を広めていくかの企画」⁴˒ ⁷といった業務です。
これは、ZOZOが求めている人材が、弁理士事務所などに外注可能な「実務担当者(ファイラー)」ではなく、R&D部門(ZOZO NEXT)と連携し、どの技術を特許化し、どの技術を秘匿すべきかを経営的視点から判断できる「IPストラテジスト」であることを示しています。
さらに、ZOZOが(当時は)Zホールディングスグループの一員として、グループ横断のAI人材育成プログラム「Z AIアカデミア」³⁸(2021年発足)に参加していた点も注目されます。このプログラムには、ZOZOグループの従業員も対象として含まれていました³⁸。知財部の担当者がこうしたアカデミアに参加していたかは不明ですが、知財担当者自身がAIやデータサイエンスの最新知識を継続的にキャッチアップし、ZOZO研究所⁹の研究者たちとの共通言語を維持することは、最先端の「FASHION TECH」を知財化する上で不可欠な取り組みであると推察されます。
2.5. 組織体制から見る考察
ZOZOの組織体制を分析すると、二つの重要な論点が見出されます。
第一に、R&D(ZOZO NEXT)⁹と知財部³の「分離と連携」モデルです。前述の通り、この体制は専門性を高める一方で、組織間の壁を生むリスクがありました。しかし、「事業部担当制」³の導入や、地道なコミュニケーションの積み重ねによって、「今では事業部の方々から知財部に相談したいと連絡がある」³という、理想的な連携関係が機能し始めている段階にあることが示唆されています。この「文化醸成」の成功が、現在のZOZOの知財活動の基盤となっていると考えられます。
第二に、「学術(Paper)」と「知財(Patent)」の文化の融合という課題です。ZOZO研究所⁹は、ICLR²⁷などのトップカンファレンスで論文を発表する「アカデミック」な文化を持ちます。これは、最先端の知見を公開し、リクルーティングや技術ブランディングに貢献する一方で、特許の要件である「新規性」を喪失させる(=特許化できなくなる)行為でもあります。一方、知財部³は、技術を「権利化(=出願公開までは秘匿)」することをミッションとします。
この相反する可能性のあるベクトルを、経営戦略に基づいて調整することこそが、ZOZOの知財部(およびIPストラテジスト)⁴に求められる最も高度な役割です。研究者に対し、「学会発表の前に知財部に相談する」というプロセスを根付かせ、どの技術を「Paper(公開)」とし、どの技術を「Patent(権利化)」とするかを戦略的に判断する体制の構築が、AI企業の知財戦略の核心であり、ZOZOは今まさにその高度なマネジメント体制を実践している最中であると推察されます。
当章の参考資料
- https://hr.tokkyo-lab.com/column/pinfosb/zozo
- https://tenshoku.mynavi.jp/jobinfo-345394-5-10-1/
- https://tenshoku.mynavi.jp/jobinfo-345394-5-10-1/
- https://corp.zozo.com/sustainability/social/soc_innovation/
- https://corp.zozo.com/sustainability/social/soc_innovation/
(https://chizaizukan.com/news/4WWlJhupUPPn15zwsgTplc/)
- https://morikatron.ai/2025/03/zozo_next/
- https://zozonext.com/news/20240214_zozoresearch
- https://netkeizai.com/articles/detail/14647
(https://patentimages.storage.googleapis.com/dd/85/8f/3b1bfeeecee8c0/JP6980097B2.pdf)
- https://corp.zozo.com/news/20210715-zozo_technologies-18450/
https://corp.zozo.com/ir/20250613-_27/ 1
詳細分析①:中核技術(計測技術)の特許ポートフォリオ
ZOZOが「FASHION TECH」カンパニーとしての地位を確立する上で、その礎となったのが「ZOZOSUIT」に代表される一連の3D計測技術です。この技術は、単なるサービス機能に留まらず、強力な特許ポートフォリオによって支えられており、その活用方法はB2Cでのデータ収集からB2Bでのサービス収益化へと進化しています。本章では、この中核技術に関する特許を分析し、その戦略的価値とライフサイクルマネジメントについて考察します。
3.1. ZOZOSUITの基盤特許(JP6980097B2)の分析
ZOZOSUITの計測技術の根幹を成すと考えられるのが、特許第6980097号(発明の名称「コンピュータシステム、3次元物体のサイズを測定する方法、及びプログラム」)²⁹です。この特許公報(2021年12月15日登録)²⁹の「特許請求の範囲」を分析することで、ZOZOが権利として押さえている技術的アイデアの核心を理解することができます。
請求項1によれば、この発明は「3次元物体のサイズを測定するためのコンピュータシステム」であり、その構成要件は大きく以下の2点にあります²⁹。
- 受信手段: 「複数のマーカーを有するサイズ測定具(=ZOZOSUIT)を装着した3次元物体(=人体)を撮影した画像」を受信する。このマーカーは「サイズ測定具内で一意」である(=マーカーのドットパターンによって、それが身体のどの部分にあるかを特定できる)点が特徴です。
- 3Dモデル構築手段: 「前記複数のマーカーに対応する複数のマーカーを有するデフォルト3Dモデル」と「前記受信された画像」とに基づいて、「前記デフォルト3Dモデルを変形させる」ことにより、3次元物体の3Dモデルを構築する。
この特許の核心は、ゼロから3Dモデルを生成する(例:フォトグラメトリ)のではなく、あらかじめ用意された「デフォルト3Dモデル(標準的な人体モデル)」を、撮影された画像内の「マーカー」の位置情報に基づいて、ユーザーの体型に合わせて「変形(デフォーム)」させる²⁹点にあります。
このアプローチは、当時のスマートフォンのカメラ性能や演算能力の制約の中で、全身の3Dモデルを(比較的)高速かつ(マーカーにより)高精度に生成するための、極めて現実的かつ巧妙な技術的解決策であったと言えます。
3.2. 権利範囲の特定と戦略的価値
この基盤特許²⁹がZOZOにもたらした戦略的価値は絶大です。
強み(戦略的価値):
この特許の最大の強みは、「マーカーを有するサイズ測定具」²⁹という*物理的なデバイス(スーツ)と、それを処理するソフトウェア(アルゴリズム)*を組み合わせた「システム」として権利化している点です。物理デバイスを介在させることで、ユーザーの撮影環境(明るさ、距離、角度)のばらつきを吸収し、マーカーレス(スーツ不要)の技術では困難であった計測精度と安定性を担保しました。これにより、ZOZOは他社に先駆けて、大規模な(数百万規模の)体型データを収集することに成功しました。この「先行者利益」と「データ蓄積」こそが、本特許がもたらした最大の戦略的価値です。
弱点(権利範囲の限界):
一方で、この特許は「諸刃の剣」としての側面も持っています。その権利範囲は、請求項の中心である「マーカーを有するサイズ測定具」²⁹という構成要件に強く依存しています。
これは、裏を返せば、マーカーを使用しない計測技術、例えばAIが画像(シルエットや陰影)のみを解析して3Dモデルを生成するような「マーカーレス」技術に対しては、本特許の権利が及ばない(=侵害を主張できない)可能性が極めて高いことを意味します。
つまり、ZOZOSUITの成功は、競合他社に対し「マーカー式はZOZOの特許網(JP6980097B2等)で押さえられている」という参入障壁を示すと同時に、「マーカーレス技術こそが、ZOZOの特許網を回避し、かつユーザーの利便性(スーツ着用の手間)を上回る“次の一手”である」という明確な開発ロードマップを提示してしまったとも言えるのです。この点は、競合比較(第6章)やリスク分析(第7章)において、極めて重要な論点となります。
3.3. 知財の収益化モデル:B2Bサービス「ZOZOFIT」
ZOZOは、このZOZOSUIT²⁹で培った中核技術(IP)の活用法を、フェーズに合わせて巧みに変化させています。これが「IPライフサイクルマネジメント」の実践です。
フェーズ1:B2Cでのデータ収集(戦略的投資)
初期のZOZOSUIT無料配布(2017年〜)は、B2C市場において、前述の通り「体型データ」という新たな無形資産を取得し、EC事業(ZOZOTOWN)の顧客体験(=サイズ問題の解決)を向上させるための、高コストな「戦略的投資」でした。この段階では、IPは直接的な収益源ではなく、本業のEC事業をブーストするための「イネーブラー」でした。
フェーズ2:B2Bでの直接収益化(IPのマネタイズ)
次にZOZOが打った手は、この確立されたIPを、異なる市場で直接収益化することでした。それが、2022年8月24日に米国で提供開始された、ボディーマネジメントサービス「ZOZOFIT」¹⁰です。
「ZOZOFIT」は、ZOZOSUITの体型計測テクノロジーを活用し、フィットネスやウェルネスに関心のある米国の一般消費者や事業者(ジム等)に対し、高精度な3Dスキャンと体型変化のトラッキング機能を有料(サービス開始時98ドルでスーツを販売)¹⁰で提供するものです。
この「ZOZOFIT」への展開は、ZOZOの知財戦略において極めて重要な「ピボット(戦略転換)」を意味します。
- 市場の転換: 主戦場を、競争が激化する国内EC(B2C)から、ヘルスケア・フィットネスという新たな市場(B2B/B2C)へ、かつグローバル(米国)¹⁰へと拡大しました。
- 収益モデルの転換: IPを「間接的価値(データ収集)」に用いるモデルから、IP(計測技術)そのものをサービスとして提供し、「直接的収益(サービス・スーツ販売料)」¹⁰を得るモデルへと転換しました。
- 戦略的意図: ZOZOFITが、特許紛争の最激戦区である米国市場でサービスを開始¹⁰したという事実は、ZOZOが本特許(および対応する米国特許)の権利的な強さ(有効性および非侵害性)に、相応の自信を持っていることの表れであると推察されます。
このように、ZOZOは一つのIP(マーカー式計測技術)²⁹を、そのライフサイクルに合わせて多角的に活用し、投資(B2C)から回収・収益化(B2B)へとつなげる、洗練されたIPマネジメントを実践していると高く評価できます。
3.4. ZOZOMAT / ZOZOGLASSへの技術派生
ZOZOSUIT²⁹で確立された「マーカー+デフォルトモデル変形」という技術思想は、他の身体部位の計測へと横展開されています。それが、足の3Dサイズを計測する「ZOZOMAT」ᴮ²や、顔の肌色を計測する「ZOZOGLASS」ᴮ²です(これらは統合報告書¹⁸やIR資料ᴮ²でも主要サービスとして紹介されています)。
これらのデバイスもまた、スマートフォンカメラを用いつつ、専用の「マーカー(ZOZOMATのマット、ZOZOGLASSのフレーム)」を介在させることで、計測精度を担保するという共通の思想に基づいていると見られます。
ZOZOは、中核特許²⁹(スーツ)に加え、これらの周辺技術(マット、グラス)についても個別の特許ポートフォリオを構築し、「人体(Body)」「足(Mat)」「顔(Glass)」という身体の主要部位の計測データを網羅的に押さえる戦略をとっていると推察されます。この網羅的な「計測ポートフォリオ」こそが、競合他社に対する参入障壁であり、次章で述べるAI解析のための「データ基盤」となっているのです。
当章の参考資料
- https://corp.zozo.com/news/20220824-zozofit/
- https://corp.zozo.com/ir-info/library/integrated-report/
- https://idarts.co.jp/3dp/amazon-patent-additive-manufacturing-products/
(https://patentimages.storage.googleapis.com/dd/85/8f/3b1bfeeecee8c0/JP6980097B2.pdf)
B2. https://corp.zozo.com/ir/20250613-_27/ (※統合報告書 Strategy & Business ページの情報を含む)
詳細分析②:AI・データと最先端R&Dの知財化戦略
ZOZOの「FASHION TECH」戦略は、計測技術による「データ収集(フェーズ1)」を経て、R&D組織「ZOZO NEXT」⁹の主導による「AI・データ解析(フェーズ2)」へと、その中核を明確に移行させています。このフェーズにおける知的財産戦略は、物理的なデバイス(ZOZOSUIT)²⁹の特許化とは異なり、「アルゴリズム」や「学習済みモデル」といった無形のR&D成果をいかに保護・活用するかという、より複雑な課題に直面しています。本章では、ZOZO研究所の活動と、AI時代の知財戦略について深掘りします。
4.1. ZOZO研究所のミッション:「ファッションを数値化する」
第2章でも触れた通り、ZOZO研究所のミッションは「ファッションを数値化する」⁹ことです。これは、ZOZOグループが保有する膨大な情報資産(購買履歴、ZOZOSUIT²⁹による体型データ、ZOZOMATᴮ²による足型データ、「WEAR」のコーディネート画像など)を基に、「ファッションを科学的に解明する」⁹ことを目指すものです。
「ファッションの数値化」とは、具体的には、以下のような曖昧な感性や事象を、AIが処理可能な定量的データ(ベクトルやパラメータ)に変換する試みであると定義できます。
- 個人の嗜好: 「どういうテイストの服が好きなのか」(例:AIファッションジャンル診断¹⁹)
- コーディネートの評価: 「この組み合わせはおしゃれか」
- トレンドの予測: 「次に流行するアイテムや色は何か」
- 「似合う」の定義: 「特定の体型や肌色(ZOZOGLASSᴮ²)に、どのような服が似合うのか」
この「数値化」こそが、ZOZOのAI戦略の根幹であり、生み出される「数値化モデル(アルゴリズム)」や「学習済みモデル」そのものが、同社の最も重要な知的財産となりつつあります。
4.2. 学術的成果(Paper)とオープンイノベーション
ZOZO研究所⁹の活動で特筆すべきは、その成果を積極的に外部(学術界)に公表している点です。これは、AI分野における高度な「リクルーティング戦略」および「オープンイノベーション戦略」の一環と見られます。
- トップカンファレンスでの論文発表(Paper)
ZOZO研究所は、AI・機械学習の分野で最も権威ある国際会議(トップカンファレンス)において、継続的に論文採択の実績を上げています。
- ICLR 2024: 機械学習のトップカンファレンスの一つである「ICLR 2024」(2024年5月開催)にて、ZOZO研究所の研究員(古澤 拓也氏³²)による論文が採択されました²⁷。
- IJCAI 2025: 人工知能分野の国際会議「IJCAI 2025」において、千葉工業大学との共同研究による論文(AIの予測結果を説明する新手法「C2FA」)が採択されました²⁸。
- IBIS 2024: 国内最大の機械学習ワークショップ「IBIS 2024」において、「引力と斥力を制御可能なべき集合上の分布族」に関する研究が優秀プレゼンテーション賞を受賞しました⁹。
- その他: 早稲田大学との共同研究「Fashion Intelligence System」(コーディネート画像とタグの関係を可視化するAI)²⁶など、大学との連携も活発です。
これらの活動は、ZOZOのR&Dが世界水準にあることを外部に証明し、優秀なAI研究者やエンジニアを惹きつける強力な「採用ブランディング」として機能しています。
- オープンソース化によるデファクトスタンダード戦略
ZOZO研究所は、保有する実データで構成された大規模データセット「Shift15M」と実装基盤をオープンソースとして公開⁹しました。これは、コーディネートデータの年ごとの傾向(流行)の変化を認識し、データの「分布シフト」を再現実験できる研究基盤です⁹。
このデータセット公開の戦略的意図は、単なる社会貢献に留まらないと推察されます。AIの研究開発において、アルゴリズム以上に「良質な大規模データセット」が競争力の源泉です。ZOZOが自社データを(一部加工・匿名化した上で)公開し、世界中のAI研究者に「標準データセット」として利用させることで、ZOZOの課題設定(=ファッションの流行変化の予測)が、この分野の研究の「デファクトスタンダード(事実上の標準)」となる可能性があります。
その結果、世界中の研究者がZOZOの課題を(実質的に)解くために競争し、ZOZOは(自社が保有する非公開のフルデータを用いて)その研究成果の「一番乗り」でビジネスに応用できる、という極めて高度なオープンイノベーション戦略であると考えられます。
4.3. R&D成果の事業化(Service)
ZOZO研究所⁹のR&Dは、学術的な成果(Paper)に留まらず、着実に事業(Service)へと実装されています。
- 顧客向けサービス(B2C):
- WEAR by ZOZO: 2024年のリニューアル¹⁹で、AIがユーザーの好みを分析する「ファッションジャンル診断」機能ᴮ²が提供されました。
- ZOZOマッチ: 2025年6月提供開始ᴮ²(2024年報道²⁴)。ZOZO独自のAIが「ファッションの好み」という従来の婚活アプリにはない軸でマッチングを行う、R&D成果の直接的な事業化事例です。
- 米イェール大学との共同研究: ZOZOTOWNの顧客価値最大化を目指し、計量マーケティングや実証産業組織論の知見を活用した研究が開始されています⁹˒ ²³。
- 社内オペレーション(バックエンド):
- 物流最適化: ZOZO研究所の研究員による「物流倉庫拡張後の拠点間輸送を最小化する在庫配置」に関する研究が、オペレーションズ・リサーチ学会で事例研究賞を受賞⁹しています。これは、R&Dが顧客向けサービスだけでなく、物流(ZOZOBASE)²²の効率化とコスト削減、さらには輸送に伴う環境負荷低減(サステナビリティ)²²にも直接貢献していることを示す重要な事例です。
4.4. AIアルゴリズムの保護戦略:「特許」 vs 「営業秘密」
計測技術(ZOZOSUIT)²⁹が「特許」で明確に保護できたのに対し、AI・データ分野のR&D成果(アルゴリズム、学習済みモデル)の保護は、より複雑な戦略的判断を要します。これが、AI企業の知財戦略における中心的なジレンマです。
- 特許化(Patent)の道
AIアルゴリズム自体(例:特定の計算手順)や、そのAIを特定の課題(例:ファッションの流行予測)に応用する「ビジネスモデル」を特許として出願する戦略です。
- メリット: 権利化できれば、他社による同一技術の実施を差し止められる強力な独占権(20年)を得られます。
- デメリット: 出願から1年6ヶ月後に内容が「出願公開」されるため、技術の詳細が競合他社に知られてしまいます。また、アルゴリズムの進歩が速いため、特許が成立する頃には技術が陳腐化しているリスクもあります。
- 営業秘密(Trade Secret)の道
アルゴリズムのソースコード、学習に用いた「データセット」(例:Shift15Mの非公開フルデータ)、そしてそのデータで学習させた「学習済みモデル」そのものを、社内の機密情報(営業秘密)として管理する戦略です。
- メリット: 秘匿性が保たれるため、競合に技術の詳細を知られません。保護期間に定めはありません。
- デメリット: 他社が独自に(盗用ではなく)同一の技術を開発した場合、それを止めることはできません。また、情報漏洩(例:開発者の転職)のリスクに常に晒されます。
4.5. AI戦略に関する考察
ZOZOのAI・R&D活動(4.2節)を、この「特許 vs 営業秘密」のジレンマ(4.4節)に照らして分析すると、同社が非常に計算された「ハイブリッド戦略」を採っている可能性が浮かび上がります。
考察1:「Paper or Patent」の戦略的ジレンマ
ZOZO研究所による積極的な「論文発表」²⁷˒ ²⁸は、前述の通り、特許要件の一つである「新規性」を自ら喪失させる行為です。これは一見、知財戦略と矛盾するように見えますが、戦略的な「使い分け」であると推察されます。
ZOZOは、R&D成果を以下のように分類し、保護方法を変えている可能性があります。
- ① アルゴリズムの核心(基礎理論): 論文として「公開(Paper)」²⁷する。これにより、技術的優位性を世界に示し、優秀な人材(AI研究者)を採用する。
- ② ①をZOZOの膨大なデータで学習させた「学習済みモデル」: 社外秘の「営業秘密」として厳重に管理する。アルゴリズムが公開されても、同じ学習データを持たない限り、競合は同じ性能のモデルを再現できません。
- ③ ①②を使った具体的なサービス(例:ZOZOマッチ²⁴のUI/UX): 「特許(ビジネスモデル特許)」や「意匠権」「商標権」で保護する。
この「公開(Paper)」によるリクルーティングと、「秘匿(営業秘密)」による競争優位の源泉(学習済みモデル)の確保を両立させるハイブリッド戦略こそが、ZOZOのAI知財戦略の核心である可能性があります。
考察2:データセット(Shift15M)の公開が最大の「堀」
さらに、データセット「Shift15M」の公開⁹は、法的な「堀」(特許)ではなく、*事実上の「堀」(デファクトスタンダード)*を築く戦略です。
GoogleがAIフレームワーク「TensorFlow」をオープンソース化した戦略と同様に、ZOZOが自社データセット⁹を研究の「標準」とすることで、AI研究コミュニティ全体がZOZOのプラットフォーム上で活動することになります。ZOZOは、そのコミュニティが生み出す最先端の知見をいち早く取り込み、自社の非公開フルデータで再学習させることで、常に競合の一歩先を行くサービス(例:ZOZOマッチ²⁴)を市場に投入し続けることができる。この「エコシステム戦略」は、個別の特許を取得する以上に強力な、持続的競争優位の源泉となり得ると考えられます。
当章の参考資料
- https://corp.zozo.com/sustainability/social/soc_innovation/
- https://bizzine.jp/article/detail/12013
- https://www.env.go.jp/guide/info/eco-first/assets/pdf/c78_com.pdf
- https://corp.zozo.com/sustainability/social/soc_innovation/
(https://chizaizukan.com/news/4WWlJhupUPPn15zwsgTplc/)
- https://morikatron.ai/2025/03/zozo_next/
- https://zozonext.com/news/20240214_zozoresearch
- https://netkeizai.com/articles/detail/14647
(https://patentimages.storage.googleapis.com/dd/85/8f/3b1bfeeecee8c0/JP6980097B2.pdf)
- https://zozonext.com/news/20240214_zozoresearch
https://corp.zozo.com/ir/20250613-_27/ (※統合報告書 Strategy & Business ページの情報を含む)
詳細分析③:ブランド・デザインと防衛戦略
ZOZOの知的財産戦略は、「攻め」の側面である先端技術(計測技術²⁹やAI⁹)の特許化と同時に、「守り」の側面であるブランド価値とデザイン(顧客体験)の保護においても、極めて積極的かつ先進的な取り組みを見せています。特に、ECプラットフォーム事業者にとって生命線とも言える「信頼」の毀損に直結する偽サイト対策や、リアルな顧客体験を「意匠権」³で保護する戦略は、同社の知財部の高い専門性と実行力を示しています。本章では、この防衛戦略と、保護対象を拡張する取り組みについて詳述します。
5.1. 中核商標ポートフォリオと管理
ZOZOの事業の根幹は、「ZOZOTOWN」という強力なブランド(商標)によって支えられています。知的財産部(商標・著作権ブロック)は、この中核商標の管理に加え、事業の多角化に伴い拡大する商標ポートフォリオ全体を管理しています³。
- 基幹サービス: 「ZOZOTOWN」「WEAR」
- 計測ツール: 「ZOZOSUIT」²⁹、「ZOZOMAT」ᴮ²、「ZOZOGLASS」ᴮ²
- 新規事業: 超パーソナルスタイリング体験施設「niaulab by ZOZO」³、マッチングアプリ「ZOZOマッチ」²⁴
- グローバル展開: ボディーマネジメントサービス「ZOZOFIT」(米国)¹⁰
知的財産部³は、これらの新サービスが立ち上がる際、事業部からの相談に基づき、または自ら積極的に情報を収集し、商標調査と権利化(出願)のプロセスを主導します。その際、単に名称を登録するだけでなく、「どんな用途で商標を使うか?」³を詳細にヒアリングし、事業の将来的な展開も見据えた適切な「指定商品・役務(サービス区分)」で権利を取得する、戦略的な出願実務が求められます。
5.2. グローバル展開と国際商標戦略
ZOZOの事業が国内に留まらず、グローバルに拡大するにつれ、国際的な商標管理の重要性は飛躍的に高まっています。
- 米国市場: 「ZOZOFIT」¹⁰(2022年〜)の展開。
- 欧州市場: 2025年4月のLYST(英国のファッションプラットフォーム運営)の完全子会社化¹⁹˒ ²⁰˒ ᴮ¹⁰。
- アジア市場: 韓国のファッション企業「MUSINSA」との戦略的パートナーシップに向けたMOUの締結¹⁹˒ ²⁰。
これらのグローバル展開は、知的財産部³に対し、新たな課題を突きつけています。それは、各国(特に米国、欧州、韓国、中国)における商標の先行調査と出願・管理業務の増大です。さらに深刻なのは、海外での偽サイトや模倣品対策です。国内以上に巧妙かつ大規模に展開されるブランド毀損行為に対し、各国の法制度やプラットフォーム(Amazon、Alibabaなど)のルールに基づいた、迅速な対応体制の構築が急務となります。知財部³が「サービスの海外展開も考えて調査・権利化をする」³と言及している通り、この国際知財対応は、今後のZOZOの成長を左右する重要な防衛線となります。
5.3. 積極的なブランド保護:「守り」の知財
ZOZOの知財部³が「攻め(特許)」と同等、あるいはそれ以上に注力しているのが、この「守り(ブランド保護)」³の業務です。ECプラットフォーム事業において、顧客の「信頼」は最も重要な無形資産であり、偽サイトによるフィッシング詐欺や粗悪品の販売は、この信頼を一瞬で失墜させる最大の脅威です。
この脅威に対し、ZOZOの知財部は顕著な実績を上げています。インタビュー記事³によれば、知的財産部は「偽サイト対策など、ビジネスを守る活動」³に積極的に取り組んでおり、**過去2年ほどの間に約700件もの偽サイトを撲滅(テイクダウン)**³したとされています。
この高度なブランド保護活動は、以下の二つの特徴によって支えられています。
- 業務プロセスの確立
偽サイトの発見は、事業部や顧客からの情報提供、および外部への調査依頼³によって行われます。発見後、知財部³は偽サイトのコンテンツをホストするサーバー管理会社に対し、「弊社の知的財産を侵害する悪質なサイトなのでテイクダウンしてください」³と法的な申請を行い、サイトの閉鎖・停止措置を迅速に実行します。
- テクノロジーによる業務の「DX(デジタル変革)」
約700件³という膨大な数の偽サイトに人海戦術だけで対応するのは非効率です。ここでZOZOは、自らが「FASHION TECH」企業であることの強みを発揮します。
知的財産部³は、**情報システム部門と協力し、「自動で偽サイトを検出するツールを内製化」**³しました。
この「知財業務のDX」は、ZOZOの知財戦略における特筆すべき点です。通常、こうした監視業務は外部の専門業者に委託されることが多い中、ZOZOは自社の技術力でツールを内製化し、監視の精度とテイクダウン申請までのスピードを劇的に向上させました。これにより、ブランド価値(=将来収益)の毀損を最小限に抑えることに成功していると見られます。
さらに、巧妙化するSNS広告を悪用した手口³に対しては、グループ企業(LINEヤフー等)やグループ外の企業とも情報交換³を行い、業界全体での対策も進めています。
5.4. デザイン(意匠権)の戦略的活用:「niaulab」事例
ZOZOの知財戦略の先進性を示すもう一つの象徴的な事例が、リアル店舗「niaulab by ZOZO」³における「意匠権」の活用です。
「niaulab」は、AI診断とプロのスタイリストによる「超パーソナルスタイリング」を提供する体験型施設です。このサービスにおいて、AI技術(特許で保護可能)³はあくまで補助であり、サービスの核は「人(スタイリスト)」によるコンサルテーションです。一般的に、こうした「サービス(役務)」自体を特許権で独占的に保護することは困難です。
この課題に対し、ZOZOの知財部³は、保護対象を「技術(モノ)」から「体験(コト)」のデザインへとシフトさせる、創造的なアプローチを採りました。
彼らが着目したのは、「試着室に飛び込む」というniaulab独自の内装コンセプト³です。そして、このコンセプトに基づく内装上の工夫(デザイン)を「意匠権」として権利化³しました。
これは、AppleがApple Storeの店舗デザイン(ガラス張りのファサードやテーブル配置)を意匠登録した戦略と軌を一にするものです。競合他社がniaulabのサービスモデル(AI+スタイリスト)を模倣したとしても、その「空間体験」の核心である内装デザインを模倣すれば、意匠権侵害を問われる可能性があるという、新たな防衛線を構築したのです。
この権利化にあたり、知財部³は「建物の形に左右されないよう、どこを意匠権として押さえるか部内で議論し、他社の出願事例も調べて分析した」³とされており、単なる出願実務に留まらない、高度な戦略性が伺えます。
この事例は、ZOZOの知財戦略が、技術(特許)やブランド(商標)だけでなく、「顧客体験(UX)」や「空間デザイン」までもを知財ポートフォリオに組み込む、極めて広範かつ先進的な領域に達していることを示しています。
5.5. 訴訟防衛戦略:過去の訴訟経験
ZOZOの強固な「守り」の知財は、過去の訴訟経験によっても培われてきたと推察されます。
2015年(平成27年)、ZOZO(当時の株式会社スタートトゥデイ)は、「ネット広告システム」に関する特許権(発明の名称「ネット広告システム」)の侵害を理由に、特許権者Xから損害賠償等を求める訴訟を提起されました(被告Y)³⁰。
この訴訟において、被告Y(ZOZO)が運営する「ZOZOTOWN」「ZOZOVILLA」「ZOZOOUTLET」のシステムが、原告Xの特許権の構成要件を満たすかどうかが争点となりました³⁰。
結果として、第一審(東京地裁 平成26年)³⁰、控訴審(知財高裁 平成27年)³⁰ともに、ZOZOのシステムは原告の特許権の技術的範囲に含まれない(構成要件を充足しない)と判断され、原告の請求は棄却されました。ZOZO側の全面的な「勝訴」です³⁰。
この訴訟(および勝利)の経験は、ZOZO社内に以下のような重要なノウハウと文化を蓄積させたと推察されます。
- 特許紛争対応の実務ノウハウ: 訴訟プロセス、証拠収集、技術的な主張立証(非侵害論理の構築)といった、特許紛争に対応するための実践的な経験値。
- FTO(Freedom to Operate)調査の重要性の認識: 新サービスをローンチする前に、他社の特許権を侵害していないかを徹底的に調査(FTO調査)することの重要性を、経営陣を含む全社が再認識したと考えられます。
- 知財部のプレゼンス向上: 訴訟という「有事」において、知財部(および弁護士・弁理士)が事業防衛の中核を担い、勝利を収めたという事実は、社内における知財部のプレゼンスを大きく向上させ、「事業部からの相談が増えた」³という現在の良好な関係構築³の一助となった可能性があります。
このように、ZOZOの防衛戦略は、日々の地道なブランド保護活動(偽サイト対策)³と、それを効率化するテクノロジー(自動化ツール)³、そして有事(特許訴訟)³⁰を乗り越えた経験値に裏打ちされた、強固なものであると評価できます。
当章の参考資料
- https://hr.tokkyo-lab.com/column/pinfosb/zozo
- https://corp.zozo.com/news/20220824-zozofit/
- https://bizzine.jp/article/detail/12013
- https://home.kingsoft.jp/news/app/dx_app/2540ko71-1.html
(https://chizaizukan.com/news/4WWlJhupUPPn15zwsgTplc/)
29.(https://patentimages.storage.googleapis.com/dd/85/8f/3b1bfeeecee8c0/JP6980097B2.pdf)
30.(https://www.intx.co.jp/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E5%BA%83%E5%91%8A%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E4%BA%8B%E4%BB%B6/)
B2. https://corp.zozo.com/ir/20250613-_27/ (※統合報告書 Strategy & Business ページの情報を含む)
B10. https://corp.zozo.com/ir-info/library/past/ 2
競合比較 — ファッションテックを巡る知財競争
ZOZOの知財戦略を客観的に評価するためには、同じ「ファッションテック」の領域で覇権を争う、主要な競合他社の動向と比較分析することが不可欠です。ZOZOが「計測技術」²⁹と「AI」⁹を武器とする中、競合各社は異なる戦略的アセットと知財ポートフォリオで対抗しています。本章では、特に脅威度の高い「Amazon」、リアル店舗との連携で対照的な「ファーストリテイリング」、そして国内ECプラットフォームとして競合する「楽天グループ」を取り上げ、ZOZOの戦略との対比を行います。
6.1. 比較のフレームワーク
比較にあたっては、以下の4つの軸を設定します。
- R&D体制: 技術革新の源泉となる組織。
- 注力特許分野: 各社がどの技術領域を「堀」として重視しているか。
- AI・データ戦略: FASHION TECHの核となるAI・データの活用法。
- 知財紛争の傾向: 知財戦略が「攻め」か「守り」か、その顕在化したリスク。
6.2. Amazon:全方位型の技術的脅威
グローバルECの巨人であるAmazonは、ZOZOにとって最も強大かつ直接的な競合相手です。Amazonの強みは、Lab126¹²(ハードウェア開発部門)に代表される強力なR&D体制と、EC・クラウド(AWS)・AIを垂直統合したエコシステムにあります。
- 注力分野(3Dスキャン):
ZOZOのZOZOSUIT²⁹が「マーカー式」であるのに対し、Amazonは明確に「マーカーレス(スーツ不要)」技術に照準を合わせています。2017年、Amazonはニューヨークの3Dボディスキャニング専門企業「Body Labs」を買収²⁵しました。Body Labsの技術は、スマートフォンなどで撮影されたユーザーの身体的特徴(シルエット等)をAIで分析し、仮想空間上に高精度な人体3Dモデルを作成するものです²⁵。これは、ZOZOの中核特許²⁹の「弱点」(マーカーへの依存と、ユーザーのスーツ着用という手間)を正確に突いた戦略的買収であり、ZOZOの計測技術に対する最大の脅威と言えます。
- 注力分野(バーチャル試着):
Amazonは、Body Labs²⁵で取得した3Dモデルを活用する「出力技術」においても特許網を構築しています。その一つが「blended reality mirror(ブレンドリアリティミラー)」³¹と呼ばれる仮想ドレスアップ技術の特許です。これは、ユーザーの全身を写す鏡型のデバイスにセンサーやカメラを設置し、高度なAI技術により、様々な角度から体型に合う服を仮想的に試着できるものです³¹。
- 注力分野(店舗・物流):
さらに、衣服の形態やサイズに応じて型を変えることができる「モデルロボット(ロボットマネキン)」の特許¹²や、カスタム3Dプリントサービス(オンデマンド製造)に関する特許²⁵も取得しており、データ取得から試着、製造、物流に至るまで、ファッションのバリューチェーン全方位をテクノロジーと特許で押さえようとしています。
- ZOZOへの示唆:
Amazonは、ZOZOがZOZOSUIT²⁹で開拓した「体型データの取得・活用」市場に対し、よりシームレス(スーツ不要)な技術(Body Labs²⁵)と、よりリッチな出力体験(バーチャルミラー³¹)で、根本的なディスラプション(破壊)を仕掛けています。ZOZOがB2B(ZOZOFIT)¹⁰で米国市場に進出する今、Amazonのこれらの特許ポートフォリオとの抵触(FTO)調査、および自社の次世代マーカーレス技術の開発は、待ったなしの経営課題です。
6.3. ファーストリテイリング(ユニクロ):店舗DXとサプライチェーン
製造小売(SPA)の最大手であるファーストリテイリング(以下、FR)は、リアル店舗網を基盤とする点でZOZOと対照的ですが、「テクノロジーの活用」においては共通しています。FRの知財戦略の焦点は、ZOZOとは異なり、リアル店舗運営の効率化と、それを支えるサプライチェーンにあります。
- 知財紛争(RFID):
FRの知財戦略を象徴するのが、ユニクロやGUのセルフレジに導入されているRFID(無線周波数タグ)技術を巡る特許紛争です¹¹。大阪のIT企業「アスタリスク」が保有する「RFID読取装置」に関する特許(買い物かごをレジに置くだけで決済できる仕組み)¹¹を巡り、FRとアスタリスクは長期間にわたる訴訟合戦を繰り広げています。2021年の報道¹¹では、知財高裁が特許を一部無効とした特許庁の審決を取り消すなど、FR側(特許の無効化を目指す側)にとって厳しい司法判断が示された局面もありました。
- ZOZOへの示唆:
このRFID訴訟¹¹は、一つの基幹技術(ここではRFID)に関する特許紛争が、いかに事業運営(ユニクロの全店舗におけるレジ業務)に直結する重大なリスクとなるかを如実に示しています。
ZOZOの現在の戦場は、主に「家庭内(アットホーム)」でのデータ取得(ZOZOSUIT)²⁹と、「サーバーサイド」でのAI解析(ZOZO研究所)⁹です。しかし、ZOZOが将来的に「niaulab by ZOZO」³のようなリアル店舗展開を本格的に拡大する場合、店舗運営に関わる技術(例:決済システム、無人試着室、在庫管理)について、FRが直面しているような特許紛争に巻き込まれるリスクが新たに発生する可能性があります。niaulabの内装を「意匠権」³で守る戦略は、こうしたリアル店舗の知財リスクへの第一歩とも言えます。
6.4. 楽天グループ:プラットフォームとAIエコシステム
国内ECプラットフォームとしてZOZOTOWNと競合する「楽天市場」を運営する楽天グループもまた、AIとファッション領域への投資を強化しています。
- AI戦略:
楽天はグループ全体としてAI開発に莫大な投資を行っており、楽天技術研究所を中心としたR&D体制を敷いています。2025年には、経済産業省およびNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)による生成AIの開発力強化プロジェクト「GENIAC」に採択¹⁶されており、AIの基盤モデル構築において国策レベルの支援を受けています。
- FASHION TECH:
楽天は「Rakuten Fashion Week TOKYO」の冠スポンサーであり、その関連イベントとして開催される「TOKYO AI Fashion Week 2025S/S」(OpenFashion社主催)¹⁷を支援するなど、ZOZOと同様にAIとファッションの融合領域に強い関心を示しています。
- ZOZOへの示唆:
楽天は、ZOZOと同様の「プラットフォーマー」として、ECとAIの領域で直接競合します。楽天の強みは、EC、金融、モバイル、メディアといった広範なエコシステムから得られる異種データ(ZOZOが持つファッション特化データとは異なる)と、GENIAC¹⁶採択に象徴される大規模なAI基盤開発力にあります。この広範なデータとAI基盤が組み合わさった場合、ZOZOの「ファッションの数値化」⁹とは異なるアプローチでの脅威となる可能性があります。
6.5. ファッションテック主要企業の知財戦略比較
これまでの分析を基に、主要4社の知財戦略を以下の表にまとめます。
【表1】ファッションテック主要企業の知財戦略比較
|
比較軸
|
株式会社ZOZO
|
Amazon.com, Inc.
|
ファーストリテイリング
|
楽天グループ
|
|
R&D組織
|
ZOZO NEXT, ZOZO研究所⁹
|
Amazon Lab126¹², Body Labs²⁵
|
本社R&D, パートナー連携
|
楽天技術研究所, GENIAC¹⁶
|
|
中核技術 (特許)
|
・3Dマーカー計測 (ZOZOSUIT)²⁹
・AIによる「似合う」の解析⁹
・内装意匠 (niaulab)³
|
・マーカーレス3Dスキャン²⁵
・バーチャルミラー³¹
・ロボットマネキン¹², 物流
|
・RFID(セルフレジ)¹¹
・サプライチェーン最適化
|
・ECプラットフォーム技術
・生成AI基盤モデル¹⁶
|
|
AI・データ戦略
|
・「ファッションの数値化」⁹
・学術発表(Paper)²⁷と実装(Service)²⁴
・「Shift15M」公開⁹
|
・全事業におけるAI活用
・膨大な購買・閲覧データ
・AIによる試着・推薦
|
・需要予測
・店舗オペレーション最適化
|
・グループ横断のAI活用¹⁶
・AI Fashion Week支援¹⁷
|
|
知財戦略の特徴
|
・体験(UX)の意匠保護³
・積極的なブランド防衛(内製化)³
・「Paper or Patent」のデュアル戦略
|
・全方位の特許網羅(垂直統合)
・R&D企業の積極的買収²⁵
・シームレスな体験の追求
|
・リアル店舗の基幹技術の防衛
・特許無効化によるFTO確保¹¹
|
・エコシステム防衛
・AI基盤の構築(オープン)
|
|
直面する知財課題
|
・マーカーレス技術への移行遅延
・AI論文²⁷と特許化のジレンマ
・グローバル展開に伴う紛争リスク¹⁰
|
・巨大テック企業としての独禁法
・パテント・トロール対応
・マーカーレス技術の精度向上
|
・RFID特許訴訟の長期化¹¹
・店舗DXに関わる他社特許
|
・生成AIのアウトプットに関する著作権
・プラットフォームとしての責任
|
(出典:S_3, S_9, S_10, S_11, S_12, S_16, S_17, S_24, S_25, S_27, S_29, S_31 に基づきアナリスト作成)
6.6. 競合比較からの考察
この競合比較から、ZOZOの知財戦略が直面する二つの重要な論点が明確になります。
考察1:Amazonによる「マーカーレス」技術の包囲網
比較分析から明らかなように、ZOZOの「FASHION TECH」戦略における最大の脅威はAmazonです。Amazonは「Body Labs買収(入力:スキャン技術)」²⁵と「blended reality mirror(出力:試着技術)」³¹により、ZOZOがZOZOSUIT²⁹で構築した「計測→推奨」というバリューチェーン全体を、よりシームレスな(スーツ不要の)技術で置き換え、包囲しようとしています。
これは、第3章で指摘したZOZOの中核特許²⁹の弱点(マーカーへの依存)を、Amazonが正確に突いた戦略です。ZOZOがB2B(ZOZOFIT)¹⁰で米国市場(Amazonの本拠地)に進出した今、Amazonのこれらの特許ポートフォリオは、ZOZOの事業展開における直接的な障害となる可能性があり、自社の次世代技術(マーカーレス)の開発・特許化が、防衛と攻撃の両面から急務となっています。
考察2:ZOZOとファストリの「戦場」の違い
ファーストリテイリング(FR)のRFID特許紛争¹¹は、その「戦場」がリアル店舗のオペレーション(レジ業務)である点で、ZOZOとは大きく異なります。ZOZOの現在の主戦場は、あくまで家庭内(アットホーム)でのデータ取得(ZOZOSUIT)²⁹と、サーバーサイド(クラウド)でのAI解析(ZOZO研究所)⁹です。
これは、両社のビジネスモデル(SPA vs ECプラットフォーム)の違いを明確に反映しています。しかし、この戦場の違いは永遠ではありません。ZOZOが「niaulab」³のようなリアル店舗展開を拡大し、オフラインでの顧客体験(OMO)を強化する戦略(例:ZOZOMOᴮ²)を推し進める場合、FRが直面しているような「店舗運営技術」(例:無人決済、RFID在庫管理、スマート試着室)に関する特許紛争に巻き込まれるリスクが、将来的には発生する可能性を考慮すべきです。niaulabの内装意匠³の保護は、この新たな戦場への第一歩に過ぎないとも解釈できます。
当章の参考資料
- https://hr.tokkyo-lab.com/column/pinfosb/zozo
- https://corp.zozo.com/sustainability/social/soc_innovation/
- https://corp.zozo.com/news/20220824-zozofit/
(https://chizaizukan.com/news/3oEbEfcQV8ayq8svTn80uN/)
- https://roboteer-tokyo.com/archives/7751
- https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2025/0715_02.html
- https://nft-times.jp/ai/53821/
(https://chizaizukan.com/news/4WWlJhupUPPn15zwsgTplc/)
- https://idarts.co.jp/3dp/amazon-patent-additive-manufacturing-products/
- https://zozonext.com/news/20240214_zozoresearch
(https://patentimages.storage.googleapis.com/dd/85/8f/3b1bfeeecee8c0/JP6980097B2.pdf)
- https://idarts.co.jp/3dp/amazon-patent-additive-manufacturing-products/
https://corp.zozo.com/ir/20250613-_27/ 1
リスク・課題(短期/中期/長期)
ZOZOの知財戦略は、計測技術²⁹からAI⁹へと進化を遂げ、ブランド防衛³や体験デザイン³においても先進的な取り組みを見せています。しかし、その戦略は同時に、急速な事業環境の変化に伴う複数のリスクと課題に直面しています。本章では、これらのリスクを「短期」「中期」「長期」の時間軸で整理し、その本質的な課題を分析します。
7.1. 短期リスク:グローバル展開に伴う知財実務の複雑化
最も短期的かつ顕在化しているリスクは、事業の急速なグローバル展開に伴う、知財実務の負荷増大と複雑化です。ZOZOは近年、矢継ぎ早にグローバル展開を加速させています。
- 米国: ボディーマネジメントサービス「ZOZOFIT」の提供(2022年〜)¹⁰。
- 欧州: ファッションプラットフォーム「LYST」の完全子会社化(2025年)¹⁹˒ ²⁰˒ ᴮ¹⁰。
- 韓国: ファッション企業「MUSINSA」との戦略的MOU締結(2024年)¹⁹˒ ²⁰。
これらの展開は、ZOZOの知財部³に対し、従来の国内中心の業務とは比較にならないレベルの国際知財実務を要求します。
- 国際出願・管理コストの増大:
「ZOZOFIT」¹⁰や、今後LYST¹⁹と連携して展開する可能性のある新サービス(例:AIスタイリング)について、米国、欧州連合、英国、韓国、中国といった主要国での商標権・特許権の出願・維持・管理コストが(件数×国数で)乗数的に増加します。
- グローバルなブランド防衛(偽サイト対策):
国内で約700件³の偽サイト対策を行ってきたノウハウはありますが、これがグローバル(特に中国や東南アジア、ロシアなど)となると、言語、法制度、プラットフォーム(Alibaba, Temu等)の違いから、撲滅の難易度とコストは格段に上がります。LYST¹⁹やMUSINSA¹⁹といった提携先のブランドと共同で、国際的な模倣品対策のスキームを構築する必要に迫られる可能性があります。
- 特許紛争(NPEs)リスクの増大:
特に米国市場¹⁰での事業展開は、「パテント・トロール(NPEs: Non-Practicing Entities)」と呼ばれる、特許権の行使のみを目的とする企業から特許侵害訴訟を提起されるリスクを劇的に高めます。ZOZOが過去に国内で勝訴³⁰した経験はありますが、米国での訴訟はディスカバリー(証拠開示手続)などで桁違いの対応コストと時間を要するため、知財部のリソースを圧迫する大きなリスク要因となります。
7.2. 中期リスク:中核技術(マーカー計測)の陳腐化
中期的に見て、ZOZOの知財戦略における最大の課題は、同社の成功の礎であるZOZOSUIT²⁹(マーカー式計測技術)が、技術的・市場的に「陳腐化」するリスクです。
このリスクは、第3章および第6章で繰り返し指摘した通り、競合他社(特にAmazon)²⁵の戦略によって引き起こされています。
- 競合(Amazon)の脅威: Amazonは「Body Labs」買収²⁵により、「マーカーレス(スーツ不要)」のスキャン技術を保有しています。これは、ユーザーがスーツを着用する「手間」を解消するものであり、利便性においてZOZOSUIT²⁹の技術を凌駕する可能性があります。
- 中核特許(JP6980097B2)の限界: ZOZOの中核特許²⁹は「マーカーを有するサイズ測定具」²⁹に強く依存しているため、これらの「マーカーレス」技術²⁵に対しては権利行使が困難であると推察されます。
- イノベーションのジレンマ: ZOZOにとっての最大のリスクは、競合(Amazon)²⁵ではなく、皮肉にも「ZOZOSUIT²⁹の成功体験」そのものである可能性があります。マーカー式²⁹で確立した技術的優位性と、それに基づくB2B事業(ZOZOFIT)¹⁰という収益モデルが存在する限り、それを自ら破壊(陳腐化)させる可能性のある、不確実な「マーカーレス技術」の開発に、経営リソースを全力で振り分けるという経営判断(いわゆるイノベーションのジレンマ)は難しくなります。
しかし、Amazon²⁵はこのジレンマを持たないため、全力でマーカーレス技術を開発・推進できます。この「非対称性」こそが、ZOZOの中期的なリスクの核心です。ZOZO NEXT(ZOZO研究所)⁹が、このジレンマを克服し、自社の成功IP²⁹を凌駕する次世代のマーカーレス技術を迅速に開発・特許化できるかどうかが、今後5〜10年の競争優位を左右する最大の分岐点となると見られます。
7.3. 長期リスク:AI・メタバース時代の新たな知財問題
長期的な視点では、FASHION TECHの進化そのものが、現行の知的財産法制では対応が難しい、新たなリスクと課題を生み出します。
- AIと著作権・データ保護の課題:
ZOZOの戦略の核はAI⁹ですが、AIの進化は法的なグレーゾーンを拡大させています。
- AI生成物の権利: ZOZOのAI(例:ZOZO研究所が開発する生成AI)が自動生成したファッションデザインやコーディネートの「著作権」は誰に帰属するのか(ZOZOか、AI開発者か、あるいは発生しないのか)。
- 学習データの権利処理: AIの学習データとして使用する「WEAR」のコーディネート画像や、ZOZOTOWNのレビュー(テキスト・画像)について、ユーザーからの許諾(利用規約)は、AIの学習用として十分な範囲をカバーできているか。将来的に「オプトアウト(学習拒否)」の要求が高まった場合、AIモデルの精度が低下するリスクはないか。
- メタバースとデジタルアセットの課題:
ファッションの消費空間が、物理的な世界から「メタバース(仮想空間)」³⁷へと拡大した場合、新たな知財問題が発生します。
- 仮想空間での商標権: メタバース内でアバター用のデジタルスニーカーやTシャツを販売する場合、現実の商品区分(例:25類)だけでなく、仮想商品(ダウンロード可能なデジタルデータ:9類)や関連サービス(35類、41類など)³⁷での商標権保護が必須となります。
- デジタルアイテムの意匠権: アバター用衣装(NFT等)の「デジタルデザイン」を、意匠権³⁷(2020年の法改正で画像意匠も保護対象³⁷)でどう保護するか。
- 模倣品対策の複雑化: 現実のブランドアイテム(例:ナイキのスニーカー)を模倣したデジタルアイテムがメタバース内で第三者によって無断販売された場合、それをどう差し止めるか。
ZOZOの知財部³は、これらの新領域における法整備の動向や判例(特に海外)³⁷を常に監視し、自社のR&D(ZOZO NEXT)⁹が仮想空間領域に進出する場合に備え、いち早く権利保護の戦略を策定・実行し続ける必要があります。
7.4. リスク・課題に関する考察
考察1:R&Dの「学術偏重」リスク
ZOZO研究所⁹が、ICLR²⁷やIJCAI²⁸といったトップカンファレンスでの「論文発表(Paper)」に注力していることは、技術ブランディングや人材採用の面で大きなメリットがあります。しかし、これは「事業貢献(=特許化・収益化)」とのバランスが問われる、潜在的なリスクでもあります。
論文発表²⁷は、本来なら特許化できたはずの技術的アイデアを「公知」にし、競合他社(Amazon²⁵を含む)に無償でヒントを与える行為でもあります。
知財部³がR&D部門⁹に対し、第2章で述べた「ブリッジ」機能⁴を十分に発揮し、適切なガバナンス(=「Paper or Patent」の戦略的判断)を効かせることができなければ、多額の研究開発費(2025年3月期で10.4億円)ᴮ²が「特許」という形で法的に保護されたアセットとして蓄積されず、将来の競争優位を失うリスクがあります。
考察2:グループ連携の不確実性
ZOZOはLINEヤフーグループの一員であり、旧Zホールディングス時代には「Z AIアカデミア」³⁸のようなグループ横断の取り組みも存在しました。このグループシナジー(データ連携、AI共同開発)は、巨大なAmazon²⁵に対抗する上での強力な武器となるはずです。
しかし、親会社であるLINEヤフー自体の経営統合(LINEとヤフー)や、直近のセキュリティガバナンス問題(NAVERとの関係見直し等)に伴う経営の混乱・リソースの再配分が、ZOZOとの戦略的シナジー(特にデータやAI基盤の連携)の進展に遅影響(遅延や停滞)を与える可能性は、短期的な不確実性(リスク)として考慮に入れるべきであると推察されます。
当章の参考資料
- https://hr.tokkyo-lab.com/column/pinfosb/zozo
- https://tenshoku.mynavi.jp/jobinfo-345394-5-10-1/
- https://corp.zozo.com/sustainability/social/soc_innovation/
- https://corp.zozo.com/news/20220824-zozofit/
- https://bizzine.jp/article/detail/12013
- https://home.kingsoft.jp/news/app/dx_app/2540ko71-1.html
- https://idarts.co.jp/3dp/amazon-patent-additive-manufacturing-products/
- https://zozonext.com/news/20240214_zozoresearch
- https://netkeizai.com/articles/detail/14647
(https://patentimages.storage.googleapis.com/dd/85/8f/3b1bfeeecee8c0/JP6980097B2.pdf)
30.(https://www.intx.co.jp/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E5%BA%83%E5%91%8A%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E4%BA%8B%E4%BB%B6/)
- https://www.millenniapat.com/archives/53650
- https://corp.zozo.com/news/20210715-zozo_technologies-18450/
https://corp.zozo.com/ir/20250613-_27/ 1
B10. https://corp.zozo.com/ir-info/library/past/ 2
今後の展望と戦略的示唆
ZOZOの知財戦略は、計測技術²⁹からAI⁹へと競争力の源泉をシフトさせ、先進的な防衛戦略³を確立してきました。今後は、これまでに蓄積した知的財産(IPアセット)を、いかにして次なる成長(特にB2B収益化とグローバル展開¹⁹)に結びつけるかが焦点となります。本章では、LINEヤフーグループとのシナジー³⁸、および「経営」「R&D」「事業化」の3つの観点から、今後の展望と具体的な戦略的示唆を提言します。
8.1. LINEヤフー(ZHD)グループシナジーと知財
ZOZOの知財戦略を展望する上で、LINEヤフーグループ(旧Zホールディングスグループ)の一員であるという(2025年現在継続中の)事実は、無視できない重要な変数です。このグループ連携は、特にデータとAIの領域において、最大の競合であるAmazon²⁵に対抗するための強力な武器となる可能性を秘めています。
- グループ横断のAIケイパビリティ: 2021年に発足した「Z AIアカデミア」³⁸(ヤフー、LINE、一休、アスクル、ZOZOグループが運営企業³⁸)は、グループ全体のAI人材の育成とナレッジ共有を目的としていました。こうした取り組みは、ZOZOの知財部⁴やR&D部門⁹が、AIに関する最新の知見を(単体で活動する以上に)効率的に獲得する上で貢献した可能性があります。
- データ連携の可能性: Amazon²⁵の強みが「EC購買データ+クラウド(AWS)+AI」の垂直統合であるならば、ZOZOの対抗軸は「EC(ZOZO)+コミュニケーション(LINE)+検索・メディア(Yahoo!)」という水平連携です。
例えば、(プライバシー保護規制を厳格に遵守する前提で)ZOZOの「ファッションデータ(購買・体型・嗜好)」⁹、LINEの「コミュニケーションデータ」、Yahoo!の「検索データ」を連携させた、グループ横断的なAIモデル(例:超高精度なパーソナライズド広告やレコメンデーション)が開発された場合、それは強力な競争優位の源泉となり得ます。
- 共同IP(共同出願特許)の創出:
このようなグループ横断のAIモデル開発が実現した場合、そこから生まれる発明は「共同IP(共同出願特許)」として、グループ全体の資産となります。この連携から生まれる共同IPこそが、Amazon²⁵の膨大なデータ量に対抗しうる、独自の差別化要因となる可能性があります。
展望:
短期的には親会社(LINEヤフー)の経営課題(第7章参照)による不確実性があるものの、中長期的には、このグループシナジーを活かした「共同IP戦略」の構築が、ZOZO(およびグループ全体)の知財戦略における重要なテーマとなると予想されます。
8.2. 【戦略的示唆】経営の観点
示唆:IPアセットマネジメントの強化とB2Bライセンス事業の本格化
ZOZOの経営陣は、知的財産を「コスト(訴訟防衛費)」や「B2C事業の付加価値」としてのみ捉えるのではなく、「アセット(独立した収益源)」として明確に位置づけるべき段階に来ています。
米国での「ZOZOFIT」¹⁰の展開は、IP(計測技術)²⁹をB2B/B2Cサービスとして直接収益化する素晴らしい第一歩です。今後は、この成功モデルを他のIPアセットにも横展開することが求められます。
ZOZO NEXT(ZOZO研究所)⁹は、顧客向けAI(ZOZOマッチ²⁴)以外にも、事業運営の根幹を支える強力な技術を開発しています。その代表例が、「物流倉庫拡張後の拠点間輸送を最小化する在庫配置」⁹というオペレーションズ・リサーチ(OR)の成果です。これは、ZOZOBASE²²の効率化に貢献した技術ですが、同様の課題(多拠点在庫の最適化)は、アパレル業界の同業他社や、他の小売業界(例:化粧品、雑貨)も共通して抱えています。
アクション候補:
- IPライセンス事業部門の設立: 知財部³、ZOZO NEXT⁹、事業開発部門が連携し、外部ライセンス可能なIPアセット(特許、営業秘密、アルゴリズム)を棚卸しする。
- B2Bソリューションの提供: 「物流最適化AI」⁹や「ファッション需要予測AI」、「AIスタイリングエンジン」¹⁹などを、競合しない(あるいは提携関係にある)アパレルメーカーや小売事業者に対し、APIライセンスやSaaSとして提供するB2Bソリューション事業を本格化させる。
- 収益源の多角化: これにより、ZOZOは「小売業(ZOZOTOWN)」に加え、「ファッション業界のOS(基盤技術)を提供するテクノロジー企業」という第二の収益の柱を確立できる可能性があります。
8.3. 【戦略的示唆】研究開発(R&D)の観点
示唆:「Paper or Patent」のデュアルトラック戦略の公式化
第4章、第7章で分析した通り、ZOZO研究所⁹の「学術偏重(論文発表)」²⁷˒ ²⁸は、リクルーティング上のメリットと、技術流出(特許化の機会損失)リスクを併せ持ちます。このバランスを最適化するため、R&Dプロセスと知財プロセスをより強固に連携させる必要があります。
アクション候補:
- 「発明・論文レビュー委員会(仮称)」の設置: ZOZO NEXT(研究所)⁹と知的財産部(特許担当)³˒ ⁴が共同で、定期的なレビュー会議を設置する。
- 戦略的トリアージ(選別)の実施: 研究者が学会発表や論文投稿を行う前に、必ずこの委員会でレビューを行います。
- 成果の分類: レビューに基づき、個々の研究成果を以下の3つに戦略的に分類し、その後のアクションを決定する。
- ① 特許化(Patent): 競合(Amazon²⁵等)の追随を絶対に阻止すべき中核技術、またはB2Bライセンス¹⁰の核となり得る技術。最優先で特許出願を行う(論文公開はその後)。
- ② 論文公開(Paper): 基礎理論的な側面が強く、公開することで業界標準(デファクト)⁹を狙え、かつ人材採用²⁷に大きく貢献する技術。特許化は(あえて)行わず、迅速に公開する。
- ③ 営業秘密(Trade Secret): ①②のいずれでもないが、競争力の源泉となる技術(例:学習済みモデル、Shift15Mの非公開フルデータ)。厳重なアクセス管理と機密保持契約(NDA)のもと、社内ノウハウとして秘匿する。
このトリアージプロセスを公式化・徹底することで、R&D投資(年間10.4億円)ᴮ²の成果を、IPアセットとして最大化できると期待されます。
8.4. 【戦略的示唆】事業化の観点
示唆:新領域(デジタルアセット・UI/UX)への早期対応
- デジタルアセット・メタバースへの対応
第7章で指摘した長期リスク(メタバース³⁷)に対し、傍観者ではなく、ルール形成者として早期に対応を開始すべきです。
アクション候補:
- 試験的権利化の開始: メタバース³⁷やデジタルファッション(NFT)のトレンドを睨み、「仮想空間におけるアバター衣装の意匠権(画像意匠)」³⁷や、「AIが生成したファッションデザインの著作権処理フロー」など、新領域のIP保護戦略を早期に策定し、試験的な出願・登録を開始する。
- UI/UXの保護強化: デジタル空間での顧客体験が重要になる中、「WEAR」や「ZOZOTOWN」の*特徴的なUI/UX(画面デザインや操作感)*についても、デザイン(意匠権)や機能(特許)の両面から保護を強化する。
- 「体験のデザイン」のさらなる深掘り
「niaulab」の内装意匠³で示した「体験(UX)の保護」は、ZOZOの知財戦略における強力な差別化要因です。このアプローチをさらに推し進めるべきです。
アクション候補:
- 「niaulab」の横展開: niaulab³のサービスプロセス(AI診断→カウンセリング→スタイリング→試着体験)全体を、一種の「ビジネスモデル」として捉え直し、特許化が困難な部分(人の介在)を「営業秘密(接客マニュアル)」で、可能な部分(AI診断アルゴリズム)を「特許」で、空間を「意匠」³で、名称を「商標」³で保護する、というIPミックス戦略を構築する。
- OMOプラットフォーム(ZOZOMO)の保護: ZOZOTOWN(オンライン)とブランド実店舗(オフライン)を連携させるOMOプラットフォーム「ZOZOMO」ᴮ²に関連するシステム、UI/UX、顧客体験フローについても、同様のIPミックスによる保護を強化し、リアル店舗連携における優位性を確保することが推奨されます。
当章の参考資料
- https://hr.tokkyo-lab.com/column/pinfosb/zozo
- https://tenshoku.mynavi.jp/jobinfo-345394-5-10-1/
- https://corp.zozo.com/sustainability/social/soc_innovation/
- https://corp.zozo.com/news/20220824-zozofit/
- https://bizzine.jp/article/detail/12013
- https://www.env.go.jp/guide/info/eco-first/assets/pdf/c78_com.pdf
(https://chizaizukan.com/news/4WWlJhupUPPn15zwsgTplc/)
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- https://netkeizai.com/articles/detail/14647
(https://patentimages.storage.googleapis.com/dd/85/8f/3b1bfeeecee8c0/JP6980097B2.pdf)
- https://www.millenniapat.com/archives/53650
- https://corp.zozo.com/news/20210715-zozo_technologies-18450/
https://corp.zozo.com/ir/20250613-_27/ 1
総括
本レポートは、株式会社ZOZOの知的財産戦略について、経営戦略との連動性、R&D体制、具体的なポートフォリオ(計測技術、AI、ブランド)、競合比較、およびリスクと展望の観点から網羅的に分析を行いました。
最重要論点の整理
ZOZOの知財戦略の核心は、経営スローガンである「FASHION TECH」¹⁹を具現化するR&D組織「ZOZO NEXT」⁹が生み出す「ファッションの数値化」⁹という無形資産を、いかにして法的に保護し、事業収益に結びつけるかという点にあります。
その戦略は、以下の3つの特徴的な側面を持っています。
- 中核技術(IP)のライフサイクル管理: 黎明期の中核技術(マーカー式計測特許)²⁹を、B2Cでのデータ収集から、米国市場でのB2Bサービス(ZOZOFIT)¹⁰という直接収益化フェーズへと、巧みに移行させています。
- AI戦略のデュアリズム: 最先端のAI技術において、「論文公開(Paper)」²⁷による学術的権威・人材獲得と、「サービス実装(Service)」²⁴および「営業秘密化」による事業的優位性の確保という、二兎を追う高度なデュアル戦略を実践しています。
- 保護対象の拡張: 特許(技術)や商標(ブランド)に留まらず、「niaulab」の内装意匠³に象徴される「顧客体験(UX)」や、約700件³の偽サイト対策を内製ツール³で支える「ブランドの信頼」までも、広義の知的財産として保護・防衛の対象としています。
意思決定への含意
本分析結果は、ZOZOの各部門に対し、以下の意思決定の必要性を示唆しています。
- 経営層への含意:
知的財産を「コスト(守り)」ではなく「アセット(攻め)」と明確に位置づけ、ZOZOFIT¹⁰の次に続くIPライセンス事業(例:物流最適化AI⁹、需要予測AIのB2B提供)を、第二の収益の柱として育成する経営判断が求められます。
- R&D部門(ZOZO NEXT)への含意:
競合Amazon²⁵による「マーカーレス」技術の脅威は、ZOZOの中核技術²⁹にとって最大のリスクです。自らの成功体験(マーカー式)²⁹を破壊する「次世代(マーカーレス)技術」の開発が、最優先のR&D課題です。同時に、研究成果の「論文発表」²⁷と「特許出願」の戦略的な使い分け(トリアージ)プロセスを、知財部³と連携して確立することが急務です。
- 知的財産部門への含意:
従来の「権利化」「防衛」³業務に加え、より戦略的な役割への進化が求められます。具体的には、①LINEヤフーグループ³⁸との共同IP創出の推進、②AI・メタバース³⁷といった新領域の権利確保、そして③B2Bライセンス事業¹⁰を法務・契約面で牽引する「IPストラテジスト」⁴としての機能強化です。
結論
ZOZOの知財戦略は、「計測技術」の時代から「AI・データ」の時代へと、今まさに大きな転換点を迎えています。競合(Amazon)²⁵の脅威が顕在化する中、この転換を成功させ、R&Dの成果を「特許」「営業秘密」「デファクトスタンダード」⁹として最適に組み合わせ、法的に保護されたアセットとして確立し続けることが、同社の持続的成長の鍵となると結論付けられます。
参考資料リスト(全体)
- https://corp.zozo.com/ir-info/files/pdf/46b5d9344ecca501305088093c0e3346efbe54f8.pdf (株式会社ZOZO 統合報告書 FY2023)
- (https://corp.zozo.com/topics/20240830-Integrated_Report_Portal_2023/) (「統合報告ポータル FY2023」を公開)
- https://hr.tokkyo-lab.com/column/pinfosb/zozo (株式会社ZOZOは知財もすごい! ソウゾウのナナメウエを守る知的財産部にインタビュー) 3 を統合)
- https://tenshoku.mynavi.jp/jobinfo-345394-5-10-1/ (株式会社ZOZO 知的財産・特許担当 求人情報) 4
- https://corp.zozo.com/ir/20240614-_25_1/ (有価証券報告書 第26期を掲載しました)
- https://corp.zozo.com/ir/20250613-_27/ (有価証券報告書 第27期を掲載しました) 5
- (https://www.ullet.com/%EF%BC%BA%EF%BC%AF%EF%BC%BA%EF%BC%AF/EDINET/ranking/report) (ZOZO - EDINET[有価証券報告書,四半期報告書])
- https://corp.zozo.com/sustainability/social/soc_innovation/ (研究開発 - 株式会社ZOZO) 6
- https://corp.zozo.com/news/20220824-zozofit/ (ZOZOSUITの体型計測テクノロジーを活用した新事業 ボディーマネジメントサービス「ZOZOFIT」を米国で提供開始)
(https://chizaizukan.com/news/3oEbEfcQV8ayq8svTn80uN/) (ユニクロのセルフレジ特許訴訟、知財高裁がアスタリスクの請求を棄却)
- https://roboteer-tokyo.com/archives/7751 (ファッションモデルもロボットに!?...amazonが特許取得)
- https://fashiontechnews.zozo.com/en (FASHION TECH NEWS (English))
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- https://netkeizai.com/articles/detail/14647 (ZOZO研究所と千葉工業大学、AIの予測結果を説明する新手法「C2FA」が「IJCAI 2025」で採択)
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- https://patents.justia.com/inventor/takayuki-furusawa (Patents by Inventor Takayuki Furusawa)
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- https://www.millenniapat.com/archives/53650 (メタバースと知的財産権~仮想空間と知的財産の最前線~)
- https://corp.zozo.com/news/20210715-zozo_technologies-18450/ (Zホールディングス、"文理両軸でAI人材を育成"する「Z AIアカデミア」を発足)
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引用文献
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- 株式会社ZOZOは知財もすごい!ソウゾウのナナメウエを守る知的 ..., 11月 15, 2025にアクセス、 https://hr.tokkyo-lab.com/column/pinfosb/zozo
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- 過去決算資料 - 株式会社ZOZO, 11月 15, 2025にアクセス、 https://corp.zozo.com/ir-info/library/past/
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