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炭素回収・利用・貯留(CCUS)のキープレイヤーと応用先:特許と事業戦略から読み解く市場動向

エグゼクティブサマリ

 

  • 市場概観と重要性: 炭素回収・利用・貯留(CCUS)市場は、世界的なカーボンニュートラルへのコミットメントを背景に、不可逆的な成長フェーズに突入しています。特に、鉄鋼、セメント、化学といった「脱炭素化が困難な(Hard-to-Abate: H2A)」産業にとって、CCUSはプロセス排出を削減する唯一かつ不可欠な技術と見なされています 1。米国のインフレ削減法(IRA3 や日本の「CCS事業法」 4 のような強力な政策支援が、大規模プロジェクトの経済的実行可能性を初めて現実のものにしています。
  • 本レポートで分析する「主要な戦略グループ」の分類と、そこに属する主要プレイヤー: 本レポートは、技術蓄積(特許)、事業規模、戦略投資に基づき、市場の主要プレイヤーを以下の4つの戦略グループに分類・分析します。
    1. 「総合CCUSハブ・インテグレーター」: ExxonMobil、ShellOccidental Petroleum (Oxy) 5 など。巨大な資本力と既存の石油・ガス(O&G)インフラ(パイプライン、地下貯留層の知見) 6 を活用し、工業地帯全体からCO2を引き受ける大規模な「貯留・輸送ハブ」の主導権を握ろうとするグループです 7
    2. 「(分離・回収)技術ライセンサー/プロバイダー」: 三菱重工業 (MHI)Aker Carbon Captureなど。高性能な分離回収技術(例:アミン溶剤)の特許ポートフォリオを武器に、技術ライセンスやモジュール化された装置の販売をグローバルに展開する、資本効率の高い(Capital-light)グループです 9
    3. 「(DAC)炭素除去サービス・オペレーター」: Climeworks、Carbon EngineeringOxyが買収) 11 など。排出源からではなく大気から直接CO2を回収する「DAC技術」 12 を用い、「炭素除去クレジット」という新しいB2Bサービス市場を創出、または自社のEOR(石油増進回収)に利用するグループです 13
    4. 「(H2A)需要家アライアンス」: Holcim(セメント) 14ArcelorMittal(鉄鋼) 15 など。CCUSの主要な「需要家」であり、単独でのインフラ導入が困難なため、産業クラスターを形成しインフラを共有するアライアンス戦略をとるグループです 1
  • 主要な技術応用先の分類:
    • 現在: 主に「石油増進回収(EOR)」 17 および、政策支援下での「地中貯留(Saline Aquifer Sequestration)」 8 が商用化されています。
    • 未来: 特許情報からは、回収したCO2を単に貯留するだけでなく、e-fuel(合成燃料) 12、化学品 18、コンクリートなどの建材(鉱物化) 19 に転換する「Utilization(利用)」技術への関心が高まっていることが示唆されます。
  • 市場全体の主要トレンドと今後の課題: 市場のビジネスモデルは、全工程を単一企業が担う「フルバリューチェーン統合型」から、輸送・貯留を第三者がサービスとして提供する「アンバンドル型」(Storage-as-a-Service21 へと明確に移行しつつあります。最大の課題は、依然として高い回収コストとエネルギーペナルティ 23、事業の採算性を左右する炭素価格と政策の安定性 25、そして貯留の長期的な負債(ライアビリティ) 26 にあります。

 

本文

 

【第1章】技術分野の定義と市場概観

  • 対象技術の範囲定義
    • 炭素回収・利用・貯留(CCUS)は、発電所や工業プロセス(セメント、鉄鋼、化学プラント、天然ガス処理施設など)の排気ガスといった大規模な排出源(Point Source27、あるいは大気中(Ambient Air17 から二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、大気への放出を防ぐための一連の技術群の総称です。
    • このバリューチェーンは、一般的に以下の4つの主要なプロセスで構成されます。
      1. 分離・回収 (Capture): CO2を他のガスから分離するプロセス。排出源からの回収には、(a) 燃焼後の排ガスから回収する「燃焼後回収(Post-combustion)」、(b) 燃焼前に燃料(天然ガスなど)を改質してCO2を分離する「燃焼前回収(Pre-combustion)」、(c) 純酸素で燃料を燃焼させ高濃度のCO2を得る「酸素燃焼(Oxy-fuel combustion)」 17 があります。また、大気から直接回収する「Direct Air Capture (DAC)17 もこのカテゴリに含まれます。
      2. 輸送 (Transport): 回収・圧縮し液化または超臨界流体化されたCO2を、パイプライン、船舶、鉄道、トラックなどを用いて貯留地または利用地まで輸送するプロセスです 30
      3. 貯留 (Storage): CO2を地中深く(通常800m以深)の帯水層(深部塩水層)、枯渇した石油・ガス田、採掘不能な炭層などの地質学的構造に永続的に圧入・貯留するプロセスです 27
      4. 利用 (Utilization): 回収したCO2を、収益性のある製品やプロセスに原料として利用するプロセスです 17。現在、最も大規模に行われているのは「石油増進回収(EOR)」 17 ですが、その他にも化学品(メタノール、ポリマーなど)、燃料(e-fuel)、建材(コンクリート硬化、炭酸塩化)への転換が研究・実用化されています 19
  • 現在の市場規模と成長予測
    • CCUS市場の規模と成長予測については、調査機関によって分析の対象範囲(CCUのみか、CCSインフラ全体か)や前提条件(政策支援の織り込み度合い)が異なるため、公表されている数値には大きな幅が見られます。
    • 例えば、Grand View Research (2024) は、2024年の世界市場規模を約368,124万米ドルと推定し、2025年から2033年にかけて年平均成長率(CAGR0%で成長し、2033年までに671,931万米ドルに達すると予測しています 34
    • 一方で、CMI Consulting (2024) は、より高い成長率を予測しており、2024年の市場規模を69億米ドルと見積もり、2024年から2033年にかけてCAGR 24.5%で急成長し、2033年には375億米ドルに達すると予測しています 35
    • MarketsandMarkets (2025年予測) も同様に高い成長を見込んでおり、2030年までに市場規模が1775,000万米ドルに達し、予測期間中のCAGR0%に上ると分析しています 36
    • この予測の大きな乖離(CAGR 7% vs 25%前後)は、分析の前提条件の違いを反映していると推定されます。CAGR 7.0% 3421% 37 といった比較的緩やかな成長予測は、従来のEOR利用や小規模なCCU(利用)市場の動向に基づいている可能性があります。対照的に、CAGR 25%前後 35 という極めて高い成長予測は、米国IRA(インフレ削減法)における「45Q」税額控除の大幅な引き上げ 3 や、欧州・アジアにおける政府主導の大規模プロジェクト 36 といった、近年の強力な政策インセンティブを背景とした、大規模な「貯留(Storage)」インフラプロジェクトの急増(投資ブーム)を強く織り込んだ結果と考えられます。
  • ビジネス上の重要性
    • CCUSのビジネス上の重要性は、パリ協定の目標達成に向け、各国政府がカーボンニュートラル(4)を公約する中で急速に高まっています。
    • Hard-to-AbateH2A)産業の切り札: 鉄鋼、セメント、化学、石油精製などの重工業(H2A産業)は、その製造プロセス(例:セメント製造時の石灰石の化学反応、鉄鉱石の還元)から本質的にCO2排出を伴います 2。これらの産業にとって、電化やグリーン水素への転換だけでは脱炭素化が困難、あるいは極めて高コストとなる領域が存在します。CCUSは、これらのH2A産業が(現時点では)排出量を大幅に削減するための最も現実的、あるいは唯一の技術的選択肢とされています 1
    • 炭素除去(Carbon Removal)とネットゼロの達成: CCUSは、バイオマス発電と組み合わせる「BECCSBioenergy with CCS)」や、大気から直接CO2を回収する「DACDirect Air Capture)」を通じて、大気中からCO2を能動的に除去する「ネガティブエミッション」を実現できる、現在知られている唯一の大規模技術です 6。これは、削減しきれない残余排出を相殺し、真の「ネットゼロ」を達成するために不可欠であると、IPCC(気候変動に関する政府間パネル) 41IEA(国際エネルギー機関) 2 などの主要機関によって認識されています。
    • 政策と法整備による事業環境の確立: CCUSは莫大な初期投資を必要とするため、長らく経済的な実行可能性が課題でした。しかし、米国IRAによる貯留CO2への税額控除(最大85ドル/トン、DACは最大180ドル/トン) 3 や、日本における「CCS事業法」の整備(貯留権の創設、長期責任の移行など) 4、欧州やカナダ 42 での炭素価格の上昇と補助金制度の確立により、CCUS事業の予見可能性と投資インセンティブが世界的に高まっています。これにより、CCUSは単なる「研究開発」から、実行可能な「ビジネス」へと移行する段階に入りました。

【第2章】キープレイヤーの特定と戦略グループ分類

本レポートでは、主要なプレイヤーを、分析基準1:技術蓄積(特許出願動向)分析基準2:事業規模(現在の市場シェアや生産能力)分析基準3:戦略投資(IR発表、投資額、大手企業とのアライアンス)3つの基準を総合的に評価します。その結果、CCUS市場の構造を最もよく表す分類として、各プレイヤーの市場における「役割」と「ビジネスモデル」に基づき、以下の4つの戦略グループを定義します。

  • グループ1:「総合CCUSハブ・インテグレーター」
    • 属する主要企業: ExxonMobil, Shell, Occidental Petroleum (Oxy), Chevron, TotalEnergies, bp
    • 選定理由(分析基準):
      • (基準2, 3)これらの企業(国際石油資本、O&Gメジャー)は、CCUS市場において最大の事業規模と投資額を誇ります 5
      • (基準1, 2)彼らの最大の強みは、O&G事業で培った既存のインフラ(パイプライン網)と、貯留適地(枯渇ガス田、帯水層)に関する圧倒的な「サブサーフェス(地下)」の知見およびエンジニアリング能力です 6。彼らの特許やノウハウの核心は、分離回収の「化学」よりも、この「地質学」と「大規模プロジェクト管理」にあります。
      • (基準3)彼らの戦略(IR等で公表)は、自社の排出削減(Scope1, 2)に留まりません。H2A産業 1 が集積する臨海工業地帯(例:米ヒューストン 7、オランダ・ロッテルダム 8)において、他社のCO2もまとめて回収・輸送・貯留する「CCUSハブ」事業を構築することにあります。これは、CO2の「輸送」と「貯留」をサービスとして提供する、インフラビジネスモデル(T&S: Transport and Storage as a Service 21)です。
  • グループ2:「(分離・回収)技術ライセンサー/プロバイダー」
    • 属する主要企業: 三菱重工業 (MHI), Aker Carbon Capture, Shell (Cansolv), BASF (OASE), Fluor, Capsol Technologies, Carbon Clean
    • 選定理由(分析基準):
      • (基準1)このグループは、CCUSバリューチェーンの「分離・回収」という、最も技術集約的でコストのかかるプロセスに特化しています。彼らの競争力の源泉は、高性能な化学溶剤(アミン系など)やプロセス設計に関する強力な「特許ポートフォリオ」です 10
      • (基準1, 3)過去5年間の特許動向や技術開発は、いかに少ないエネルギーで(エネルギーペナルティの低減)、いかに安定的に(溶剤の劣化・揮発耐性)CO2を回収できるか、という効率改善に集中しています 47
      • (基準3)彼らのビジネスモデルは、自ら大規模なインフラ投資を行うのではなく、グループ1(ハブ事業者)やグループ4(需要家)に対し、(A) 特許技術の「ライセンス供与」とエンジニアリング支援 45 を行う、あるいは (B) Just Catch™9 のように標準化・モジュール化された回収プラントを「販売」する、資本効率の高い(Capital-light)モデルです 49
  • グループ3:「(DAC)炭素除去サービス・オペレーター」
    • 属する主要企業: Climeworks, Carbon Engineering(Occidental Petroleum2023年に買収), Global Thermostat
    • 選定理由(分析基準):
      • (基準1)このグループは、従来の「排出源(Point Source)」ではなく、「大気(Ambient Air)」から直接CO2を回収する「Direct Air Capture (DAC)」という最先端技術を保有しています 12
      • (基準1, 3)特許は、大気中の希薄なCO2(約400ppm)を選択的に吸着する特殊な「吸着剤(Sorbent)」や「溶剤」、およびその再生プロセスに集中しています 12
      • (基準3)彼らのビジネスモデルは、グループ1, 2とは根本的に異なります。彼らは、(A) Climeworksのように、DACによる「炭素除去」そのものをサービス(カーボン・リムーバル・クレジット)として、ネットゼロを目指す他企業(例:Microsoft 51)にB2Bで販売します 13。あるいは (B) Oxy/Carbon Engineeringのように、回収したCO2を自社のEOR(石油増進回収) 5 や地中貯留に活用します。
      • (基準2)現在の事業規模はパイロット段階(数千トン~数万トン/年レベル 53)と小さいですが、2050年のギガトン(10億トン)級除去 13 という壮大なロードマップを掲げ、巨額の資金調達と政策支援(例:米DOEDACハブ構想 54)を集めています。
  • グループ4:「(H2A)需要家アライアンス」
    • 属する主要企業: Holcim, Heidelberg Materials (セメント) 14ArcelorMittal, Nippon Steel, POSCO (鉄鋼) 15Dow, BASF, LyondellBasell (化学) 16
    • 選定理由(分析基準):
      • (基準2)これらの企業は、CCUS技術の「供給側」ではなく、世界最大のCO2排出源(H2A産業) 39 という「需要側」の主要プレイヤーです。
      • (基準3)彼らの戦略(IR、中期経営計画、脱炭素ロードマップ 14)において、CCUSは(水素還元などと並ぶ)「必須の導入技術」として明確に位置づけられています 2
      • (基準3)しかし、1社単独で回収から貯留までの全インフラを整備することは経済的に非現実的です。そのため、彼らの戦略は、(A) グループ1が主導する「CCUSハブ」の"アンカー・テナント"(主要大口顧客)として参加する 16(B) グループ2から最適な回収技術のライセンスを受ける 46、という「アライアンス戦略」 1 が中心となります。

【第3章】主要な技術応用先の分析

  • 「現在」の応用先:商用化
    • 石油増進回収 (Enhanced Oil Recovery - EOR): 現在、世界で回収されているCO2の約8割がEORに利用されていると報告されています 17。これはCCUSの最も成熟した商用アプリケーションです。CO2を油層に圧入することで、原油の流動性を高め、従来の採掘方法では回収不能だった原油の回収率を向上させます 56。このモデルの強みは、CO2圧入のコストを、増産される原油の売却益で相殺できる点にあります。これにより、炭素価格や政府の補助金が低い時代から、経済的に自立していた(あるいは、そう見なされていた)数少ない応用先です。特にOccidental Petroleumは、この分野で50年以上の操業経験を有しています 57
    • 地中貯留 (Geological Sequestration): EORによる収益を目的とせず、純粋にCO2を「廃棄・貯留」する目的で、深部塩水層(Saline Aquifers)や枯渇したガス田に圧入する応用先です 27。これは、気候変動対策としてCO2を大気から永続的に隔離する「CCSCarbon Capture and Storage)」の本来の形です。Shellがカナダで運営する「Quest CCS」プロジェクト 8 や、ノルウェーの「Northern Lights」プロジェクト(ExxonMobil, Shell, TotalEnergiesが参画)が代表例です。これらのプロジェクトは、EORの収益に依存しないため、カナダや欧州の高い炭素価格、あるいは政府の直接補助金によって事業の経済性が支えられています。
  • 「未来」の応用先:開発段階
    • 特許情報や近年の実証実験の動向 19 からは、高額な回収コスト 23 という最大の障壁を乗り越えるため、CO2を単なる「廃棄物」ではなく「資源」として利用する「UtilizationCCU)」技術への関心が高いことが示唆されます。
    • 合成燃料 (e-fuels / Synthetic Fuels): 回収したCO2と、再生可能エネルギー由来の水素(グリーン水素)をフィッシャー・トロプシュ法などで反応させ、メタノールや合成ガソリン、持続可能な航空燃料(SAF)を製造する応用先です 17Carbon EngineeringOxy傘下)はGreyrockと提携し、DACで回収したCO2から合成燃料を製造する技術(AIR TO FUELS™)を推進しています 12
    • 化学品・ポリマー: CO2を化学原料として使用し、ポリカーボネート(プラスチック)、ウレタン、あるいはメタノールやギ酸といった基礎化学品を製造する応用先です。関連する特許は、CO2の触媒的水素化によるメタノール製造プロセスなどに見られます 18
    • 建材(鉱物化): CO2をセメント製造プロセスやコンクリート硬化時に反応させ、炭酸塩(Carbonate)として鉱物化・固定化する技術です 20。これによりCO2を建材内に永続的に封じ込めることができます。スイスのClimeworksは、アイスランドのCarbfixと提携し、DACで回収したCO2を水に溶かして玄武岩層に圧入し、数年以内に鉱物化(炭酸塩化)する技術を実用化しています 12
    • バイオ燃料(藻類): 特許分析では、CO2を藻類(Algae)の栄養源として利用し、光合成によってバイオマス(バイオ燃料の原料)を生産する技術も注目されています 19
  • ポテンシャルと導入障壁
    • ポテンシャル: CCU(利用)は、CO2に「価格」を与え、収益を生み出すことで、高額な回収コストを一部相殺できる経済的インセンティブを生み出します 19。特にe-fuelは、電化が困難な航空・海運分野での脱炭素化ソリューションとして大きな需要が見込まれます。
    • 導入障壁(1 - スケールの問題: 最大の障壁は「量のミスマッチ」です。肥料、化学品、飲料といったCCU市場の現在の需要(年間数億トン規模)は、気候変動対策として必要なCO2削減・貯留量(IEAによれば2050年に年間数十億~百億トン規模 41)に比べて、桁違いに小さいことが指摘されています 58。したがって、「利用」はあくまで高付加価値なニッチ市場であり、気候変動対策の主役は「貯留」にならざるを得ません。
    • 導入障壁(2 - 永続性の問題: CO2から製造した「燃料」は、最終的に燃焼されて再びCO2を排出するため、カーボンニュートラル(化石燃料の代替)ではありますが、炭素除去(ネガティブエミッション)にはなりません 17。永続的な貯留(Sequestration)と見なされるのは、地中貯留、EORCO2が油層内に残存・固定化される場合)、および建材などへの鉱物化のみです。
    • 導入障壁(3 - コスト(特にDAC: DAC技術は、大気中の希薄なCO2(約400ppm)を集めるため、排出源(数%~数十%)からの回収に比べ、原理的に多くのエネルギーを必要とし、コストが著しく高くなります。Climeworksの初期コストは1トンあたり約600ドル 12Carbon Engineeringでも1トンあたり94232ドル 12 と推定されており、排出源回収(数十ドル/トン)に比べて高額です。

【第4章】主要戦略グループ別の詳細分析

本章では、【第2章】で定義した4つの戦略グループに属する主要企業について、IR資料、プレスリリース、業界レポート等に基づき、その事業戦略、ロードマップ、アライアンス動向を詳細に分析します。

  • 4-1. グループ1:「総合CCUSハブ・インテグレーター」の戦略
    • グループ概要:
      • このグループ(O&Gメジャー)の戦略的本質は、自らが過去数十年にわたり構築してきた炭化水素(石油・ガス)のためのインフラと知見を、脱炭素時代の「CO2処理」インフラへと転用・収益化することにあります。
      • 彼らの最大の資産は、(1) 枯渇ガス田や帯水層に関する膨大な地質データとシミュレーション能力(サブサーフェス技術)、(2) パイプライン網の設計・建設・運営ノウハウ、(3) 数百億ドル規模のプロジェクトを管理・実行する能力(プロジェクトマネジメント)です 6
      • 彼らのビジネスモデルは、従来の「フルバリューチェーン統合型」(自社でCO2を回収し、自社でEORに使う) 6 から、他社のCO2排出も引き受ける「サービス・プロバイダー」へと進化しています。具体的には、工業地帯の複数の排出源(グループ4)からCO2をパイプラインで集め、沖合の共有貯留地まで運び、圧入する「トランスポート&ストレージ(T&S)事業」です 21
      • このモデルは、彼らにとって一石三鳥の戦略です。(1) 自社の既存インフラ(パイプライン、枯渇ガス田)の座礁資産化を防ぎ、(2) H2A産業(グループ4)という新たな「顧客」を獲得し、(3) 脱炭素化への貢献をアピールし「操業許可(License to Operate)」を維持することができます。
    • ExxonMobil:
      • 戦略: 世界最大級の工業地帯である米国メキシコ湾岸(ヒューストン)における「CCUSハブ」の主導権を確立し、これをグローバルに展開すること。
      • IR/ロードマップ: ExxonMobilは、2022年の投資家向け説明会 59 やその後の発表で、ヒューストン・シップ・チャネルを中心とした大規模CCUSハブ構想を繰り返し強調しています。この構想は、同地域に集積する10社以上の化学・石油精製企業(Air Liquide, BASF, Capine, Chevron, Dow, INEOS, Linde, LyondellBasell, Marathon Petroleum, NRG Energy, Phillips66, Shell, Valero)を巻き込む、巨大なアライアンス構想です 16
      • 目標: ヒューストンハブだけで、2030年までに年間5,000万トン 592040年までに年間1億トン 60CO2を回収・貯留するという極めて野心的な目標を掲げています。これは、単一の企業努力ではなく、地域全体の脱炭素インフラ(CO2のための「電力網」や「ガス網」)を構築する試みです 7
      • 事業モデル(サービス化)の証拠: ExxonMobilが本気で「サービス・プロバイダー」を目指している証拠は、相次ぐ顧客契約の締結にあります。20254月には、発電事業者のCalpine社とCO2輸送・貯留契約を締結し、Calpine社のベイタウン・エナジー・センターから排出されるCO2(年間最大200万トン)をExxonMobilが引き受け、貯留することを発表しました 36。これは、電力会社(顧客)が自ら貯留インフラを持つのではなく、ExxonMobil(事業者)に「貯留サービス料」を支払うモデルの確立を意味します。また、産業ガス大手のLinde社ともCO2オフテイク(引取)契約を締結しています 61
      • 技術(特許): ExxonMobilは、自社でもCO2回収技術(例:Flexsorb™)を保有していますが 12、ハブ構想においては、他社(MHIなど 62)の最適技術も柔軟に採用する「インテグレーター」としての側面が強いと推定されます。
    • Shell:
      • 戦略: ExxonMobilと同様にハブ戦略を推進しますが、特に欧州(北海)とカナダという、炭素価格がすでに高く設定されている(=事業の経済性が成立しやすい)地域で先行しています。
      • IR/ロードマップ: Shellの戦略は、CO2を「貯留」するビジネスの確立にあります。彼らはP&TProjects & Technology)部門を通じて、GHG管理を中核的な技術サービスと位置づけています 63
      • 主要プロジェクト(カナダ) - Quest CCS:
        • Quest CCS」プロジェクト(アルバータ州)は、Shellが運営する製油所の排出源(水素製造プロセス)からのCO2を回収し、地中貯留するもので、2022年時点で400万トン以上の貯留実績があります 8
        • (アナリスト洞察)Questの重要性: Questプロジェクトは、CCUSのビジネスモデルを分析する上で極めて重要です。関連レポート 8 によれば、Questの操業コストは1トンあたり20ドル台半ばである一方、当時のアルバータ州の炭素価格は30ドルでした。これは、EOR(原油売却益)に頼らなくても、「炭素価格(ペナルティ回避益)」だけで操業コストを賄い、利益を生み出せることを世界で初めて実証したケースです。これは、CCUSが政策(炭素価格)次第で経済的に自立可能なビジネスであることを示しています。
      • 主要プロジェクト(欧州) - Porthos:
        • オランダ・ロッテルダム港の工業地帯(グループ4)から排出されるCO2を集め、北海の枯渇ガス田に輸送・貯留するハブ構想です 8
        • ShellはExxonMobilGasuniePort of Rotterdamと共にこのプロジェクトの主要パートナーであり、欧州における「T&Sサービス」の先駆けとなります。
      • 技術(特許): Shellは、自社で「Cansolv」という回収技術を保有・ライセンス供与しており、グループ2としての側面も持っています 46。しかし、グループ1としての戦略(Quest, Porthos)は、あくまでインフラの構築・運営が中心です。
  • 4-2. グループ2:「(分離・回収)技術ライセンサー/プロバイダー」の戦略
    • グループ概要:
      • このグループは、CCUSバリューチェーンで最も技術的難易度が高く、プロジェクトコストの大部分を占める「分離・回収」プロセス 23 を主戦場とします。
      • 彼らの競争力は、(1) 回収効率の高さ(例:99%以上)、(2) エネルギーペナルティの低さ(CO2再生に必要なエネルギー消費量)、(3) 溶剤の安定性(運転中の劣化や揮発が少ないこと)によって決まります。
      • ビジネスモデルは、巨額のインフラ投資を伴うグループ1とは対照的に、知財(IP)とエンジニアリング能力を収益源とする、高収益かつ資本効率の高い(Capital-Light)ライセンス/販売モデルです 45
    • 三菱重工業 (MHI):
      • 戦略: 「世界最高水準」の回収技術(アミン溶剤)のライセンス供与を通じて、グローバルなCCUSプラント市場でデファクトスタンダードの地位を確立すること。
      • IR/ロードマップ: MHIは、2022年のカーボンニュートラルハンドブック 62 などで、CCUSを脱炭素化の中核ソリューションと位置づけ、Shell, Fluor, Akerなどと並ぶ主要な技術プロバイダーであると自認しています。
      • 技術(特許): MHIの強みは、関西電力と共同開発した「KM-CDR Process®」と、その次世代溶剤「KS-21™」にあります 10
      • KS-21™の優位性: MHIや関連レポート 10 によれば、KS-21™は、従来のアミン溶剤(KS-1™)と比較し、(1) 揮発性を大幅に低減し、環境負荷(アミンの大気放出)を低減、(2) 劣化耐性を向上させ、溶剤の補充コストや運転負荷を低減させた点が特徴です。MHIはノルウェーのMongstad(世界最大級のCCUS実証センター)での実証試験を完了し、KS-21™の商業化を達成しており 10、これが高い技術的信頼性を担保しています。
      • 実績: MHIの技術は、米国の「Petra Nova」プロジェクト(石炭火力発電所向けとして当時世界最大級)で採用され、4%の高い回収率を実証しました 10。また、セメント(HeidelbergNorcemプロジェクト 46)やバイオマス発電所 64 など、多様な排出源への適用実績を積み上げており、これがライセンサーとしての信頼性と適用範囲の広さを示しています。
      • ビジネスモデル: MHIの戦略は、自らプラントを「所有」するのではなく、グループ1ExxonMobil 62 など)やグループ4Heidelberg 46 など)のプレイヤーに、技術ライセンスと主要機器、エンジニアリング(設計)を提供する、典型的なグループ2のビジネスモデルです。
    • Aker Carbon Capture:
      • 戦略: MHIやFluorのような大手EPC向けカスタムメイドの大型プラントとは一線を画し、「モジュール化」「標準化」によってコストと納期を劇的に削減し、中・小規模の排出源(例:廃棄物発電所、小規模セメント工場)という新たな市場を開拓すること。
      • IR/ロードマップ: Akerは、自社の技術を「Just Catch™」(年間10万トン級)および「Big Catch™」(年間40万トン級以上)として明確に製品化しています 9
      • 技術(特許): Akerの特許や技術的優位性は、溶剤そのもの(彼らも独自のアミン溶剤を使用)に加え、プラント設計の「モジュール化」にあります。彼らは、この標準化されたモジュール設計により、従来のカスタムメイドのプラントに比べ、資本コスト(CAPEX)を最大50%削減できると主張しています 9
      • 実績: オランダのTwence社の廃棄物発電所向けに「Just Catch™」をEPC(設計・調達・建設)ベースで納入した実績があります 9
      • (アナリスト洞察)ニッチ市場の開拓: Akerの戦略で特筆すべきは、このモジュールを洋上(Offshore)の石油・ガス施設向けに展開する「Just Catch Offshore™」を開発した点です。彼らは、この製品でDNV(国際的な船級・認証機関)からの認証を取得しており 9、これにより、導入リスクに敏感なO&G企業に対して、認証済みの標準品として迅速に提案・納入することが可能になります。これは、巨大市場(陸上)と並行して、競合が少ないニッチ市場(洋上)を着実に押さえる、巧みな戦略です。
  • 4-3. グループ3:「(DAC)炭素除去サービス・オペレーター」の戦略
    • グループ概要:
      • このグループは、CCUSの「本流」である排出源(Point Source)回収とは異なる、革新的な「Direct Air Capture (DAC)」市場のパイオニアです。
      • 彼らの技術は、大気中(約04%CO2)から直接CO2を回収するため、工場や発電所の立地に縛られず、原理的にはどこにでも設置可能です(ただし、大量の再生可能エネルギーと貯留地へのアクセスが必要)。
      • 彼らが生み出す価値は「排出削減(Emission Reduction)」ではなく、「炭素除去(Carbon Removal)」であり、これは企業が自社の排出削減努力ではどうしてもゼロにできない「残余排出(Residual Emissions)」を相殺するための、最終手段として位置づけられます 52
    • Climeworks:
      • 戦略: DAC技術の商業的リーダーとして、世界初の商業プラント(Orca, Mammoth)を稼働させ、高信頼性・高永続性(鉱物化による)の「炭素除去サービス」を、ネットゼロを目指すグローバル企業(例:Microsoft, Stripe)にB2Bで販売する 13
      • IR/ロードマップ: Climeworksのロードマップは明確かつ野心的です。2030年までにメガトン(100万トン)級の除去能力を達成し、2050年までにギガトン(10億トン)級の能力をグローバルに展開することを目指しています 13
      • 技術(特許): Climeworksの技術は、固体の「吸着剤(Sorbent)」を用いた温度・真空スイング(TVS)方式です 65。特許は、この吸着剤の素材や、効率的な再生プロセス(12)に集中していると推定されます。
      • 主要プロジェクト(アイスランド):
        • Orca: 2021年に稼働した世界初の商業DACプラント。規模は年間4,000トン除去と小さいですが 53、世界にDACの実行可能性を示した象徴的なプロジェクトです。
        • Mammoth: 2024年に稼働を開始した次世代プラント。規模は年間36,000トン除去へと約9倍にスケールアップしています 53
      • (アナリスト洞察)Carbfixとの連携: Climeworksの戦略で最も重要な要素の一つが、アイスランドでの貯留パートナー「Carbfix」との連携です 12Carbfixは、回収したCO2を水に溶解させ、地元の玄武岩層に圧入します。CO2は地下で反応し、数年以内(通常2年未満)に炭酸塩鉱物として永続的に固定化されます 12。この「鉱物化」による高い永続性(漏洩リスクが極めて低い)こそが、Climeworksの炭素除去クレジット(1トンあたり600ドルとも 12)の高い価格と信頼性を支える中核的な価値となっています。
      • 戦略的転換(米国進出): Climeworksは、高コストなDACのスケールアップには、米国のIRA45Q税額控除:DAC貯留に1トン180ドル)が不可欠と判断しています。2023年以降、米DOE(エネルギー省)が推進するDACハブ構想に積極的に参画し、ルイジアナ州の「Project Cypress」では、Battelle(主契約者)、Heirloomと共に中核的技術パートナーに選定され、5,000万ドルの初期ファンディングを受けました 54。これは、欧州企業であるClimeworksが、今後のスケールアップの主戦場を(少なくとも当面は)米国市場と定めたことを示す、重大な戦略的転換です。
    • Occidental Petroleum (Oxy) / 1PointFive:
      • 戦略: グループ1O&G)とグループ3DAC)のハイブリッド戦略。自社が長年培ってきたEOR事業(サブサーフェス技術) 57 と、買収したCarbon Engineeringの先進的DAC技術 12 を組み合わせ、EOR、地中貯留、炭素除去クレジット販売という多角的な炭素ビジネス(同社は"Carbon Management"と呼ぶ)を構築する。
      • IR/ロードマップ: Oxyは2020年に、DAC技術の展開のために子会社「1PointFive」を設立しました 11。彼らのロードマップは、DACプラントを大規模に建設し、そこで回収したCO2(1) 自社のパーミアン盆地でのEORに利用、(2) 専用の地中貯留ハブに圧入、(3) 航空会社などに「ネットゼロ・オイル」や「炭素除去クレジット」として販売する、というものです 11
      • 技術(買収): Oxyは当初、カナダのCarbon Engineering社と提携していましたが、20238月、同社を11億ドルで買収し、完全に傘下に収めました 35Carbon Engineeringの技術は、Climeworks(固体吸着剤)とは異なる「液体溶剤(水酸化カリウム溶液)」を用いる方式(12)です。この買収により、OxyDACの中核技術(IP)を完全に自社の管理下に置きました。
      • 主要プロジェクト: テキサス州で建設中の世界最大級のDACプラント「Stratos」。これは年間50万トンのCO2回収能力を持ち、稼働後はEORなどに利用される予定です 5
      • (アナリスト洞察)Oxyの特異性とEOR論争: Oxyの戦略は、市場で最もアグレッシブかつ垂直統合的です。Climeworksが「炭素除去サービス」の販売に特化する(オペレーター)のに対し、Oxyは技術開発(Carbon Engineering)から、プラント建設(1PointFive)、CO2利用(EOR)、貯留(Sequestration Hubs)まで、DACの全バリューチェーンを内部化しています 11
      • EORとの組み合わせ 71 には「除去したCO2で、さらに石油を採掘するのは『グリーンウォッシュ』ではないか」という倫理的な批判もあります。しかしOxyは、(1) EORプロセス自体がCO2の永続的貯留(Net Removal)である 57(2) 増産した石油は「ネットゼロ・オイル」として、脱炭素化が困難な航空・海運分野に供給できる、と主張しています。これは、純粋な除去(Climeworks)とは異なる、O&G企業ならではの経済合理性を追求した、特異なビジネスモデルです。
  • 4-4. グループ4:「(H2A)需要家アライアンス」の戦略
    • グループ概要:
      • このグループ(セメント、鉄鋼、化学) 39 は、CCUS市場の「需要」を創出する極めて重要なプレイヤーです。彼らの脱炭素化が、グループ1(ハブ)とグループ2(技術)の市場を決定づけます。
      • 彼らの課題は、CCUS導入に伴う莫大な「コスト」 72 を、製品価格にどう転嫁するか、あるいは誰が負担するか、という点にあります。
      • したがって、彼らの戦略は「アライアンスの形成(コスト分担)」 1 と「デマンド・プル(高付加価値製品市場の創出)」 14 に集約されます。
    • セメント業界 (Holcim, Heidelberg Materials):
      • 戦略: セメントは製造プロセス(石灰石の焼成)でCO2が不可避的に発生するため、CCUSは(水素化などよりも)必須の技術です 46。彼らの戦略は、(1) グループ2と提携し、自社工場に最適な回収技術(例:HeidelbergMHINorcemプロジェクト 46)を導入すること、(2) グループ1が運営する地域の貯留ハブに参加し、インフラコストを分担すること、です。
      • デマンド・プル戦略(Holcim: Holcimの2024年次報告書 14 は、彼らの巧妙なアライアンス戦略を明らかにしています。Holcimは、GCCA(世界セメント・コンクリート協会)などを通じ、「低炭素セメント」「低炭素コンクリート」の国際的な定義・標準化を推進しています。標準ができれば、政府調達や建築基準(LEEDなど)で低炭素製品が優遇され、CCUS導入のコストを「グリーンプレミアム」として製品価格に反映しやすくなります。これは、単に技術を導入するだけでなく、技術導入のコストを回収するための「市場」そのものを創造しようとする、高度な戦略です。
    • 鉄鋼業界 (ArcelorMittal, Nippon Steel, POSCO):
      • 戦略: 鉄鋼業界(特に高炉法)もH2Aの代表格です 15。彼らの脱炭素ロードマップ 15 は、(1) 高炉へのCCUS適用、(2) 水素還元製鉄(H-DRI)への転換、という2つの主要な道筋に焦点を当てています。
      • アライアンス戦略: CCUSは、特に既存の高炉(巨額の投資を回収中の資産)を延命・脱炭素化する手段として重要です。彼らもまた、臨海工業地帯に立地する利点を活かし、ExxonMobilのヒューストンハブ 16 や欧州の北海ハブ 2 に「アンカー・テナント(主要顧客)」として参加することで、CCUSの導入を加速しようとしています。

【第5章】特許戦略と事業戦略の整合性

4章で分析した主要企業群について、特許動向(分析基準1:技術蓄積)と公表された事業戦略(分析基準2, 3IR、投資、アライアンス)が「一致」しているか「ギャップ」があるかを評価します。この整合性(またはギャップ)から、各社の戦略的意図(本気度)や「隠れた戦略」を推定します。

  • 三菱重工業 (MHI) - 【極めて高い整合性】
    • 分析: MHIの特許ポートフォリオ(基準1)は、KS-1™KS-21™といった「高性能アミン溶剤」と「プロセス効率化」に高度に集中しています 10。一方、公表されている事業戦略(基準3)は、この特許技術を世界中のプラント(電力、セメント、バイオマス等)に「ライセンス供与」し、エンジニアリング支援を行うことに完全に一致しています 62
    • 推定: 両者の間にギャップは存在しません。MHIは、CCUSバリューチェーンにおける「分離・回収技術のグローバルリーダー」という自社の立ち位置を明確に定義し、そこにR&Dリソースを集中投下しています。彼らの本気度は、IP(知的財産)をベースにした技術プロバイダーとして極めて高いと評価されます。
  • ExxonMobil / Shell (グループ1) - 【戦略的「非」集中と整合性】
    • 分析: グループ1O&Gメジャーは、MHIのような画期的な「新規溶剤」に関する特許出願の「件数」では、グループ2に及ばない可能性があります 44。しかし、彼らの事業戦略(基準3)は、そもそも「化学溶剤の発明」ではなく、「大規模インフラの構築・運営(ハブ事業)」にあります 7
    • 推定: これは「ギャップ」ではなく、戦略的な「役割分担」の結果としての整合性です。彼らの(おそらく公開特許としては目立ちにくい)真の「技術(IP)」は、地質学、貯留シミュレーション、パイプライン工学、大規模プロジェクト管理といった「サブサーフェス(地下)」と「インテグレーション」のノウハウ 6 にあります。彼らは、グループ2の最適な技術(特許)を「調達」し、自社のインフラ・ノウハウ(特許)と組み合わせて「サービス」を構築するインテグレーター戦略をとっており、その点において戦略と技術(の重点領域)は一致しています。
  • Occidental Petroleum (Oxy) - 【買収による「ギャップ」の解消と完全な整合性】
    • 分析: Oxyは、もともとEOR(石油増進回収)の「技術(ノウハウ)」を持つ企業(グループ1)でした 57。彼らの事業戦略(基準3)は、DAC(グループ3)へと野心的に拡大しましたが、当初はCarbon Engineering社との「提携」 11 に依存しており、中核技術は外部にありました。これは戦略と(自社保有)技術の間に「ギャップ」がある状態でした。
    • 推定: 2023年のCarbon Engineering社の買収 57 は、この「ギャップ」を埋めるための決定的な一手でした。Oxyは、DAC(液体溶剤法)に関する重要な特許ポートフォリオ 12 を一挙に手中に収めました。これにより、Oxyの「DACを中核とする炭素管理企業になる」という事業戦略(基準3)と、それを支える「中核技術の保有」(基準1)が、完全に一致しました。これは、市場で最もダイナミックな「戦略と技術の整合性確保」の事例であり、Oxyのこの分野に対する本気度の高さを示しています。
  • Climeworks - 【高い整合性(スタートアップ型)】
    • 分析: Climeworksの特許(基準1)は、固体吸着剤(Solid Sorbent)を用いたDAC技術に集中しています 12。彼らの事業戦略(基準3)は、まさにその技術を使ったプラント(Orca, Mammoth)を建設・運営し、「炭素除去サービス」としてB2B販売することです 13
    • 推定: MHIと同様、ギャップは存在しません。自社で発明した中核技術を、自社で製品・サービス化するという、技術系スタートアップとして非常にクリーンな整合性を持っています。彼らの課題は、この技術をいかに低コストでスケールアップできるかという点にあります。

【第6章】主要戦略グループおよび企業の競合比較

  • 戦略グループ間のポジショニング比較
    • グループ1(総合CCUSハブ・インテグレーター):
      • 強み: 圧倒的な資本力、既存インフラ(パイプライン、港湾)、サブサーフェス(地下)の知見と地質データ 6H2A産業(グループ4)との既存の強固な関係。
      • 弱み: 巨大組織ゆえの意思決定の遅さ、レガシー(化石燃料)事業とのカニバリゼーションの可能性、社会的・環境的な監視の厳しさ。
      • ビジネスモデル: インフラ・従量課金型(T&Sサービス) 21B2B
    • グループ2((分離・回収)技術ライセンサー/プロバイダー):
      • 強み: 高い技術的専門性(IP)、資本効率の高い(Capital-light)ライセンスモデル 49。グローバルに展開可能。
      • 弱み: 最終的な需要(ハブの建設)はグループ14の投資決定に依存する。コモディティ技術(例:標準的なアミン法)との差別化、技術コモディティ化のリスク。
      • ビジネスモデル: IPライセンス型、またはモジュール販売型 45B2B
    • グループ3((DAC)炭素除去サービス・オペレーター):
      • 強み: 「炭素除去」という独自の高付加価値市場を開拓。立地制約が(排出源回収より)少ない。高いブランド価値(最先端、気候変動への直接的貢献)。
      • 弱み: 現状では桁違いに高いコスト 12。莫大なエネルギー消費(再生可能エネルギーの確保が必須)。事業の成否が「炭素除去クレジット市場」の発展に完全に依存する。
      • ビジネスモデル: B2Bサービス型(クレジット販売) 13
    • グループ4((H2A)需要家アライアンス):
      • 強み: CCUS市場の根源的な「需要」を創出する。彼らなしでは市場が成立しない。
      • 弱み: コスト負担者であること。単独では行動できず、アライアンス(1)が必須。CCUS導入によるコスト増を製品価格に転嫁する必要がある。
      • ビジネスモデル: N/A(顧客)。ただし、低炭素製品(グリーンセメント 14 など)という新市場を創出する側に回る。
    • (表)主要企業の戦略ポジショニング比較マトリクス
      • 以下のマトリクスは、第4章および第5章の分析結果に基づき、主要企業のポジショニングを比較したものです。

 

企業名

戦略グループ

中核技術 / 特許分野

ビジネスモデル

主要プロジェクト / 製品

戦略的パートナー(例)

ExxonMobil

グループ1 (ハブ)

サブサーフェス(貯留)、インテグレーション 6

T&Sサービス(ハブ事業)

Houston Hub 16

Calpine 36, Linde 61, グループ4企業

Shell

グループ1 (ハブ)

サブサーフェス(貯留)、Cansolv®(回収技術) 46

T&Sサービス(ハブ事業)、(一部技術ライセンス)

Quest (カナダ), Porthos (オランダ) 8

グループ4企業, ExxonMobil (Porthos)

三菱重工業 (MHI)

グループ2 (技術)

KM-CDR Process® (KS-21™ アミン溶剤) 10

技術ライセンス、EPC支援

Petra Nova 10, Norcem 46

ExxonMobil 62, Heidelberg (Norcem) 46

Aker Carbon Capture

グループ2 (技術)

モジュール設計、アミン溶剤 9

モジュール販売、EPC

Just Catch™, Big Catch™ 9

Twence 9, Offshore O&G企業 (DNV認証)

Climeworks

グループ3 (DAC)

固体吸着剤 (Solid Sorbent) DAC 12

B2B炭素除去クレジット販売 13

Orca, Mammoth 53, Project Cypress 55

Carbfix (貯留) 12, Battelle (米ハブ) 55, Microsoft (顧客) 51

Occidental (1PointFive)

グループ1 & 3 (ハイブリッド)

液体溶剤 (CE) DAC (自社化) 12EOR技術 57

EOR、地中貯留、クレジット販売

Stratos DAC 11

Carbon Engineering (2023年に買収) 57

Holcim

グループ4 (需要家)

(導入技術としての評価)

CCUS導入による製品高付加価値化)

(各工場の脱炭素化プロジェクト) 14

MHI 46 等のグループ2、グループ1のハブ

【第7章】今後の市場リスクとビジネス機会

  • 技術的ボトルネックとリスク
    • コストとエネルギーペナルティ: CCUS、特にバリューチェーンの78割のコストを占めるとされる「分離・回収」プロセスは、依然として高い資本コストと、プラントの出力を低下させる「エネルギーペナルティ」(CO2分離・再生にエネルギーを要する)という根本的な課題を抱えています 23DAC技術は、これがさらに顕著です 12
    • 輸送インフラの欠如: CO2のパイプライン網は、O&Gインフラが発達した米国メキシコ湾岸などを除き、世界的に圧倒的に不足しています 21。特に、内陸の排出源(セメント工場、鉄鋼所など)から沿岸の貯留地までCO2を運ぶインフラ(「Midstream」)の構築がボトルネックです 73。船舶や鉄道による輸送も検討されていますが、コストと規模の面でパイプラインに劣る可能性があります。
    • 貯留の長期負債(Long-term Liability: 地中に圧入したCO2が将来的に漏洩した場合、誰がその環境修復責任と財務的負債を負うのか、という問題は法的に未解決な部分が多いです 26。数百年から数千年にわたるモニタリングと管理の責任(例:事業者が倒産した後)をどう担保するかは、金融機関がプロジェクトファイアンスを提供する上での最大のリスクの一つです 74。日本のCCS事業法 4 は、この問題に対し、一定期間後の国の責任移行などを定めることで対応しようとしています。
  • 市場リスク
    • 政策・規制への過度な依存性: CCUS事業(特にEOR以外)の経済性は、(1) 米国の45Qのような直接補助金 3、あるいは (2) 欧州やカナダ 8 のような「高い炭素価格(カーボンプライシング)」 25 に完全に依存しています。これらの政策が、将来の政権交代などで変更・撤回された場合、事業の前提が崩壊する「政策リスク」が最大の市場リスクです 75
    • 炭素価格の不安定性: 炭素価格が低すぎたり(現状のEU-ETSなど)、政治的要因で乱高下したりすると、数十年の長期投資を必要とするCCUSプロジェクトへの最終投資決定(FID)が困難になります 76
    • 社会的受容性(NIMBY: CO2パイプラインの敷設や、貯留サイトの掘削に対する、地域住民の「Not In My Back Yard(我が家の裏にはご遠慮願う)」という反対運動は、プロジェクトの遅延や中止を招く深刻なリスクです。日本では、CCS事業法において「国民理解の増進」が明記されていますが 4、具体的な合意形成プロセスはこれからです。
  • 競合が手薄な「空白地帯」(ビジネス機会)
    • Midstream(輸送)」特化型事業: 現在、プレイヤーは「ハブ(グループ1)」や「技術(グループ2)」に集中していますが、排出源と貯留地をつなぐ「CO2輸送」 21、特に船舶や鉄道による柔軟な輸送網は未発達です。米国のNavigator77 のように、複数の州にまたがる「CO2パイプライン・コモンキャリア(共用輸送事業者)」を目指すビジネスモデルや、ノルウェーのNorthern LightsのようにCO2の「船舶輸送」と「ハブ貯留」を組み合わせるモデルには大きな可能性があります。
    • Utilization(利用)」の高付加価値ニッチ市場: 気候変動対策の「規模」としては小さい 58 一方で、「建材・鉱物化」 20 や、e-fuel 12 など、高付加価値が認められる特定の「利用」分野は、高い収益性を確保できる可能性があります。特に、炭素除去(DAC)と組み合わせた「永続性のある」利用技術(例:CO2固定化コンクリート)は、単なる排出削減(Abatement)よりも高い価値(プレミアム)が認められる可能性があり、有望と推定されます。
    • 「中・小規模排出源」向けソリューション: グループ1のハブ戦略は、大規模排出源(年間100万トン超)に焦点を当てがちです。しかし、Akerの戦略(9)が示すように、廃棄物発電所、地方のセメント工場、化学プラントなど、世界中に無数に存在する「中・小規模(年間10万~50万トン級)」排出源に対応できる、標準化・モジュール化された安価な回収ソリューションは、競合が手薄な「空白地帯」であり、大きな潜在市場(Long Tail)を形成する可能性があります。

【総括】分析結果の客観的サマリー

本レポートは、炭素回収・利用・貯留(CCUS)市場について、特許情報と公開されている事業戦略(IR等)を横断的に分析し、以下の客観的事実を明らかにしました。

  • 市場の構造: CCUS市場は、(1) 既存インフラを活用し「T&Sサービス」を提供するO&Gメジャー(グループ1ExxonMobil, Shellなど)、(2) 「回収技術」の特許を武器にライセンス供与する技術プロバイダー(グループ2:三菱重工, Akerなど)、(3) DAC」技術で「炭素除去クレジット」市場を創出する新興オペレーター(グループ3Climeworks, Oxy/1PointFiveなど)、(4) CCUSの導入が必須な「H2A需要家」(グループ4Holcim, ArcelorMittalなど)、という4つの主要な戦略グループによって構成されています。
  • プレイヤーの戦略: 各プレイヤーの戦略は、自社の強み(特許、インフラ、資本)に基づいて明確に分化しています。MHI(グループ2)は技術ライセンスに、ExxonMobil(グループ1)はインフラ運営に、Climeworks(グループ3)はB2Bサービスに、それぞれ特化しています。
  • 戦略と技術の整合性: MHIやClimeworksは、自社開発技術と事業戦略が強く一致しています。O&Gメジャー(グループ1)は、自社の中核技術(サブサーフェス、統合)と、グループ2の回収技術を「組み合わせる」戦略をとっており、これも整合性が取れています。OccidentalOxy)は、Carbon Engineering社の買収により、DACへと拡大する事業戦略と、それを支える中核技術の保有を一致させる、最もダイナミックな戦略的動きを見せました。
  • 主要な応用先: 現在の商用化の主流は、経済合理性を持つ「EOR(石油増進回収)」 17 です。しかし、政策(炭素価格、補助金)の後押しにより、「地中貯留」 8 が今後のインフラ投資の主流となっています。特許動向からは、将来的には「e-fuel」や「建材」といった「Utilization(利用)」 19 への関心も高いことが示唆されますが、規模と永続性の点で課題が残ります 17
  • 市場の駆動力とリスク: CCUS市場の成長は、H2A産業の脱炭素化ニーズ 1 によって牽引されていますが、その事業採算性は「政策(補助金、炭素価格)」 25 に強く依存しています。高コスト 23、輸送インフラの不足 21、貯留の長期負債 26 が依然として主要なリスクです。
  • ビジネスモデルの進化: 市場は、単一企業が全工程を担う「統合型」から、輸送や貯留を専門の事業者がサービスとして提供する「アンバンドル型(Storage-as-a-Service)」 21 へと移行が進んでいます。

引用文献

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  2. OGCI CCUS - Progress in 2023, 11月 11, 2025にアクセス、 https://www.ogci.com/progress-report/building-towards-net-zero/ccus/
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