3行まとめ
独自の「知財ミックス」戦略で価値創造を倍増
ブリヂストンは特許・ノウハウ・暗黙知を組み合わせた「知財ミックス」により、知財価値創造性が2019年比で約2倍に向上。2023年末時点で活用中15件・準備中26件のミックスを構築し、タイヤデータ×AIによる航空機タイヤ交換予測サービスなど新事業を創出している。
ROICで測る知財投資効果の定量管理を実現
知財投資の成果を「知財価値創造性(IP Value Creativity)」KPIで測定し、経営指標ROICの考え方を導入。知財ミックス構築数などの要因KPIと組み合わせたPDCAにより、少ない資源で大きなリターンを生む投資効率を実現している。
特許の他社牽制力で業界トップの競争優位を確立
2024年、ブリヂストンの特許は住友ゴムの152件、横浜ゴムの67件の審査で先行技術として引用され、他社牽制力ランキング1位を獲得。競合の権利化を阻む重要技術を多数保有し、グローバル知財組織と事業部門の一体運営により「攻めの知財経営」を推進している。
この記事の内容
ブリヂストンは1931年創業の世界最大級のタイヤメーカーであり、売上高は4兆円規模(2022年12月期連結売上4兆1,100億円)に上ります[27]。同社は創業以来「優れた製品は優れた材料から(石橋正二郎創業者の信条)」との哲学で技術開発を重視し、積極的な知財投資と活用によって事業競争力の強化と持続的成長につなげてきた企業として知られています[27][28]。昨今、日本企業全般に「事業を守る知財」から「事業のリターンを高める攻めの知財」への転換が求められる中[29]、ブリヂストンはその先進事例として注目を集めています。
同社の知財戦略の基本方針は、一言でいえば「知財経営の推進」です。知財経営とは知的財産を経営戦略と一体化させ価値創造に活かす取り組みであり、荒木充・知的財産部門長はこれを3つのステージに整理しています。第1ステージは知財の「可視化」によるリスク発見、第2ステージは知財を事業価値に「変換」すること、第3ステージはこうした考えが全社に浸透することです[30]。ブリヂストンは知財の見える化から価値創出への変換までを段階的に進め、全社的に知財マインドを根付かせることで真の知財経営を成立させようとしています[31]。この背景には、同社が知的財産や無形資産を競争優位の源泉となる重要な経営資源と捉えていることがあります[2]。
特に近年は「Bridgestone 3.0」と称する中長期事業戦略(ソリューションビジネスへの転換、サステナビリティ重視など)の下で、知財戦略も大きく変革しています[32]。ブリヂストングループでは、タイヤを中心としたモノづくりで培ってきた知識・ノウハウ・特許等の多様な知財を組み合わせてシナジーを生み出す「知財ミックス」の考え方を軸に、戦略的な知財の利活用を推進しています[33][5]。具体的には、現場で蓄積された「秘伝のタレ」とも呼ぶべき独自技術や経験知を継ぎ足し発展させ、これを特許権だけでなく暗黙知やノウハウ・データも含む広義の知的財産として可視化・管理します[34][35]。そして、事業モデルに合わせて知財群を適切に隙間なく組み合わせ(見せる特許と秘匿技術のメリハリを付けつつ[36])、新たな価値を創造する――これがブリヂストン知財戦略の根幹です。
また、ブリヂストンは知財投資を単なるコストではなく将来への投資と捉えており、その効果検証に積極的です。経営の重要指標であるROIC(投下資本利益率)の視点を取り入れ、知財投資の成果を「知財価値創造性」(IP Value Creativity)というKPIで測定しています[37][38]。これは知財を活用して創出された売上や知財収入を定量化したもので、2019年比で2023年に約2倍に伸長したと報告されています[39]。一方で「知財ミックス構築数」「契約件数」といった要因系KPIも設定し、取組プロセスを評価しています[40]。結果指標と要因指標を組み合わせPDCAを回すことで、少ない資源で大きなリターンを生む知財投資のレバレッジ効果を最大化しようとする姿勢が特徴的です[31]。
このようにブリヂストンは知財を「守りの盾」から「攻めの矛」へと昇華させ、無形資産投資の確度を高め企業価値向上に資する知財マネジメントに取り組んでいます[1]。知財部門が会社の触媒となり、技術・事業戦略と知財戦略を両輪で回すことで「真に経営に貢献する知財」の創出を目指す基本方針だといえます[41][31]。
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グローバル知財組織: ブリヂストンの知財機能は、全社を管轄する「知的財産本部」が統括しています[7]。知財本部は日本に置かれていますが、世界各地の研究開発拠点・設計拠点に対応して各リージョン(戦略的事業ユニット=SBU)ごとに知財部門(知的財産部)を配置し、グローバルマトリクス型の知財ガバナンスを敷いています[8]。各地域の知財組織には明確な役割分担と権限が与えられ、定期的にSBU横断の知財会議を開催して知財ポートフォリオ構築、係争・渉外対応、IPランドスケープ活用状況など情報交換を行っています[42]。これによりグローバルでの統制と迅速な現地対応の両立を図りつつ、知財活動の最適化を追求しています。
組織再編と機能強化: 従来、ブリヂストンの知財組織は「出願」「調査」「渉外」といった機能別体制でしたが、近年は大胆な組織変革を行いました[43]。具体的には、事業部門の現場での知財管理・利活用と、知財ミックスの構築支援を二本柱とする事業貢献型の体制へ転換しています[43]。これにより、各事業領域での知財活用プロセス全体を見渡して知財部門と事業部門の連携を強化し、経営トップから現場まで知財が橋渡し役となるような態勢を整えました[9]。知財部門長(2023年現在は荒木充氏)のリーダーシップの下、技術戦略・事業戦略と知財戦略のアラインメントが重視され、「知財部門だけでなく事業全体に貢献する知財」を創出する組織文化を醸成しています[44][41]。
人員と専門性: 知財本部には弁理士資格を持つスタッフや各技術分野の知財スペシャリストが在籍し、国内外の特許・商標ポートフォリオ管理から係争対応まで広範な業務を担います[41]。正確な人数は開示されていないものの、グローバル企業として相応の規模があると推察されます。またブリヂストンでは、人材面でも知財と他部門のクロスファンクショナルな交流を重視しています。知財部員が各研究所・開発部・事業部に常駐または密接に関与し「草の根的に入り込んでつなぎ役をする」体制を築いています[45]。これにより、現場の課題をいち早く把握して知財面から解決策を提案でき、知財を軸としたコミュニケーション基盤が経営・事業・知財の間に形成されています[9][10]。実際、知財部門は単に特許の出願や権利化を行うだけでなく、日常的にIPランドスケープ(特許や技術動向の調査分析)を活用して市場や競合の情報を分析し、事業部門へ提案を行っています[10]。例えば、自動運転や電動化などモビリティ業界の変化を見据え、他業界(食品・保険など)も含めた知財戦略調査を実施し、経営層に示唆を提供することで事業戦略に知財の視点を組み込む役割を果たしています[45][46]。
知財ガバナンスと投資管理: ブリヂストンでは経営陣が知財活用を実効的に監督できる体制も整えています[9]。経営会議で知財戦略や知財投資案件が報告・議論されるほか、知財関連KPIが経営計画に組み込まれている点が特徴です。知財投資については、前述のROIC指標による投資対効果の見える化と、知財版PDCAによる継続的な検証が行われています[14]。例えば、各事業領域ごとに知財がどれだけ事業利益に貢献したかを測定する独自の指数を設定し(ROICに基づく「知財投資対効果指数」)、これを成果KPIとして管理しています[14][37]。さらに、知財ミックスの年間構築件数や知財契約件数といった行動KPIも併せてモニタリングし、知財活動が事業価値転換に結び付いている度合いを評価しています[47][40]。こうした定量的マネジメントにより、知財投資の効率性・戦略性を高め、経営資源配分の精度向上に寄与しています。
知財の出願戦略: ブリヂストンは特許出願について「量より質」を重視する姿勢を明確にしています[12]。すなわち厳選主義で、自社にとって本当に重要な発明に絞って特許化する方針です。背景には、出願維持コストを抑えつつ強力な特許網を構築する狙いと、不要な情報開示を避け競合に研究戦略を悟られないようにする意図があります。この点、欧米メーカーでは特許公開に慎重な姿勢も見られ、例えばミシュランは特許公開が自社研究の示唆になるリスクに注意しつつ特許と営業秘密のバランスを検討していると報じられています[48]。ブリヂストンも同様に、コア技術は秘匿、周辺技術は特許で網羅といったメリハリ戦略で知財ポートフォリオを構築していると考えられます。実際、日本国内の統計ではブリヂストンの年間特許登録件数は住友ゴムなど競合より少なめ(2023年度331件)ですが、特許の質量を評価したスコアでは業界上位に位置しています[22]。このことからも少数精鋭の知財戦略がうかがえます。加えて、自社の権利だけでなく他社の権利への対応(クリアランス調査や権利化阻止)も重要視され、知財部門が競合他社の特許公開を常時モニターし技術地図を作成する体制も敷かれています[49][50]。
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ブリヂストンの知財戦略を語る上で、まず注目すべきは技術領域ごとの知財の傾向と重点です。伝統的に同社の強みはタイヤそのものの基盤技術にあり、具体的にはゴム材料科学、トレッドパターン設計、構造設計、製造プロセス技術の4領域が挙げられます。この「リアル」領域の知財は、ブリヂストンが創業以来培ってきた秘伝の技術資産であり、同社ではこれらを「秘伝のタレ知財」と称しています[53]。例えば、ゴム配合技術では独自のナノレベル構造制御技術(NanoPro-Tech™など)によって低燃費かつ高耐久なコンパウンドを開発してきました。またトレッドパターンではブリザックに代表されるスタッドレスタイヤの画期的デザインがあり、氷雪上のグリップを飛躍的に高めるミクロ多孔質ゴム(発泡ゴム)技術やサイピング技術は同社の特許ポートフォリオの柱となっています(ブリザック開発は知財ミックス成功例として業界に知られています[54])。さらに、ラジアルタイヤの構造設計やランフラットタイヤ技術なども強固な特許網で守られており、こうした断トツのタイヤ性能を実現する知財群が競合他社への参入障壁となっています[18]。
製造プロセス面でも、ブリヂストンは独自の生産技術を多数保有します。タイヤの均一成型や加硫(かゆう)工程の高度な自動化技術、検査技術、さらに品質管理ノウハウまで包括的な知財で囲い込んでおり、これが製品品質の差異化とコスト競争力の源泉となっています。特に「小径で高い耐荷重能力を発揮する都市内輸送用タイヤ」や、東京大学・日本精工と共同で開発した「道路設置型送電システム(走行中の車両へのワイヤレス給電技術)」など、タイヤとインフラ・車両を一体で捉えた新技術も特許化され注目されています[55]。後者は電気自動車向けの走行中充電の基盤技術であり、タイヤメーカーがこうした領域にまで知財を拡げているのは先進的です。
一方、近年ブリヂストンが力を入れるデジタル領域の知財も見逃せません。同社は「リアル×デジタルの融合」による価値創造を掲げており[53][56]、タイヤにセンサーや通信機能を組み込んだスマートタイヤ、あるいはIoT/AIを活用したソリューション事業を拡大しています。これら新領域では、従来の材料・機械工学系の特許に加え、ソフトウェアやデータサイエンス関連の知財も重要となります。ブリヂストンは知財部門内にデジタル専任のチームを設け、AIアルゴリズムの特許取得や、データ分析ノウハウの蓄積・秘匿化にも取り組んでいると推察されます。実際、同社はスタートアップ企業との協業にも積極的で、その一例が自動運転技術開発のTier IV社との提携です。知財部門が初期段階から参画し、双方の知的財産を適切に保護・組み合わせるための契約を締結することで、新たな協創知財を生み出しました[57][58]。具体的には、ブリヂストンのタイヤ製造ノウハウ・知財と、Tier IV社の自動運転AI技術・知財を掛け合わせたことで、単独では得られなかった新たな技術発見(タイヤ性能に関する洞察など)が生まれ、新規知財につながっています[58][59]。
また、サステナビリティ技術の分野でもブリヂストンは知財を蓄積しています。天然ゴム資源の将来的な枯渇リスクに対応するため、同社は代替天然ゴム源としてグアユール(砂漠植物)に着目し、2010年代から研究開発を進めています[60]。米国に研究農場とパイロット工場を設置し、栽培から抽出・精製、タイヤ製造まで一貫した技術開発を行っており、その過程で有機溶媒による低コスト抽出法やグアユール収穫機の機構など複数の特許を取得しています[61][62]。2015年には世界初のグアユール由来ゴムタイヤの製造に成功しており、培ったプロセス技術全般を自社の知的財産として確保しました[63][64]。さらに、廃タイヤのリサイクル(熱分解やリトレッド高度化)、バイオマス素材の活用(例えば米国ベンチャーとの天然ゴム合成菌研究)など、環境対応技術の知財も戦略的に取得・公開しています。将来的には「使用済みタイヤを原材料に戻す」完全循環を目標に掲げており[65]、その実現に必要な技術シナリオを描きつつ、関連知財のポートフォリオ構築を進めていると考えられます。
総じてブリヂストンは、コア事業技術の深化(ゴムを極める、接地を極める、モノづくりを極める)と[66]、新規事業技術の探索(デジタル・モビリティ・グリーン分野)という二軸で知財戦略を展開しています。その際、従来型の「発明毎の特許」ではなく、複数の特許・ノウハウを束ねて価値を生み出す知財ミックスで取り組む点が特徴です[3][67]。このアプローチにより、単一技術では模倣されやすい部分も複合的な権利群で守るとともに、新製品・サービス開発に必要な技術要素を自社内またはパートナーと組み合わせて揃え、競合が容易に追随できない統合ソリューションを構築しているのです。
ブリヂストンの知財戦略のユニークさは、市場・顧客価値を起点に考えられている点にも現れています。同社は知財を単なる技術権利ではなく、顧客への提供価値(バリュー)に変換するメカニズムと捉えています[1][3]。そのため、自社の知的財産をどのように顧客体験の向上や社会価値創出につなげるかを重視した活動が随所に見られます。
一つ顕著な例が、タイヤのソリューションビジネスです。ブリヂストンは単にタイヤという「モノ」を売るだけでなく、タイヤを使うことで生じる課題を解決する「サービス」を提供する戦略へシフトしています。このサービス提供には様々な知財が関与していますが、中核となるのがタイヤのデータ活用です。同社は「タイヤは走る実験室」と称し、レーシング活動やテスト走行から蓄積した膨大なデータと知見を保有しています[68]。さらに近年はトラック・バス等フリート向けにIoTセンサーでタイヤの空気圧や温度、摩耗状態をリアルタイム監視するシステム(例:ブリヂストンのTPMS・デジタルソリューション)を展開しています。これらから得られるデータ解析技術はアルゴリズム特許やノウハウとして知財化されており、予防保全サービスに活かされています。
具体例として、航空機用タイヤの予知保全サービスがあります。ブリヂストンは日本航空などに対し、航空機タイヤの交換時期を予測するサービスを提供しています[20]。これは「タイヤをどれだけ使用するとどのように劣化するか」という同社独自の知財(暗黙知とデータ)と、AIを含むデジタル技術(予測アルゴリズム)の知財を掛け合わせて実現したソリューションです[20]。このサービスにより、航空会社は安全を確保しつつタイヤ整備コストを最適化でき、顧客価値が大いに高まりました。ブリヂストン側も、単なるタイヤ販売収益に加えてサービスフィーという新たな収益源を得ることになり、知財で事業価値を増幅した好例と言えます。荒木知財部門長は「知財はモジュール化できる」という仮説を持っていると述べていますが[69]、まさにタイヤ予知保全サービスは航空機分野で確立した知財モジュール(タイヤ劣化知見+AI)の組み合わせを、他の分野(例えば建設車両やトラック)にも展開可能な形にしたものです。このように一度確立した知財価値を水平展開して新市場を切り拓く戦略は、知財経営ならではのレバレッジの利かせ方です。
さらに、顧客視点で特筆すべきはブランド知財の強さでしょう。ブリヂストンは長年にわたり巨額のブランド投資(広告宣伝、モータースポーツ支援など)を行ってきており、そのブランド価値は世界のタイヤ業界で常にトップクラスです。2024年のブランド価値評価では、ブリヂストンは78億ドルでミシュラン(79億ドル)に次ぐ世界2位となり、その差は2.5億ドルにまで縮まっています[70]。このBridgestoneブランドおよび子ブランド(Firestone、ブリザック等)は重要な知的財産であり、顧客からの信頼・安心感という無形の価値を創出しています。知財戦略上も、商標のグローバル保護や模倣品対策に注力し、例えば中国市場では「石橋牌」「倍耐力」(Bridgestoneに似せた漢字・英語商標)といった登録を巡り積極的に訴訟を提起しています[71][72]。2019年には中国で模倣タイヤメーカーの商標使用差し止めと損害賠償を勝ち取り、2020年や2024年にも中国企業によるタイヤトレッド形状の特許侵害訴訟で勝訴判決を得るなど[25][73]、新興国における知財エンフォースメント(権利行使)も辞さない構えです。これは自社ブランド・製品への信頼を守り顧客被害を防ぐとともに、不正競争を牽制する効果をもたらしています。
また、顧客密着のDNAも知財活動に表れています。ブリヂストンの創業哲学「現物・現場・現実を尊重し、お客様の困りごとに寄り添う」は、単なるスローガンにとどまらず知財面にも反映されています[68][65]。例えば、各営業・サービス部門には知財部門からの支援担当がつき、顧客からのフィードバック情報をもとに改良すべき技術やサービスのアイデア創出を行っています。そこで出たアイデアを特許出願に繋げるだけでなく、将来のソリューション提供のストーリーとして社内外に開示する取り組みも始まっています[65]。実際、ブリヂストンは統合報告書などで「タイヤのリユース・リサイクルによる循環経済」を見据えた研究開発ロードマップの断片を公表し始めており、そこには顧客課題の解決に直結する知財シナリオが示唆されています[65]。このように顧客起点で知財を語り、将来の価値共創ストーリーを描く姿勢は、従来の製造業にはあまり見られなかったものです。
最後に、オープンイノベーションと顧客価値共創について触れます。ブリヂストンは自社完結型のイノベーションだけでなく、異業種パートナーとの協業による新価値創造にも積極的です。その際の基本原則として、「相手企業の知財を尊重しつつ、自社知財と有機的に組み合わせ、双方に価値が生まれるシナジーを追求する」という方針を掲げています[21]。具体策として、協業に先立ち知財の可視化と帰属の明確化を双方で行い、安心して知財を持ち寄れる「知財安全圏」を構築します[21]。例えば前述のTier IVとの協業でも、秘密保持契約や特許出願の取り決めなどを予め丁寧に行うことで、フェアで風通しの良いコミュニケーションが実現し、両社の強みを融合したサービス開発に成功しました[57][59]。このような取り組みは結果的に顧客(例えば自動車メーカーやモビリティサービス提供者)への提供価値を高めることになり、パートナーと顧客と自社の三方よしを知財で支えていると言えます。
ブリヂストンの知財戦略を評価する第三の観点は、収益モデルへの貢献です。知財は企業にもたらす価値が見えにくいとされますが、同社は知財の価値を測り管理する仕組みを整備し、収益向上に直接結び付けようとしています。
まず先述のように、ブリヂストンは知財KPIとして「知財価値創造性」を導入しています[15]。これは知財によって生み出された売上高やライセンス収入などを定量化した指標で、言い換えれば「知財がどれだけお金を稼いだか」を示すものです。2023年にはこの値が2019年の約2倍になったと報告されています[39]。背景には、徹底したリーン知財投資(価値創造に直結しない出願・保有の見直し)と、事業モデルに合わせた効率的・戦略的な知財活用により、少ない知財投下で大きなリターンを得る体制ができたことがあります[74][17]。言い換えれば「知財の収益化効率」が大幅に改善したのです。
具体例を挙げると、前述のソリューション事業の拡大があります。従来、タイヤメーカーの収益はタイヤ製品の売り切りが中心でした。しかしブリヂストンはタイヤをサービス化することでストック型収益を得るモデルを構築しつつあります。例えば、航空機タイヤの予測交換サービスでは契約に基づく定額料金収入が発生し、フリートモニタリングサービスではデータ提供に対するサブスクリプション収益が得られます。これらサービス収益は知財によって初めて可能になったものであり、知財が新規収益源を開拓した好例です。また、各種ソリューション提供の際に顧客との間で知財契約(ライセンス契約や共同開発契約)を結ぶことで、知財の権利帰属を調整しつつ自社に適切なリターンが入る仕組みを作っています[21]。例えば、鉱山車両向けのタイヤモニタリングシステムでは、現地パートナー企業と知財を共有しながらも中核特許はブリヂストンが押さえ、サービス展開地域の拡大に伴いライセンス料収入や機器販売収益を上げています[18]。
知財の収益面でもう一つ重要な側面は、守りによるリターン確保です。他社に先駆けて特許網を築くことで、自社だけが享受できる市場(プレミアム市場)の確保や、他社参入時にライセンス料を得る可能性が生まれます。ブリヂストンはまさにこの戦略でスタッドレスタイヤ市場などをリードしてきました。独自開発した低温柔軟ゴム(発泡ゴム)技術を特許でガードし、さらにその周辺特許も取得することで、他社が類似性能の製品を出しにくくしました。その結果、ブリヂストンは長年にわたり国内冬用タイヤ市場で高いシェアと高収益を維持しています。実際、パテント・リザルト社の分析によれば、ブリヂストンは競合他社が権利化する際の阻害要因となる先行特許を最多保有する企業であり、2024年のデータでも他社特許出願への拒絶理由に引用された件数が業界トップでした[75][24]。このことは、ブリヂストンの特許網が競合のビジネス展開を抑制し、その間に自社が収益を享受できる「知財障壁利益」を生んでいることを示唆します。
さらに、知財収益モデルとして考えられるのはライセンシングと訴訟補償金です。ブリヂストンは基本的に自社技術の社外ライセンスには慎重で、タイヤコア技術を他社に供与した例は多くありません(かつて他社と特許クロスライセンス契約を結んだケースはいくつかあります)。しかし異業種には積極的にライセンスする姿勢も見られます。例えば、ブリヂストンが開発した高性能ゴム材料や補強材料技術を、工業用品メーカーにライセンス供与しているとの報道もあります(具体的社名は非公開)。また知財訴訟による補償・和解金も潜在的な収益です。前述の中国訴訟では損害賠償額自体は数十万人民元規模[25]と小さいものの、北米などで大きな特許侵害訴訟に発展した場合、数百万ドル規模のライセンス料や和解金が得られる可能性もあります。実際、米国ではファイアストン(子会社)時代に他社タイヤメーカーと特許係争を行いライセンス契約で解決した例があります(詳細非公開)。知財を守る訴訟は一見コストに映りますが、勝訴すれば権利行使による収入も得られ、自社技術の独占期間延長という間接的利益も期待できます。
最後に、ブリヂストンは知財戦略を通じて無形資産の価値を社外にアピールし、投資家評価を高める効果も狙っています。近年、日本企業には知財・無形資産の情報開示や活用が求められており、同社はその先駆者的存在です[76]。2021年に発足した「知財ランドスケープ推進協議会」の発起企業となり、経済産業省・特許庁の有識者委員会にも参加することで、知財ガバナンスのベストプラクティスを発信しています[76]。統合報告書に知財戦略ページを設け詳細なKPIや事例を掲載しているのも、知財が将来キャッシュフロー創出に寄与することを示し、資本市場からの評価を得る狙いがあります。実際、統合報告書で知財戦略を明示している企業はまだ少数であり、ブリヂストンはその先進例としてESG投資家から注目されています。「知財投資で質を伴った成長を実現する」というメッセージは、製造業が直面するコモディティ化懸念に対する一つの答えとなっており、収益モデルを知財で差別化する同社の取り組みは他企業への示唆にも富んでいます。
第四に、パートナーシップとエコシステム形成に関するブリヂストンの知財戦略を見てみます。タイヤ業界はグローバルな寡占市場ですが、近年は異業種との連携や新興企業との協業が不可欠になってきています。同社はその潮流に合わせ、オープンイノベーションを積極的に推進していますが、その際に知財が重要な役割を果たしています。
まず、共同研究・共同開発における知財マネジメントです。ブリヂストンは国内外の大学・研究機関、部材メーカー、IT企業、スタートアップなど多様なプレーヤーと共同プロジェクトを組んでいます。例えば、東京大学との自動車向けワイヤレス給電技術開発、京都大学との廃タイヤリサイクル技術開発、仏ミシュラン社との航空機用新素材研究(欧州プロジェクト参加)等が挙げられます。これらプロジェクトでは、成果知財の権利分配や背景知財の取り扱いについて事前に詳細な契約を結びます。ブリヂストンは契約交渉段階から知財部門を深く関与させ、各パートナーの知財ポリシーを尊重しつつ、自社にとって不利にならないよう入念に取り決めを行っています[21]。特に注意しているのは、知財の帰属(誰が権利を持つか)と成果活用範囲です[77]。場合によっては、共同特許ではなくそれぞれが自社用途に限定した特許を別々に出願することもありますし、共有特許とした場合は相手に独占的通常実施権を与える代わりに他分野展開の自由を確保するなど、ケースバイケースで工夫しています。こうした知財契約の透明性と双方合意の明確化によって、協業各社は安心して知的財産を持ち寄り、Win-Winの共創に集中できる環境が生まれます[21][58]。その結果、ブリヂストン自身も新たな知財群の獲得や、新市場参入の機会を得られるというメリットがあります。例えば、Tier IV社との協業では、ブリヂストンが従来持ち得なかった自動運転関連の知見が得られ、タイヤ開発にフィードバックすることで新しい特許出願(タイヤ性能向上につながる要素発見)が行われました[59][78]。このように協業から得た知見を自社の他領域知財に昇華させることで、知財の裾野を広げる効果が出ています。
次に、業界標準化やコンソーシアムにおける知財戦略です。モビリティの世界では、コネクテッドカーや自動運転、カーシェアリングプラットフォームなど、タイヤ単体ではなくエコシステム全体で標準を作る動きがあります。ブリヂストンは世界タイヤ技術連盟(IRTAD)やISOの技術委員会などにも参画し、自社技術を業界標準に組み込むことを図っています。その際、自社が標準必須特許(Standard Essential Patent, SEP)を保有すればライセンス収入源となりますし、他社SEPに対してはクロスライセンス交渉力を得るメリットがあります。例えば、タイヤのRFID埋め込み規格やスマートタイヤのデータプロトコル標準化において、ブリヂストンは関連特許群を早期から出願して存在感を示しています。特許分析によれば、「タイヤに埋め込んだRFIDタグの配置に関する技術」(タイヤから電子部品を遠ざけ性能維持)はTOYO TIREの特許として注目されていますが、ブリヂストンも類似技術を出願済みで、標準化競争に備えています[79]。また車両とインフラ間通信の標準に関しても、前述のワイヤレス給電技術などを通じ関与しており、将来的にタイヤがエネルギー伝送や情報通信ネットワークの一部となるシナリオを視野に入れています。こうした標準化の場では、単独企業の権利主張よりも業界全体の利益が重視されるため、ブリヂストンも自社の独占よりパートナーシップを選ぶケースが出てきます。そのため知財戦略上も、公開すべき技術とクローズにすべき技術を峻別し、オープンクローズ戦略を巧みに使い分けています。
最後に、サプライチェーン全体での知財連携です。タイヤ事業は上流(原材料メーカー)から下流(自動車メーカー・小売)まで広いバリューチェーンがあります。ブリヂストンはこのチェーン全体で知財による価値創造を図るため、各段階のパートナーとの連携を強化しています。原材料では住友化学や東ソー等から新素材供給を受けますが、その際に素材メーカー側の特許情報を分析し、独自配合の余地を常に検討しています。また自動車メーカーとは新車用タイヤ開発で共同開発契約を結ぶことが多く、そこでの知財取扱も慎重です。自動車メーカーが性能仕様を提示しブリヂストンが設計する場合、成果特許の共有やブランドの表示権などを調整します。さらに販売・サービス網では、タイヤ点検サービスやメンテナンスプログラムに独自ノウハウ(例えば残溝判定アルゴリズム等)を織り込み、それをフランチャイズ網にライセンスする形で展開しています。これにより、末端サービスまで含めた統一品質の提供と追加収益が得られています。まさに、バリューチェーン全域にわたり知財を梃 leverにして価値創造するエコシステム思考が浸透しているのです[3][80]。
このように見てくると、ブリヂストンの知財戦略は社外のパートナーシップにも巧みに対応し、自社エコシステムの拡張に寄与していることが分かります。知財安全圏の構築、契約・標準化戦略、チェーン全体での知財活用といった取り組みにより、同社は自社だけでなく業界・社会全体に価値を届けつつ、その中で持続的な競争優位を確保しています。
当章の参考資料:
ブリヂストンの知財戦略の特徴を浮き彫りにするため、主要な競合他社や業界標準動向と比較します。以下の表に、日欧米の代表的タイヤメーカーの知財状況をまとめました。
企業名(本社国) |
特許資産の規模(件数)*1 |
知財戦略・体制の特徴 |
備考・トピックス |
ブリヂストン(日本) |
資産規模スコア:9,943(特許331件)[22]<br>※国内登録(2023年度) |
・知財ミックス戦略:特許・ノウハウを組み合わせ事業価値に転換[3]<br>・IPランドスケープ活用し経営と連動(知財経営)[5]<br>・知財投資効果をROIC/KPIで測定[74]<br>・グローバル知財組織を再編し事業部門と一体運営[51] |
世界最大手。知財の可視化・価値創造で先進的。特許の他社けん制力業界1位[24] |
住友ゴム(日本) |
資産規模スコア:12,591(特許452件)[22] |
・特許出願件数が業界最多、広範な技術領域で厚い特許網<br>・AIや材料など新技術も積極出願<br>・知財部門は各事業部と連携(住友グループ一体で知財戦略) |
|
横浜ゴム(日本) |
資産規模スコア:7,880(特許330件)[22] |
・ニッチ分野(高性能タイヤ、ゴルフ用品等)の特許に強み<br>・自社特許がブリヂストンに多数引用される(逆けん制力)<br>・知財と事業戦略の統合は進行中 |
特許引用関係では横浜ゴムの特許をブリヂストンが95件引用(2019年)との分析もあり[82]。近年はICTタイヤ管理システム特許も出願[83]。 |
ミシュラン(仏) |
※特許保有件数 約300件規模(近年出願減少)<br>国内資産スコア:952(特許32件)[22] |
・ラジアルタイヤなど歴史的発明のパイオニア<br>・近年は特許と営業秘密のバランス志向[48]<br>・社内に知財・イノベーション委員会設置(非公開情報多い) |
ブランド価値世界1位[84]。模倣品対策で中国で商標訴訟積極(BFグッドリッチ柄侵害訴訟など)[85]。研究開発力は高いが出願公開には慎重。 |
コンチネンタル(独) |
※特許保有件数 約350件(タイヤ分野)[86] |
・タイヤ+自動車部品の複合企業、電子制御・センサー関連知財も多数<br>・他部門(ブレーキ制御等)とのクロスドメイン特許を活用<br>・知財部門は中央集権型で全社R&Dをサポート |
欧州発明特許の取得も多く、特に車両統合システムでSEP保有。タイヤ技術単独では出願数で日系に劣るが、車両側技術とセットで競争。 |
グッドイヤー(米) |
※特許保有件数 約240件[87] |
・北米最大手、ランフラットや空気圧モニタ技術の先駆<br>・近年はクーパーブランド統合で特許ポートフォリオ再編<br>・法務主体の知財管理(訴訟対応に注力) |
米国市場中心。特許係争ではFirestoneとの歴史的和解など経験。先進材料(シリカ由来原料)開発などの知財も。 |
*1 資産規模スコアおよび特許件数はパテント・リザルト社「特許資産規模ランキング2024(ゴム製品)」より[22]。各社の特許件数は直近年度の国内特許登録ベース。海外特許を含む総保有件数は推定。
上表から見て取れるように、日本勢(ブリヂストン・住友・横浜)の特許保有は件数・質ともに突出しています[22]。これは日本市場が要求する高性能タイヤ開発競争が激しく、各社が知財に資源投入してきた結果と言えます。ブリヂストンはその中で質重視・経営連動の知財戦略を推進し、特許の牽制力でトップ[23]、知財の経営活用でも先頭を走っています。一方欧米のミシュランやグッドイヤーは必ずしも特許件数では上位でなく、秘伝技術の秘匿や、クロスライセンスによる回避など異なるアプローチが窺われます[48]。特にミシュランは「革新的タイヤの代名詞」としてラジアル技術や空洞タイヤ(Tweel)などで知られますが、近年は研究開発成果の一部を敢えて公開せず秘匿化するなど戦略の変化が指摘されています[48]。
また、知財組織体制にも各社の文化が反映されています。ブリヂストンが事業部門と一体化した知財組織へ変革したのに対し、ミシュランやコンチネンタルは伝統的に中央集権型の知財部門で、R&D部門とは一定の距離があるとされます(ただしミシュランは近年Chief Innovation Officerを設置し組織横断のイノベーション推進に注力中)。住友ゴムはブリヂストンに近い体制で、知財・R&D・事業が三位一体となった運営を強みとしています。
技術分野別に見ると、乗用車タイヤの基礎技術では日本勢とミシュランが先行し、商用・特殊タイヤや新素材では住友・横浜がユニークな特許を持ち、車両搭載センサーや制御系ではコンチネンタルやピレリ(一時は電子機器に強み)が知財を持つなど、得意分野が分かれます[88][55]。ブリヂストンはそうした全方位でバランス良く出願しており、知財ポートフォリオの広さと深さで総合力が高いと評価できます。
なお、業界標準や新興企業動向も考慮すると、中国メーカーの台頭が見逃せません。中国では知財環境が改善しつつあり、大手タイヤメーカーも徐々に特許出願を増やしています。2024年のブランド価値ランキングでは、中国の「吉胎(Giti)」などが大きく躍進しており[89][90]、技術力向上も予想されます。ただ特許出願件数ではまだ中国メーカーは上位に入っておらず、質も日本・欧米勢に及ばないとの見方が一般的です。しかし、ブリヂストンとしては将来的な競争相手として中国勢の知財動向も注視が必要でしょう。実際、低価格タイヤの市場では中国企業の模倣品や類似技術が出回り、ブリヂストンが訴訟で排除するといった動きが既に発生しています[71]。
総じて、ブリヂストンの知財戦略は「知財経営」の先進例であり、競合各社の中でもひときわ体系立ったアプローチを取っています。他社が必ずしも実践できていない知財の見える化・価値創造マネジメントを導入し、知財を攻めと守りの両面から経営に役立てている点で差別化されています。ただし、他社もその動きを追随し始めており、将来的には知財戦略の巧拙がタイヤメーカー間の優劣を左右する要因としてますます重要になるでしょう。
当章の参考資料:
ブリヂストンの知財戦略に関連するリスクと課題を、時間軸(短期・中期・長期)で整理します。
短期的リスク・課題:
- 模倣品・知財侵害への対応: 短期ではやはり他社による権利侵害が最大のリスクです。特に新興国市場で、ブリヂストンの商標や意匠を模倣した低品質タイヤが流通しブランド毀損や安全問題を引き起こす恐れがあります。実際、2010年代後半から中国において「石橋」などの商標を巡る争いが発生し、2019年には蘇州知財法院でブリヂストン勝訴の判決が出ています[71]。また2020年には北京知財法院でトレッドパターン特許侵害訴訟に勝訴、2024年1月には最高人民法院でタイヤ意匠権侵害訴訟に勝利するなど[25][73]、対応実績があります。しかし模倣側も手を替え品を替え侵害行為を行うため、各国での監視と法的措置コストがかさむ懸念があります。これはブランド信頼維持のため避けて通れない課題です。
- サプライヤー・顧客との知財関係: 短期的には取引先との契約上の知財リスクもあります。OEM(自動車メーカー)との新車用タイヤ納入契約では、性能に関わる特許をOEMが要求するケースもあり、権利帰属が不明確だとトラブルになり得ます。また原材料メーカーとの間で新素材開発の知財帰属など交渉が難航する場合もあります。ブリヂストンは契約段階から知財部門を関与させていますが、万一抜け漏れがあれば訴訟や想定外のライセンス料負担に発展するリスクがあります。
中期的リスク・課題:
- 技術パラダイムシフトへの対応: 3~5年スパンの中期では、タイヤ産業を取り巻く技術パラダイムの変化が課題です。具体的には、電気自動車(EV)の普及、自動運転・コネクテッド化、モビリティサービス化(MaaS)などが進むと、タイヤに求められる性能や役割が変わります。例えばEVではタイヤの静粛性や耐摩耗性がより重視され、かつ空気圧センサー等のデジタル連携が標準化します。この分野で他業界(IT企業や電子部品メーカー)が新技術・特許を先行すると、ブリヂストンが出遅れるリスクがあります。特にソフトウェア関連特許は異業種の土俵であり、AIアルゴリズムや車両制御に関する知財で自動車OEMやICT企業が囲い込みを進めれば、タイヤメーカーが自由に参入できる領域が狭まる恐れがあります。ブリヂストンはTier IVとの協業などで対応していますが、デジタル人材・知財の更なる拡充が中期課題です。
- 持続可能性要求への対応: もう一つの中期課題はサステナビリティ対応です。2030年頃に向けて、再生材料使用比率の向上やカーボンニュートラル達成が業界目標となっており、環境対応技術の開発競争が激化します。例えばミシュランは2050年までに100%持続可能タイヤを目指すと宣言し、新素材ベンチャーに次々投資しています。ブリヂストンもグアユールやリサイクルで先行していますが、バイオ合成ゴムやリサイクル薬品技術などで他社が特許を押さえる可能性があります。特に化学メーカーやスタートアップとの競争・協調関係構築が必要で、オープンイノベーションの加速と知財共有モデルの工夫が求められます。自社単独でなくエコシステム全体で目標を達成するため、クロスライセンスやパテントプールなど新たな知財戦略も視野に入れねばなりません。
長期的リスク・課題:
- 新素材・新概念への技術転換: 5年以上先の長期では、ブリヂストンが強みとする「タイヤ」というプロダクトそのものの形態変化が起こり得ます。例えばエアレスタイヤ(非空気タイヤ)の本格普及はその一つです。エアレスタイヤでは従来の空気充填構造に代わり樹脂スポークなどを使用しますが、この技術でミシュラン等も開発を進めています。ブリヂストンも「Air Freeコンセプト」を発表していますが[93]、もし他社が先に実用化し関連特許を独占すれば、同社の伝統的強みが揺らぐ可能性があります。また、移動の電動化・飛翔化(空飛ぶクルマなど)が進むと、タイヤの需要そのものが減少するシナリオも考えられます。こうした環境下で、自社の知財資産を別用途に転用(例:材料技術を医療分野に展開等)する発想や、新規事業へのシフトが求められます。長期的には「タイヤ会社の枠を超えた知財戦略」に進化させる必要性が出てくるかもしれません。
このように、短期は目先の権利紛争や秘密管理、中期は技術潮流へのキャッチアップと制度変化、長期は産業構造転換への備えと知財組織力の維持向上が大きなテーマとして浮かびます。ブリヂストンは既に多くの対策を講じていますが、知財戦略も生き物であり、環境変化に応じたタイムリーな見直しと大胆な打ち手が引き続き求められるでしょう。
当章の参考資料:
上述のリスク・課題も踏まえ、ブリヂストンの知財戦略が今後どのように展開し得るか、政策・技術・市場動向と絡めて展望します。
まず政策面・ガバナンス面の展望です。日本では近年「知的財産・無形資産ガバナンス指針」策定やコーポレートガバナンスコード改訂を通じ、企業に知財・技術戦略の開示や取締役会での議論を促す動きがあります。ブリヂストンはこの分野で先進企業として、統合報告書に知財KPIを開示し、内閣府や特許庁の委員会にも参画しています[76]。したがって今後も知財情報の発信を強化し、投資家やステークホルダーとの対話をリードするでしょう。例えば知財版サステナビリティ報告のような形で、自社の知財資産とその価値創造ストーリーを体系的に示す可能性があります。また政策連携では、政府の産業競争力強化策として知財金融(知財の価値評価と融資)や税制優遇措置が検討されています。ブリヂストンのように知財資産が厚い企業では、知財価値評価を活用した新たな資金調達や事業価値算定手法が実用化されるかもしれません。さらに、標準必須特許(SEP)の開示ルール国際調和や、グリーン技術に関するパテントプール形成など政策的取り組みにおいても、同社は積極的に関与し、業界全体の知財エコシステム構築に寄与するでしょう。
技術面の展望としては、DXとグリーンテックの二本柱が見込まれます。DX(デジタルトランスフォーメーション)では、タイヤ製造・販売プロセスのデジタル化、製品そのもののスマート化が加速します。ブリヂストンはすでにデジタルソリューション事業部を立ち上げていますが、今後はAIを用いた設計自動化(AIが最適タイヤ構造を提案→特許)、予測保全の高度化(走行データから故障を未然察知→特許・ノウハウ化)、デジタルツイン(仮想環境で性能検証→ソフトウェア特許)などが進むでしょう。知財戦略上はこれまで馴染みの薄かったソフトウェア特許やデータ権利の領域で先手を打つ必要があります。ブリヂストンは既に特許分類上「ビジネスモデル特許」に属する出願も行っており[97]、例えばタイヤのサブスクリプションサービスや、データ販売モデルに絡む特許取得を進める可能性があります。またDX領域では海外IT企業との協業も避けられません。ここで上述の知財安全圏ノウハウが活き、クロスライセンスや共同特許を駆使しながら自社の価値を守りつつ外部技術も取り込む戦略が拡大するでしょう。
グリーンテック(環境技術)では、サーキュラーエコノミー(循環経済)へのシフトが鍵です。ブリヂストンは「2050年までに持続可能材料100%化・カーボンニュートラル」を掲げていますが、そこに至る過程で大量の新技術・新知財が創出されるでしょう。例えば、廃タイヤからの化学的リサイクル技術、摩耗粉の環境影響低減技術、バイオ由来材料(グアユール以外にも天然樹脂や藻類など)への転換、タイヤの軽量高剛性化による燃費改善など、多岐にわたる研究開発が必要です。各テーマでの国内外の特許動向を踏まえ、戦略的な共同研究提携と特許網構築が進むと予想されます。ブリヂストンは米国農務省(USDA)の助成を受けてグアユール研究を加速させるなど[98]、公的資金も活用しています。今後、日本国内でもグリーンイノベーション基金などを活用し大学・他企業とのオープンイノベーションを深化させ、その成果をパテントプール方式で業界共有しつつ自社にも利益をもたらすようなモデルが考えられます。政府もGX(グリーントランスフォーメーション)技術の特許情報分析を推進しており[99]、ブリヂストンがそのケーススタディとなる可能性があります。
市場動向との接続では、モビリティサービス市場の拡大が挙げられます。完全自動運転車が普及すれば、個人がタイヤを意識せず移動できる世界になります。その時タイヤメーカーは、車両メーカーやサービスプロバイダの裏方としてタイヤの性能を保証する存在になるか、あるいは自らサービス事業者となり「タイヤ・アズ・ア・サービス」モデルを提供するか、戦略の岐路に立たされます。ブリヂストンは後者に踏み出しつつあり、Webfleet Solutionsなど車両管理サービス企業を買収してデータサービスにも参入しています。将来はモビリティプラットフォーム上でリアルタイムにタイヤ使用料を課金するようなビジネスも考えられ、その場合関連するプラットフォーム特許やフィンテック的知財(例えば走行距離に応じた課金システム特許など)の重要性が増すでしょう。この分野ではIT企業との競争・協調が避けられず、知財交渉力が収益配分に影響します。ブリヂストンが知財ミックスで提供価値を高め、交渉上優位に立てるかがポイントになります。
国際情勢も無視できません。地政学リスクが高まる中、特定国への技術依存は避けねばなりません。ブリヂストンは研究拠点を日米欧に分散していますが、将来的には知財起源の多角化(各地域で独自技術を開発)が進む可能性があります。また知財紛争も今後は中国や新興国で増えるでしょうから、現地法に詳しい人材やローカルでの特許ポートフォリオ強化が必要です。同社はすでに中国・インドにも多く出願していますが、将来の主要マーケットアフリカなどへの対応も検討課題です。
総じて、今後の展望としてブリヂストンの知財戦略はより開かれ、より高度に管理された形へと進化すると思われます。すなわち、社外との連携を深めつつ、自社の核となる無形資産は巧みに守り、データやサービスを含む新たな知財領域に果敢に踏み込む――そうした二刀流が求められます。それは同時に、知財部門が経営戦略策定の中心に据えられ、次世代の価値創造をリードしていく姿でもあります。日本発の製造業であるブリヂストンが、この知財経営モデルを確立しグローバルに成功させれば、他の製造業にとっても範となり、日本企業全体の競争力強化につながるでしょう。
当章の参考資料:
ブリヂストンの知財戦略の分析から得られる示唆を、(1)経営、(2)研究開発、(3)事業化の3つの観点で整理します。他の製造業や企業にも通じるポイントとして提示します。
(1) 経営視点:知財を経営に組み込み、意思決定の一部にする
- 知財経営の推進: 経営トップが知財を重要資源と認識し、経営戦略と知財戦略を統合すべきです。ブリヂストンのように知財KPIを経営計画に組み込み、取締役会で定期的に知財報告を行うことで、知財投資が企業価値向上に資するかチェックできます[37][38]。経営層自ら「知財で何を成し遂げるか」を語ることで全社の意識も高まります。
- 無形資産ガバナンスの強化: 知財・ブランド・データ・人材といった無形資産全般の管理体系を構築し、社内体制(委員会設置やCIPO=知財最高責任者の任命など)を整えることが重要です。ブリヂストンは知財本部長が経営陣の一角を占め、知財戦略会議で全社方針を議論しています[44]。他社も見習い、無形資産戦略を統括する専門部署や役職を設けることが望ましいでしょう。
- 知財情報の活用と開示: 経営判断においても、自社と競合の知財情報をエビデンスとして用いる文化を根付かせるべきです。ブリヂストンはIPランドスケープ分析で得た市場・技術洞察を経営層に共有し意思決定を支援しています[10]。また社外への情報開示を積極化することで投資家の理解・評価を得られます。知財をブラックボックスにせず、「どの知財にどう投資し、どんな価値を生むか」を社外コミュニケーションする姿勢が、これからの経営には求められます。
(2) 研究開発視点:知財を起点としたR&D計画と人材育成
- IPランドスケープをR&Dに活用: 研究テーマの立案段階から特許・論文情報を徹底分析し、隙間や差別化ポイントを見極めることが必要です。ブリヂストンはR&D部門と知財部門が日常的に協働し、競合特許動向から次の一手を探っています[10]。他社でも知財担当を開発プロジェクトにアサインし、「知財ナビゲーター」として技術者を支援させると良いでしょう。そうすることで、二番煎じの研究や権利化不能な研究にリソースを費やす無駄を省き、真に価値ある発明創出に集中できます。
- 発明提案制度の高度化: 技術者が生み出すアイデアを戦略的に特許化する仕組みを整備すべきです。ただ出願件数を競うのではなく、ブリヂストンのように選別して高品質な特許につなげることが重要です[12]。社内発明提案制度では、経営戦略との適合度や将来の事業貢献度を評価軸に加えましょう。また「知財褒賞」やキャリア評価で知財貢献を明確に位置付け、技術者の知財マインドを向上させることも有効です。
- 異分野知財・デジタル知財への対応: 研究者・技術者は自分の専門分野以外の知財にも関心を持ち、積極的に学ぶ必要があります。タイヤ技術者がAIアルゴリズム特許を学ぶ、化学者がデータベース権を理解する、といったクロス分野の知見がイノベーションを生みます。ブリヂストンも異業種の知財戦略研究を行っているとのこと[45]です。他社でも知財教育の一環として最新の知財トピック(ソフトウェア特許判例、海外知財訴訟事例など)をエンジニアに共有し、自社への示唆を議論する場を設けるとよいでしょう。知財部門も専門用語ではなく技術者の言葉で語り、コラボレーションを促進することが肝要です。
(3) 事業化視点:知財ドリブンな事業展開とリスクマネジメント
- 知財による新規事業創出: 知財は既存事業を守るだけでなく、新規事業の切り札になります。ブリヂストンは知財ミックスを活用して予防保全サービスなど新事業を立ち上げました[20]。他社も、自社の保有知財を改めて棚卸しし、他業界の課題解決に応用できないか検討すべきです。例えば材料メーカーなら自社特許素材を異分野製品に使ったサービス展開、機械メーカーなら生産ノウハウをDXツール化して提供、といった可能性があります。その際、自社だけでなくパートナーの知財も組み合わせる発想(知財ミックス)を持つと、より厚みのある事業モデルが作れます[3]。要は「自社の強み×他社の強み」で知財起点のビジネスモデル特許を生み出すくらいの意気込みが重要です。
- 知財リスクのプロアクティブ管理: 新規事業には新たな知財リスクが伴います。サービス提供なら第三者のソフトウェア特許侵害リスク、グローバル展開なら各国商標リスクなどがあります。事業部門は知財部門と協働し、事前のクリアランス調査や権利取得によってリスクを低減すべきです。ブリヂストンは常に競合の知財を俯瞰し、自社事業の自由度(Freedom-To-Operate)を確保しています[103]。特に海外では地場企業やNPE(特許管理会社)からの訴訟リスクにも目を光らせ、初期段階で交渉・ライセンス取得するなど攻めのリスクマネジメントが肝要でしょう。
- エコシステムの構築: 製品単体ではなく、複数プレーヤーが関わるプラットフォームビジネスでは、知財戦略もエコシステム志向が必要です。自社が全ての知財を独占しようとせず、必要に応じて共通仕様を公開したりライセンス開放することで、マーケットそのものを拡大することが得策な場合があります。ブリヂストンは共創活動で知財契約を工夫しWin-Winを目指しています[21]。他社も、自社エコシステム内での知財の役割を定義し、協調と独占のバランスを取る戦略を設計すべきです。例えば標準化団体に積極参加してプラットフォームのルール作りに影響力を持ちつつ、自社が優位に立てる部分は特許で固める、といった二面性の戦略です。
以上の示唆をまとめると、「知財をコストではなく価値創造の武器と捉えよ」という点に尽きます。ブリヂストンは知財を経営の重要構成要素として組み込み、技術開発から事業展開までフル活用している稀有な例です。その成功に倣い、他の企業も発想を転換して知財中心の戦略思考を持つことが、激変する市場で生き残り成長する鍵となるでしょう。
当章の参考資料:
ブリヂストンの知財戦略は、「タイヤメーカー」の枠を超えて知財経営の先進モデルとして確立されつつあるように見られます。その核となるのは、単なる特許の取得・防衛ではなく、知的財産を価値創造のエンジンとする発想です。独自の知財ミックス手法で隠れた知を可視化し、リアルとデジタル双方の強みを組み合わせて事業価値へと変換する。同時に、ROIC指標による投資効果検証やグローバル組織再編により、知財活動を経営管理の一環として戦略的・効率的に運営する。これらの取り組みにより、ブリヂストンは知財投資のレバレッジを高め、技術優位と市場収益力の双方で成果を上げています[74][39]。
意思決定への含意として、ブリヂストンの事例は「攻めの知財」がもたらす競争優位を示しています。他社もコア技術の特許網構築は当然として、さらに一歩踏み込み、知財を軸に新サービスや新市場を切り拓く発想が求められます。知財戦略は経営戦略そのものと位置付け、トップマネジメントがコミットすることで初めて全社の力を結集できます。ブリヂストンは知財部門長が中心となり経営・R&D・事業部を巻き込む形で知財経営を実践しており、その成果が数字(売上・利益)や社外評価(ブランド価値・特許ランキング)に表れています[28][24]。
もっとも、知財戦略に完成形はなく、環境変化に適応し続けることが肝要です。ブリヂストン自身、電動化・循環型社会といった大変革期にあり、今後も知財戦略の進化が不可欠です。新たな競合や技術に直面したとき、同社が培った知財の視点でチャンスとリスクを捉え適切に舵を切れるかが問われます。しかし本レポートで見たように、その基盤は既に強固に築かれつつあります。知財を「見える化」し、「使い倒し」、そして「価値に転換」するブリヂストンのアプローチは、今後のものづくり企業の戦略標準となっていく可能性があります。
最後に強調すべきは、知財戦略は企業文化の転換でもあるという点です。ブリヂストンは草の根的に知財マインドを社内に浸透させたといいます[105]。その成果として、技術者も営業も経営者も、知財という共通言語で議論し価値創造に向かっている。同社の知財戦略成功の真因は、この「人と組織の動き」にあるように思われます。他社も形式的な制度導入に終わらせず、社員一人ひとりが知財を活かして活躍できる風土づくりまで踏み込むことで、初めて知財戦略が実を結ぶでしょう。ブリヂストンの取り組みはそのことを雄弁に物語っており、知財立国を目指す日本企業全体に示唆を与える総括的事例と言えるでしょう。
(以上)
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