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四足歩行ロボットが切り拓く未来モビリティ~川崎重工CORLEOとヒューマノイド研究の最前線

四足歩行ロボットが切り拓く未来モビリティ~川崎重工CORLEOとヒューマノイド研究の最前線

2025.9.26

【要約】

  •  川崎重工が四足歩行ロボットの次世代モビリティ「CORLEO」を万博で公開
  •  ヒューマノイドと車輪型のイイとこどりを、さらに昇華させた革新的なコンセプト
  •  水素エンジン搭載、ロボット×水素×モビリティというカワサキのコア技術を結集
  •  特許分析から、未来モビリティの可能性がもっと見える、特許は楽しい!

 

「発明塾」塾長の楠浦です。今回は、久々のエッジ情報です。
万博ネタですが、今ホットな領域である「モビリティxロボット」「ヒューマノイドロボット」関連の情報です。かなり調べたので、掲載しきれなかった情報は今後のコラムで紹介します。
では、早速本題へ。

1.カワサキから「四足歩行モビリティ」が遂に登場?!

2025年大阪・関西万博で、川崎重工が発表した四足歩行ロボット『CORLEO(コルレオ)』。万博用のコンセプトモデルなのですが、HPやYoutube動画を見て、「あー、これが次世代モビリティなんだな」と思わせる説得力を、僕は感じました。

CORLEO(コルレオ)のコンセプトを掲載したHP
https://www.khi.co.jp/expo2025/concept01/index.html

人が“跨って”乗れる四足歩行型のモビリティで、体重移動によって操縦するスタイル。ネットでは、ジブリ映画『もののけ姫』に登場する「ヤックル」みたいだ、という声が出てますね。
イメージ動画にあるように悪路をも軽快に駆け抜ける新型ロボットは、従来の移動手段とは一線を画した、完全に新しいコンセプトです。カワサキが言う通り、「見たことのない景色を見に行きたい」という人の移動本能に訴えかけるものですね。

僕はカワサキではオートバイ設計者でしたので、「カワサキのモビリティは、ここまで行くのか」とワクワクしています。もともとオートバイは「鉄の馬」と呼ばれることもあって、「馬」のイメージなんですよね。だから、四足歩行ロボットは「原点回帰」になります。いやー、発売されたら乗ってみたい(笑)。

2.ヒューマノイドと車輪型ロボットの“いいとこどり”から生まれた

まだコンセプトモデルの段階ですが、これはまさに「発明」だなと思いました。ということで、特許を調べてみたところ、カワサキは2020年前後から四足歩行ロボットの開発を進めていました。2022年に「RHP Bex」という四足歩行ロボットを国際ロボット展(iREX)で発表しています。

【Robust Humanoid Platform】人共存型ヒューマノイドロボット「RHP Friends」
https://kawasakirobotics.com/jp/blog/story_21/

開発のキーパーソンは、掃部雅幸さん。僕の情報分析の結果が正しければ、僕とカワサキ入社同期の技術者の方ですね。RHP Bex 発表時のインタビューと特許分析によると、彼は、ヒューマノイドロボットの開発や、車輪式の自走型ロボットの開発にも携わっています。
ヒューマノイドは究極のロボットの姿です。夢がありますよね、でも、夢と同時に難しさも感じていたようです。車輪型ロボットといいとこどりできないか。こういう流れで生まれたのが、四足歩行ロボット「RHP Bex」CORLEO(コルレオ)は、その進化系ですね。

「RHP Bex」の写真をよく見ると、車輪がついています。不整地では四足歩行、屋内では必要に応じて車輪で走行、というイメージですね。一方、CORLEO(コルレオ)には、車輪はありません。「鉄の馬」に戻ったわけです。21世紀のモビリティーは、本当に「鉄の馬」だった(笑)。
僕のこれまでの発明経験から、こういう「一周回って、結局こうなる(ここに戻る)んです」というのは、結構妥当性があると感じます。ほんと、ワクワクしかない(笑)。

3.ロボット × 水素 × モビリティ ―― カワサキのコア技術の掛け算

技術の側面からも見ておきましょう。そもそも、「カワサキ」がロボットをつくっているイメージがない方がいるかもしれません。カワサキは、半導体製造ラインなどで使う産業用ロボットを製造しています。特に、半導体の「ウエハー」を運ぶロボットで世界シェア50%以上とされています(2020年のデータ)。

特許を見てみると、特に直近10年の特許出願では、以下の分野への特許出願が目立ちます。

  •  ロボット、および、ロボットの制御(遠隔制御を含む)
  •  水素の貯蔵、利用

今回発表されたCORLEO(コルレオ)も、「水素エネルギー」で動くものです。具体的には、水素を燃料とする「水素エンジン」が動力になっています。水素エンジンは、僕がカワサキに在籍していた1997年ごろから、京都大学などとの共同研究でコツコツと開発を進めていましたので、カワサキとして25年以上の歴史がある技術ですね。

つまり、CORLEO(コルレオ)は、「ロボットx水素xモビリティ」というカワサキのコア技術が結集したコンセプトモデルだ、ということです。このまま実用化されるかは不明ですが、カワサキが目指す新しい時代を示す、重要なコンセプトであることがわかります。

特許を調べると、カワサキのロボット事業が目指す方向性がいくつか見えてきました。これは、また別の機会に「ロボット特集」として取りあげたいと思います。ちょっと特許を調べただけで、新規事業・新技術開発や投資に役立ついろいろなヒントが得られました。いやー、特許ってほんとに面白いですね。

4.ヒューマノイドロボットの研究は継続、今後に期待

ロボットについて、一つだけ補足しておきます。先ほど、「ヒューマノイドは究極のロボットの姿で、夢があるが、難しさも感じていたようです」と書きましたが、ヒューマノイドロボットに関する特許出願は、今も継続的に行われていますので、開発は進んでいると考えて間違いないでしょう。

ひょっとしたら、「四足歩行ロボット」を研究・開発したことによって、ヒューマノイドロボットにも何かブレークスルーがあったのではないか、ということもあるんじゃないか、と邪推してしまいます(笑)。

研究開発って、そういうことがよくあるんですよね。急がば回れというか、寄り道してみることで、意外な問題が解けてしまうことがあるんです。そんなことを考えながら、カワサキのヒューマノイドロボットの特許を読んでいました。ちなみに特許の中には、「ケンタウロス」のような「四足歩行ロボット」と「ヒューマノイドロボット」を組み合わせたロボットが描かれていました。これもまた面白い発想ですよね。カワサキって自由な会社ですね。カワサキのロボット、そして、新しい時代の「鉄の馬」モビリティーに、大いに期待しましょう!

万博に行かなきゃ、、、(笑)。

 

楠浦 拝

 

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