【要約】
「発明塾」塾長の楠浦です。
今回は、「新規事業サポーター養成講座」(支援者向け発明塾公開講座)でのやり取りを一つ紹介し、「支援者の役割」「支援者に求められるスキル」についてお話しします。
新規事業サポーター養成講座(支援者向け発明塾公開講座)
https://www.techno-producer.com/business-supporter-course/
新規事業サポーター養成講座で、皆さんと日々議論しながら「エッジ情報」の探索を行っているときにいただいたコメントです。
==参加者のコメント
楠浦さん、支援者の役割を以下のように考えましたが妥当でしょうか。アドバイスを頂けるとありがたいです。
考えたこと(支援者の役割):現段階で支援者が意識すること、課題のヒントになりそうなことを、問題、解決手段の観点からエッジ情報を探して、提供する。==ここまで
企業内発明塾で新規事業の企画や研究・開発テーマの検討を行う場合、まずは、新規事業や研究・開発テーマを考えようとしている分野の最先端情報、つまり、「エッジ情報」を探します。
最終的に特許に行きつく場合が多いですが、特許に限らず、様々な情報を調べていきます。その際、大事なことがいくつかあって、コメントの中にうまくまとまっています。
一つひとつ、見ていきましょう。
現段階で支援者が意識すること、課題のヒントになりそうなことを、問題、解決手段の観点からエッジ情報を探して、提供する
このコメントを、よーく読むと「課題」「解決」の観点から、とあります。これ、大事なんです。
そもそも、「新規事業」「研究・開発」の価値は「課題」で決まります。
だから、「課題探し」が最も重要なんですね。
でも、「課題」が見つかれば終わり、ということではないし、そもそも課題を探すときに、「課題」だけ見てても見つからない。だから、「解決手段」もしっかり見ていく。
支援者は、提案者(支援対象の方)と一緒に、「課題」「解決手段」両方に精通していく必要があるんですね。
「課題」だけでなく、「解決」についても、どんどんアイデアと情報を出していく。
次で話しますが「問い」は大事だけど、そこに凝りすぎてもまどろっこしい。出せる情報やアイデア(解決)は、ガンガン出して進めていく。
僕はこれを「巻き取る」と言っています。
新規事業は時間が勝負なので、だらだら議論してる時間はないんですよね。
さっさと決めて、さっさとやる。そのために必要なのが「巻き取る」こと。
支援者の方には、この「巻き取り力」を身につけてもらうことが、重要なんですよね。
「問い」がどうのこうの、という議論を最近よく耳にしますね。本もたくさん出ています。もちろん発明塾でも状況ごとに独自の「問い」を整理して、フル活用しています。
でも実際のところ「問い」をいかに工夫しても、それだけだと議論はさほど深まらないし、そもそもまどろっこしい。
「問いを立てる力」の重要性が注目されるようになったのは良いことです。しかし、問いを立てただけでは何も進まないのが、現場・現実です。
特に新規事業の現場では、時間も人も限られており、「問い」を繰り返す余裕がないことも、しばしばです。
実は、発明塾で最も重視するのは、「その場で、いったん答えを出すこと」「常に、その時点での答えが出ている状態にすること」なんです。
あーでもないこーでもない、と「問い」にはまらないこと。「問い」にはまっていると、なんとなく賢くなった気がして、気分はいいんですよね(笑)。でも、実際は何も進んでない。そういう方を、よく見かけます(笑)。
問いは大事なのですが、実はそれ以上に重要なのが、問いから解決へ、解決から行動へと巻き取っていく力です。
特に、AI時代には「社会実装力」「社会実装スピード」が重要になってきます。アイデアの検討は、AIでどんどん巻き取れるからです。
先日お声を紹介した、ある塾生さん(開発部長の方)は、「AIを持って街へ出よう!って感じですね」とおっしゃっていましたが、まさにそれです。
実際、企業内発明塾では、ここ2~3年、期間中に顧客ヒアリングやアライアンス先へのヒアリングをする例が多くなっています。また、期間中に製品(ハードウエア)の試作や、ラボでの簡易な実験まで進むものも出てきています。まさに実装力ですね。モノやデータを見て議論するのは、とても楽しいです。
「新規事業サポーター養成講座」や、現在実施中の「企業内発明塾」でも、AIをフル活用していますので、以前より前倒しで「企画・検証」作業が進んでいくでしょう。
だからこそ「問い」で終わっていてはだめで、「ガンガン『巻き取る』支援」が必要になってきます。
イメージとしては、「求められてもいない段階から、どんどん巻き込まれる」感じですね。求められてからでは遅い。だから、積極的に巻き込まれていく。これが「AI時代の支援者」のマインドです。
今回コメントいただいている方は、まさにそういう風になっています。「支援者は育てられる」を実証できている、よい例です。
積極的に巻き込まれていただき、どうもありがとうございます。
巻き取るために、巻き込まれる。
これが、発明塾の理想とする「支援」です。
問いの追求・探求とか、問いを駆使する、とか、一見かっこいいんですけど、なんか他人事なんですよね(笑)。
もう一歩踏み込む。もっと泥臭く、地べたを這うように、一緒に苦しむ。
技術も市場も、全部一緒に深く理解して、一緒に苦しみつつ、巻き取る。
ここが、「よい支援者」「よい支援」と「その辺で誰でもやってる、支援っぽいもの」(笑)の、分かれ道かなと。
発明塾では、例えば以下を、バランスよく重視しています。
もちろん、他にもいろいろ指導していますので、これがすべてではありません。そして、最も重視していることは、「企画を通して、必ず実行に移す」ことです。これに尽きるんですよね。実行されない企画は無駄だからです。
ひとことで言うと、「知的な実行者」を育てるんですね。
頭でっかちではなく、実行し、顧客や「社会」からのフィードバックを得て、自らの手で、事業を育てて行ける人を育てたい。そういうことです。
「問い」に凝りすぎると、永久に質問ばっかりして、かえって足止めをしてしまう危険性もありますし、自問自答を延々と繰り返して、実行に移さずに満足してしまう人も出てくるからです。
これは、過去に経験済みなので、そういうことが起きない仕組みを、何重にも組み込んでいます。
だから「必ず実行に移す」と、僕は言い切っているんですね。
もちろん、それを提案者だけに求める、提案者の「熱意」「意欲」「意識」だけに求めるのは酷なので、「支援者」が重要になるわけです。「意欲」とか「意識」って、一番信用できないやつですよね(笑)。
これもまた、多くの方を指導して、あるいは、自ら多数の方を採用・雇用・教育して、よく理解しています(笑)。
提案者がやりたいこと、考えたいことに共感しつつ、サッと情報と仮説を提示し、意思決定を促す。
行き詰っても「だったら、こうしてみれば」と、どんどん情報とアイデアを共有する。
そして、次の一手に巻き込んでいく、いや、巻き込まれてくれる。
「その場合も、この辺は難しいかな、、、でも、そこはこういう手もあるよね」という感じですね。
「新規事業サポーター養成講座」での僕の書き込みは、実際そうなっています。
今はAIを駆使するので、議論のペースがどんどん早くなっているのが最近の特徴ですね。
自ら巻き込まれ、かつ、提案者を巻き込んでいく。
複雑なようですが、新規事業や研究テーマの企画提案における「支援」ってそういうことだと思ってます。
そこにAIも巻き込んで、どんどん議論を加速させる。
こういう支援者を育てたい。
そう思われた方は、「企業内発明塾」「支援者向け発明塾」をご利用ください。
企業内発明塾
https://www.techno-producer.com/kigyounai-hatsumeijuku/
新規事業サポーター養成講座(支援者向け発明塾)
https://www.techno-producer.com/business-supporter-course/
(上記は公開講座のご案内ですが、企業内開催も承ります)
楠浦 拝
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